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AI兵器 開発に待った
人工知能(AI)を搭載することで、自ら攻撃目標を発見し、殺傷する「キラーロボット」が誕生する日が近づいている。AIは、ひとたび軍事面で利用されると、火薬、核兵器に次ぐ、戦争の「第3の革命」を巻き起こすと危惧される。今年8月に開催するキラーロボットの規制を巡る国際会合が注目される。
標的を自動追尾するミサイル「ブリムストーン」を搭載した軍用機=AP
荷物運搬に利用できる軍用4足歩行ロボット「LS3」=ロイター
潜水艦の探知、追跡を行う「シーハンター」=ロイター
自ら目標を捜索し攻撃できる無人機「ハロップ」=ロイター
「完全自律型の殺傷兵器は数十年ではなく、数年以内に実現可能だ」。英国の物理学者、スティーブン・ホーキング博士ら約1千人のAI研究者は、2015年の公開書簡でことの緊迫性を訴えた。キラーロボットの定義は明確に定められていないが、現時点で完全自律性を有するキラーロボットは存在しないとされている。
しかし、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、本部=米ニューヨーク)は、「米国、英国、中国、イスラエル、ロシア、韓国などが自律稼働性のレベルが高い兵器システムを開発中だ」と指摘する。
既にAIを搭載したロボットは軍事利用されている。韓国は北朝鮮との軍事境界線にロボットを配備している。相手の熱や動きを感知し目標を捉え、人間の指示に基づき機関銃などで攻撃する能力があるとされる。
イスラエルでは、軍用機などを製造する航空機メーカーが、目標を捜索し、攻撃できる無人機を開発した。米メディアによると、16年4月、アゼルバイジャンがアルメニア人が乗車するバスの爆撃に利用した可能性が高いと報じた。
英国はAIを搭載し、指定された領域で標的を自動で追尾する機能を有する高性能のミサイルを保有。イラク北部での過激派組織「イスラム国」(IS)に対する軍事攻撃で使用した。米国でも無人戦闘機や対潜無人哨戒艦などの開発に着手している。
キラーロボットの利用は、戦場に送り込む兵士の人的損害の最少化につながるとされる。しかし、ロボットが誤って殺傷を行った場合の責任の所在、システムエラーによる制御不能の危険性、ロボットが人命を奪うという倫理的観点などから反対意見が広がっている。世界の非政府組織(NGO)などが13年4月に立ち上げた「ストップ・キラーロボット」キャンペーンには、現在パキスタンやキューバなど19の国が賛同を表明している。
国連におけるキラーロボットの規制を巡る議論は「特定通常兵器使用禁止制限条約」(CCW)の非公式専門家会合などで行われてきた。CCWは非人道的な影響をもたらす特定の通常兵器の使用を禁止・制限するための国際条約で、3月現在、123の国・地域が締約。人を失明させるレーザー兵器や探知不可能な地雷などの使用を禁止している。
14年から3回にわたり行われた非公式専門家会合を受け、16年12月、CCW再検討会議でキラーロボットの規制を巡る公式専門家会合の設置が決定した。今年8月に第1回の会合を開催予定であり、外務省によると、議題は6月ごろ、関係者に提示される見込みだ。
しかし、規制に慎重な姿勢を示す国もあり、議論が思うように進んでいないのが現状だ。CCWは決定に全会一致制をとっており、外務省担当者は「問題を特定する中で禁止や規制を検討していくことになる。短期間での結論は出にくいだろう」とみる。合意に至るまでの間、各国のAIを搭載するロボット兵器の開発は進んでいく。
開発されてからの規制・禁止は難しいと考えるHRW日本代表の土井香苗氏は「CCWを唯一の手段とは考えていない」と、他の手法での条約締結も検討する姿勢をみせる。8月の会合では「いかにキラーロボットの基本的な定義について早期妥結し、規制に関する議論に進むかが鍵となる」という。HRWは世論を形成し、禁止に賛同していない国を動かす方針だ。各国の思惑が渦巻くなか、今後の議論も難航が見込まれる。
(国際アジア部 山本瑶子)
[日経新聞5月9日夕刊P.2]
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