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ビールはどこで買うのが得か、スーパー?ドラッグ?酒販店?
http://diamond.jp/articles/-/164730
2018.3.27 松崎のり子:消費経済ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
お花見に欠かせないビール。みなさんはどこで買う?(写真はイメージです)
桜の便りが日本列島を北上している。お花見シーズンの到来だ。花見といえば、桜の下でビール片手に「乾杯!」と行きたいところだが、残念ながらビール業界にはまだ冷たい北風が吹いている。「ビール離れ」と言われて久しいが、その動きには歯止めがかかっていないようだ。
ビール各社が発表した2017年のビール系飲料(ビール・発泡酒・第三のビール[新ジャンル])の総出荷量は4億407万ケース(前年比2.6%減)で、13年連続の減少となったという。内訳を見ると、ビールは2億459万ケース(前年比2.9%減)、発泡酒は5499万ケース(同4.0%減)、第三のビールは1億4449万ケース(同1.5%減)と、すべてのジャンルで前年度割れ。2014年6月以降のいわゆる安売り規制強化の影響で、小売価格が上昇したことも追い打ちをかけた格好になったと言えるだろう。
さらに、アサヒが2018年3月1日出荷分から業務用ビールの値上げに踏み切る動きを受け、サントリーやキリン、サッポロ各社も同ビールの値上げを4月1日出荷分から決めた。運送にかかる人件費の高騰も大きいというが、今後は居酒屋での注文にも緊張を強いられそうだ。季節に逆行して、ビール党には氷河期が訪れつつある。
「ビールがないなら缶チューハイを飲めばいいじゃない」と、マリー・アントワネットの逸話風に開き直ってもいいのだが、乾杯くらいはやはりビールでしたい。お花見に歓送迎会とビールのお世話になるシーズンだからこそ、できれば安く買いたいものだ。私たちが安くビールを買おうと思った時、どこで買うのが最安値なのか、草の根検証をしてみた。
ビール需要が高まる
時期は値段が上がるのか?
まず花見にビールを持ち寄ると想定した時、集まる人数にもよるが、6缶パックを何種類か買うと想定した。そのうえで、どこで買うのが安いのか業態別に値段の比較をしてみようと考えたのだが、その前にふと頭に浮かんだことがある。
「需要と供給の法則」から考えると、「ビールがよく売れる時期はあえて値段を下げる必要はないのではないか」という点だ。実際に、ビールが売れると思われる時期の販売価格は高めなのか、安めなのか。まず、そこから調べてみようと思った。
消費者が実際に買う価格ということで、手元にあった2017年のスーパー3社の折り込みチラシから、「3月のお花見シーズン」「8月のお盆時期」「12月のクリスマス前」「年末のお正月準備時期」の4つを比較。なお、銘柄は「アサヒ スーパードライ」350mL、500mLの各6缶パックをサンプルとした。
まず、安売り規制開始前の3月だが、改めて見ても安い。350mLの6缶パックは最安値で998円と1000円を切っている。1缶当たりに直すと166円と発泡酒並みだ。なお、最高値は1028円。500mLの6缶パックは1380円〜1388円だった。
それが8月になるとずいぶん値段が上がっている。350mLのパックが1088〜1138円、500mLが1468〜1488円。100円前後上がっているのだ。
これが12月中旬になるとどうだろう。クリスマス前の価格は350mLが1078〜1138円、500mLが1459〜1498円。8月より下がっている。
さらに年末になると若干変わる。350mLが1058〜1128円、500mLが1459〜1498円で、350mLはさらに下がった。
最安値を1缶当たりの価格に直して比較すると、350mLの場合、3月166円、8月181円、12月中旬180円、12月年末176円となる。3月の数字は安売り規制前の価格なので単純比較はできないが、やはり同じかき入れ時でも8月のほうが高めとなっている。
ビール需要が高まる夏は、やはり値引き幅も少ないということか。それとも、年末には安売り規制ショックが和らいで価格がこなれてきたのだということだろうか。後者の理由で価格が落ち着いてきたとしたら消費者にとってはありがたい傾向なのだが、そうとも言い切れないことが後々わかることになる。
コンビニ、スーパー、ドラッグストア、
ディスカウント酒屋で比較
2018年のビール価格に話を戻そう。今回比較した銘柄は3種類。「アサヒ スーパードライ」「サントリー ザ・プレミアムモルツ」「サッポロ ヱビスビール」の、それぞれ350mL、500mLの各6缶パックで行った。銘柄の好みはいろいろあると思うが、筆者の経験則による選定なのでご容赦いただきたい。
