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「5G通信の超爆速社会ではスマホが不要になる」は本当か 実は、こんな世界が待っている
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54474
2018.2.16 小林 啓倫 現代ビジネス
新発売のiPhoneや新しいWebサービスがもたらす革新はニュースになるものの、「通信速度」の進化は話題にならない。ただ、数年以内に導入される、現在の「4G」から「5G」への進化は、私たちの生活を根本から変える可能性を秘めている。
スマホの「通信制限」などはもう過去の話になり、もはやスマホすらいらない世界が訪れようとしている。いったいどういうことなのか。情報通信に詳しい、経営コンサルタントの小林啓倫氏が解説する。
■「5G通信」がもたらす革新
海外の若者に人気のメッセージアプリ、Snapchat(スナップチャット)。LINEなどと同様に、友人や家族と他愛のないやり取りをするためのアプリだ。
Snapchatには、「(プライバシーに配慮して)送信したコンテンツが一定時間経つと自動消去される点」という特徴以外に、別の特徴がある。
それは「起動するといきなりカメラが立ち上がる」点だ。しかも起動されたカメラは、モード変更しなくても長押しで動画が撮影できる。つまり映像によるコミュニケーションがデフォルトになっているのである。
それの何が不思議なのか? と思われたかもしれないが、思い返してほしい。数年前まで、携帯電話で画像や映像を閲覧する、あるいは送信するには長い時間がかかり、何も考えずにできる行為ではなかった。
しかし、いまやモバイル端末から画像や映像で意思を伝えることが、当たり前の行為となっているのだ。昨年「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれたように、いつの間にか、私たちのコミュニケーションに大きな変化が起きているのである。
この静かな革命をもたらしたものは何か? その答えのひとつは、通信技術の進化だ。2010年頃から、世界各地で「4Gサービス」が開始された。
それによって高速データ通信が可能になり、スマホやタブレットなど大画面の端末で画像・映像を視聴しても、ストレスなく楽しめるようになったのである。iPhoneなどの端末の進化や新しいWebサービスと違い、通信インフラの革新には目が向きにくいが、その重要性を無視することはできない。
そしていま、4Gに続く次世代の通信規格「5G」が整備されようとしている。5Gの普及により、私たちの社会や文化にどのような変化が生まれるのだろうか。
■5Gで何ができるのか
4Gから5Gへ――言葉の上では数字が1つ大きくなるだけだが、5Gでは飛躍的な進化が実現されようとしている。それは大きくわけて、@通信速度・容量の向上、A同時接続数の増加、B遅延時間の低下の3点だ。
まずは通信速度の向上である。これまでも4Gなどの「次世代型通信」と呼ばれたものは通信速度を改善してきたため、当然の変化と思われるかもしれない。
しかし4Gから5Gへの進化は、実に100倍という速度アップが期待されている。現在多くのエリアで使用できるようになった4Gでは、通信速度は100Mbps程度。それを5Gでは、100倍以上の10Gbps〜20Gbps程度に向上させることが目指されているのだ。
それに合わせ、通信容量も改善される。それは4Gと比較した場合、1000倍程度に引き上げることが目指されている。
これにより、たとえば人口が密集する都市部において、大勢の人々が手元の端末からファイルサイズの大きい4K動画をストリーミングで視聴したとしても、何のトラブルもなくコンテンツが楽しめる環境が実現されると期待されている。
次の進化は、同時接続数の増加である。近年「IoT」というキーワードに注目が集まっており、耳にされたことのある方も多いだろう。これは「Internet of Things」の略で、直訳すれば「モノのインターネット」となる。文字通り、私たち人間ではなく、さまざまなモノがネットにつながって情報をやり取りするという概念を表す言葉だ。
モノの数は人間よりも多く、それがネットに接続するとなれば、ネット「人口」の数は爆発的に増加する。実は既に、IoT機器の数は全世界で200億台近くに達していると推定されており、約40億人といわれる人間のネットユーザーの5倍も存在している。
もちろんこうした機器類のすべてが、4K動画を見始めるわけではないが、大量の機器類が安定してネットに接続できるようになっている必要がある。
そこで5Gでは、同時接続数も大幅に改善される。現在の計画では、1平方キロメートルのエリア内で100万台が接続可能になることが目指されており、これは4Gのおよそ100倍に当たる。いまより100倍のモノがネットに参加し、私たちのためにさまざまな情報をやり取りしてくれるようになる可能性があるわけだ。
