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今年3〜4月の引っ越しはここまで絶望的!大手5社から見積もり拒否?20キロ先でも70万円?
http://biz-journal.jp/2018/03/post_22722.html
2018.03.21 文=山田稔/ジャーナリスト Business Journal
3月の下旬がピーク
2月以降、さまざまなメディアに「今春は引っ越し難民発生か」といった記事があふれ返っている。
首都圏だけではなく、北海道や新潟、九州などの地方紙にも同じようなニュースが掲載された。ドライバー不足で引っ越し客のニーズに応えられないというのだが、いったい、どうなっているのか。
全日本トラック協会のホームページには「分散引越にご協力をお願いします」と呼びかけるチラシが掲載され、そこには「引越ご依頼が3月中旬から下旬、4月上旬に集中」「ご希望に添えない場合もあります」として「混雑時期をはずしたご引越」の検討を要望している。チラシの引越混雑予想カレンダーを見ると、特に混雑が予想される期間は3月24日から4月8日までの16日間となっている。
会社員の転勤、学生の入学や卒業、就職が重なる時期だけに、全国どこでも混雑するのは当然だ。総務省の人口移動報告によると、2017年3月の移動者数(日本人)は、市区町村間約90万人、都道府県間移動者数約48万人、都道府県内移動者数約42万人で、3月だけで年間移動者数(489万人)の18%強となっている。
一方でトラックの運転手は全国で83万人(2016年)。平均年齢は47.5歳と高く、慢性的な人手不足状態が続いている。全日本トラック協会の「平成27年度経営分析報告書」によると、車両台数当たりの運転者人材比率は83%。つまり10台のトラックに対しドライバーは8.3人しか確保できていない状況なのだ。このため実働率も低下している。
さらに引っ越し業界から、待遇面が改善した宅配便業界へのドライバー転出問題もある。こうした状況で引っ越し依頼が集中すれば、希望日に引っ越しができない難民がどうしても出てきてしまう。
■3月下旬の引っ越し料金は「相場はないも同然!」
すでにツイッターなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)には「やったー。引っ越し決まった。でも見積もり取ったら20キロ先で70万円!」「やや混雑の日取りだと思うけれど、大手5社からは見積もりすらしてもらえず断られた」など、悲痛な声が上がっている。もっとも、引っ越しの集中とドライバー不足という状況は今に始まった話ではない。昨年のこの時期にも“難民化”の予兆はあった。
昨年3月に都内で引っ越しを行った50代の会社員が当時を振り返る。
「隣の市に引っ越すことになり、2月に大手・中堅3社の営業マンに自宅に来てもらい、見積もりを取りました。こちらとしては3月下旬が第一希望だったのですが、中旬以降はほとんど埋まっている状況でした。やむなく上旬に繰り上げたのですが、それも夕方からのトラックを確保するのが精一杯でした」
日取りを決めるのには苦労したが「見積もりのやり取りが面白かった」という。
「最初に来た業者は室内を見た後、口頭による説明だけで料金提示もほぼ料金表通りで、大した値引きはありませんでした。2社目は1社目よりやや低い数字を出してきて、最後に“今決めていただけたらこの料金で結構です”と大幅に下げてきました。3社目の大手営業マンはカタログや営業チラシを持参し、料金だけでなくスタッフの研修内容やサービス内容まで事細かに説明してくれました。この営業マンのプロ意識と引っ越し技術の高さで3社目に決めました。料金は2トンロングのトラック2台、作業員が全部で4人ついて、最初に提示した19万円が12万円で収まりました。段ボール箱やハンガーケース、シューズボックスも無料で、段ボール箱は追加分も無料。なにより、当日のスタッフの敏捷な動き、丁寧な作業には驚きました。いい体験でした」
3社との見積もりでは、こんなやり取りもあったという。
「ちなみに3月下旬の料金を聞いてみたんです。すると、“相場はないも同然ですね。通常の時期の3倍から4倍はいくかも”といった答えが返ってきました。3月上旬にして正解でした」
運よく引っ越し難民を免れても、高料金は覚悟しなければならないということか。
■ドライバー確保だけで解決する問題か
昨年の今ごろは、アマゾンをはじめとするネット通販の拡大による宅配便個数急増に伴うドライバーの過重労働や人員不足が問題化していた。
今年は舞台が引っ越し業界に移ったかたちだが、問題の本質は一緒だろう。労働環境の改善によるドライバーの定着化や高齢化解消が急務であることは言うまでもない。対策は始まっている。
昨年3月に「道路交通法の一部を改正する法律」 が施行され「準中型免許」が新設された。準中型免許は、若者がトラックドライバーになりやすいように新設された免許で、普通免許の保有を前提とせず18 歳で取得することができる。高校新卒者をはじめとする若年ドライバーの積極確保に向けた取り組みだ。
しかし、それだけでは問題の解決には程遠い。国土交通省のデータ(いずれも2016年)によると、平均年齢47.5歳のトラックドライバーの労働時間は月217時間、年間所得は447万円となっている。女性比率はわずか2.4%。全産業平均は平均年齢42.2歳、労働時間177時間、年間所得490万円、女性比率43.5%。こうしてみるとトラック業界は、中高年層の男性に依存した状態で、長時間労働のうえ、所得は低いといえる。この業界全体の構造を改革しなければ、根本解決にはつながらないだろう。
最近は人工知能(AI)を活用して人員の最適配置を図るなど、新たな取り組みも始まっているという。業界の構造改革とテクノロジーの活用、鉄道輸送の併用などに加え、同時期に大量の移動が行われるような社会システムも変革が必要だろう。東京一極集中の是正、人事異動時期の分散化、大学秋入学制度の導入など手を付けられるテーマはいくらでもあるはずだ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)
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