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「示された沖縄の民意を考える」(時論公論)
2017年10月24日 (火)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/282591.html
西川 龍一 解説委員
沖縄では、今回の衆議院選挙でも本土と異なる民意が示された結果となりました。背景にはアメリカ軍普天間基地の辺野古移設を推進する政府与党の姿勢など、在日アメリカ軍基地負担の問題が沖縄任せになっていることへの反発があります。しかし、こうした基地問題が沖縄以外で選挙の争点になることはありませんでした。本土とは異なる沖縄の民意をどう捉えるべきなのかを考えます。
まず、沖縄の4つの小選挙区の結果を簡単に見てみましょう。本来政権選択選挙である衆議院選挙ですが、沖縄では、基地問題が大きな争点の一つでした。1区から3区まで自民党の候補者をおさえて当選したのは、いずれも普天間基地の名護市辺野古移設に反対する沖縄県の翁長知事を支持するグループが支援し、移設反対で野党が連携した候補者です。一方、尖閣諸島を抱える石垣市や宮古島市などを含む4区では、自民党の候補者が議席を奪還し、風向きの変化と見る人もいます。
沖縄では、3年前に翁長知事が辺野古移設反対を掲げて移設を推進する現職を破って以降、国政選挙では、同じ年に行われた前回の衆議院選挙、去年の参議院選挙と、いずれも辺野古移設を容認する自民党の候補が移設に反対する非自民系の候補に敗れ、自民党は衆参ともに選挙区選出の国会議員がいない状態でした。一方で、今年に入って行われたうるま市などの市長選挙では、翁長知事らの推す候補が自民党などの推薦する候補に相次いで敗れ、菅官房長官は「翁長知事の言う『オール沖縄』は現実とは違うのではないか」と述べるなど、知事の求心力の低下を指摘する声があがっていました。ただ、一連の市長選挙では辺野古への移設そのものは争点とはなりませんでした。本格的な埋め立て工事が始まった今も、辺野古移設に反対する沖縄県民が多数を占める状況に大きな変化はないことが見て取れる選挙結果と言えると思います。
衆議院選挙の期間中、沖縄では、基地の加重負担を象徴するような事故が発生しました。普天間基地に配備されている大型ヘリコプターが民有地に緊急着陸して炎上したのです。事故は、選挙公示日翌日の10月11日、沖縄本島北部の東村で起きました。7人の乗務員は避難し、住民にもけが人などはいませんでしたが、現場から300メートルほどのところには民家がありました。事故を起こした海兵隊の大型ヘリコプターと同じ機種のヘリコプターは、13年前の2004年8月、普天間基地に隣接する沖縄国際大学の敷地内に墜落し、大学の校舎や周囲の住宅の屋根などに被害が出ています。事故の知らせを受けた翁長知事は、「ただただ悔しさと怒りでどのようにこれを表現すればいいのか。防衛省や外務省にいくら抗議をしても、アメリカ軍に伝えると言うだけ」と述べました。選挙期間中の事故が、県民の投票行動に影響したという指摘もあります。
今回の事故が、基地の加重負担を象徴するというのには、ほかにも理由があります。現場近くには、アメリカ軍北部訓練場があります。訓練場は、去年12月、半分以上の4000ヘクタールが返還され、政府は戦後最大規模の返還だとして、沖縄の基地問題の中で目に見える負担軽減だと説明してきました。しかし、返還には条件がありました。返還されない場所に、訓練場に隣接する集落を取り囲むように6つのヘリコプターの発着場を建設するというものでした。沖縄の基地返還は、普天間基地のように県内に移設先を求めるなど、こうした条件付きのものがほとんどで、沖縄に基地が集中する状況に変化はありません。住民からは、集落のない場所が返還されても集落近くにこうした施設が作られれば、騒音被害や住民の危険性が増すことが懸念され、基地負担の軽減にはならないという声がありました。今回の事故は、そうした懸念が現実になった形です。
今回の事故では、アメリカ軍の事故に対する日本の警察や政府の対応の限界も改めて明らかになりました。
不時着したのは、基地の外の民有地であったにも関わらず、アメリカ軍が規制をして、地元の警察も消防も事故を起こした機体に近付くことができませんでした。機体は、アメリカ軍が解体して撤去したため、警察による実質的な現場検証はできないままで、日本側による事故原因の究明は困難な状況です。同じような事態は、去年12月、輸送機オスプレイが名護市の海上で大破した際にも起きました。
さらに、日本政府や地元自治体が事故原因の究明や再発防止策が取られるまで同型ヘリコプターの飛行停止を求めたにも関わらず、これを無視する形で事故から1週間後に飛行が再開されました。アメリカ軍から事故原因についての説明も再発防止策も示されないままのことでした。飛行が再開された1時間後には、事故現場の東村の上空でも飛行が確認され、住民感情を逆撫でするものだと憤りの声も聞かれました。小野寺防衛大臣は、「安全性に関するアメリカ側の判断の根拠について十分な説明が得られないまま飛行が再開されたことは誠に遺憾だ」と述べましたが、翁長知事が発生直後に漏らした言葉通りとなったわけです。日本側の申し入れを無視して事故機と同型機の飛行を再開するのは、去年のオスプレイの事故と同じ対応で、常態化しているのが実情です。沖縄の負担軽減を声高に繰り返しながら国には当事者能力がないのではないか。沖縄からは日本政府に対する失望の声があがっています。
こうしたアメリカ軍と国の関係は、沖縄に限ったことなのでしょうか。そうとは言えない事態が、このところ本土でも相次いでいます。
今月11日、広島県北広島町で、訓練中のアメリカ軍の戦闘機と見られる機体から火の玉のような物体が数回発射されました。海兵隊の戦闘機が普段は海上で行う敵のミサイル攻撃をかわすための「フレア」と呼ばれるおとり用の装備を発射したことを認め、広島県などが防衛局を通してこの地域での訓練を行わないよう求めていますが、今のところ回答はありません。
今年8月には、大分県の大分空港にオスプレイが緊急着陸しました。その後オスプレイは、11日間にわたって空港に駐機を続けました。その間、大分県をはじめとする地元の自治体にはトラブルの内容やいつまで空港にとどまるのかなどについて説明は一切なく、離陸の際にも連絡はなかったということです。
こうした事態に共通して言えるのは、いずれもアメリカ軍施設とは関係のない場所で起きているにも関わらず、アメリカ側が国や自治体の声に耳を貸さないということです。アメリカ軍の管轄権が及ばない場所で起きた事態に、防衛省も外務省も無力な状態は、沖縄でも本土でも変わりないことが示されたわけです。軍事上の運用の問題や日米合同委員会によるガイドラインの制約があるにせよ、こうした事態は、日本の主権に関わる問題をはらんでいます。軍事の専門家の中には、こうした事態に何も言えない状態が、健全な同盟関係と言えるのかと疑問を呈する人もいます。
今の日米安保体制を維持するための負担を担っているのは沖縄であるにも関わらず、多くの国民が無頓着でいられるのは、基地問題は本土から遠く離れた沖縄に任せておけばよいと無意識のうちに思っていることの現れのように思います。今回の衆議院選挙で示された本土と異なる沖縄の民意を他人事として捉えるべきではないと言うことを指摘しておきたいと思います。
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