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男性は意外と格差なし? 日本の「生涯賃金」を比較
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180323-00000023-sasahi-soci
AERA dot. 3/27(火) 7:00配信 ※週刊朝日 2018年3月30日号
我々の生涯賃金はあがるのか。写真は昨年の春闘の様子 (c)朝日新聞社
大卒者の生涯賃金(週刊朝日 2018年3月30日号より)
学歴別にみた生涯賃金の推移(1997年を100とした指数)(週刊朝日 2018年3月30日号より)
男性大卒者の職種別生涯賃金ランキング(週刊朝日 2018年3月30日号より)
女性大卒者の職種別生涯賃金ランキング(週刊朝日 2018年3月30日号より)
男性大卒者の昇進モデル別生涯賃金(週刊朝日 2018年3月30日号より)
春闘に加えて、学生の就活が本格化している。春は何かと「賃金」が気になる季節だ。今年の春闘は「3%」が焦点だが、毎月の給料や賞与を積み上げた「生涯賃金」は今、どのくらいのレベルなのだろうか。国の賃金調査から主要業種のそれを推計すると、大卒男性は「2億〜5億円弱」の「目安」数字が出てきた。どの業種が高いのか、業種間の格差をどう見るのか?
3月は、2019年に卒業予定の学生が就職活動を本格的に始める時期だ。元銀行エコノミストで久留米大学商学部の塚崎公義教授は、学生への就活指導でよく「生涯賃金」を話題にするという。
「就活が始まったら、半年間はアルバイトを自粛し、就活に専念するように指導しています。『先生、半年あれば50万円稼げるのに……』と不満をもらす学生もいるのですが、そんなときに『入る企業によっては、生涯賃金が数千万円違ってくることがあるんだぞ。今の50万円と、どちらが大事なんだ。だから就活はサボるな』と言っています」
確かに、企業によって月給、ひいては生涯賃金は丸っきり違う。思えば日本が元気なころは、生涯賃金でも景気のいい数字を聞いたものだ。
「超一流企業だと軽く5億円は超える」「視聴率ナンバーワンのテレビ局はもっと上だ」……
バブルがはじけ、「失われた20年」と言われるほどの長期停滞が続き、日本型経済の大きな特徴だった年功序列的賃金も、かなりの痛手を受けたとされる。
いつの世も、人の懐具合は気になるものだ。ましてや、身近に就活をしている子供や孫がいたりすれば、なおさらだろう。
しかし、残念ながら日本企業の生涯賃金を調べる統計は存在しない。
「調査はないし、個々の企業のデータも公表されていません。でも、国の賃金調査の数字をもとにすれば、業種別に生涯賃金の推計値を割り出すことができます」
こう話すのは、コム情報センタの尾上友章所長だ。
国の賃金調査とは、厚生労働省が毎年行っている「賃金構造基本統計調査」(通称:賃金センサス)をさす。賃金センサスは、大掛かりな調査の規模と広範に及ぶ調査内容、年に1回という頻度の点で、世界に類を見ない充実した賃金調査とされる。
尾上所長は、そんな賃金データの「宝の山」と30年以上、関わり続けている。毎年、結果をもとにさまざまな分析を行い、データは労働組合の「親玉」である「連合」に提供されている。
「賃金センサスでやっかいなのは、詳しい業種別では『30〜34歳』『35〜39歳』といったように、5歳5年階層キザミの金額しか発表されていないところにあります。私は、回帰分析という独自の手法を使って、そのデータから1歳1年キザミの賃金を推計し、業種ごとに『賃金カーブ』を作っています」
賃金カーブとは、縦軸に賃金を、横軸に年齢を取って作ったグラフのこと。
