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不祥事や倒産も…企業が陥る「不条理」を回避するには
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180215-00000084-sasahi-bus_all
週刊朝日 2018年2月23日号より加筆
菊澤研宗(きくざわ・けんしゅう)/著書に『戦略学』(ダイヤモンド社)、『なぜ「改革」は合理的に失敗するのか』(朝日新聞出版)など
世間にその名を知られている大企業でも不祥事が相次ぎ、倒産することもある。そうした事態にならないためには、どうしたらいいのか。『戦略学』(ダイヤモンド社)、『なぜ「改革」は合理的に失敗するのか』(朝日新聞出版)などの著書がある慶応大商学部・菊澤研宗教授に聞いた。
* * *
――名門企業で不祥事が後を絶ちません
「企業は利益を稼ぐため、損得勘定をして経済合理性を追求する存在です。しかし、損得勘定だけで従業員が動くと、合理的に不正や非効率に導かれることになります。私は、これを『不条理』と呼んでいます。
例えば、現状が非効率なのに、改革しようとすると抵抗勢力を説得するコストが高いので、現状維持が合理的となる。原発の安全性を高める設備や制度を導入する必要があるのに、そのコストが高いために対策をとらない方が合理的と考えてしまう。こうした『取引コスト』が存在することで、経済合理性を追求した結果、合理的不正や合理的非効率つまり不条理が生まれます」
――不条理を避けるには、どうすればよいですか
「一つは、制度的なマネジメントです。安全性のルールをつくるなどして、しくみや制度を設けてコストを下げ、制度依存的で他律的な従業員の行動を促す。もう一つが、従業員の自律的な価値判断を引き出す哲学的なマネジメントです。
変革のための取引コストは大きいけれど、現状を維持することが正しいのか。コストはかかるけれど、安全対策を向上させないことが正しいのか。こうした価値判断をすることが、不条理の回避につながります」
――価値判断は人それぞれで分かれます
「確かに、価値判断は主観的なので、責任を伴います。だから、避けたがる上司も多いことでしょう。そういう人が集まると、客観性や全会一致ばかりを重んじる無責任な組織になってしまいます。
しかし、価値判断こそが上司やリーダーの役割です。中立的・客観的な立場を貫くと、価値判断は難しいことも多い。そこで、価値判断の際にスタンスを与えてくれるのが経営理念であり、不条理の回避にも有効です。優れた経営哲学や経営理念は、人間的で人の心に響く。何が正しく、価値あることで、何をなすべきなのか。こうした判断をする際のよりどころとなります」
――多くの会社は経営理念を持ちますが、心に響かない美辞麗句も多いです
「客観的な損得計算の結果とは別に、人間は主観的な価値判断のもとでも行動できます。そのような人間的な行動に、多くの人は心動かされます。
例えば、元広島カープの黒田博樹投手はかつて、約20億円ともいわれる米大リーグのオファーを断って広島に復帰した。損得計算をすれば、大リーグに残る選択肢が経済合理的だったでしょう。しかし、その道を選ばなかったことで、ファンの心は強く動かされた。
また、東日本大震災で首都圏に多くの帰宅難民が出た時、早々とシャッターを閉めた施設がある一方で、家に帰れない顧客への開放を判断した施設があった。施設側の事情は個別に様々だっただろうが、究極的な状況に置かれたとき、人や組織の判断は分かれる。こうした価値判断に基づく行為に人の心は動かされます」
――立派な理念を持つ企業が、経営危機や不正に至るのはなぜですか
「シャープは『二意専心(創意と誠意を重んじる)』というユニークな理念を持ちながら、それを無視して損得勘定に走り、危機に陥りました。東芝は経営陣が『チャレンジ』という言葉を使って、経済合理性を追求し、従業員に不正を強いました。
経済合理性だけで動くと、視野が狭くなったり、不条理に陥ったりします。一方で、経済合理性のない哲学的なマネジメントは空虚であり、会社はいつか倒産するでしょう。そこで、両者を重層的に組み合わせることが必要です。まず徹底的に損得計算をしたうえで、その結果に従うことが正しいかどうかを価値判断することが重要になります」
――経済合理性と比べ、哲学的な面は、評価が難しいのではないですか
「その点は、大学での学生の評価でも感じます。例えば、二人の学生にプレゼンをしてもらうとします。二人ともほぼ徹夜で30枚ほどのスライドをつくって準備する。一人は自分の論理展開の誤りに途中で気づいたが、強引にまとめて30枚のスライドで発表する。もう一人は同様に論理の誤りに気づき、スライドを大幅に削った。わずか10枚ほどとなり、一見すると、見劣りする内容になった。
こうした時に、誤ったロジックでも堂々と発表する人と、自分に正直に貧弱な発表をした人に、それぞれどんな評価を与えるか。人を見る側も問われます。
企業の人事評価でも、業績は高いが不正を行うような人と、業績はやや劣るが誠実な仕事ぶりの人をそれぞれどう評価するか。業績など目に見えやすいものばかり追っていると、危険な組織になってくる。経済合理性と哲学的な側面とを重層的に評価することが大切であり、それこそがリーダーの大きな役割でしょう。
(構成=本誌・中川透)
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