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北朝鮮が、8月29日に引き続き9月15日にも、日本列島上空を通過させてグアム島攻撃用弾道ミサイルのデモンストレーション試射を実施した。
グアムはアメリカの準州であるが、多くのアメリカ人にとってはどこにあるのかも知らない存在だ。そのため、北朝鮮が弾道ミサイルを日本の頭上越しに太平洋上に撃ち込んで、グアムを攻撃できる能力をアピールしても、一部の軍関係者を除いてはほとんど危機感は生じていない。
アメリカと違い日本でグアム島は観光地として有名であるが、「なぜ北朝鮮がグアムを目の敵にしているのか?」はあまり語られていないようである。
グアム島は米軍の歴史的拠点
グアムにはこれまで100年以上にわたって、アメリカ軍の拠点が設置されてきた。1898年、米西戦争に勝利したアメリカは、スペイン領であったグアムを手に入れて海軍の拠点を設置した。それ以降、今日に至るまで、軍種や規模の変遷はあるものの、グアムにはアメリカ軍が駐留し続けている(ただし、日本軍が侵攻してアメリカ軍を駆逐した昭和16年12月10日から、日本占領軍がアメリカ軍に撃破された昭和19年7月21日までの期間を除く)。現在もグアム島総面積の3分の1を米軍関連施設が占めている。島の北部一帯には米空軍アンダーセン基地が、島の西側のアプラ湾周辺には米海軍グアム基地が設置されている。
それらの基地を中心にグアムに駐留しているアメリカ軍将兵はおよそ7000名であり、現在のところ空軍と海軍が中心となっている。加えて、近い将来には最大で7000名の海兵隊員が沖縄から移動してくることになっている。
沖縄の米軍よりも忌み嫌うべき存在
北朝鮮にとってアンダーセン基地は、沖縄に駐屯している米空軍や海兵隊、それに、三沢基地や岩国基地を本拠地にしている空軍や海兵隊の戦闘機部隊などよりも忌み嫌うべき存在である。なぜなら、アンダーセン基地は爆撃機の拠点となっており、もしアメリカが北朝鮮を先制攻撃する場合にはそれらの爆撃機が主戦力になると考えられているからだ。
アンダーセン空軍基地にはB-1B爆撃機、B-52H爆撃機が配備されている。また、アメリカ空軍の虎の子であるB-2ステルス爆撃機も前進拠点として使用できる設備が整っている。
さらに、爆撃機に加えて、爆撃機を護衛する戦闘機も恒常的に米本土から飛来しており、アンダーセン空軍基地は常に即応態勢を維持しているのだ。
米軍による先制攻撃の主力は爆撃機
アメリカが北朝鮮を先制攻撃する場合、北朝鮮の核施設、各種ミサイル施設、地上移動式ミサイル発射装置(TEL)が格納されている施設、それに韓国との境界線の北側地域一帯に展開している各種砲兵部隊などを、極めて短時間で殲滅しなければならない(少なくとも1000カ所程度と言われる攻撃目標を短時間のうちに徹底的に破壊しないと、韓国や日本に対する報復攻撃が実施され、日米韓側は言語に絶する犠牲を払うことになる)。それらの施設の大半は、地下施設、半地下施設、それに山腹の洞窟施設などの形態をとっている。したがって先制攻撃を実施する際は、それらの地下式設備の位置が特定できていることが前提条件となる。
ここでは、米韓の軍事情報網がかなりの割合で特定に成功し、アメリカ政府が先制攻撃を決断したとして、どのような攻撃を加えることになるのかシミュレーションしてみよう(現実には、このような特定ができていないため、先制攻撃には踏み切れていない)。
先制攻撃の先陣を切るのは、重要な地下攻撃目標(おそらく核開発施設やアメリカへの報復用ICBMがスタンバイしている施設など)への地中貫通爆弾による攻撃である。大型地中貫通爆弾(GBU-57 “MOP”)ならびに地中貫通爆弾(GBU-28“バンカーバスター”)による攻撃が加えられることになる。
このMOPやバンカーバスターを搭載して、攻撃目標近くの上空まで接近して攻撃を加えるのが、B-2ステルス爆撃機である(下の写真)。B-2ステルス爆撃機にはMOPならば2発、バンカーバスターならば8発を搭載することが可能だ。
