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【動画】銃撃の中、イラク人少女を助けた米援助活動家の勇気
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06/post-7850.php
2017年6月23日(金)12時35分 ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
<戦場と化したイラクのモスルで、アメリカ人援助活動家が少女を助け出した動画が共感を呼んでいる>
まず下の動画を見てほしい。場所は明らかに戦場だ。画面の左方向から銃弾が降り注ぐなか、戦車の陰からヘルメットと防弾チョッキを着けた男性が飛び出していく。2人の兵士が援護射撃。12秒後、男性は無事に戻って来る。腕に少女を抱いて。
Free Burma Rangers
場所はイラクのモスル近郊、かつてペプシの工場があった地区だ。大人から子供まで、100メートル以上先に死体がいくつも転がっていた。テロ組織ISIS(自称イスラム国)の狙撃手に銃殺されたのだという。
だが、5歳くらいの少女が、死んだ母親のヒジャブに隠れるようにして生き残っているのが見える。壁を背に、助けを求めている男性もいた。ISISによる銃撃はまだ続いている。
そこで、イラク軍と行動を共にしていたデービッド・ユーバンク(56)は助けに行くことを決めたのだと、後にロサンゼルス・タイムズ紙に語っている。このビデオは先週末に公開された。
イラク北部の大都市モスルはISISの最後の拠点となっており、イラク軍や有志連合によるモスル奪還作戦が昨年10月から続いていた。イラク軍は6月21日、ISIS支配の象徴でもあった同市内の歴史的モスク「ヌール・モスク」をISISが爆破したと発表。モスル陥落は近いとみられている。
【参考記事】ISISが国家樹立宣言したモスクを自ら爆破 イラク首相「敗北認めた」
そんな戦場と化したモスルで少女を助け出したユーバンクの勇気ある行動は、「本物のヒーローだ」と共感を呼び、米メディアやSNSで話題となった。理由の一端は、彼が民間人であることだ。
There are real-life heroes in Mosul. Most are Iraqi. This one happens to be American. Proud to know David Eubank https://t.co/SuPPfi2uYa
― Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年6月20日
元グリーンベレー、妻子もイラクで援助活動
デービッド・ユーバンクとは何者なのか。
テキサス出身のユーバンクは、元グリーンベレー(米陸軍特殊部隊)隊員。18歳で入隊し、中南米やタイで作戦に従事してきた。だが10年経った1992年に除隊。「神が導くほうに行く自由」が欲しかったからだとロサンゼルス・タイムズに語っている。
ユーバンクの両親はキリスト教宣教師だ。神学校に入った彼は、そこで出会った妻のカレンと共にミャンマー(ビルマ)へ行くようになり、その後、他の団体がなかなか入れない地域に薬や物資、人道支援を届ける援助団体「フリー・ビルマ・レンジャーズ」を創設した。この2年はイラクとシリアを中心に活動してきたという。
ユーバンク夫妻には3人の子供がいるが、CBSによれば、子供たちもフリー・ビルマ・レンジャーズのすべての活動に参加してきたという。子供たちは現在、16歳、14歳、11歳。このモスルへも同行している。
危険な地域にまで連れてきていることに驚く人もいるかもしれないが、当の子供たちはそう思っていないらしい。長女のサヘルはCBSの取材にこう答えている。「前線にも子供たちがいて、その親は銃で撃たれたりしている。だから、その子たちを助けるのに私たちも前線に行くことはおかしくないと思う」
モスルでのイラク人少女救出の場面に戻ると、ユーバンクはその時、銃撃は続いていたが、助けるには今行くしかないと考えたという。「『もしこれで死んでも、妻と子供たちはわかってくれる』と思った」と、彼はロサンゼルス・タイムズに語った。
救出された少女はどうやら、イラク軍将校が養子にする計画があるようだ。ユーバンクはその後、もう1人生存していた男性も助けようとしたが、こちらは残念ながら助けられなかった。
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