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「相続」制度見直しでトラブルが減る? “配偶者居住権”の長所・短所
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180411-00000011-sasahi-life
AERA dot. 4/13(金) 7:00配信 週刊朝日 2018年4月20日号より抜粋
相続制度の改善に向けて民法の改正を進めている法務省
「夢相続」のセミナーや勉強会に参加する人は増えている=同社提供
相続制度見直し案の主なポイント(週刊朝日 2018年4月20日号より)
相続の仕組みは民法で定められている。法相の諮問機関である「法制審議会」が、3年間をかけて改正について議論してきた。
大幅に見直す背景には高齢化がある。被相続人が亡くなった後も、配偶者はかつてより長く老後を過ごすようになってきた。夫が亡くなった後でも、妻が住み慣れた自宅で過ごせるようにする。増加傾向の相続関連のもめごとを減らすことも求められている。
審議会は2月に改正要綱を答申し、政府はそれをもとに民法改正案を3月13日に閣議決定した。いまの通常国会で成立させたい考えだ。ルールが一般に適用される施行時期は「調整が必要な点もある」(法務省)として未定だが、改正案が成立すれば年内に施行されるとの見方もある。
では、具体的なポイントを見ていこう。
今回の改正では、配偶者居住権が新たに設けられる。住宅の資産の権利を「所有権」と「居住権」に分けるもので、配偶者が居住権を選択すれば、所有権が別の相続人や第三者に渡っても亡くなるまで住み続けられる。
居住権の金額は配偶者の年齢の平均余命などから算出され、高齢になるほど安くなる。所有権より少ない額になり、配偶者が遺産分割のために自宅を売らなくてもいいようになる。
例えば、被相続人の男性の資産が自宅(家と土地の評価額3千万円)、預貯金2千万円の計5千万円だったとしよう。相続人は被相続人と同居していた妻と、別の場所に住んでいた長男の2人。法定相続分どおりに相続するなら、妻と長男が全体の半分の2500万円ずつ分け合うことになる。妻が自宅の所有権を夫から引き継ぐには、家と土地の評価額3千万円と法定相続分との差額500万円を長男に支払う必要がある。
通常なら長男が母親に「お金はいいから今までどおり暮らして」と言ってくれるだろう。しかし長男にお金がすぐに欲しい事情などがあれば、差額の支払いを求められる可能性がある。妻に手持ちの現金が少ないと、自宅を売ってお金を用意しなければいけない。
新制度で居住権が認められれば、所有権は長男に譲って住み続けられる。自宅の評価額は3千万円だとしても、居住権の金額は1千万円といった少ない額になるため、その分現金を多く相続できる。老後の生活費を確保できるため、不安は減りそうだ。
つまり遺産に占める不動産の評価額が大きいのに預貯金が少なく、配偶者の手持ちの現金も少ない場合、所有権ではなく居住権を選んだほうがいいケースがある。
ただし、居住権は必ずしもいいことばかりではない。相続支援業「夢相続」の曽根恵子代表はこう指摘する。
「多くの場合、残された配偶者には住み替えを勧めることになります」
自宅は配偶者が一人で住むには広すぎるかもしれず、掃除や管理も大変だ。年を取って体が動かなくなってきた時に、「やっぱり売って、もっと手狭なところに移ろう」と思っても、居住権だけで所有権を持っていなければ自由に移ることもできない。どのくらい長生きするかなど、先々のことをよく考えて、居住権と所有権のどちらを選ぶのか家族と話して決めておくべきだ。
「住み続けてきた家に思い出や愛着があるのはわかります。でも、管理の行き届いた高齢者向けの共同住宅など、より快適に住むことができる選択肢があることも踏まえておくべきです」(曽根氏)
(本誌取材班)
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