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2隻目の空母を持った中国が過小評価されることを望むワケ 今後10年でさらに5隻の空母を建造しようとしている
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9713
2017年5月29日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
中国が2隻目の空母を進水させたことについて、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「中国の秘密の空母計画」との社説を4月27日付けで掲載し、中国が地域に軍事力を投射する意図を示したものであり、人民解放軍は中国が超大国となる数十年後を見据えている、と論じています。社説の論旨は以下の通りです。
中国は4月26日、2隻目の空母を進水させ、地域に軍事力を投射する意図を示した。数年の試験航海を完了した際には、同空母は中国初の実戦空母となる。ソ連が作った船体を利用する既存の遼寧(2012年に進水)は、訓練用のみとして使われている。
中国は、空母保有国クラブに仲間入りしたが、今後の計画について沈黙を守っている。この透明性欠如は、人民解放軍が、潜在敵国に将来の能力を過小評価させることを望んでいることを示唆する。
空母建造は海外でも広く報じられていたが、昨年12月に人民日報が報じるまでは、その存在は国家機密だった。
情報の欠如は想像を生んだ。多くの専門家は、中国は今後10年でさらに5隻の空母を建造しようとしていると見ている。それにより、中国は常時、2隻を海上に展開し、残りを維持や訓練に回すことができるようになろう。
一つの見方は、中国は空母を国力の誇示と地域の小国の威圧に用いる意図があるということである。少なくとも予見し得る将来においては、中国の空母は脆弱で、技術的に優る米日との紛争では使い物にならないであろう。
人民解放軍(PLA)は、最強の空母にも限界があることを示した。PLAは、比較的安価な機雷や対艦ミサイルを用いた非対称戦争のための戦略を作り出した。この「領域拒否」戦略で、米国が紛争時に中国の沿岸に艦船を送ることを躊躇させたいと考えている。皮肉なことに、中国の空母に対し、台湾やベトナムが同様の戦術を中国に対してとり得る。
莫大な開発コストにもかかわらず、中国は空母建造計画を推進している。その論理的帰結は、PLAは、中国が世界一の経済大国となり、超大国の地位に必要な軍隊を維持し得るようになる何十年後を見据えているということである。
新たな武器に関する中国の沈黙は、伝統的な詭計の戦略的文化への回帰を示唆する。近隣国は、中国が近代以前の地域支配の回復を目指しているとして警戒している。今般の空母進水は、こうした懸念を強化しよう。
出典:‘China’s Stealth Carrier Program’(Wall Street Journal, April 27, 2017)
https://www.wsj.com/articles/chinas-stealth-carrier-program-1493247659
この社説は、中国が2隻目の空母を進水させたのは人民解放軍が遠い将来超大国になることを目標に軍備増強をしている野心の現れであると指摘しています。その通りでしょう。そのことの持つ意味をよく考え、それに対処していくことを考えるのが最も重要です。
ところが、この論説は中国の空母建造計画が秘密にされていることなど、軍備増強に透明性がかけていることを重視しています。しかし、中国の軍備増強計画に透明性がかけていることは問題の本質ではありません。軍備が増強されていることが問題の本質です。このことを勘違いしてはいけません。
■日本の防衛費の3.3倍
中国の2017年の国防予算は3月に公表されましたが、初めて1兆元を超え、1兆440億元(約17兆2000億円)でした。日本の防衛費の3.3倍です。対前年比7%以上の伸びであり、2017年の経済成長率は6.5%前後とされていますから、これまで同様、経済成長率を上回る伸びです。加えて中国の国防費には、他の国では国防費とされる経費が計上されていないように思われます。
いずれにせよ、中国は富国強兵政策のうち、強兵にはずっと力を入れてきているのです。
米国のトランプ政権は国防に力を入れるとしており、2017年の国防予算は前年より約200億ドル増額されています。いずれにせよ、米中の間の軍事力には相当な差がある現状はまだまだ続くでしょう。
日米同盟全体としては、まだ30年間は中国に対して軍事的に優位に立てるとの見通しもあるので、そう慌てることはありません。しかし、ASEAN諸国などが中国の軍事的圧力を感じる日はそう遠くないでしょう。たとえば、今インドネシアは中国の漁船団に対し、自分が主張する排他的経済水域(EEZ)内で強い対応をしていますが、中国空母が出てきたときにもそうできるか、疑問があります。
社説は、台湾、ベトナムが中国のA2AD(接近阻止・地域拒否)戦略を参考にし得るのではないかと示唆しています。この点は大変示唆に富むと言ってよいでしょう。
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