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米韓合同軍事演習に向かう途中の3月9日、東シナ海で合流した海上自衛隊の護衛艦と航行訓練をする米空母カールビンソン(写真:U.S. Navy Photo提供)
北朝鮮の挑発と米国の圧力 読み間違えで一触即発〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170417-00000069-sasahi-pol
AERA 2017年4月24日号
ともに何をするか分からない、米朝の首脳が軍事行動をちらつかせてにらみあう。圧力と挑発の応酬に朝鮮半島が緊迫している。
「当初の予定(豪州)を変更し、北へ向けて出港せよ」
4月8日、米第3艦隊の原子力空母カールビンソンは、米海軍太平洋艦隊司令部(ハワイ)の指令を受けた。寄港中のシンガポールを出港して、向かった先は朝鮮半島。3月中旬に米韓合同軍事演習に参加し、釜山に寄港したばかりだったが、急遽、戻されることになった。
朝鮮半島や日本を含めた東アジアを担当するのは、米海軍横須賀基地を母港とする第7艦隊の原子力空母ロナルド・レーガン。同空母が横須賀で1月から4カ月にわたる定期修理を受けているため、6回目の核実験の動きを見せた北朝鮮への圧力を高めるための急派となった。海上自衛隊との共同訓練も実施し、日米協調もアピールする。
トランプ政権の「軍事行動も選択肢」という本気度を最大限に示すため、4月末まで続く米韓合同軍事演習に加え、存在感のある空母戦闘群が重要だった。今回展開する空母群は艦載機の航空団のほか、ミサイル駆逐艦2隻やミサイル巡洋艦で構成され、シリア攻撃で使われた巡航ミサイルの発射や、弾道ミサイル迎撃能力を持つ。
●日韓両政府に漂う冷静
「とても強力な艦隊を送った」
4月11日に収録された米テレビのインタビューで、そう強調したトランプ大統領は、原子力潜水艦も展開していることまで明かした。同日付のツイッターでは「北朝鮮はもめごとを期待している。もし中国が(米国に)協力するなら素晴らしい。協力しないのなら、米国が中国なしで問題を解決する」と書き込み、激しく威嚇を繰り返している。
トランプ政権発足後、初の米中首脳会談の最中だった6日、巡航ミサイル59発を突然発射したシリア攻撃以来、トランプ政権は「レッドライン(最後の一線)」を越えたら北朝鮮も軍事行動の対象となるというメッセージを送り続けている。米空母群の展開に北朝鮮も「自らの行為が招く破局的な結果について、米国が全責任を負うようにする」と応酬しており、一触即発の緊張が朝鮮半島を包んでいる。
ところが有事となれば直接の被害を免れない韓国や日本の政府内に、武力衝突間近のような緊張は感じられない。むしろ米側の圧力強化を支持している。そこには共通の認識と期待があると、南山大学の平岩俊司教授(現代朝鮮論)は見ている。
「日韓ともに戦争に至るような状況は反対だと思うが、米国が強い姿勢を示さないと北朝鮮が言うことを聞かないのも事実。(戦略的忍耐政策をとった)オバマ政権下、圧力がなかったから、時間だけ与えて北朝鮮の核能力が上がってしまった。頼る必要もなくなった中国の言うことも北朝鮮は聞かなくなった。戦争を起こすということではなく、北朝鮮に姿勢変化をさせるためには、米国が再び怖い存在になる必要がある」
●予測不能な米朝首脳
トランプ大統領は11日、自身のツイッターで、中国の習近平(シーチンピン)国家主席との首脳会談の際、「中国が北朝鮮問題を解決するなら、米国との通商交渉はより良いものになると伝えた」と明かした。安倍晋三首相が「中国がどのように対応するか注目している」と話すのも、朝鮮半島の非核化には中国の役割が重要だと認識しているからだ。
「故金正日(キムジョンイル)総書記時代、ブッシュ政権の発足前には、それまであまりよくなかった中朝関係を改善しようと何度も中国に行きだしたことがある。トランプ政権が圧力を強めれば、北朝鮮は理屈の上では核・ミサイルを持つことが対抗手段だと言うだろうが、同時に中国の外交的な後ろ支えが再び必要になると考えるはず。中国にしてみれば、あまり日米と一緒になって圧力をかけると頼られなくなるから、さじ加減が重要だ」(平岩教授)
