http://www.asyura2.com/18/hasan126/msg/349.html
Tweet |
トランプ次の経済政策は「原油戦略」だ
http://diamond.jp/articles/-/162374
2018.3.7 宿輪純一:博士(経済学) ダイヤモンド・オンライン
米トランプ大統領は、相変わらず“トランプらしい”政治を行っている。お父様がドイツ人1世のトランプの強引な政策に、鉄血宰相ビスマルクの力強さがだぶるのは私だけだろうか。彼が次にやろうとしているのは、米国の原油の“産出”と“輸出”の増加による国力アップだ。ビスマルクに倣えば、“石”血政策ともいえるものである。以下にその6つのポイントを整理してみよう。
1.産出量の拡大
米国の原油産出量は、かつては世界一であった。その後、油田の産出量が減り始め、中東を始め他国の産出量が増加し始めて逆転されている。現在、原油価格の世界指標となっている「WTI」はWest Texas Intermediateの略で、主産地であった西テキサスの中質の原油を表し、当時の名残といえる。近代的な原油採掘が始まったのがこの地であり(ちなみにブッシュ大統領親子の故郷もこの辺だ)、現在もシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループ傘下のニューヨーク・マーカンタイル取引所で活発に取引されている。
その後、技術が進歩して、シェールオイルが採掘可能になった。地下深くの頁岩の層に含まれている石油の一種で、高圧の水で粉砕し採取する。環境を重視するオバマ大統領の時代にはなかなか認可されなかったが、開発重視型政策を優先するトランプ大統領になって認可が相次ぎ、増産されている。米国は現在、サウジアラビア、ロシアを抜いて世界1位の原油産出量を誇る。
米国のエクソンモービルを始めとする、旧セブンシスターズと呼ばれた石油メジャーも米国内産の原油営業体制にシフトを変えている。要は米国自体が資源国としての地位を固めたのである。
実は、かつて米国産原油は、産出量が少ないこともり、国家安全保障の目的で輸出が禁じられていた。それがシェールオイルの増産、生産量の拡大によって、戦略的輸出商品として生まれ変わったのである。
2.中国貿易の拡大
現在の米国産原油の一番の輸出先は、なんと中国である。シェールオイルは北部山地と南部山地で産出される。これをパイプラインや列車で南部カリブ海側の積み出し港へ輸送し、そこから中国に輸出している。
積み出し港を発ったタンカーは、当初は南米南端のマゼラン海峡を大回りして中国へ向かっていた。しかしパナマ運河の脇に第2パナマ運河が開通し、ここが使えるようになった。さらに現在も、中国資本でニカラグアに大型運河を掘っているところだ。これにより、中国は大きな恩恵を受ける(日本も恩恵を受ける可能性大)。
いずれにせよ、以前は中国も大慶油田などで原油を生産していたが、最近では経済発展したため、原油を始め完全な資源輸入国になっている。
3.米中貿易収支の改善
米国からの中国への原油の輸出の拡大は、米国の貿易収支を改善する可能性が高い。これはトランプ大統領の公約として掲げられてきたものだ(日本への原油の輸出が増加すれば、当然、対日貿易収支も改善することになる)。
トランプ政権にとってみると、今年は11月に中間選挙があるために、積極的な政策展開が予想されており、この原油戦略もその一環と考えることができる。
4.原油価格の人為的引き上げ
さらにいえば、原油戦略の効果を増すために、米国は原油価格の人為的に上昇させているのではないかと考えられなくもない。
その典型的かつ効果的な手段は、中東情勢を「不安定化」させることだ。最近の米国の中東政策は、そうした意図を感じさせるものばかりである。エルサレムをイスラエルの首都と認定、IS後のシリア情勢の悪化への加担、シリアとの対立激化など挙げ始めるときりがない。間接的にはサウジアラビアの政変も含まれるかもしれない。
そもそも、トランプ政権の有力な支持母体がユダヤ系勢力であることも、中東問題を刺激する一因となっている。
5.ドル安政策の始まり
共和党出身で、しかも金融界出身のムニューシン財務大臣が「ドル安が望ましい」と発言している。これは異例中の異例の事態である。
通常なら、慢性的な赤字国である米国に資金を集めるために、「ドル高」政策を訴える。それは共和党の基本政策でもあり、また財務長官が金融界出身の時は出身母体を慮り、当然、ドル高政策を実施してきた。
状況を勘案するなら、それほどまでに輸出を伸ばしたいという事であろうか。オバマも就任当初はドル安政策を導入していた。いずれにせよ、11月の中間選挙に向けて、経済政策の強化が始まっている。
さらに現在、米国の中央銀行FRBは2年前から金利の引き上げを開始し、より強力に推し進めようとしている。本連載でもご説明したが、中央銀行の本当の仕事は金利の引き上げだ。経済・景気は“波”であり、良いときもあれば悪いときもある。その悪いときに金利を下げる余地を作ることが本当に大事なのである(この部分を理解していない日本人は極めて多い。日銀は選挙が始まるまでに金利を上げておかなければならないのだ)。
そのFRBの金利の引き上げによる、通貨危機等の動きを防止するために、財務長官自らドル安政策を誘導しようとしているという事も十分考えられる。
6.日本にとっての米国の原油政策
日本にとってはどうか。原油輸入量の増加・輸入先の多様量化、そして石油価格の上昇は、インフレを待ち望む当局にとっては望ましいと考えるべきかもしれない。しかし筆者は、景気回復なしの物価上昇は望ましくないと考えている。まさに、ミニ石油ショックであり、教科書的にいうと“悪い物価上昇(インフレ)”である。この辺が、財政赤字の恐怖とともに、当局と国民感覚とでは乖離があるといえる。
(博士[経済学] 宿輪純一)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民126掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民126掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。