生涯賃金は、すべて賃金センサスの数字を使って、次のようにして割り出した。賃金カーブから、すべての「月例の所定内賃金」を足し合わせて「生涯所定内賃金」(【1】)を求める。年間賞与も、同じく生涯にわたって足し合わせて「生涯賞与」(【2】)を出し、残業代にあたる超過勤務手当も同様にして「生涯超勤手当」(【3】)を求める。【1】と【2】と【3】を足せば、生涯賃金の推計値が出るわけだ。
主要40業種の大卒の男性・女性それぞれについて、推計値を出してもらった。いわば、これこそ「日本の生涯賃金」の全貌ともいえるものだ。尾上所長にデータ解説を、『一番わかりやすい日本経済入門』の著書もある、先の久留米大学の塚崎教授に適宜、解説をお願いした。
まずは全体状況である。
全産業の平均値だが、平均生涯賃金は男性「約2億9400万円」、女性「約2億4400万円」だった。
企業規模別では、男女とも規模が大きくなるほど、生涯賃金も高くなっている。男性で見ると、1千人以上の大企業は「約3億2800万円」。10〜99人規模の小企業の「約2億2300万円」と比べると、1.5倍弱だ。同じく女性は約1.3倍。塚崎教授が言う。
「思っていたより差が小さくて、ビックリしました。一流大企業と中小零細企業との間では、ものすごく違うイメージがありますが、実際は5割も違わないのですから」
さまざまな業種があり、働く人の構成割合も多い「製造業」と「小売業」については、全体状況を見るため産業計と同様の平均データを出してもらった。男女とも製造業は産業計より全体平均で高い数字が出ているが、これは1千人以上規模の高い数値が水準を引き上げているようだ。また、小売業は男女とも産業計を大きく下回っている。
尾上所長によると、過去30年の生涯賃金を見ると、三つの期間に分けられるという。
「1997年までは一貫して賃金が上がった上昇期です。賃金カーブで見ると、全年齢で水準が上昇していました。金融危機が起きた97年をピークに水準は下降し始めます。2013年まで16年間、下降が続き、その後のアベノミクスで反転上昇し、今に至っています」
賃金カーブで見ると、97年以降は30歳以降の中堅以上で水準の低下が目立ち、05年以降は50歳代の後半で賃金が低下する傾向が顕著になっているという。
97年からの生涯賃金の下降の推移(男性)を指数化した。97年を100とすると、大卒男性で最大で8ポイント程度、高卒男性で10ポイント弱下降したことがあった(最新の数字は大卒「94.2」、高卒「91.7」)。もっとも、この下降度合いについては、「高卒の下降度合いが大卒に比べて大きかった」とする尾上所長と、「この程度なら気にするほどの差ではない」とする塚崎教授で見方が分かれた。
さて、いよいよ主要40業種別男女大卒者の生涯賃金の比較である。
男性トップは「航空運輸業」の「約4億8900万円」。これに、「各種商品卸売業(商社)」の「約4億7500万円」と、「金融商品・商品先物取引業(証券会社)」の「約4億4700万円」の二つが続いた。尾上所長が言う。
「航空運輸業はパイロットが全体を押し上げているとみられ、特殊なケースと言えるでしょう。商社と証券会社は、毎年のようにトップを争っています」
女性のトップ3は、「放送業約3億7200万円」、「輸送用機械器具製造業(自動車)約3億2600万円」、「各種商品卸売業約3億2千万円」。
一方、下位グループには、男女とも「小売業関連」の業種や「印刷・同関連業」「道路旅客運送業」などが並び、超高齢社会を支える「社会保健・社会福祉・介護事業」は男性ではワースト3の一角を占めた。このクラスの生涯賃金は、男性では「2億1千万〜2億2千万円」台で、女性は「2億円未満」だ。
そのほかはご覧のとおりだが、「3億円以上」が男性19・女性5業種、「2億5千万円以上〜3億円未満」が男性12・女性9業種、「2億円以上〜2億5千万円未満」が男性9・女性17業種、「2億円未満」が女性9業種だった。
男女ともトップと最下位では2倍以上の格差があるが、意外にも塚崎教授はここでも、業種ごとの差も思っていたほど大きくなかった、とする。
