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確定申告を頼んだ国税庁OB税理士が脱税!税務署から重加算税の命令
http://biz-journal.jp/2018/03/post_22803.html
2018.03.29 文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人 Business Journal
元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな士業は「弁護士」です。
「重加算税」というものがあります。税務調査によって、仮装か隠ぺいがあった場合に、本来払うべき税金が増える罰則みたいなものです。重加算税については、国税通則法で定められています。
「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、納税申告書を提出していたときは(中略)重加算税を課する」
つまり、「納税者が仮装・隠ぺいしたら、重加算税がかかりますよ」と言っているのです。さて、この「納税者」には、どこまで含まれるでしょう。判例では、納税者の家族や従業員が勝手に不正を行って所得を圧縮した場合でも、納税者本人が不正を行ったものとみなされて重加算税を賦課されています。
では、確定申告を依頼した税理士が、納税者の無知を利用して確定申告をせず、納税者が預けた所得税の支払いのためのお金を着服した場合はどうなるでしょうか。
■税理士の不正
ある年、東京都内に住むAさんは、所有する土地を売却して利益を得ました。自分で確定申告をするのは困難であると判断し、知人から紹介されたB税理士に相談しました。B税理士はAさんから話を聞きメモを作成。これをAさんに見せて、「本来は2310万円の納税となるところ、自分ならば1800万円にすることができる」と説明しました。
B税理士が作成したメモには、Aさんが実際には支払っておらず、かつ支払ったと言ってもいない土地の買主の紹介料356万円と草刈費用600万円が経費として記載されていました。いわゆる「架空経費」です。
後日、Aさんは、税理士報酬5万円と納税資金1800万円をB税理士に渡して申告を依頼しました。
しかし、B税理士はAさんの土地の売却益を記載せずに確定申告をし、1800 万円を自分の懐に入れてしまいました。通常の方法とは異なり、かつ査察部が調査したわけではないようですが、これは脱税行為です。その後、B税理士の脱税行為は表沙汰になり、しっかりものの大学教授であるAさんは、ちゃんと所得税の修正申告を行いました。
実は、B税理士は国税局のOBで、長年にわたり後輩職員Cと共謀し、関係書類を破棄し、依頼人から預かったお金を着服する脱税行為を行っていました。具体的には、依頼人の住所を後輩職員Cの在籍する税務署に転居した旨の虚偽の届け出を提出し、Cの税務署に送付された依頼人に関する資料を、Cに破棄させていました。現職員とOBが通謀して税務調査の情報を漏らすことは散見されますが、このように書類を破棄するのはかなり珍しい事件です。
Aさんは速やかに修正申告書を提出しましたが、税務署が重加算税を賦課決定したため、裁判で争われることになりました。
控訴審では、Aさんは800万円も税金が減少して得をすると説明を受け、メモで架空経費を示され、そのあとにBを紹介してくれた知人にBの税理士資格について確認したことから、Bが違法な手段を用いると想像していたと考えられると判断されました。
しかし、税理士は国が資格を付与し、税法に違反する行為を法律で禁止されている。そのため、納税者は確定申告の煩わしさから解放されると共に、法律に違反しない方法と範囲で節税をすることを期待して税理士に委任するのであり、脱税まで意図していない。
さらに、B税理士による説明は、専門的知識に対する信頼の高さを逆手にとり、Aさんを騙す手段として、「自分に委任すると利益がある」ことを誇張したのが明らかです。25年の長期にわたって悪質な方法による脱税を実行してきたB税理士の真実の姿をAさんは知らず、税務署勤務の経験を有し、資格のある税理士によるものである以上、委任したからといって脱税を意図して行動したと認めることはできない。したがって、重加算税の条件には該当しないといった判決が下り、Aさん側の勝訴となりました。
しかし上告され、最高裁では、AさんはB税理士が架空経費の計上という違法な手段で納税額を減少させようとしていることを知っており、B税理士が不正することをわかっていたと判断されました。そして、AさんとB税理士との間に事実を隠ぺい又は仮装することについて意思の連絡があったと認められるのであれば、重加算税賦課の条件を満たすとして高裁に差し戻されました。
再度高裁で争われた結果、「AさんとB税理士との間に意思の連絡があったということはできない。また、B税理士による隠ぺいは、Aさんに故意または過失があるとはいえず、重加算税賦課決定処分をすることはできない」と判断されました。
つまり、税理士が恣意的に行った脱税行為と横領が、納税者の責任になるかはとてつもなくデリケートな問題で、たくさん話し合われた結果、納税者に責任はないと判断されたのです。しかし、納税者の責任として重加算税を賦課されていた可能性もあったのです。税理士選びは慎重に行い、あやしいと思ったら依頼を取りやめることも重要です。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)
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