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イスラエルによるシリア攻撃「5つのメッセージ」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10734
2017年10月12日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
元イスラエル軍情報長官で現在はテルアビブ大学教授を務めるアモス・ヤドリンが、9月8日付けニューヨーク・タイムズ紙に、「イスラエルのシリア攻撃をどう理解すべきか」との論説を寄せ、9月7日のイスラエルのシリア攻撃の目的を説明しています。要旨は次の通りです。
9月7日、イスラエル空軍はシリアのミサイルなどの製造工場を空爆した。10年前のシリア核施設攻撃ほどの戦略的価値はないが、イスラエルのシリア政策が変わってきている。攻撃はイスラエルがアサド政権とそのパートナー、イランとヒズボラの脅威に対してより積極的な戦略をとるとの5つのメッセージを送った。
第1は戦略的メッセージである。シリア内戦についてイスラエルはどちらかの側につくことは避け、ヒズボラへの武器供給だけを攻撃目標にしてきたが、今や行動の範囲を拡大し、敵が先進兵器を製造・取得するのを防ごうとしている。ベギン首相が打ち出した核濃縮施設や先進的通常兵器を敵が取得するのを止めるために先制攻撃するとの「ベギン・ドクトリン」の延長である。
第2は政治的メッセージである。イスラエルは今、米ロなどの大国がイスラエルの重要利益に配慮しない場合、自ら防衛するということを示した。
第3は信頼性に関するメッセージである。強いことを言った後、それを実施することが重要である。今回の攻撃対象は、イランが資金を出し、イランの技術を使い、長距離ミサイルや化学兵器を作っているCERS研究所に属する研究・生産センターであった。テヘランとダマスカスに、イスラエルは長期的な戦略的脅威を防止するために行動する意志があることを示した。
第4はイスラエルの作戦行動の自由についてのメッセージである。ロシアが防空兵器をシリアで展開しており、今回の攻撃対象はロシアの防空地域内にあった。ロシアが、イランがシリアを支配することに対するイスラエルの懸念を理解しているか、あるいはイスラエル空軍がロシアの防空システムを突破し得たかのいずれかである。
第5は道徳的メッセージで、これが最重要である。イスラエルはシリアで傷ついた人、数千人を自国の病院に受け入れてきたが、アサド政権、イランやヒズボラがシリア国民に対して犯した戦争犯罪を看過してきた。ユダヤ人としてジェノサイドが行われているのに、傍観していることはできない。攻撃された施設は化学兵器など、アサド政権が無辜の民を虐殺するのに使っている兵器を作っていた。この破壊は多くの人命を救うことになる。
今後どうなるか。
イスラエルはシリア、イランからの反応に準備すべきである。何万の兵士が演習のために召集されている。しかし北部国境での戦争に引き込まれるのは避けるのが重要である、イスラエルは米ロに赴き、シリアをイランが手中に収めることは受け入れられないと説明すべきである。米ロも傾聴するかもしれない。
イスラエルは、予防は治療に勝ることを知っている。必要になる前に行動する決心をするのは容易ではない。しかし、脅威は蕾の時に対応することが長期的にはずっと良い。
出典:Amos Yadlin,‘How to Understand Israel’s Strike on Syria’(New York Times, September 8, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/09/08/opinion/how-to-understand-israels-strike-on-syria.html
今度のイスラエルによるシリア空爆には驚かされましたが、イスラエルがどういう計算でやっているのかを、この論説はいかにもユダヤ人らしい発想で説明しています。
シリア問題についての諸議論の中で、イスラエルの要素は看過されがちですが、イスラエルはシリアの隣国であり、イランの勢力がシリアを支配する状況は何としても避けたいと考えていることは明白です。
今回の攻撃は、イランとシリアが報復行動を起こすかどうか、起こすとしてどれくらいの規模になるかで、中東情勢に大きな波乱が起きる発端になる可能性を秘めています。しかし、シリア、イラン、ヒズボラが今後どう出るかについては、今までのところ、大きな反撃には出ておらず、この攻撃は一過性の事件として終わる可能性が高いと判断して良いのではないでしょうか。イスラエルとしては、それなりの成果が出たので、今後攻撃を続行することはないでしょう。
イランのミサイル技術は北朝鮮同様、着実に進歩しています。シリアの「イスラム国」の拠点に対し、イラン国内からの弾道ミサイルで攻撃したこともあります。飛行距離を考えれば、イランはテルアビブをミサイル攻撃できると思われます。
イスラエルとシリア、イスラエルとヒズボラの間には、双方の攻撃がどこまで許容されるのか、双方がやり合いエスカレートした場合にも、落としどころをどうするかについて、双方に相場観のようなものがありました。しかし、イスラエルとイランとの間には、そういう相場観がないように思われます。イスラエルも相当計算をして行動しているのでしょうが、計算違いの危険は常に付きまとってきます。
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