販売価格は、業務用含むスーパーマーケット6店(イオン、いなげや、オオゼキ、サミット、肉のハナマサ、業務スーパー)、ドラッグストア5店(ウエルシア、サンドラッグ、ツルハドラッグ、ココカラファイン、ドラッグストアクリエイト)、それにディスカウント酒屋2社(カクヤス、やまや;いずれもネット価格)で、3月の第2〜3週の販売価格をチェックした。
すべての店に比較対象とした銘柄が揃っていない場合もあったが、値幅感を掴むためにデータをとった。各メーカーは希望小売価格を発表していないため、ベンチマークとして値引き幅が少ないコンビニ3チェーン(セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソン)で、同銘柄の1本当たりの販売価格を使って比較しようと思う(コンビニでの販売は6缶パックが少ないため)。
まず「スーパードライ」350mL 6缶パックの最安値は1038円(1缶当たり173円[*])、最高値が1180円(同197円)。500mLは最安値1398円(同233円)、最高値が1528円(255円)。コンビニの最安値は、各1缶当たりで350mLが207円、500mLが270円だった。
「ザ・プレミアムモルツ」350mL 6缶パックの最安値は1168円(同195円)、最高値は1328円(同221円)。500mLは最安値が1550円(同258円)、最高値1748円(同291円)。コンビニ価格は同じく350mLが227円、500mLが316円だった。
「ヱビスビール」350mL 6缶パックの最安値は1168円(同195円)、最高値が1280円(同213円)、500mL最安値が1520円(同253円)、最高値が1703円(同284円)。コンビニ価格は、350mLが238円、500mLが308円となった。
1缶当たりで換算すると、コンビニはやはりスーパーやドラッグストアよりも高い。しかし意外なことに、ディスカウント酒屋がそれほど安くないことに気づいた。こちらは販売単位が24缶(1箱)のため1缶当たりの価格で比較するしかないが、スーパードライ350mLなら195円で最安値より22円高い。ザ・プレミアムモルツの350mLでも208円で、やはり13円高い。
それだけではない。今回調べてみた11店×各6種類のうち、ディスカウント酒屋より単価が高い値段が出たのは8価格のみ。他の業態のほうが安く買えそうだという意外な結果になった。なお、ネットショップの価格も比較したかったのだが、24本(1箱)からでの購入となるため見送った。ネット通販の場合は1箱単位の販売にしておかないと、送料との関係もあり、さらに割高にならざるを得ないのではないかと推察する。
(*)1缶当たりの価格は1円未満四捨五入で計算。価格は税抜き
ビール価格はインフレに
向かっている気配も…
今回は、どの業種でビールを買うのが最も安いか、という比較をしたかったのだが、結果としてスーパーとドラッグストアで大きな差は見られなかった。
最も最安値のスコアが多かったのは、大手流通のイオン。横綱級のスケールメリットで押し切ったというところだろうか。なお、スーパードライは特売の目玉商品にしやすいらしく、ドラッグストア3社(ツルハドラッグ、ココカラファイン、ドラッグストアクリエイト)が、イオンを除くスーパーよりも安値がついた。特売のチラシが入って来たら、しっかり価格比較をしてから買いに行ったほうがいい。
さて、この比較をしていて、気づいたことがある。ビールの価格はやはりインフレ気味ということだ。2017年の12月と2018年の3月に、同じスーパーで「スーパードライ」の価格を比較してみたところ、こうなった(同じ販売店での比較なので、先の最安値とは異なる)。
2017年12月 350mL:188円 500mL:250円
↓
2018年 3月 350mL:194円 500mL:254円
およそ3ヵ月で、じわじわと上がっているのがわかる。3社のうち2社が、年末の価格より微増していた。運送コスト増がここでも響いているのだろうか。
厳しいビール業界だが、今後は別の動きもある。酒税法の改正に伴い、2018年4月からビールの麦芽比率は67%以上から50%以上に引き下げられるのに加え、使用できる副原料の幅が広がる。これまで認められてきた麦、コメ、トウモロコシなどに加え、果実及び香味料が追加されることになるのだ。
これを受けてビール各社は新たなフレーバーを加えた新商品の投入を予定している。将来的にはビール系飲料にかかる酒税の一本化も予定されており、ビールは減税、発泡酒・第三のビールは増税になる見通しだ。それにより、ビールだけは売価も引き下げられるのではないかと期待されている。
「とりあえずビール」の声が宴席から減りつつあるのは、ビール党には何とも寂しい流れだ。メーカーも販売者も苦労はいろいろあると思うが、美味しいビールを気兼ねなく飲める平和な1年が続いてほしいと願うばかりだ。
(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
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