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日銀の超緩和策は住宅ローンに例えると危うさがよくわかる
http://diamond.jp/articles/-/164829
2018.3.29 加藤 出:東短リサーチ代表取締役社長 ダイヤモンド・オンライン
国会で答弁する日本銀行の黒田東彦総裁(右)と安倍晋三首相。政府は日銀の金融緩和策に甘えず、財政健全化を進める必要がある Photo:JIJI
政府と日本銀行を合体させた「統合政府」で考えれば、日銀が国債を買い続ければ、政府の借金は“帳消し”になる。それ故、財政再建を進める必要はないのだ、という妄言を時折耳にする。
残念ながらそういった夢のような「打ち出の小づち」は存在しない。もしそれが本当に有用なら、世界中の政府と中央銀行が既にそれをスタンダードな政策として採用しているはずだ。しかし、そうはなっていない。その手が使えないからこそ、米国では政府債務上限に起因する政府機関閉鎖などの混乱が度々生じている。
あらためてこの問題のポイントを以下に整理してみる。
日銀が超金融緩和策を開始する前の2013年2月と今年2月を比較してみよう。5年間の大規模国債買いオペレーションによって、日銀が保有する長期国債は93兆円から430兆円に増えた(プラス337兆円)。
国債買いオペに応じた金融機関が日銀に国債を売却すると、代金はそれぞれの日銀当座預金口座に振り込まれる。つまり、日銀が市中から国債を買うと、日銀当座預金残高が増加する。同残高は13年2月時点で44兆円だったが、今年2月には367兆円に達した(プラス323兆円)。日銀は、民間が持っていた長期国債を日銀当座預金に交換してきたといえる。
ここで、政府と日銀のバランスシート(貸借対照表)を合体させた「統合政府」を考えてみよう。
長期国債は「統合政府」の民間に対する長期の借金だ。一方で、日銀当座預金は「統合政府」の民間に対する超短期の借金である。期間1日の金利が毎日ロールオーバー(借り換え)されていく。
つまり、この5年間の日銀による大規模な国債購入策によって、「統合政府」の借金は減ったのではなく、借金の期間が大幅に短期化したにすぎないことが見えてくる。仮に日銀当座預金を期間1日の超短期国債と見なしてみれば、「統合政府」はこの5年で三百数十兆円の長期国債を超短期国債に変換したことになる。
これは金利上昇局面に極めて脆弱な資金調達期間の構成といえる。通常人々は、住宅ローンを借りるときに長期固定金利にしようか、短期変動金利にしようか悩むだろう。目先の返済額を考えれば、短期変動金利の方が得だが、将来もしも急激な金利上昇が起きたら、返済が困難になるのではないかと心配する人は多い。
しかし、われらが「統合政府」はそういった心配を全く抱いていない。経済規模対比で世界最大級の借金王でありながら、今日も日銀は長期国債を日銀当座預金にせっせと交換しては、借金の短期化を進めている。
懸念されるのは、財政の信認悪化などによって「悪い円安」が現実化したときだ。自国通貨の暴落を食い止める際、政府・中央銀行はまず外貨売り・自国通貨買い介入を実施する。それでも止まらない(または外貨が底を突いた)ときは、市中の短期金利を大幅に引き上げる。実際、ロシアやインドで近年そうした実例が見られた。
仮に日銀当座預金が500兆円以上ある中で、それへの付利金利を10%へ引き上げたら、「統合政府」の利払いは1年で約50兆円増加する。それによる赤字を埋めるために国債を増発したとすると、財政破綻懸念はますます高まってしまう。
債務の短期化は危うさをはらんでいる。それ故に政府は、財政の信認を維持する努力を示していく必要があるといえる。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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