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会計検査院が財務省や官邸に頭が上がらない理由
http://diamond.jp/articles/-/164719
2018.3.27 室伏謙一:室伏政策研究室代表・政策コンサルタント ダイヤモンド・オンライン
会計検査院による森友問題の検査について、財務省に配慮したと思わせる対応が批判されている。元官僚の筆者からすれば、それは当たり前のこと。会計検査院は内閣に対して“独立”の地位を有する特別な組織ではあるが、それは形式的なものであり、財務省や官邸には頭が上がらない組織なのだ(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)。
「茶番劇」と批判されても仕方がない
会計検査院の検査
国会法第105条に基づき、参議院からの検査要請を受けて行われた「学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査」において、会計検査院が決裁文書の改ざんと、改ざん前の原本の存在を知っていながら、改ざんされた文書を対象として検査を行っていたことが明らかとなった。
これでは何のための検査だったのか。
まるで財務省と示し合わせたアリバイ作りのための“出来レース”、「茶番劇ではないか」と批判されても仕方あるまい。
問題は、会計検査院がなぜそのようなことをしたのかである。それを考えていくと、会計検査院という組織の置かれた立場、制度的状況から来る、避けがたいジレンマが見えてくるように思う。
そもそも会計検査院とは、憲法第90条にその根拠を持つ機関であり、内閣に対して“独立”の地位を有している、特殊かつ特別な行政機関である。
会計検査院には担当の大臣等は置かれず、その任命に国会の同意を要する検査官3名が置かれ、うち1名が互選により院長となる。
ただし、検査官を任命するのは内閣であり、院長についても互選の上、任命するのは内閣である。この検査官の人事、かつてこのうち一人が大蔵省(当時)からの天下りポストの事実上の“指定席”になっていた。
ところが、大蔵省不祥事に端を発する霞が関バッシングの嵐が吹き荒れる中、国会同意を前に大蔵省出身の検査官候補が蹴られて、なぜか総務庁(当時)出身者(元事務次官)に棚からぼたもちのようにお鉢が回ってきたということがあり、その後2代は旧総務庁系(二人目も元事務次官)の指定席になったこともあった
会計検査院のトップ人事は
霞が関や永田町の事情に大きく左右されてきた
まさにこの人事に関連して、衆参両院での同意後の平成9年3月25日の第140回国会衆議院決算員会の参考人質疑において、参考人として出席した岸井成格・毎日新聞編集局次長(当時)は、この件について次のように述べている。
「 〜(前略)〜 会計検査官の大事(原文ママ・おそらく「人事」の打ち間違い?)については、あの当時、特に大蔵省からOBを起用するというのは、あれだけ大蔵省の問題が騒がれ、まさに監督権限の分離問題という議論の真っ最中にそういう人事任命を発令するということ自体が、ちょっと政治的には不用意だったという点が一つと、やはり基本的には、会計検査院の独立性、信頼性からいえば、官僚OBの起用は慎むべきである 〜(後略)〜 」
要するに、会計検査院のトップ人事は、霞が関や永田町の事情に大きく左右されてきたということである。
また、会計検査院の職員は独自の試験によって採用されるのではなく、国家公務員採用試験によって選抜し、採用者を決定するという、他の府省と同じ方法によっている。
つまり会計検査院の職員といっても国家公務員法が適用される一般職の国家公務員であり(幹部職への任命等に関する規定については適用除外)、給与体系も同様に給与法が適用されている。
予算についても、査定するのは財務省であり、国会及び裁判所と同様に財政法第19条に二重予算制度と呼ばれる“例外的な規定”が設けられてはいるものの、基本的には各府省と変わりない(財務省の説明よると、同条に基づくこの取り扱いの適用があったのは昭和27年度予算に関する1例のみとのこと)。
第19条 内閣は、国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、国会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。 |
