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中国の最先端AIが作り出す戦慄の未来社会
http://diamond.jp/articles/-/161558
2018.3.1 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
アメリカで中国の先端AIに対する脅威論が急速に強まっている。
まず、技術的に追い抜かれる可能性が現実的になってきた。さらに中国が先端AIで優位に立つことの影響は、軍事にまで及ぶと予測されている。
個人データの利用に寛容な中国の特異な社会構造が、AIの開発に有利に働いている。中国では、究極の監視社会が実現しようとしている。これは個人の自由に対する深刻な脅威になる。
「5年後は米国に追いついてくる」
顔認証技術の凄さと恐ろしさ
「今後5年間は、アメリカがリードできるが、すぐに中国が追いついてくる」。こう述べたのは、グーグル元CEOのエリック・シュミット氏だ(Business Insider、Mail Online参照)。
その中国のAI技術の高さと恐ろしさを象徴しているのが、顔認証技術だ。
電子マネー「アリペイ」を運営するアント・フィナンシャル(アリババの子会社)は、2017年9月、顔認証だけで支払いができる新決済システム「スマイル・トゥ・ペイ」を導入した(TechCrunch参照)。
顔認証でドアが開くアパートも登場した。
顔パスで済むのは便利だという意見が、中国の人々の間で聞かれる。両手に荷物を持っていても、カメラを見るだけでよい。財布や鍵を持ち歩く必要がなくなった。スマートフォンさえいらない。よく鍵をなくす子供でも、心配がないというわけだ(Washington Post参照)。
ところが、顔認証の応用は、こうしたことにとどまらない。
深センでは、交通規制や信号を無視する人を特定するのに顔認証を使っている。北京市は、公共トイレからトイレットペーパーを盗む人を捕まえるために顔認証技術を使い始めた。9分以内に60センチ以上のトイレットペーパーを使う人を認識するという(日経ビジネスオンライン参照)。
顔認識システムを開発するクラウド・ウオークは、武器販売店への出入りなどのデータを用いて、個人が罪を犯す確率を算出している(日本経済新聞・電子版参照)。
中国の警察は、めがねに装着して利用できる携帯型顔認証端末を、今年の2月に導入した。これを用いれば、固定式の監視カメラの目が届かない場所も調べることができる(Wall Street Journal参照)。
世界最先端のAI技術を
支える基礎研究
顔認証のために利用者がカメラの前に立ち、撮影に協力する場合には、いまや、ほぼ100%の確率で本人の識別ができる。これは「積極認証」と呼ばれる。
難しいのは、防犯カメラに映った人混みの中から特定の人物を見つけるといったことだ。
これは「非積極認証」と呼ばれる。横を向いたり、足早に歩いたりしている人もいるので、認識が難しいとされてきた。
それが、中国で可能になってきているのだ。これは、中国のAI技術水準が極めて高いことを意味する。
こうした高い技術を支えているものは何か?
第1は、基礎研究力の急速な高まりだ。
コンピュータサイエンスの大学院で、中国の清華大学はMITやスタンフォードなどのアメリカの大学を抜いて、いまや世界一の評価だ(「清華大学が世界一で東大が91位という現実」参照)。
全米科学財団(NSF)は、科学技術の研究論文数で中国が初めてアメリカを抜いて世界トップになったとする報告書をまとめた。
2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だったアメリカを抜いた(なお、日本は15年にインドに抜かれ、16年は第6位だ)。
コンピュータ科学分野の論文でも、中国がトップ。以下、アメリカ、インド、ドイツと続く。日本は5位だ(Science & Engineering Indicators 2018、世界の学術論文数 国別ランキング・推移参照)。
国家が積極的に関与
「2030年までに世界をリード」が国家目標
さらに国家の積極的な関与がある。
中国政府は、AIを将来の最優先技術に指定し、2017年7月に「新世代のAI開発計画」を発表した。その中で「中国は、2030年までにAIで世界をリードする」という目標を設定した(MIT Technology Review、Battlefield Singularity参照)。
