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[9月12日-ロイター] 北朝鮮は弾道ミサイル発射、核兵器実験、軍事演習など、バカげているが、世界を動揺させることを数多く行っている。しかし、この数カ月の北朝鮮「危機」は、おおむねでっち上げられた危機だ。
1年前、北朝鮮が米国に核弾頭を搭載したミサイルを発射する可能性は、基本的にゼロだっただろう。つまり北朝鮮は、そのような攻撃を行う能力を持ち合わせていなかったのだ。それ以来、北朝鮮政府は技術的な進歩を遂げてきた。
北朝鮮が米本土を攻撃することはない
しかし、一部の軍事アナリストたちがそう信じている一方で、北朝鮮が米国本土を攻撃する飛距離を持つミサイル、それに装備できるように小型化された核弾頭、大気圏に再突入するときの熱と圧力に、弾頭部分が耐えられるようにする大気圏再突入技術を保有しているという、信頼できる公開済みの証拠は存在しない、と主張するアナリストたちもいる。
もちろんこのことは、北朝鮮危機という「ショー」が無害であると言っているわけではない。しかし、たとえ北朝鮮がそのような技術的能力を持っていたとしても、同国が米国を核ミサイルで攻撃する可能性は、「ある決定的な理由」のために、限りなく低いままだろう。
それはバラク・オバマ政権のジョン・ウルフストホール元軍備管理担当シニアディレクターが詳しく説明したように、北朝鮮の指導者金正恩氏はクレージーでもなければ、自暴自棄にもなっていないからだ。北朝鮮の指導者は、もし核兵器を使用すれば、自らの政権が数時間(それどころか数分)以内で消滅させられるであろうことを知っているのだ。
米国の弾道ミサイルと爆撃機に装備されたざっと1590発の核弾頭が、その予想を確実なものにしている(この問題について最も信頼のおける報告内容の公表によると、北朝鮮は10発から20発の核弾頭を作るための核分裂性物質を獲得したにすぎない)。
米国が通常兵器か核兵器で、北朝鮮に先制軍事攻撃を行うということもまた考えにくい。なぜならば、それによって韓国とおそらくもっと多くの地域で、数十万人の死傷者が出ることはほぼ間違いないからだ。北朝鮮はたとえ核兵器を使用しないとしても、北朝鮮の国営通信社が脅してきたように、ソウルを「火の海」に変えるような通常爆薬の集中砲火で、戦争の序盤は数千に及ぶロケット砲やあらゆる砲撃を行うことができるだろう。
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北朝鮮政府はまた、化学兵器爆弾、ロケット弾頭もたくさん保有しており、ソウルをサリンとVX神経ガスの海に変える能力も持っている。
相互抑止力の否定しようがない現実に照らし合わせれば、2017年の北朝鮮「危機」はもっと正確に言えば、自国の宣伝目的のために、金正恩氏とドナルド・トランプ大統領が催しているメディアを使った人形劇のように思える。
侮辱と感情的な反応という悪循環
過熱した報道の中で、政治的影響力、交渉上の強み、自己満足のために始められた正恩氏やトランプ大統領による国際劇場が発する情報は、ケーブルテレビとインターネットで一日中繰り返されているので、あっという間に拡大してしまう。そして、こうした情報は、恥さらしの国家的侮辱と考えられるようになっている。
その侮辱への感情的な反応には、破局への悪循環が存在する。もっと具体的な言葉で言うならば、もし米軍が、最近日本上空を飛行した北朝鮮のミサイルを打ち落としていたら、正恩氏は立腹、あるいは虚勢を張るためにグアム島の方向に別のミサイルを発射しなかっただろうか。そして、それに対してトランプ大統領は、マッチョな対応を取らざるをえないと感じなかっただろうか? つまりこれは、キノコ雲という最終的な可能性に通じているのだ。
今回の北朝鮮危機は、でっち上げられた芝居がかったものだが、これによって生じる不慮の戦争の脅威を緩和する最善策は、正恩氏とトランプ大統領という主役を説得することだろう。彼らが催しているショーは信じがたいものだし、これを通じて両者が求めているものを手にすることはできないだろう。
が、私が言うところの説得では、2人の自己陶酔型指導者たちに、生と死とテレビ視聴率の問題に関して、自らのポリシーをすぐ変更させる完全な動機づけにはならないだろう。
だから私は、2番目に最善だと思うアプローチを提案する。それは、メディアがあたかもすべてが変わってしまい、戦争がすぐそこに近付いているかのように、記事を書いたり、放送するのをやめるべきだ、というものだ。
北朝鮮は何年間も、使用可能な核兵器の貯蔵に取り組んできた。最新の地下核実験は以前の爆発よりも、より高い核出力を持ち、TNT換算で10万トンをやや超える爆発力を生み出した。これは、長崎に落とされた原爆の規模の4倍から5倍に相当する。より高い核出力は、水素同位体で「強化された」核分裂爆弾か、あるいは水素爆弾として一般的に知られる本物の核融合爆弾によるものである可能性が高い。だが、現在わかっている情報だけでは、どちらなのかはハッキリとわからない。
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しかし9月3日の実験が、本当の水素爆弾を取り入れていたとしても、これは「形勢を一変させるもの」にはならないだろうと、ロスアラモス国立研究所の元所長であり、米国の北朝鮮核開発プログラムに関する米国随一の専門家であるジークフリート・ヘッカー氏は最近、私が編集する雑誌『the Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)』に語っている。
もし米国の都市に核が落とされれば、それが核分裂爆弾だろうが核融合爆弾だろうが、核出力が20、100、あるいは800キロトンだろうが、その都市は荒廃し、数十万人が即死することになるだろう。とはいうものの、核兵器を米国かその同盟国に発射することは、確実に国家的自殺行為となるであろうことを、北朝鮮の指導者は知っている。
危機の伝え方が危機を拡大させている
明らかに、北朝鮮の核爆弾と弾道ミサイル実験は重要な出来事であり、ニュースメディアが報道しなければならない国際ニュースだ。しかし世界のメディアによるその「危機」の伝え方は、実際に危機を拡大する要因となっていて、それゆえ判断の誤りや戦争の可能性を生じさせているのだ。
もしもっと多くのジャーナリストが正恩氏とトランプ大統領の人形劇を取るに足らないものと扱い始めれば、北朝鮮問題の状況は、一種の長い骨の折れる外交交渉に移行し始めるかもしれない。これなら、受け入れ可能な解決策につながる。
北朝鮮は、米国に深刻な攻撃を行おうものなら、たちまち消えてなくなってしまうような小さく、貧しい国だ。なので、深刻な攻撃を行う可能性はほぼゼロに等しい。メディアが危機感をあおるようなことをしなければ、米国の先制攻撃の可能性も同様に低下するだろう。
ジャーナリストが米国と北朝鮮の指導者に、責任感のある振る舞いをさせることはできない。しかし、北朝鮮の「危機」が実際には朝鮮半島の膠着状態にすぎず、大言壮語にあふれた人形劇が、プロの外交交渉とは比べものにならない稚拙な代替手段にすぎないということを、メディアは読者や視聴者に理解してもらう手助けはできるのだ。
文:ジョン・マックリン
※ ジョン・マックリンは『原子力科学者会報(the Bulletin of the Atomic Scientists)』の編集長。この意見は彼個人のものです。
http://toyokeizai.net/articles/-/188833
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