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損得ではなく好きか嫌いか 中小企業が「新しい価値」を生む方法
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180424-00020647-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 4/24(火) 8:00配信
Thanya Jones / Shutterstock.com
年に一度、Forbes JAPANが発表する「日本の起業家ランキング」の授賞式で、毎年耳にする言葉がある。
「誌面に掲載されて、やっと社員の親御さんに理解してもらえました」という声だ。
「せっかく大学まで出たのに、あるいは大企業に就職したのに、なぜ小さな会社に入社したり転職したりするのか」と、親が嘆くのだという。世間の根強い錯覚を物語る話である。なぜなら1998年頃から、企業の明暗は規模の大小だけでは測れなくなり、未来を読むモノサシにならなくなっているからだ。
金融危機と倒産が相次いだ98年以降、新興国の台頭、デフレ、Eコマースの隆盛など経営環境は激変している。経済の仕組みが変わるなか、大企業ではなくても環境の変化に対応し、独自の存在意義を示している会社は多い。しかし、「発明、アイデア、その背景にある哲学をもつ企業が知られていなかったり、埋もれたりしているのは、大きな機会損失だと思っていました」と、「スモール・ジャイアンツ」のアドバイザリーボード(審査員)、笹川真は言う。
笹川は電通ビジネスデザインスクエアで、宇宙関連企業ispaceのHAKUTOプロジェクトにかかわるなど、広告制作で培ったクリエイティビティを企業支援に広げている。笹川がスモール・ジャイアンツのテーマに位置づけたのが、「第2のスノーピークを探そう」だった。
新潟県三条市にあるアウトドアの世界的ブランド「スノーピーク」は本社がキャンプ場になっていることで知られ、スノーピーカーと呼ばれる熱狂的なファンが国内だけではなくアメリカなど海外にも多い。
1958年に創業した同社は、オリジナルの登山用具や釣り道具の製造販売を経て、ハイエンドのキャンプ用品の分野を開拓してきた。今回、同社社長の山井太にも審査に加わってもらった。その山井に、90年代にアウトドアブームが去って停滞を経験したとき、いかにして突破口を見出したかを聞くと、彼はこう話した。
「96年をピークに日本のオートキャンプ人口は急速に減少します。この頃、社員がスノーピークのタープを裏返しに張っているキャンパーをしばしば目撃し、我々が追求してきた機能が半減してしまうと危機感を抱きました。そこで社員が、お客様から本音を聞くキャンプイベントをやらせてほしいと私に訴えてきたのです。98年に初めてお客様とキャンプイベントをやると、生の声に気づかされたことがありました」
キャンプ用品が「異常に高い」という声があった。耐用年数の長さや機能性の高さから、テントは他社の4倍の値段だった。
「お客様のことを考えて商品開発をしており、絶対的価値が高いため、価格の高さは理解されていると思っていました。しかし、何のために作ったのかという意図が伝わっていなかったのです。また、小売店によって品揃えも違います。そこで問屋さんとの取引をやめたら、8万円のテントを5万9800円くらいまで下げることができました」
このキャンプイベントで山井が気づいたのは、「問屋さんや小売店さんは私たちのビジネスパートナーであって、真の顧客ではない。真の顧客はキャンパーの皆さん」ということだ。流通改革を断行し、小売りと直接取引を始めた。顧客と価値の共有を行ったのである。
「顧客との距離」を一気に縮めた同社は、毎年、キャンプイベントを行い、焚火トークで客と語り合うことを続けている。世界観を共有することで、アウトドア文化を高めていく役割を果たすのである。
小さな会社だからできる「好き嫌い」という軸
山井がこんな話をする。
「大きな企業や組織は、損得軸で動かざるをえないと思います。でも、小さな会社やユニットは、好き嫌いという軸で考え、自分たちが好きなことで誰も具現化していないことを社会に打ち出すことができます。
結果的に新しい価値を生み、損得でもプラスになるという順番でビジネスができるのが、小さい会社の優位点と思います」
