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首都圏で「タワマン暴落の兆候」いつ手放すのが正しいのか いまは日本最後の 「土地バブル」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54392
2018.03.04 週刊現代 :現代ビジネス
上がったものは、いつかは下がる。それがマーケットの大原則だ。ここ数年、高値を謳歌してきたニッポンの不動産市場もついに終幕へ――。「いつ、どこから落ちていくのか」まですべてわかった。
人気タワマンで売りが続々
『ザ・パークハウス西新宿タワー60』は高層ビルが立ち並ぶ東京・西新宿にあって、周囲の商業ビルに引けを取らないほど高くそびえたつ超高層タワーマンションである。
マンションとしては日本最高階数となる60階建てで、44階にあるバーからは富士山が一望できる。都心のど真ん中でこれほどの物件が出ることはまたとないとあって、'15年に販売開始すると販売用住戸777戸がすぐに完売したほどの超人気物件である。
そんな『ザ・パークハウス西新宿タワー60』は昨年竣工し、購入者への引き渡しが始まったばかりなのだが、「さっそく売り物件が続々と出てきている」と住宅ジャーナリストの榊淳司氏は指摘する。
「不動産販売サイトを見ていたら、竣工後からさっそく売りが出ていたのですが、それが直近では60件超にまで増えているのです。それも40階、50階台など人気の高層階の部屋が売りに出されているのが目立ちます」
そもそもこのマンションが売りに出された'15年当初は、タワーマンション市場が大きく盛りあがっていた時期。都心一等地の好立地から必ず価値が上がる物件だと業界内でも注目されていた。榊氏が続ける。
「そのため、値上がり益を求めて購入に動いた投資家もいたのですが、いま売りに出されている部屋はなかなか成約していないようです。80平方メートルクラスの部屋でも1億円を超えているので、その『強気価格』を敬遠されているのでしょう。
じつは私の友人も『ザ・パークハウス西新宿タワー60』を購入した一人。まさに高層階を売りに出しているのですが、彼はこう言っています。3月いっぱいまでねばってダメなら値段を下げるしかない、と」
都心の超人気マンションで「売り物件」が積みあがっていく――。
じつはいま、目黒駅前に立つタワーマンション『ブリリアタワーズ目黒』でも同じような光景が広がっている。
『ブリリアタワーズ目黒』といえば、分譲住戸661戸の約半数が「億ション」だったにもかかわらず、'15年に発売すると4ヵ月で完売した人気物件。
山手線目黒駅徒歩1分という好立地から、会社役員や医師など富裕層の購入希望者が殺到し、最高倍率40倍以上の部屋も出たほどだった。
「それがいま、売り物件が積みあがっている。この物件は昨年11月末に竣工して入居開始したばかりなので、その矢先から大量の売りが集中している形です。
実際、不動産仲介サイトでは60平方メートル台で1億3000万円ほどで売りに出されている部屋が見つかるうえ、中には2億円超えで売りに出ている部屋もある。
竣工からまだ2ヵ月ほどなのにそうして売り物件が積みあがり、すでに30件以上が確認できる状況になっています」(前出・榊氏)
不動産業界はバブル期並みの好況に沸いていて、少なくとも2020年の東京五輪までこのブームは過熱していく――。
マンション販売の現場では販売員のそんな営業トークを聞かされるが、そうした楽観論を鵜呑みにできない現実が起き始めている。高く売りたい不動産業者は絶対に口にしないが、不動産バブル崩壊の予兆がすでにあちこちで噴出し始めているのだ。
「ここへきて、都心部のマンションの一部で公募価格と成約価格の乖離幅が広がってきています」と指摘するのは、不動産エコノミストの吉崎誠二氏である。
「たとえば1億円の公募価格で売り出されたマンションなのに、いざフタを開けてみれば成約価格は8500万円だったというようなケースがザラに見られるようになってきました。
不動産相場が勢いよく上昇してきたここ数年は、強気の公募価格を出してもほぼ同価格で成約できていたのが、最近になってその『差』が徐々に広がっているのです。売れずに公募期間が長期化し、なかなか成約できないマンションも多くなってきた」
スカイツリー周辺で売れ残り
そうしたマンションが目立つのは、新宿周辺や品川、田町の湾岸部などのエリアだという。吉崎氏が続ける。
「麻布、青山、赤坂などと比べると人気が落ちるにもかかわらず、不動産市況の活況で実力以上に価格が上がってきた地域です。こうした地域では物件価格がすでにピークを越えて、下降局面に入った可能性がある。つまり、『売り時』になってきた」
実際、ニッセイ基礎研究所が1月に不動産業界の実務家・専門家を対象に行ったアンケートでは、東京の不動産価格が東京五輪開催前('19年)までに価格のピークを迎えると答えたのがじつに7割以上。
専門家のあいだでは、いまが日本で最後の「土地バブル」というのが多数意見なのである。
「不動産業界の人たちの間では、昨年秋ごろから住んでいたマンションを売って、賃貸物件に移り住む人が増えています。
不動産の値上がりが始まった当初、'11〜'12年ごろに買ったマンションでもそろそろピークと見ていて、早めに売却してしまおうと考えている」(前出・吉崎氏)
まさに不動産からの「大脱走」が始まっているわけだが、背景にあるのは投資マネーの動き。これまで日本の不動産市況を牽引してきたのは海外投資家で、日米欧の金融緩和政策でジャブジャブにあふれたマネーを日本の不動産に投じてきた。
