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貧困は誰のせい? 貧困が生まれる2つの理由
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180322-00000078-sasahi-life
AERA dot. 3/31(土) 16:00配信
(写真:AERA dot.)
世界のお金持ちが増えても、貧しい人は貧しいまま。このまま格差が広がると、世界はどうなるの? 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、明治学院大学大学院教授の菅正広さん監修の解説を紹介しよう。
■貧困は誰のせい?
世界銀行によると、1日あたりの生活費が1.9ドル(約210円)未満という貧困状態(絶対的貧困)の人々は、世界で約8億人(2013年時点)もいるという。こうした人々へ支援の手を差し伸べることは緊急の課題だ。一方、先進国でもその国の平均的な水準に比べて所得が著しく低いという貧困(相対的貧困)が存在することを知っているかな? もちろん、日本も例外ではない。
貧困は世界のどこにいても、いくつかの要因が重なれば誰にでも起こりうる。それなのに「貧しい人は努力が足りない」「能力がない」「運が悪かった」など、個人の問題として考えられてしまいがちだ。でも社会の構造に問題がある以上、個人の問題ではなく社会の問題として考えなければ、ますます格差は広がっていく一方だろう。
【キーワード:絶対的貧困】
栄養不良や高い乳児死亡率など、人間として最低限度の生活を営むことができない貧困状態。最貧国と呼ばれるアフリカ・南アジア地域に多い。
【キーワード:相対的貧困】
国民を所得順に並べたとき、真ん中の順位の人の50%以下の所得しかない状態。日本やアメリカなど先進国にも多く存在している。
■お金持ちに都合のいい社会のルール
今、世界のほとんどの国の経済は自由市場というしくみで動いている。個人や企業などがそれぞれのもうけを最大限に追求し、自由に競争し合うことで世界全体の富が増えれば、貧しい人まで恩恵が行き渡るという考え方だ。でも実際にはそうはなっていない。社会のルールづくりは一部のお金持ちが影響力を行使することが多く、彼らにとって都合のよいルールは、なかなか変えることができない。
一部の経済学者は「今の経済理論を見直す必要がある」と強く指摘している。でも、そのしくみに変わるものが何か、まだ明確な答えが見つかっていないんだ。
特に格差が広がるアメリカでは、2011年以降、「ウォール街(金融街)を占拠せよ」という抗議デモが起きている。一般市民が「私たちは99%」と主張し、富を独占する1%に対する不満が爆発している。日本をはじめ、世界の国々はアメリカと同じ制度を取り入れているので、格差の拡大は世界中に広がっていくだろう。
【キーワード:自由市場】
自由な意志や行動から生じる経済活動の利点を主張する「自由主義」に基づいた経済活動。政府による介入や規制をなるべく排除して自由に行われる。
■貧困が生まれる主な理由
(1)想定外のアクシデント
貧困は世界のどこにいても、病気やケガ、事故、失業、離婚などの要因によって誰にでも起こりうる。周りに家族や友人、コミュニティーなどの支えがないと立ち直ることが難しく、社会的に孤立して貧困に陥ってしまう人も多くいる。
(2)世代間の連鎖
貧困は次の世代に連鎖する。例えば日本においては、中学校・高校卒業者の約半数が非正規雇用で、正規雇用の3分の1の給料しかもらえない。年収が低いと子どもの教育にもお金をかけづらい。このように、いったん陥るとなかなか自分の力だけでは抜け出すことができないのが貧困の現状だ。
【キーワード:非正規雇用】
派遣会社と契約して派遣先の会社で仕事をする派遣社員、時間と期間を決めて、時間単位で賃金をもらうパートタイマーやアルバイトなど。今、日本で働く3人に1人が非正規雇用だ。
■貧困を放っておくとどうなるの?
他人の貧困は自分と関係ないと思っていても、貧困が広がることで社会にはさまざまな悪影響が出る。
例えば下のような要因で社会が不安定化すると、経済の生産性が低下し、それを補うための公的負担、個人の税金も増える。社会への不満をためた人によるテロの影響を受けるかもしれない。つまり、一生貧困とは無縁という人にとっても、何かしらの影響があるんだ。
■日本にも貧困はあるの? 国民の6人に1人が貧困
日本は世界でも豊かな国の一つ。貧困なんて存在しないと考える人も多い。しかしOECD(経済協力開発機構)によると、日本は先進国のうち、アメリカに次いで2番目に全体の相対的貧困率が高い国だ。
国民の6人に1人、約2千万人が貧困ライン以下で生活しているといわれ、特に一人親(その多くはシングルマザー)の世帯の過半数が貧困という状態が長く続いている。このような国は先進国のなかでも日本以外にないという。
【キーワード:OECD(経済協力開発機構)】
先進国が加盟する国際機関で、現在の加盟国数は35。経済・生活水準の向上や、発展途上国への支援、世界貿易の拡大などが目的となっている。
■生活保護費の引き下げで貧しい人がますます苦しく!
貧しい人のための社会保障制度に生活保護がある。日本では高齢化に伴って、生活保護費の受給額は年々増えているが、生活保護制度の捕捉率(生活保護を受ける資格がある人のうち、利用している人の割合)は2〜3割といわれ、これは世界の国々と比べてもとても低い。
そんななか、政府はさらに2018年度から生活保護費の引き下げを決めた。都市部の一人暮らし、子どもが多い家庭の引き下げ率が大きくなるといわれ、問題になっている。
【キーワード:生活保護】
日本国憲法第25条に書かれた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するため、生活困窮者を助ける制度。社会保障費でまかなわれている。
【メモ】
2015年9月の国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせること」を重要課題として掲げています。
※月刊ジュニアエラ 2018年3月号より
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