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安倍政権、森友問題の混乱に紛れ「こっそり増税」決定…十分な審議せず「闇討ち」
http://biz-journal.jp/2018/03/post_22799.html
2018.03.28 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
安倍首相(AFP/アフロ)
2015年10月1日付当サイト記事『安倍政権、また新たな税導入を画策 国民に二重課税の恐れ』で、森林や里地里山などの自然環境を維持・回復するための「森林環境税(仮称)」創設を、環境省や林野庁が検討していると報じた。
03年に高知県が初めて森林環境税を創設、その後は各県が導入し、15年度当時でも35県で同様の目的税が導入されていた。さらに、市町村ベースでは09年に神奈川県横浜市が緑の保全・創造を行うための財源として「横浜みどり税」を導入していた。
各県の森林環境税は、県民税の超過課税である。超過課税とは、地方税法上で定められている標準税率を超える税率を条例で定めて課税する方式で、簡単にいえば、県民税に森林環境税が上乗せされたかたちのものだ。しかし県民税は使途が特定される目的税ではなく普通税のため、当時から「森林環境税が、本来の目的外の用途に使われるのではないか」という問題が指摘されていた。そこに環境省や林野庁がほぼ同様の目的の「森林環境税(仮称)」を創設しようとしており、二重課税になる恐れがあった。
そして昨年末、ほとんど報道されていないが、18年度農林水産省(林野庁)税制改正大綱に「森林環境税(仮称)」と「森林環境譲与税(仮称)」の創設が決まった。立ち消えになったと思われた森林環境税は、水面下で静かに潜行し、ついに日の目を見た。
■森林環境税の「理屈」
新たに創設される森林環境税は、森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)からなる。創設理由としては、次のように説明されている。
<森林整備を進めるに当たっては、所有者の経営意欲の低下や所有者不明森林の増加、境界未確定の森林の存在や担い手の不足等が大きな課題となっており、森林現場の課題に対応するため、現場に最も近い市町村が主体となって森林を集積するとともに、自然条件が悪い森林について市町村自らが管理を行う「新たな森林管理システム」を創設することを踏まえ、国民一人一人が等しく負担を分かち合って我が国の森林を支える仕組みとして創設される>
まったくもって、何が何やらよくわからない理屈だ。森林環境税(仮称)は、個人住民税の均等割の納税者から、国税として1人年額1000円を上乗せして市町村が徴収する。税収については、市町村から国の交付税及び譲与税特別会計に入る。個人住民税均等割の納税義務者が全国で約6000万人いるので、税の規模は約600億円となる。時期については、東日本大震災の住民税均等割の税率引き上げが23年まで行われていること等を踏まえ、24年から課税される。
一方、森林環境譲与税(仮称)は、国にいったん集められた税の全額を、間伐などを実施する市町村やそれを支援する都道府県に客観的な基準で譲与(配分)する。森林現場の課題に早期に対応する観点から「新たな森林管理システム」の施行と合わせ、課税に先行して、19年度から開始される。
譲与税を先行するにあたって、その原資は交付税及び譲与税特別会計における借入により対応することとし、譲与額を徐々に増加するように設定しつつ、借入金は後年度の森林環境税(仮称)の税収の一部をもって償還する。譲与額を段階的に増加させるのは、主体となる市町村の体制の整備や、所有者の意向確認等に一定の時間を要すると考えられることによるもので、19年度は200億円から開始することとなっている。従って、税の徴収は24年度からだが、その税を使った事業は19年度からスタートするということだ。
■二重課税の恐れも
さて、冒頭の15年掲載記事で、森林環境税について以下の問題点を指摘した。
(1)都市部の住民は森林整備による受益についての実感が薄い
(2)林業など特定の業種に対する補助金のような性質を持ち、特定の業種だけにメリットがあるのではないか
(3)すでに地方自治体が導入している森林環境税との棲み分けや区分をどうするのか。二重課税になるのではないか
今回の森林環境税導入にあたっては、地球温暖化防止や災害防止等を図るための地方の安定的な財源であり、全国の市町村等の住民がこれを有効に活用することにより、各地域において、これまで手入れができていなかった森林の整備が進むと考えられる。また、森林があまりない都市部の市町村においても、森林整備を支える木材利用等の取り組みを進め、たとえば山間部の市町村における水源の森づくりを共同で行ったり、都市部の住民が参加して植林・育林活動を実施したりといった、新たな都市・山村連携の取り組みも各地で生まれることを国は期待している。
森林環境税により、森林整備に地域の安定的な財源が確保されることは、さまざまな森林の公益的機能の発揮を通じて地域住民や国民全体の安全・安心の確保につながるとともに、地域の安定的な雇用の創出など、地域活性化にも大きく寄与するとされる。
前出の問題点(1)については、都市部住民の受益は、森づくりに参加することや材木利用等に取り組むことなどによって得られるとし、(2)については林業だけではなく、地域の安定的な雇用の創出など、地域活性化にも大きく寄与するとしている。また、(3)の二重課税についての言及はない。
国民が無関心とはいえ、わずか年間1000円の増税だとしても、国会が森友問題で揺れるなかで十分に審議されることもなく増税が決まり、そのことに対して周知も行われないまま、新たな税がスタートするのは “闇討ち”のようなものではないか。国民のどれぐらいが、新税の存在を知っているのだろうか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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