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日銀新体制で総裁続投より「副総裁」に注目が集まる理由
http://diamond.jp/articles/-/162045
2018.3.3 三井住友アセットマネジメント 調査部 ダイヤモンド・オンライン
注目された副総裁に
「リフレ派」の若田部氏
皆さんこんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。
政府は、2月16日午前に開かれた衆参両院の議院運営委員会理事会で、次期日銀総裁に関する人事案を提示しました。今回は、この人事案が日本経済に与える影響について取り上げます。
政府の人事案は、4月8日に任期満了を迎える黒田東彦総裁を再任するとともに、3月19日に任期満了となる中曽宏、岩田規久男両副総裁の後任として、日銀の雨宮正佳理事と、早稲田大学の若田部昌澄教授を充てる案でした。
黒田氏は、安倍晋三首相の周辺からの信頼も厚いと見られ、再任が有力視されていました。副総裁候補の雨宮氏は、日銀で金融政策を立案する企画担当が長く、理事として黒田氏を支え、長期にわたり政策立案の中心となってきたため、現在の政策を続けるには適任と見られます。
ここまでは“現状維持”という印象ですが、やや異彩を放つのは若田部氏です。若田部氏は、金融緩和を訴える積極的な「リフレ」派とされ、特に量的緩和には積極的とされています。
つまり、今回の人事案からは、積極緩和派を起用して、引き続き脱デフレを後押ししたいという意図がうかがえます。衆参両院で同意が得られれば人事案は承認され、正副総裁が就任します。政府は、3月中旬までに衆参の本会議での採決を目指しています。
黒田路線継続の公算大
リスク拡大に懸念
ここで、これまでの日銀の金融政策方針を振り返るとともに、春以降の新執行部の方針を予測してみたいと思います。
黒田総裁は、就任間もない2013年4月に、2年で2%という「物価安定の目標」を表明しました。実現に向けて量的・質的金融緩和を導入、その後もマイナス金利導入、ETFを始めとするリスク資産買入れ限度額の拡大、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」など積極的な金融緩和を推し進めました。
当初は、「マネタリーベース」という量的拡大による物価目標の達成を試みましたが、16年9月の政策検証を経て、操作目標を「量」から「長短金利水準」へと移行しました。この修正が功を奏して、日経平均株価は、安倍政権発足前の9000円台から一時2万4000円台を付けるなど、26年ぶりの高値となりました。ドル円相場も80円近辺という円高から大きく反転し、足元では107円前後(3月1日現在)で推移しています。
ここまで読むと、日本経済は好調の一途に見えますが、課題もあります。
消費者物価指数(生鮮食料品除く)は前年比1%弱で推移するなど、物価上昇の兆しは見えていますが、2%の「物価安定の目標」達成は道半ばの状況にあります。また、日銀が保有する国債は発行残高の4割に達し、マイナス金利導入による金融機関の経営への影響などが懸念されています。
ETFの年間組入額を、16年7月に3兆円から6兆円へ拡大したこともリスクを生んでいます。浮動株比率の低い(市場で流通する割合が低い)銘柄については、流動性及び価格リスクが拡大しているという状況です。
こうした中で、新執行部は任期の5年間を使って金融政策を担うことになります。日銀総裁の再任は予想通りとはいえ、副総裁の1人には積極的な「リフレ」派が起用されたことで、当面は物価目標の2%達成など、現行の異次元の金融緩和が継続される公算が強まったと見られます。長期的には、「出口戦略」の議論として、長短金利操作の水準引き上げや、資産買い入れ額の減少が焦点となっていくと思われます。
海外に目を向けると、欧米は日本と同じように金融緩和を行っていますが、終焉に向けた「出口戦略」に動き出しています。
市場を不安定にすることなく
正常化を進める難しい舵取り
米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)は15年12月から金利の引き上げ(利上げ)を始めており、今年中に追加で3回程度、さらに利上げすることが確実視されています。
ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)も、19年から利上げを始めると見ています。欧米が金融の正常化を着々と進めている中で、日銀の長期金利目標はゼロ%のまま、出口戦略は見通せない状況にあります。
つまり日銀は、市場を不安定にすることなく、「異次元の金融緩和」を解除しなければならないという、極めて難しい舵取りが求められることになっています。特に、ETFの買入減額は、株式市場に大きなインパクトを与える可能性があり、市場との円滑な対話が不可欠です。
では、新人事案を受けて市場はどのように反応したのでしょうか。
昨年から、市場の一部で日銀の新体制発足を機に、今後の政策正常化に向けた道筋を示すのではないかとの見方があり、市場が安定するのではないかという予測がありました。しかし、現実にはそうなりませんでした。市場は現在、米国の長期金利が上昇しているにもかかわらず、円高が進み、株価も不安定な動きをしています。
ただ、今回の人事案発表時の市場の反応を見ると、黒田総裁の再任は“想定内”であって、大きな反応はありませんでした。それどころか、物価目標の2%達成など現行の異次元の金融緩和が継続される公算が強まり、市場には安心感が出ていました。
今後、日銀の方針と欧米との方向性の違いが一段と鮮明になり、欧米との金利差が拡大し、市場が落ち着きを取り戻せば、円安要因になるとみられます。このように総裁、副総裁人事で金融政策の先行きを見通しやすくなり、株式市場には「買い」への安心感が広がりそうです。
出口戦略を進める条件は
増税控えた個人消費の回復
では、日銀が米欧と同じように積極的に出口戦略を進める兆しはあるのでしょうか。
出口戦略を進めるための条件として、個人消費の回復が必要です。なぜなら今後、消費税増税で消費の減速が見込まれるためです。
19年は、4月の統一地方選、夏の参議院選挙を控え、10月には消費税引き上げが予定されています。日銀人事案が提示されたため、今後はアベノミクスの3本の矢「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の中の、財政政策が焦点となります。
安倍首相はこれまで消費税増税を二度延期しました。今回は教育無償化などに増税で得た2兆円を活用する新たな経済政策を打ち出しており、再度の延期は極力避けたいと見られています。消費税増税による経済や物価への負の影響を吸収するため、大規模な補正予算の編成や、中期的な公共投資・消費喚起策をパッケージにて検討する案が浮上しているようです。
こうしたことから少なくとも消費税増税までは、日銀は政府の財政政策を金融緩和の継続により支えるという構図になりそうです。
(三井住友アセットマネジメント 調査部 生永正則)
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