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エジプトのモスク襲撃テロの背景にある「スンニ派同士」の対立〜今回標的となったのは「スーフィー」(スンニ派)/川上泰徳
http://www.asyura2.com/17/warb21/msg/420.html
投稿者 仁王像 日時 2017 年 12 月 10 日 16:50:46: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 

エジプトのモスク襲撃テロの背景にある「スンニ派同士」の対立/川上泰徳
2017年11月30日(木)19時37分
http://www.newsweekjapan.jp/kawakami/2017/11/post-34.php

 (抜粋)

<300人超が死亡したシナイ半島の事件は、エジプトでモスクを標的とした初めてのテロだった。「サラフィー対スーフィー」という社会の亀裂が背景にあるが、暴力の連鎖につながってしまう可能性はあるのか>

エジプトのシナイ半島で11月24日に起きたモスク(イスラム教礼拝所)襲撃事件は、300人以上という死者の多さだけでなく、この国でモスクを標的とした初めてのテロという重大性を持つ。

モスク襲撃の翌日、エジプトの独立系新聞「シュルーク」は1面で「エジプト史上、最悪のテロ、"イラク方式"による虐殺」と見出しを付けた。イスラム過激派によるモスクへのテロは、イラクやサウジアラビアなどでISによるシーア派モスクへのテロがある。ISはシーア派を「イスラムからの逸脱」と断罪し、「ジハード」の対象とする。

しかし、エジプトはスンニ派だけの国で、今回標的となったのは「スーフィー」と呼ばれる神秘主義者が集まるモスクとされるが、それもスンニ派である。これまでエジプトではキリスト教コプト派の教会がテロの標的になることはあったが、モスクへのテロはなかった。

モスクはイスラムの義務である礼拝を行う場所であり、「神の家」とも呼ばれる神聖な場所である。武装集団はスーフィー主義を「反イスラム」と断罪する過激な宗教見解を実行したことになり、今後、同様のテロが続く可能性を示している。

スーフィーは清貧な生活をして修行し、「神との合一」を目指す。回転して踊ったり、同じ祈りの言葉を繰り返したりする修行で知られる。スーフィー主義はエジプトでは人々の間に広まり、各地に「ターリカ」と呼ばれる教団がある。人口の15%から20%がスーフィー主義を信奉しているという推計もある。

今回、武装集団に襲撃されたシナイ半島北部の町ビル・アルアブドの「ラウダ・モスク」は、スーフィー主義者が集まる場所として有名だった。2016年11月には同地のIS系組織「ISシナイ州」が、このモスクを拠点に活動していた97歳の宗教指導者を誘拐して、「背教者」として斬首処刑する映像を公開した。

処刑の後、IS系の英語インターネットマガジン「ルミヤ」の2016年12月号に、ISシナイ州の「イスラム法執行部門」の長のインタビューが出ている。それにはシナイ半島がスーフィー教団の拠点になっているとして名前が挙がっている。スーフィー主義を「イスラムからの逸脱」であると断罪し、さらにラウダ・モスクに集まるスーフィー教団について「エジプトの無法な政府機関と強い関係を持っている」と非難。「ISが征服したら、根絶する」と語っている。


強硬的手法による「テロとの戦い」の限界

今回のモスク襲撃がISによるものかどうかとは別として、テロの背景に同じスンニ派の信者でありながら、イスラムをめぐる深い亀裂があることが見えてくる。

シナイ半島は砂漠と山岳部で覆われ、サウジアラビアや西のリビアともつながる部族的な慣習が強い土地柄で、ISだけでなく、いくつもの過激派組織がある。これまでもシナイ半島のエジプト軍や治安部隊、外国人観光客が宿泊するホテルを標的としたテロが続き、2015年10月にはロシアの民間機が墜落し、ISシナイ州が犯行声明を出した事件があった。

現在の軍主導のシーシ政権は2011年の「アラブの春」後の選挙で選ばれたイスラム穏健派組織「ムスリム同胞団」系の大統領を2013年にクーデターで排除し成立した。シーシ大統領は権力掌握後、シナイ半島ではISなど過激派との「テロとの戦い」を激化させたが、過激派の活動は収まらず、最悪のテロが起きた。

今回、テロの標的が軍からスーフィー主義者へと広がったことで、従来の強硬的手法による「テロとの戦い」の限界が露呈した。エジプト軍はテロの後、シナイ半島の山岳地域の「テロリスト拠点」を空爆して、車両を破壊したと発表した。しかし、空爆の標的をどのようにして確定したかも明らかでなく、新たな暴力の連鎖を生むことになりかねない。

サラフィー主義は90年代以降、インターネットや衛星放送の普及するなかで若者を中心に広がった。旧ムバラク政権時代(1981〜2011年)は非政治的だったが、「アラブ春」の後、政治に参加し、選挙でムスリム同胞団に次ぐ勢力となった。「イスラム的な公正」の厳格な実施を求める考え方が若者たちに受け入れられていると見られる。

現在、サラフィーとスーフィーという全く相反する2つの宗教運動が、エジプトの民衆の間に広がっていることになる。共に民衆レベルでは平和主義だが、スーフィー主義者は軍や警察とのつながりが深く、シーシ政権の強権体制を支えている。一方のサラフィー主義の中から、「ジハード」に傾斜して、政権と対立する流れが出てくる。ムスリム同胞団は両方の要素を持ち、双方の間にあったが、現在は政治から排除されている。

この事件がすぐにシナイ半島を超えて、エジプト本土で「サラフィー対スーフィー」の抗争に発展するとは思わない。しかし、今回のイスラム過激派によるスーフィー系モスクへのテロは、エジプトでイスラム教徒同士が敵対する前例をつくり、今後、状況が悪化すればイラクのように際限のない暴力の連鎖が起こる可能性を示したことになる。


・「エジプト 史上最悪のテロの衝撃」〜シナイ半島は、エジプト政府による統治が十分に行き届かず…ISは、新たな本拠地にしようと/nhk・出川展恒
 http://www.asyura2.com/17/kokusai21/msg/315.html
 投稿者 仁王像 日時 2017 年 11 月 29 日 20:12:30: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
   

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