ちなみにこの例外的な取り扱いがある国会及び裁判所については、各府省との人事交流はあるものの職員の身分は別であり、当然採用も国家公務員とは別の試験等によっている。こうした点を踏まえても、会計検査院については非常に“中途半端な扱い”をされていると言えるだろう。
加えて、かつて会計検査院は、検査、特に地方等での検査に当たって、いわゆる官官接待を受けていたことが大問題となり、会計検査院への風当たりが非常に強くなったことがあるようだ。
これは、筆者が官庁訪問(国家公務員採用I種試験〈当時〉後の事実上の面接)の際に実際に会計検査院の職員から聞いた話。そうしたことも会計検査院による検査における自制というか萎縮効果につながっているのかもしれない。
会計検査院は“独立”は
形式的である
以上分かりやすい事項についてツラツラと見てきたが、要するに、会計検査院は“独立”の地位を占めているといってもそれは形式的である面が多く、基本的には霞が関の各府省と同じ、「並びの存在」であって、その活動、職権の行使についてもおのずと制約というか、自制がかかってしまう傾向があると考えた方がいいようである。
分かりやすく言えば、会計検査院といえども、対財務省、対官邸ということになると慎重にならざるをえない、単刀直入に言えば、「頭が上がらない」ということだろう。
それが今回の森友問題に関する検査における不祥事につながったのではないだろうか。
実際、会計検査院の、まさに森友問題検査を担当した部局は、参院に提出した報告書には相当自信を持っていたようである。
一方で、検査の対象はあくまでも国の収入および支出であること等を盾に、必要十分な行政文書が把握できないために詳細な内容が確認できなかったことを報告書において指摘しながら、「検査をやり直す必要はない」としていたようである。
検査に必要な資料がなければそれの提出を求める、そうしなければ、検査の対象が国の収入および支出だとして、それを全うすることすることすらできないはずである。
しかし、実際には文書がないのではなく、改ざん前の文書が存在していることを認識していながら、それを検査の対象としなかったわけであるから、なんらかの自制が働かなければそうしたことは起こりえないと考えるのが自然だろう。
従って、森友問題に関しては、財務省のみならず会計検査院の検査についても国会において追求されるべき点は多々あるはずだ。
ただし、その最終的な目的は、一部で主張されているやに聞く“会計検査院解体論”といった極端なものではあるまい(会計検査院解体ということになれば憲法第90条を改正する必要があるから、もしかしたら改憲のとっかかりとすることが解体論の真の目的か?)。
会計検査院の権限適正化が望ましいが
各省庁からの強い反発が予想される
その目指すべきところはといえば、すなわち会計検査院を現状の中途半端な位置から解放し、高い倫理観を堅持しつつ、自制も萎縮もすることなくその職責を心置きなく全うできるようにすること、つまり権限の適正化(実質的には強化)であるはずだ。
その対象は、会計検査院の組織および権限を規定した会計検査院法にとどまらず、先にも触れた国家公務員法等も含まれるべきであろう。
もっとも、それは容易な話ではない。霞が関の各府省からの相当強い抵抗や反発が想定されるからである。
筆者が役人生活の最後に在籍していた総務省行政評価局、かつては行政監察局という名称であり、行政活動の適正性を保つための政策評価のみならず行政評価・監視を行い、必要に応じて各省大臣等に勧告を行うことができるのだが、あくまでも勧告であって強制力はないし、行政評価・監視の根拠が総務省設置法に規定された総務省の所掌事務であり、権限や活動に直結する根拠法がない。
そこで、その権限の強化を図ろうという動きがあったが、残念ながら各府省からのかなり強い抵抗に遭い、権限強化の話は潰されてしまった。
実際、筆者がある調査の趣旨・目的を説明するために某省を訪れた際の拒否反応は、なかなか凄まじいものがあった。
これが会計検査院ともなれば、より強い抵抗が予想されよう。やはり政治が一体となって進める必要があろう。
そのためにも森友問題に関する国会での審議においては、やみくもに財務省の責任追及一辺倒になったり、大上段に構えた官邸や安倍総理の責任追及に終始したりすることなく(これはこれで重要だが、そこに至るには議論の積み上げが必要であるわけだし)、バランス感覚を持って、徹底した課題・問題の洗い出しと整理が必要不可欠であろう。
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