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ベネズエラの公認仮想通貨から、なにやら香ばしい匂いが漂っている件 これでまた不信に拍車がかかるぞ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54714
2018.03.11 ドクターZ 週刊現代
年率2616%のインフレ率
ベネズエラのマドゥロ大統領は、埋蔵原油を価値の裏付けとした「ペトロ」を導入し、続いて金を裏付けとした「ペトロゴールド」の発行に着手すると発表した。国家公認の仮想通貨の本格的な導入は世界初で、これをもとに外貨の獲得に努めるというが、その裏には問題が山積している。
そもそも、ベネズエラはどういう国なのか。
南米では屈指の天然資源保有量を誇り、'80年代までは石油依存が顕著だったとはいえ裕福な国であった。ところが'80年代半ば、原油価格は下落し、経済は低迷しはじめる。
時を同じくして、政府は社会主義政策を取り始める。これが経済活動を硬直化させ、国家の台所事情をより悪化させた。それからは慢性的なインフレが発生し、ここ25年間の平均インフレ率は年率30%以上である。これは国際会計基準における「ハイパーインフレ」(年率26%)と呼ばれる状況だ。
この惨状は、まるで'91年に崩壊したソ連をみているようだ。ソ連も石油輸出で経済運営をしていたが、社会主義体制のなかで石油による収入をアテにして、硬直的な歳出増を繰り返していた。ところが、'80年代中頃からの原油価格の低下で、財政事情が急速に悪化、結果的に政治体制も維持することができなくなってしまった。
経済が弱体化しているなか、本来ベネズエラに必要なのはきちんとしたインフレ目標の設定を含む金融政策だ。ところがマドゥロ大統領はどんどんマネーを刷って財政収入にあてていて、これが悪循環を生み出している。
今や、国際会計基準によるハイパーインフレではなく、国際経済学での定義による「ハイパーインフレ」(年率1万3000%)の危険性を指摘する人もいる。'17年、ベネズエラのインフレ率は年率2616%に到達した。正確な統計はないが、直近のインフレ率は月率50%、年率1万%にも近づいているという。
なにひとつメリットなし…?
国際経済学でいう「ハイパーインフレ」は、世界史上56例あるが、その半数が共産・社会主義体制の崩壊にともなって起こっている。ベネズエラも同じ道をたどる可能性は高くなってきた。
おまけにベネズエラの経済は、アメリカによる経済制裁で圧迫されている。マドゥロ政権の圧政と独裁に対する制裁で、ベネズエラ政府が新たに発行する国債や国営石油会社の債券などについて、米国民による取引を禁じているのだ。
こうした状況でベネズエラが外貨を調達するために選んだ手段が「仮想通貨の発行」なのだが、「原油担保」といってもベネズエラ政府は通貨と石油の交換を保証せず、おまけに自国通貨ボリバルでは仮想通貨「ペトロ」を購入することができない。外貨の調達を禁じられている国民は実質締め出された状況だ。
しかも国家公認の仮想通貨は、ベネズエラ国債と事実上同じなので、経済制裁に抵触するアメリカは手を出さない。なにひとつメリットのない国際通貨に投資する物好きはいるのだろうか。
近ごろ信頼性が揺らいでいる仮想通貨だが、ベネズエラの一件はそれに拍車を掛けそうだ。
『週刊現代』2018年3月17日号より
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