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米空母は北朝鮮を攻撃するか
2017年4月14日 ワシリー・カーシン
ワシリー・カーシン氏の見方によると、アメリカは北朝鮮の核施設に対して先制攻撃は行わないし、行う意向もない。カーシン氏の指摘するところでは、トランプ大統領の行動は、中国を北朝鮮に対しより厳しい制裁に踏み切らせるための圧力だろうという。だが、トランプ大統領の外交はその脆弱さを指摘されている。
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タグ 北朝鮮、米国
Uss Carl Vinson / ZUMA Press/Global Look Press
4月10日、米海軍の空母カール・ビンソン率いる部隊が、突然、北朝鮮が6回目の核実験およびより多くのミサイル発射を行う可能性があるとの懸念から、オーストラリアから朝鮮半島へとコースを変更した。こうした動きは、北朝鮮の核問題解決に向けて米国が一方的な行動に出るのではとの恐れに裏付けを与えるものだ。北朝鮮の国営メディアは、アメリカの先制攻撃の兆候が見られた場合には、米国に対して核攻撃を行うと警告した。
異常な力の誇示
マティス米国防相の複数の声明からすると 、空母カール・ビンソンおよびそれに随う艦船が朝鮮半島沿岸に接近していることは、通常の力のデモンストレーションにすぎず、それは半島情勢の悪化にともなうものだという。
北朝鮮のミサイル発射と実験に対するこの種の力の誇示と軍事演習は、昨年多く行われたが、今回のカール・ビンソンの出動は、この類の力の誇示とは異なる外交的文脈で起きている。
すなわちそれは、米海軍がシリアのシャイラート空軍基地に巡航ミサイルによる攻撃を行った、その直後に起きており、しかもこの攻撃は、中国の習近平国家主席が米国を訪問しているさなかに行われた。だから、ミサイル攻撃の目的の一つは、中国の指導者への心理的効果だろう。
しかもこれに続き、米政府の要人が一連の好戦的な声明を出した。その中には、トランプ大統領自身のツィッターでの発言も含まれている。すなわち、米国は一方的に北朝鮮に対して先制攻撃を行う用意がある、と。
あるゆる点から見て、米国の目的は、北朝鮮に対する国連安全保障理事会での新決議採択を前に、中国に対して断固たる圧力を加えることにあるだろう。推測されるところでは、この決議は、北朝鮮の完全な通商関係の封鎖を内容としており、その中には、海外との船舶航行の禁止、石油の禁輸、北朝鮮労働力の輸出の禁止などを含んでいる。この労働力輸出禁止は、ロシアの利益を直接損なうことになる。というのは、ロシア国内では数万人の北朝鮮労働者が働いているから。
今後の展開のシナリオは?
とはいえ、中国がその原則的な立場を変更し、北朝鮮の完全封鎖に踏み切る兆候はまったくない。国連決議の内容の調整においても進展は見られない。またとりわけ、北朝鮮が新たな挑発行動に踏み切り(例えば、4月15日の金日成の誕生日に合わせてミサイル発射や核実験を行うなど)、それを受けて決議の内容を審議しなければならないような事態を考えると、米外交の完敗となり得るだろう。
こんな敗北を喫したら、北東アジア地域でそれが見逃されることはあり得ず、今後の中国、北朝鮮その他のプレイヤーの行動にも影響するだろう。トランプ大統領はすでに、そのラディカルなアイデアの多くを放棄せざるを得なくなっており、その中には、中国との「通商戦争」も含まれている。もっとも、米国が中国側から何らかの限定的な譲歩を引き出せる可能性は残っているが(例えば、牛肉を中国市場に輸出する問題で)。
トランプ大統領はすでに再三、「一つの中国」の原則を承認する用意があると述べてきたが、彼がそれを取引材料にすることを示唆した後でも、何の見返りも得られなかった。さらに北朝鮮問題でも進展がないことは、トランプ大統領の予測不可能な ディレッタントとしての評判をただ裏付けるだけだ。つまり、自国への脅威を具体的な行動で防ぐことができない素人だという悪評を。
仮に中国が対北朝鮮制裁の根本的な強化に踏み切ったとしても、中国がそれを完全に履行する用意があるか否かという問題は残る。それは、これまでに同種の国連安保理決議で見られた通りだ。
アメリカの新戦略は、北朝鮮問題を解決するための最後の手段として、「軍事オプション」をも辞さずというものだ。だが、このオプションを実行するうえで現在存在している障害は、今後はさらに大きくなるだけだと考えられる。その障害の主なものは、北朝鮮が反撃した場合に韓国と日本が脆弱であること。だから、北朝鮮の軍事プログラムが進展すればするほど、その障害もまた増大していくことになる。
オバマ前米大統領のアジア太平洋地域における戦略は、中国の影響力を抑え、米国の役割を強めようとするものだったが、あまり成功しなかった。しかしながらトランプ大統領の、いくつかの「特に価値のあるアイデア」を導入することで状況を変えようという試みは、明らかに冒険主義的な性格をはらんでいる。それは、この地域での米国の立場を悪化させ、それと敵対する国の自信を強めるだけのことだ。
全体として、トランプ大統領選出後、米外交に何らかの質的変化がもたらされるのではとの期待は裏切られた。ロシア、中国のような国との関係を何か根本的に変えるには、新大統領は外向は強くないと言わざるを得ず、強力な外交チームもない。米国は旧来の道を継続しているが、それは、米国の国家機構のかつてない組織性の欠如、そして次第に権威を喪失していくなかで行われている。
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