また5Gでは、消費電力の少ない形で通信を行うことも可能になる。この点も、小型の機器が継続的に情報をやり取りするという、IoT時代にふさわしいものと言えるだろう。
一方でこうした機器類の場合、通信の速さや情報量の多さではなく、通信が遅延せず行われることが求められる場合がある。人間向けの4K動画配信が多少遅延したり、ストップしてしまったりしても、最悪ユーザーから怒られるだけで済む。
しかしIoT化された医療用機器を使い、患者の異変をリアルタイムで察知したり、あるいは遠隔手術を行ったりするために通信を使っていたら、わずかな遅延が大惨事を招きかねない。
そこで5Gでは、遅延を抑え、信頼性を上げることも取り組まれている。具体的には、遅延が1ミリ秒以下になることが目指されている。4Gの場合、遅延は数十ミリ秒程度であるため、5Gでは10分の1以下に改善される計算になる。これはロボットカーなど、重要な機器類の遠隔制御への応用が期待されるレベルだ。
このように5Gでは、私たち人間のユーザーに向けた通信速度の向上にとどまらず、IoT時代の本格到来を見越した大量接続・高信頼性の実現が目指されている。それではこうした通信インフラが整備された場合、どのようなアプリケーションが実現可能になるのだろうか。
■5Gで生活はこう変わる
総務省は2016年に「電波政策2020懇談会」を開催し、有識者を集めて次世代の通信のあり方について検討を行った。そこで発表された、「5Gの利活用分野」と題された資料では、12の領域に整理して期待される5Gのアプリケーションを列挙している。いくつかを見てみよう。
5Gによるプロセス全体の自動化を想定しているのが、「工場・製造・オフィス」や「建設・土木」、そして「農林水産業」の分野だ。
さきほどIoTを簡単に解説したが、そのIoTの活用先として最も期待されているのが、製造の領域である。
いまでも工場では大幅な自動化が進んでいるものの、遠隔からの監視や自動制御ができる「賢い機器」をさらに多くしたり、あるいは複数の施設や企業間で情報をやり取りし、生産・流通プロセス全体で最適化が行えるようになれば、さらに効率的でムダの少ないものづくりが実現できる。
この発想は「インダストリー4.0」、あるいは「インダストリアル・インターネット」などと呼ばれ、各国で盛んに研究と実用化が進められている。
この「インダストリー4.0」に、5Gはうってつけのインフラだ。大規模な企業であれば、自社工場内の通信環境に多額の設備投資を行い、高度な自動化を促進できる。しかし5Gが整備されれば、小さな町工場でも大量のセンサーを導入したり、あるいは田畑など工場の外でも生産の自動化を進めたりできるようになるだろう。
さらに部品類を工場間で輸送する際の状態を監視したり、小売店の店先で陳列・販売の状態を確認したりすることが可能になる。まさに「インダストリー4.0」が求める、生産から消費まですべてのプロセスを通じた最適化が実現されるわけだ。
一方で、人間が最も身近に感じられる5Gの恩恵として期待されているのが、やはり「エンタメ、ゲーム、観光」そして「スポーツ、フィットネス」の世界だろう。前述のように、5Gの普及によって、4Kなど高精細な映像を一度に大勢の人々が楽しめるようになる。
また5Gの整備で期待されているのが、VR(バーチャルリアリティ)の普及だ。VRは従来の映像コンテンツよりも没入感があるため、たとえばあるスタジアムで行われている試合を、遠く離れた場所で同じ臨場感を味わうことが可能になる。
5Gがあれば、それを同時に大量の人々と体験できるようになるため、パブリック・ビューイングがさらに盛り上がることになるだろう。
さらに映像と同時に、それを補足するような各種情報を送ることも可能になるため、たとえば前述の総務省資料では、「スポーツのライブ中継を見ながら、選手のパーソナルデータもリアルタイムで確認する」といったシーンが描かれている。
また5Gによってリッチなコンテンツを提供するだけでなく、その「大量の端末と安定した通信を行う」という特性を活かして、訪日外国人向けの対応を進めるというアイデアも取り上げられている。
たとえば各種端末とクラウド上のAI(人工知能)をつなぎ、リアルタイムで翻訳を行ったり、訪日客個人ごとにカスタマイズされた情報をデジタルサイネージ(電子掲示板)で提供したりといった具合だ。
この「無数の端末が、リアルタイムでAIとつながる」という点は、観光客だけが得られるメリットではない。
たとえば総務省資料では、デジタルサイネージで一般の人々にも情報提供したり、ウェアラブル端末を通じて運動を管理・計画したり、冷蔵庫が自動で中身を判断してレシピを提案したりといった世界が描かれている。
電話が賢くなったらどこまで便利になるか、私たちはスマートフォンで経験済みだ。5Gで家電や家具、衣服など、あらゆるものが賢くなったら、どれほど高度なサービスが可能になるのだろうか?