スノーピークが飛躍するプロセスは、スモール・ジャイアンツを定義づけていくうえで大きなヒントになっていく。
顧客以上に、顧客を知る
私たち編集部が「スモール・ジャイアンツ」の条件としたのは、売り上げ100億円以下、創業10年以上、地域への貢献、価値の創出、そして新しい時代への幕開けを担おうとしているか、である。
なぜスモール・ジャイアンツとして、いま見出す必要があるのか。審査員の一人、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄が説明する。
「これは確信していることですが、日本の中小企業は宝の山です。しかし、経営が弱く、停滞している会社が多い。というのは、これまでは優れた技術をもった会社が親会社を主要取引先として、決められたことを細々とやっていれば事業が成り立ちました。しかし、コスト削減から値引きを求められるなど時代環境の変化によって、存続が厳しくなっています。技術力はあっても経営が弱いというテーマは、大企業で議論されてきたことでしたが、中小企業にも当てはまります。
いま問われているのは『経営力』です。
大転換の時代はチャンスの時代でもあり、日本経済にとっては若いスタートアップ以上に、中小企業が力を発揮することが重要だと思っています」
そこで私たちは、現場を熟知し、事業を相対的に見られるアドバイザリーボードに推薦企業を挙げてもらうことにした。まず、協力してくれたのは、リンカーズの社長、前田佳宏である。同社は全国の500機関と2000人の産業コーディネイターと連携し、大企業が求める技術と、それに応えられる中小企業をマッチングしている。
目利きである全国の産業コーディネイターたちから上がってくる推薦企業の特徴は、大手企業からの発注に技術力で応じるだけにとどまらず、強みを生かして自社製品に挑戦している点だ。
入山の話にあるような、下請けに満足しない経営者たちであり、高機能の紙を介護用などに商品化するハッソーや、無水調理のホーロー鍋「バーミキュラ」をヒットさせて下請けから脱却した愛知ドビーがよい例である。
一方、目利きのなかでも、リンカーズが「抜群の成約率をもたらす」と称賛するのがTAMA協会である。正式名称は一般社団法人 首都圏産業活性化協会。TAMAとは「Technology Advanced Metropolitan Area」の略だ。東京西部の多摩地区を中心に埼玉、神奈川中央部をカバーする組織であり、その名称通り、電子機器など技術系企業を中心にグローバルニッチトップが会員として名を連ねる。
90年代から業種の壁を超えて、経営者たちが技術を磨くために開いた勉強会が組織の前身である。そこに大学、金融機関、行政、産業コーディネイターが加わり、「研究開発エリア」として自然発生的に産学官金が連携する。
日本の競争力は「存続力」
医療機器に特化したアドバイザリーボードが、日本医療機器開発機構である。CEOの内田毅彦が米FDA(食品医薬品局)の審査官出身で、全国の大学や中小企業に眠るアイデアや技術の種を掘り起こし、自治体と組んでインキュベーションを行っている。
「地方創生」の分野で存在感を発揮しているのが、デロイト トーマツ ベンチャーサポートである。前田亮斗を中心に、全国に社員を配置し、のべ30地域の産業政策立案・実行支援の統括を行う。
クラウド会計で知られるマネーフォワードは、企業をお金の面からサポートする全国の公認会計士、金融機関、商工会議所、自治体と連携。裾野が広いうえに、会計士らと一緒にクラウド会計の導入をしているため「現場」を熟知している。
こうしてアドバイザリーボード10組から総計250社の推薦企業が集まった。そこから45社に絞り、最終投票には前出の入山とKAPIONの曽我弘に参加してもらった。
曽我は新日鐵を定年退職後にシリコンバレーで連続起業家になった異色の人物で、開発・商品化したDVDオーサリングシステムをディズニーがデファクト標準したことから、DVDの世界的普及に大きく寄与した。アップルのスティーブ・ジョブズに会社を売却したことでも知られ、80歳を過ぎた現在、日本に帰国し、ベンチャー支援を行っている。
日本の競争力は「存続力」