「男性で言うと、トップグループ、例えば生涯賃金3億5千万円以上の業界は、就業者数も少なそうなので『例外』として、その業種を除いて考えましょう。それらを除いて普通のサラリーマンについて見ると、規模別のところでやったように最上位は最下位の約1.7倍とやはり2倍以下におさまります。これが何を意味するか。たとえ下位の業種で働いていても、夫婦共働きなら、2人の賃金を足すと男女の賃金格差を考慮に入れても、上位業種のサラリーマンと同等か高くなるんです。つまり、上位業種でも専業主婦を養っていると、下位業種の共稼ぎ夫婦より所得が少なくなる可能性さえあるわけです」
塚崎教授がトップグループの業種を「例外」としたことは、業種内での個々のデータのばらつき度合いを示す「賃金分布」を見てもわかる。「航空運輸業」や「各種商品卸売業」「金融商品・商品先物取引業」「保険業」など男性の上位グループで、ばらつき度合いが軒並み極端に大きくなっているのだ。要するに、一握りのものすごい高給の人たちが、上位グループの「平均」を押し上げている可能性がある。
尾上所長もこう言う。
「賃金分布には、業種内での企業同士の格差と、個々の企業内の格差の両方が合わさって示されています。特に男性の場合でばらつきが大きい業種が上位にあり、それらについては気を付けてみてほしい」
ばらつき度合いとあわせて、賃金センサスによる生涯賃金の推計では、もう一つ注意しておくべきことがある。この推計値は、その年の賃金カーブが生涯続くものとして計算されている点だ。過去、あまたの例があるが、各産業は常にさまざまな環境変化にさらされている。賃金カーブを上下させるような構造変化が起きた場合は、この推計値では対応できない。
とはいえ、ほかに生涯賃金を知る術がない以上、推計値は一つの目安にはなるだろう。
例えば、最近のサラリーマンは出世志向が低いといわれるが、生涯賃金の推計値を使えば、それを裏付けるかのようなデータも得られるのだ。
大卒男性の昇進モデル別の生涯賃金を比較した(業種は問わず、100人以上の規模に限定)。
それによると、「30歳で係長、40歳で課長、50歳で部長に昇進」という部長モデルの生涯賃金は「約3億2200万円」、「30歳で係長、40歳で課長」で昇進が止まる課長モデルなら「約2億9800万円」、「役職昇進なし」のモデルは「約2億7400万円」となった。部長まで昇進しても、昇進なしの人より1.17倍しか生涯賃金は高くない。責任の重さに比べると、部長モデルの生涯賃金は魅力的とはいえず、これでは出世志向が低くなるのも、むべなるかな、だ。
一連の数字を眺めながら、塚崎教授がしみじみと言う。
「『正社員』という地位を手に入れていれば、そんなに悲惨なことにはならないということを、改めて感じました。サラリーマンはローリスク・ローリターンの人生。大金持ちにはなれないけれど、大貧乏になることもありませんから」
確かに、そうだ。就活に失敗し、「非正規」の生活を送るケースと比べると、よくわかる。時給千円で1日8時間月25日働くとすると、月収は20万円。仮にこの生活を40年間続けると、生涯賃金は9600万円。今回の調査での男性の最下位業種の半分以下だ。
さらに塚崎教授は、「こんな見方もできますよ」と次のように言う。
「60歳までの生涯賃金は減りましたが、今は60歳以降も働き続けることができます。65歳までは大半の人が再雇用で働くし、人によっては65歳超も働くケースがあるでしょう。60歳超の収入を足すと、『時給が下がった分だけ生涯のうちで働く期間は長くなったが、トータルの生涯賃金は昔と変わらない』といったケースが多くなるのではないでしょうか」
なるほど、これぞポジティブ思考。業種間の格差を嘆くより、トータルの収入では同程度であることの有り難みをかみしめよ、ということか。(本誌・首藤由之)
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