アメリカ空軍は「世界で最も高価(1機およそ2000億円)な航空機」と言われるB-2ステルス爆撃機を20機保有している(21機製造されたが1機は事故で墜落してしまった)。テスト飛行用の1機を除く19機のB-2ステルス爆撃機は、全てミズーリ州のホワイトマン空軍基地を本拠地としている。これまでにアメリカ軍が実施した作戦行動の多くにおいて、B-2ステルス爆撃機はホワイトマン空軍基地を発進し、長時間飛行して攻撃目標を爆撃している。ただし、30時間以上のような長時間を要する作戦行動の場合は前進拠点からの運用も実施されており、グアムのアンダーセン空軍基地にもB-2ステルス爆撃機用の設備が完備されている。
北朝鮮に対する先制攻撃では、アンダーセン空軍基地から出撃するB-2ステルス爆撃機によるMOPとバンカーバスターによる地下設備攻撃が、口火を切るものと考えられる。
・B-1B爆撃機による攻撃
B-2ステルス爆撃機に引き続き、アンダーセン空軍基地を発進したB-1B爆撃機による攻撃が行われる。B-1B爆撃機は、空母や、日本それに韓国などの航空施設から飛び立った戦闘機の護衛を伴い、地上や半地下目標への猛爆撃を実施する。
B-1B爆撃機はソ連とのデタントによって核爆弾は搭載できない仕様になっているが、有名なB-52H爆撃機よりも大型で、爆弾搭載量も多い(高性能爆薬500ポンド爆弾ならば84発搭載可能)。スピードもB-52Hより速く(マッハ1.2)、かつ機動性能に優れている。そのため低空を敵の防空レーダーを超音速でかいくぐって攻撃目標に接近することができる。
・洋上からミサイル攻撃
以上のB-2ステルス爆撃機およびB-1B爆撃機による奇襲的爆撃とタイミングを合わせて着弾するように、米海軍巡航ミサイル原潜や攻撃原潜、それにイージス巡洋艦やイージス駆逐艦などが大量のトマホーク長距離巡航ミサイルを発射する。そのためには、爆撃開始時刻の1時間〜30分前にはトマホークミサイルを発射することになる。
・B-52H爆撃機と韓国軍F-15戦闘機による攻撃
引き続いてアンダーセン空軍基地から飛来したB-52H爆撃機が多種多様の爆弾を投下し、場合によってはアメリカ軍の指揮下に入った韓国軍のF-15戦闘機がバンカーバスターを含んだ爆弾を投下する。
・韓国軍も総力で攻撃
これらの爆撃に加えて、韓国軍による砲撃や、巡航ミサイル攻撃、そして短距離弾道ミサイル攻撃(韓国軍は北朝鮮全域を攻撃することができる巡航ミサイルと短距離弾道ミサイルを多数保有している)など、ありとあらゆる火力を総動員して、北朝鮮軍の報復能力を壊滅することになる。
(残念ながら現状では、上記シナリオが成功し、30分程度と言われる“短時間”で北朝鮮軍の反撃報復戦力を完膚なきまでに破壊することは不可能と試算されており、ソウル周辺を中心とする韓国や日本に対して報復攻撃が加えられるのは必至と考えられている。そのため、トランプ政権は“口撃”は加えているものの、軍事オプションに踏み切ることには躊躇をせざるを得ない状態が続いている。)
当面は日本を怯えさせるだけで十分
このように、北朝鮮にとっては、アンダーセン空軍基地を拠点にする米空軍爆撃機による攻撃こそが、核搭載弾道ミサイル攻撃と匹敵する、あるいはそれ以上の脅威と映っている。そのため、北朝鮮はグアム島攻撃能力の誇示にいそしんでいるというわけである。ただし、北朝鮮がグアムに向けて実際に弾道ミサイルを発射する段階には立ち至っていない。なぜならば、オバマ政権下で軍事予算を大幅に削減されてしまったアメリカ軍の現状では、B-2ステルス爆撃機やB-1B爆撃機を多数出動させたり、超高額なMOPやバンカーバスターをふんだんに攻撃に投入するまでにはかなりの準備期間が必要であることを、北朝鮮側は十分承知しているからだ。
したがって、太平洋上に弾道ミサイルを撃ち込むミサイル技術の向上試射を時折実施して、日本にはるか頭上の宇宙空間を弾道ミサイルが通過する度に大騒ぎをさせて、怯えさせていれば事足りるのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51103
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