推薦、精査、投票、取材を行いながら、見えてきた共通点がある。イーグルバス社長、谷島賢は「一社単独では生き残れない時代になった」と言い、自治体、顧客、取引先、他の地域企業とともに同じゴールを目指す事例が増えた。そして、顧客のなかに分け入り、顧客以上に顧客を知ったうえで、コア技術をカスタマイズする。これが結果的に価値の共有化につながり、企業のファンをつくっているのだ。
次に、審査したアドバイザリーボードの視点を紹介したい。大阪市都市型産業振興センターの山野千枝は6年前から「ベンチャー型事業承継」を提唱している。
「大阪の中小企業はオーナー企業が多いのですが、20年ほど前から過酷な経営環境になり、『息子に継げと言えなくなった』という声を社長さんたちからよく聞くようになりました。ベンチャー型事業承継とは、親の商売を強みにして、地続きながらちょっと離れた新しい事業で勝負をかけることです。地道な作業でも20年経てば、業態が大きく変わっているケースもあります。私は昨年の世界陸上男子400mリレーで銅メダルをとった陸上日本男子を例にしています。一人ひとりはスーパースターではないかもしれませんが、時間をつないで結果を出す。これが日本の勝ち方であり、日本の競争力とは存続力だと思うのです」
本特集に登場するミツフジ、大都、平安伸銅工業こそ、ベンチャー型事業承継の成功例だろう。
一方、クラウドファンディングのマクアケは地方銀行85行以上と連携をして、銀行から紹介された企業の資金調達や新製品の開発にネットを使って協力している。13年にサービスを始めた社長の中山亮太郎は、意外な発見があったという。
「金属加工メーカーなどBtoBの下請け企業が、自社製品をクラウドファンディングでつくる例が増えています。消費者向けにチャレンジしてみたかったという潜在的な意欲ですが、他の意図もありました。もともと技術力は話題になりにくい。そこで、消費者向けの製品をヒットさせることで、製品の裏にある技術力が注目されます。それが本業であるBtoB事業のPRとなり、会社が発展していくのです。こういう使われ方は驚きでした。また、消費者向けの製品が社員の士気や採用面でのプラスに働いているそうです」
ピンチとチャンスの両方が増えた
実はクラウドファンディングが登場する以前、03年から同様の試みはあった。
ビジネスプロデューサーの内田研一は、同年、関東経済産業局から「中小企業に補助金を出しても、下請けから脱せる企業がない」と相談を受けた。商品企画力と販路がないためだが、そこで内田が「私がコンサルをやりましょう」と提案した。
「埼玉県の入曽精密さんとつくった第一号の商品が『世界最速のサイコロ』です。重要なのは、会社のビジョン、コア技術、ユーザーが認める価値が、一本線でつながって商品になっているか。同社は極微細加工を武器としています。サイコロはチタンで重心が限りなく真ん中にあり、重さを均等にしている。そしてサイコロの目の彫り込みを3ミクロンと超浅くして、空気抵抗を抑えています。なぜ世界最速かというと、実はF1エンジンの部品を製造しているからです。精密切削技術で世界に貢献し、誰にもできない切削に取り組むという理念、世界最速というキャッチーさ、技術の本質を極めたアイデア。メディアで話題になり、本業にプラスになりました」
内田は中小企業の現在地点を、「ピンチとチャンスの両方が増えた」と言う。
「下請けが仕事として成立しづらくなっています。グローバル競争により、コスト削減から値切られるし、即納を求められるようになって採算が合わない。明暗を分けるのは、発注元が、『嫌だったら取引をやめてもいいよ』と値切ってきたときに、押し返す強みがあるかどうかです。だから、仕事の7割は下請けで安定を確保しても、残りの3割で強みの独自性を発揮して新規事業に打って出る方がいい。
チャンスはクラウドファンディングなどツールが増えたことと、後継者たちの経験です。よその企業で他流試合を積んできた後継者たちが戻って来て、その経験を活かせれば、チャンスは増えます」
今回、受賞した経営者は全員、別の会社で働いた経験をもつ。クリエイティビティとは、自分の過去の経験、会社の強み、顧客を知ることの3つの掛け合わせだと気づかされる。そしてスノーピークの山井が「好き嫌い軸」と言うように、これは普遍的な法則だろう。
かつて中小企業のオヤジだった本田宗一郎もこう言っているではないか。「得手に帆を上げろ」と。
藤吉 雅春
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