■スマホがいらなくなる社会へ
極限すれば、5Gが普及した世界とは、「社会全体がロボット化した社会」と言えるだろう。そこではもはや、個人が端末を持つ必要がない。行く先々で、AIにつながった賢いモノが私たちをサポートしてくれるからである。
そんな未来をいち早く実現している事例が、米ミズーリ州カンザスシティの取り組みだ。
2016年5月、カンザスシティはネットワーク機器大手のシスコシステムズ、および携帯電話事業者のスプリントと提携し、総額約1500万ドルをかけて同市のメインストリート(全長2.2マイル)の「スマート」化を進めることを発表した。
こうした都市全体でIoTを活用しようという取り組みは、「スマートシティ」として、前述の総務省資料でも5Gの有効な活用先として想定されている。
カンザスシティでは、対象となったメインストリートにセンサーを備えた街灯を125本設置するなどして、リアルタイムにデータを収集。
それを分析することで、駐車場の空き状況や渋滞の状態、路面電車の到着時間などに関する情報を、市内25か所に設置予定のキオスク端末から確認することを可能にしている。また生データは外部の企業にも提供され、彼らが独自のサービスを展開することができるようになっている。
さらにデータ分析を通じて、街路のインフラを柔軟に運用する取り組みも行われている。たとえば道路の渋滞状況に応じて、赤信号による待ち時間を増減させたり、人が通っていない街路を把握して、その部分だけ街頭の明かりを弱くしたりといった具合である。
言うなれば、スマート化されたメインストリート全体が、巨大なロボットとして機能していると言えるだろう。
前述のキオスク端末からは、地域の飲食店やエンターテイメント、市政に関するお知らせなど、他の情報を取り出すことも可能だ(実際に端末から最もよく確認されているのが、路面電車の運行状況に関する情報で、次に多いのが飲食店関連の情報だそうである)。
先に述べた通り、現在は一部の地域にとどまっているスマート化だが、カンザスシティはパートナー企業と対象地域の拡大を計画中だ。5Gが整備されて広範囲で多数の機器類がつながれば、より広範囲でより高度なサービスを展開できると期待されている。
カンザスシティに設置されたキオスク端末 カンザスシティプレスリリースより
こうしたインフラが一般化すれば、個人が高度な情報端末、つまりスマホやタブレットを持ち歩く意味も薄れてくる。
5Gでクラウド上のAIにつながった端末がいたるところにあれば、そこから情報を出し入れすれば良いし、複雑な処理はAI側でやってくれる。指紋や顔などで個人を認証し、一人ひとりに合わせて情報を加工・提供することも十分に可能だ。そうなれば、わざわざかさばる端末を持ち運ぶ必要はなくなる。
「いや、スマホを持ち歩かないなんて想像できない。こんなに便利なもの、手放すことなんてできないだろう」と感じられたかもしれない。しかし考えてみてほしい。
日本でスマホが急速に普及したのは、4Gが整備された2010年代に入ってからのことだ。「スマホが必要な暮らし」を始めてから、まだ10年も経っていないのである。
逆に2000年ごろの私たちに、「10年後には誰もが小さなスクリーンを持って、そこから画像や映像で情報を得るようになる」と言っても、一笑に付されていただろう。
そして冒頭のSnapChatの例のように、便利なサービスは急速に普及し、私たちの認識を短期間で変えてしまう。端末を個人ごとに持ち歩くという不便な習慣に、果たしてどれほどの人が固執するだろうか。
日本でも2020年ごろから、5Gの商用サービスが段階的に導入されると予想されている。2020年といえば東京オリンピックの年であり、5Gを基盤とした多くの先進的サービスの絶好のお披露目の機会となるだろう。
そしてそれは、単に個々のサービスや企業が自らをアピールするだけでなく、次世代の暮らしの姿を私たちに見せてくれるものになるはずだ。あらゆるモノが賢くなり、スマホを持ち歩くことすら不要になる世界――3年後には、それが当たり前のように感じられるようになっているかもしれない。
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