それが昨年から米欧が金融引き締め路線に転じたことで、水道の蛇口が閉められたようにマネーの流入がストップ。
これまで不動産高騰を演出してきたマネーが止まれば、バブルは弾ける――そう気付いた一部の人たちが「いまのうちに!」と売りに走っている形である。
「マンションなどに投じられていた投資マネーが、東京五輪を前にして、すでに売りに転じてきました。
また、インバウンド需要が期待できる浅草、上野、小伝馬町など東京の東エリアではホテル需要が豊富で、マンションより投資妙味が高いと感じている投資家も多い。
投資マネーがマンションから一斉に引いていけば、当然価格には下落圧力がかかってくる」(オラガ総研代表の牧野知弘氏)
言い方を換えれば、これまで投資マネーによって価格を引き上げられてきたこうしたエリアには、「売り時」が迫ってきたということである。
そうした状況に追い打ちをかけるのが、'19年10月の消費税アップ。税率が8%から10%へと上がる予定で、落ち込む不動産市場にさらに冷や水を浴びせかける最悪のシナリオが幕開けする。
'19年10月と聞くとまだ先のように聞こえるかもしれないが、増税時には経過措置として半年前までに契約すれば、実際の引き渡しがそれ以後でも増税前の税率が適用される。
そのため、'19年3月末までは駆け込み需要が期待できる一方で、4月から巨大な反動減に見舞われる。それは、「もうすぐそこ」にある現実なのである。
中でも危ないのは、「実需エリア」だ。
「'14年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた際には、大手でも注文住宅の受注が3割くらい減り、ひどいところはその状態が2年以上続きました。
そうした反動減の影響を真っ先に受けるのは、『実需』のある埼玉、千葉などのエリアでしょう。
都心部より買いやすい価格設定で普通のサラリーマン世帯が購入してきた地域だけに、消費増税で物件価格が2%も上がると需要が一気に冷え込みかねない。
埼玉でいえば川口、さいたま新都心より先のエリアが危ない。千葉だと舞浜、浦安は耐えられるが、都心へのアクセスが悪い京成線や新京成線沿線は持ちこたえられるかどうか」(住宅ジャーナリストの山下和之氏)
前出・榊氏も言う。
「都心部の『実需物件』ではすでに売れ残りが出始めています。サラリーマン世帯の実需層が購入するのは5500万円ほどの物件ですが、大田区の京急沿線、中野区の西武沿線ではそのクラスの新築物件の販売在庫が顕在化してきた。
葛飾区の東京スカイツリー周辺の人気エリアでも、竣工から数年経っているのにまだ完売しない物件がある。最近では新築マンションの販売現場で、交渉のテーブルについた途端、500万円単位で値下げするデベロッパーも出てきた。
こうしたエリアで物件売却を検討している人は、いまから売りに出して早めに買い手を探し始めたほうがいい」
世田谷、練馬の「時限爆弾」
見てきたように、'18年には投資マネーが消えて、'19年には増税で実需が消える。そして、'20年に東京五輪が終わると、これまで不動産業界を支えていた楽観ムードが完全に消えてなくなる。
'20年からは日本全体で世帯数の減少が始まり、人口減少が本格化。ただでさえ供給過剰になっている戸建て、マンションの「空き家・空き部屋化」が急速に進み、列島全土で不動産価格の暴落が待ったなしになる。
「'20年以降に値下がりが懸念されるのは、二子玉川、たまプラーザなど郊外の人気エリアで、これまでは高価格を維持できていたエリアでしょう。
環状八号線の外に立地する不便さがあるにもかかわらず、人気の田園都市線沿線であることが手伝って、不動産市況の過熱とともに価格が上昇し、実力以上の価格帯になってきた。
こうしたエリアほど価格下落局面では落ちやすい。東京オリンピック前後が『売り時』でしょう。
現在人気の湾岸エリアでも、『格差』が広がっていく。より都心に近い勝どき、月島、豊洲などと比べて、東京五輪の関連施設に近いことで開発されてきた東雲、辰巳などは下落幅が大きくなりやすい。このあたりも五輪前後が売り時かもしれません」(前出・吉崎氏)
さらに'20年以降には、不動産業界の「2022年問題」といわれている生産緑地問題も待ち構えている。
「東京23区など大都市圏の農地・緑地が固定資産税の減免など税優遇を受けられるのが『生産緑地制度』ですが、'22年から多くの生産緑地が指定期限を迎えます。
期限を迎えた生産緑地の所有者のうち、少なくとも2〜3割はその土地を手放すでしょうが、私の試算ではそれだけで東京ドーム900個分の土地が市場に出回ることになる。
これがアパートなどに宅地化されると、すでに空き家問題が顕在化している中、住宅の過剰供給で不動産価格下落を招くことになるわけです。
東京では世田谷、練馬、杉並などにそうした農地が集中している。'22年以降はそうしたエリアで売却用地が溢れ、不動産価格を大きく押し下げる危険性がある」(不動産コンサルタントの長嶋修氏)
つまり、世田谷、練馬、杉並で物件売却を考えている人は、'22年までに「手放す」のが正解――。
人口が減り続けるこの国で、地価が上がり続けることは二度とない。気づいた人からもう逃げ出している。
「週刊現代」2018年2月17日・24日合併号より
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