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これから最も稼げるのは「時間では計れない仕事」になる
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180303-00000020-pseven-bus_all
NEWS ポストセブン 3/3(土) 16:00配信
「時間」ではなく「成果」で見る仕事のほうが稼げる時代に
安倍政権は、今国会に提出する働き方改革法案での「裁量労働制」の対象拡大を断念した。政府の裁量労働制に関する議論はこれ以上ないほどお粗末だが、多種多様な仕事を一律の仕組みで考えること自体、無理があるという意見も少なくない。経営コンサルタントの大前研一氏は、「タイムレコーダーで計れない仕事こそ、これから最も稼げる仕事」と指摘する。
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一度も企業を経営したことがなく、今のビジネス現場も知らない政治家や官僚が、経営者の頭越しに“上から目線”で従業員の働き方をこと細かく指図する─―安倍政権の「働き方改革」は、その出発点からして間違っている。次々に打ち出されるスローガンを並べてみても、そのちぐはぐさには失笑を禁じ得ない。
そもそも仕事にはブルーカラーとホワイトカラーがあるが、日本企業の場合はブルーカラーの比率が大幅に低くなっている。作業の自動化やロボット化が進んだ上、今や多くのメーカーは外から買ったり外注したりした部品を組み立てているだけだからだ。
一方、ホワイトカラーの仕事には定型業務と非定型業務がある。定型業務とは、データ入力や伝票整理、記帳、請求書作成など作業内容に一定のパターンがあってマニュアル化、外注化が可能な仕事で、世界中どこへ行ってもSOP(Standard Operating Procedure /標準作業手順書)があり、具体的な作業や進行上の手順が一つ一つの作業ごとに決まっている。最も自動化しやすい業務だが、日本企業の生産性は欧米企業の半分ほどなので、今後はAI(人工知能)やロボットに置き換えていかねばならない。そして「残業」というのは、この定型業務にしかなじまない言葉である。こうした仕事では、長時間労働や低賃金を強要するような違法な雇用形態は厳しく取り締まるべきだろう。
もう一方の非定型業務は、経営戦略の構築や事業計画の策定、新製品の企画・開発、対外的な交渉など個人の思考力、判断力、経験が要求されるクリエイティブな仕事であり、自動化してAIやロボットに置き換えるのは難しい。問われるのは「答えを出せたかどうか」「問題を解決できたかどうか」ということだけである。つまり時間ではなく成果で計る仕事なので、極端に言えば会社にいる必要もない。
海外の企業は定型業務のアウトソーシングやコンピューター化によってホワイトカラーの生産性を上げてきた。ところが大半の日本企業は、定型業務と非定型業務がないまぜになっていて定型業務を標準化していないため、アウトソーシングもコンピューター化もできないでいる。だからブルーカラーの生産性は飛躍的に向上したのに、ホワイトカラーの生産性はいっこうに向上しないのだ。これが日本企業の給料が上がらない最大の原因である。
もう一つの日本企業の課題は、非定型業務のホワイトカラーの能力向上である。彼らがクリエイティブな領域でグローバルな競争に勝てるだけの力を持てるかどうかで、日本企業の「稼ぐ力」が決まるからだ。
たとえば購買は、どこから買うのがベストなのか、どういうタイミングで買うべきなのか、より良いものはないのか、といったことを調べて改善する。営業の場合は、担当エリアでどうやって新しい顧客を見つけてくるか、どういう順序で顧客を回ったら最も効率が良いのか、と訪問のルートや優先順位などを毎日懸命に考える。設計なら、機械化によって効率を上げるとか、昔の図面をデジタル化して検索できるようにする、といったことを提案する。
これらがクリエイティブな非定型業務というものであり、その実績は「かけた時間の長短」ではなく、「成果」で計られるべきものである。だから場合によっては、休日に考えてもよいし、徹夜で集中的にやって翌日休んでもかまわない。つまり、良いアイデアやソリューションを生み出し、思考を深めていけるようなシステムや環境、雰囲気を整えられるかどうか──それが非定型業務のホワイトカラーの能力を決める最大のカギなのだ。
私自身、非定型業務の仕事をしているが、往々にして良いアイデアを思いつくのは会社にいる時ではなく、朝早く散歩をしている時や風呂に入っている時である。すなわち、非定型業務はタイムレコーダーや時給とは相容れない仕事であり、それが最も稼げる仕事なのだ。
※大前研一・著『個人が企業を強くする──「エクセレント・パーソン」になるための働き方』より一部抜粋
【プロフィール】おおまえ・けんいち/1943年福岡県生まれ。1972年に経営コンサル
ティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年退社。以後、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして幅広く活躍。現在、ビジネス・ブレークスルー(BBR)代表取締役、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。近著に、『武器としての経済学』『個人が企業を強くする──「エクセレント・パーソン」になるための働き方』などがある。
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