7月の「開発計画」に続いて、11月には、4つのAI分野でそれぞれ「リード企業」を選定した。
医療分野はテンセント、スマートシティはアリババ、自動車の自動運転は百度、音声認識はアイフライテック(科大訊飛/iFLYTEK)が、それぞれ担当する。
この発表によって、テンセントの株式時価総額は、中国企業として初めて5000億ドルを突破。フェイスブックを抜いて、アマゾンに迫った。アリババの株価も、年初と比べ2倍以上になった。
なお、1月末での時価総額は、テンセントが5581億ドル(世界第5位)、アリババが5167億ドル(第8位)だ。日本で最大のトヨタ自動車が2051億ドル (第43位)であるのと比べると、中国IT企業の時価総額がいかに大きいかが分かる。
また、17年のAI関連企業による資金調達額は、中国がアメリカを抜いて初めて世界一になった(日本経済新聞参照)。
「戦場のシンギュラリティ」
新たなAI軍事革命を先導
AI技術は汎用性が高いので、軍事に転用が可能だ。
AIの画像認識技術を応用すると、目標認識が正確になり、兵器の能力が飛躍的に向上する。また、ロボットやドローンなどの無人機が、自ら認識し、判断し、行動できるようになる。
人民解放軍は数千機ものドローン(UAVs)で空母を攻撃する戦法を生み出した。
多数のドローンが衝突せずに飛行するためには、高度のAI技術が必要だ。中国電子科技集団(CETC)は、2017年6月、119機のドローンの編隊飛行のテストに成功した(それまでの記録は67機)。安価なドローンによって、空母のような高価な兵器を攻撃することが可能になる。
AIが戦闘に参加するようになると、戦闘のスピードに人間の頭脳が追随できなくなる。
アメリカのシンクタンク、CNAS(新アメリカ安全保障センター)のエルサ・カニアは、これを、「戦場のシンギュラリティ(技術的特異点)」と呼んでいる(Battlefield Singularityp.16、p.23参照)。
アメリカは、1990年代に「軍事革命」(RMA)を実現し、他国の追随を許さぬ圧倒的な優位を確立した。これは、ITを活用した精密誘導兵器、サイバー攻撃、宇宙利用、ステルスなどから構成されるものだ。
いま「AI軍事革命」を先導しようとしているのは、人民解放軍だ。
トランプ政策で
アメリカの技術開発力が低下する
アメリカのIT産業関係者が危機感を強めるのは、中国が革新力を急速に強めている半面で、アメリカでの技術開発には不利な状況が生じているからだ。
まず、トランプ政権が研究開発費を削減している。
トランプ政権はさらに、移民や外国人労働者に否定的な政策を取っている。
これまでのアメリカのIT産業の発展は、移民や外国人労働者によって支えられてきた面が多かった。
中国からも大量の留学生がアメリカで学び、そのうちのかなりの者がH-1Bビザ(高度な専門知識を要する職業に就くための就労ビザ)でアメリカにとどまり、アメリカのITの発展に寄与してきた。しかし、この流れは変わってきている。
アメリカのIT先端企業から、中国のIT企業への技術者の移動が始まっている。
究極の監視社会が実現する
中国にとどまらない問題に
最も深刻な問題となるのは、個人データの利用に関して、中国の社会があまりに寛容なことだ。
このため、AIの開発に不可欠な個人データを、AI関連企業が容易に収集できる。
顔認証で顔の画像と個人を紐づけるには、データベースが必要だ。
中国のスタートアップ企業であるメグビー(曠視科技)やセンスタイム(商湯科技)は、画像認識技術に優れているが、政府機関の協力を受けて、13億人の顔データにアクセスしているという。
また、中国では何億台もの監視カメラが設置されており、ビッグデータを集め、利用できる。
中国では、民間企業のAI開発を、国が積極的にバックアップしている。というより、共同で利用しようとしている。
中国警察が導入した顔認証めがねは、犯罪者を見つけるために有効だが、一方で、反体制派や少数派民族の監視も容易になる。
問題は、「何が悪いことか」という判断だ。中国では、体制に不満を持つことが犯罪であると見なされる危険がある。
中国で究極の国家支配が可能になるだろうとする危惧が、西側のメディアで高まっている(Washington Post参照)。
そうした国が技術力を高めて膨張する。それは、中国国民の問題にとどまらないだろう。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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