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北海道上空を通過した北朝鮮ミサイル、その狙いとは?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10470
2017年8月29日 小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員) WEDGE Infinity
29日午前、北朝鮮は同国西部から北東方向に弾道ミサイル1基を発射した。ミサイルは北海道の上空を通過し、襟裳岬の東約1180キロメートルの太平洋上に落下した。飛行距離は約2700キロ、最高高度は550キロと推測されている。政府は発射直後、全国瞬時警報システム「Jアラート」を通じて、北海道や東北地方などの住民に警戒情報を流した。ミサイルは日本海上空で3つに分離した模様だが、日本の領域への落下物は確認されず、自衛隊は迎撃措置をとらなかった。航空機や船舶の被害もなかった。
■今回のミサイル発射における「北朝鮮の狙い」とは
これまでにわかっている情報から、今回のミサイル発射の狙いについては3つの可能性が考えられる。
まず、中距離弾道ミサイルの技術確認である。北朝鮮は昨年中距離弾道ミサイル「ムスダン(火星10)」を、今年に入って中距離弾道ミサイル「火星12」を通常より高く打ち上げるロフテッド軌道で発射してきた。しかし、これまでのところ通常の高度で打ち上げるミニマムエナジー軌道では発射していないため、この軌道での技術確認をしたと考えられる。なお、今回発射されたミサイルも「ムスダン」あるいは「火星12」の可能性が高いが、これらミサイルは単段式ロケットとみられるため、日本海上空で3つに分離したのであれば、弾頭が複数だった可能性がある。「Jアラート」の対象が北海道から長野までと広かったのも、多弾頭が理由だったのかもしれない。そうであれば、脅威の度は格段に増す。
次に、政治的なシグナルであった可能性が考えられる。このところ米国は、北朝鮮に対してミサイル発射の自制と引き換えに対話の用意があるという発言を繰り返しているが、北朝鮮としては現時点でミサイル発射を自制するつもりも、対話をするつもりもないことを示そうとしたのではないか。つまり、北朝鮮が米国との対話に応じるのは、対米核攻撃能力を信頼性のある形で完成させた時であり、それまではミサイル実験を止めるつもりはないという意志の表れと考えることができる。
最後に、米国の出方を試すためだった可能性が指摘できる。北朝鮮は8月上旬にグアム沖に4基の「火星12」を発射する計画を公表したが、15日に金正恩委員長は「米国の行動をもう少し見守る」と述べ、計画の実施を保留した。北朝鮮がグアム沖へのミサイル発射計画を公表したのは、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する度にグアムから朝鮮半島に飛来するB-1戦略爆撃機の存在を極端に恐れているからだと考えられる。B-1は、超音速でレーダーに捕らえられることなく飛来し、北朝鮮の最高司令部がある地下施設を破壊できる。今回、日本上空を通過する形でグアムを攻撃可能な中距離ミサイルを発射し、米国がB-1の展開を自制するかどうか見極めようとしたと考えられる。北朝鮮は、実際に中距離弾道ミサイルを撃つことで、グアム沖攻撃計画も本気であると米国に示そうとした可能性もある。
■日本が早急に取り組むべき「3つの課題」
今回のミサイル発射を受けて、日本としては早急に次の課題に取り組む必要がある。
まず、北朝鮮は奇襲攻撃能力を高めており、それに備えておく必要がある。現在、日本政府は陸上配備型のイージス迎撃システム「イージス・アショア」か、地上迎撃システム「THAAD」の導入を検討しているが、その作業を早急に行う必要がある。導入を早めるため、予定外の支出に対応する予備費を活用するべきである。ただし、「イージス・アショア」は1基800億円、同じくTHAADは1基1000億円以上と言われているが、前者には迎撃ミサイルの値段が含まれておらず、後者には迎撃ミサイルの値段が含まれているため、公平な数字とはいえない。1基当たりのコストでなく、システム全体のコストを比較し、費用対効果を検討するべきだ。
次に、国民保護へさらなる取り組みである。今回、J-アラートによって多くの国民が北朝鮮のミサイルの脅威をより身近に感じたことだろう。自治体レベルでの避難訓練は始まっているが、まだ全国的な取り組みとはいえない。ミサイルは日本のどこに落ちるかわからないため、損害限定の観点から、国民全体が国民保護の取り組みに関心を持つようにさらに努力する必要がある。在留外国人の保護についても検討しなければならない。
加えて、日米同盟の強固さをさらに示す必要がある。日米両政府は、首脳会談や外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)などで、米国の日本防衛へのコミットメントを何度も確認してきた。だが、それだけでは同盟の一体性を示すには不十分だ。北朝鮮が米国を攻撃した際には、日本も米国を支援することを表明するべきだ。実際に日本が米国を支援するには、平和安全法制に基づく制約が残されている。しかし、日米が相互防衛を強調することによって、北朝鮮による日米離間の企てを阻止し、日米同盟の抑止力をさらに強化することができるだろう。
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