では、米国による北朝鮮攻撃はないと考えていいのか。日本政府関係者は言う。
「北朝鮮がミサイルを発射したら迎撃するかもしれない。核実験をしたらミサイル報復もありうる。そう真剣に思わせるのが圧力だから、軍事行動がないなんて日米韓は絶対に言わない」
ただ、「個人的な臆測」として、こうも付け加えた。「金正恩(ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)と同様、トランプ(大統領)も何をしでかすか分からない人物だけに、共通認識の枠を超えた不測の事態が、全く起きないとは言い切れない。トランプの言うレッドラインが一般常識からずれていないといいのだが……」
●北朝鮮は準戦時体制に
4月上旬、アジアプレス大阪事務所に北朝鮮内部から情報が届いた。
「北朝鮮は今、準戦時体制のような状態にある。労働者や学生ら民間武力まで総動員させられ、高射砲陣地に寝泊まりするなどしている。ドローン撃墜命令などが出されている──」
連絡を受けた石丸次郎・大阪事務所代表によると、3回目の核実験を実施した2013年に北朝鮮が朝鮮半島の休戦協定白紙化などを次々に宣言して緊迫した時よりも「ひどい状態」だと伝えてきており、「家に帰れないし、商売の時間もなくて大変」などの報告があったという。
「ただ、北朝鮮の人たちは、この50年間、政府からずっと『戦争が起こる』と言い続けられ、信用しなくなった。体制からしてみれば、米韓合同軍事演習が続く中、シリア攻撃や空母の近海展開をする米国に対して国内の緊張を高めたいのだろうが、笛吹けど踊らずの状態。むしろ、『戦争をやるならやったらいい』と言う人も多い」
石丸氏はそう解説した。
●今そこにある危機
11日に最高ポスト就任から5年を迎えた金正恩委員長は、当初から核・ミサイル開発に固執してきた。父の金正日総書記の17年間では核実験が2回、ミサイル発射実験は16発だったのに対し、金正恩委員長は5年間で核実験3回、ミサイル発射は40発を超える。今年もすでに6発のミサイルを発射し、核保有への決意も強調している。
「自身の一人独裁体制の確立に血眼の5年間だった。自身の偶像化を進め、義理の叔父の粛清や異母兄の暗殺をしてまでも、国中を絶対服従させることに集中してきた。それはこれからも変わらない」と石丸氏。
「実績づくりで最優先にしたのが、彼の指導で高度化させた核・ミサイルだ。米国のシリア攻撃を受け、国際情勢を有利に転換させるためにも開発しかないと決意を新たにしたと思う」
しかし、代償も大きかった。後ろ盾だった中国やロシアとは、核開発停止の確約を迫られることを嫌って首脳外交を拒み続け、関係が悪化。国際社会からの孤立がより進み、経済制裁は強化される一方だ。その結果、中国製の日用品の物価が上がり、地方では電気、水道、鉄道の機能不全が深刻になった。核・ミサイル開発で多額の予算を確保するため、水害復旧や兵士の食料のための寄付という名目で一般住民から強制徴収までしていると、石丸氏は説明する。
さらに米国との首脳会談で中国が約束したとされる経済制裁の完全履行が進めば、外貨難が深刻となり、軍や警察の待遇も悪化する。体制維持のための費用調達も困難に直面する。一般住民は自己責任で暮らさざるを得ない状態で、統制経済から外れて市場経済に向かう傾向がますます強くなっているという。
「軍内部の規律の乱れや物資不足は社会常識となっており、とても全面戦争ができる状態ではない。それを金正恩氏も分かっているからこそ、ますます核・ミサイルへの一点集中をするしかなくなる」
米朝がギリギリのせめぎ合いをするなかで、“今そこにある危機”が臨界を迎えつつある。
(編集部・山本大輔)
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