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日報隠しの本当の原因は防衛省の組織崩壊にあるのではないか
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2017-07-24 天木直人のブログ
きょうの予算委員会で、加計疑惑と並んで日報隠し問題が野党から追及される。
その前に、この日報隠しに関する私の考えを書いてみたい。
結論から言えば、日報隠しの責任は稲田防衛大臣の無能さにあり、そのような人物を任命し、居座らせた、安倍首相にある。
しかし、日報隠しのより深刻なところは、日報の取り扱いをめぐる防衛省内の意思決定の不透明さにこそあると、私は考えている。
どういうことか。
南スーダンのPKO派遣部隊から「戦闘状況にある」と書かれた「日報」、すなわち日々の活動状況を記録した報告が送られて来たのがそもそもの始まりだ。
最初の問題点は、この日報を受け取ったPKO派遣部隊の責任者、つまり陸上自衛隊がどう判断し、どう対応したかである。
具体的には陸自の最高責任者である岡部俊哉陸上幕僚長が、そこに書かれていた「戦闘状況」を認め、PKO参加五原則にいう「紛争当事者間の停戦合意」から逸脱していると判断したかどうかだ。
しかし、たとえ岡部陸自幕僚長が「戦闘」状況であると認めても、それはあくまでも陸自限りの判断である。
自衛隊としての最終判断は河野克俊統合幕僚長(海自幕僚長出身)の判断を待たねばならない。
そして、河野統合幕僚長が「戦闘」状況であると認めても、それはあくまでも制服組のトップの判断でしかなく、防衛省の判断は黒江哲郎事務次官の判断を待ってはじめて決まる。
それがシビリアンコントロールだ。
稲田防衛大臣は、黒江事務次官から防衛省の判断を聞いて初めて政治的判断を下す立場にある(報道では岡部陸自幕僚長が日報の存在を稲田大臣に伝えたとなっているが、岡部幕僚長が統幕議長や黒江事務次官の了承を得て、代りに伝えたのならいざ知らず、勝手に伝えていたとすれば、それは伝えていた事にはならない。稲田大臣は報告を受けていないと言い張る事ができるのである)
報告に書かれている内容は、日報隠しの判断と表裏一体である。
なぜ隠さなければいけなかったのか。
もちろん、そこに現地は戦闘状況にあると書かれていたからだ。
もし防衛省が現地報告をそのまま認めず、現地の状況はPKO派遣5原則に違反していないと判断していたなら、隠す必要はなかったはずだ。
戦闘状況を認めたから、PKO五原則違反、さらには憲法違反のおそれがあると判断し、隠そうとしたのだ。
問題は、誰が、いつ、どのような内部議論を経て、そう(つまり隠そうと)判断したかだ。
それは極めて高度の政治判断だ。
だから本当なら政治家である稲田防衛大臣が自らの政治判断で行い、それを事前に安倍総理に伝えて了解を得なければいけないはずだ。
ところが、おそらく稲田大臣にはその問題意識がなく(あるいは事前に知らされることなく)、防衛省の判断をそのまま受け入れたに違いない。
それでは、隠ぺい判断は、黒江事務次官が下したのか。
あるいは河野克俊統合幕僚長が下したのか。
あるいは岡部陸上幕僚長が下したのか。
制服組が下したとなるとシビリアンコントロールの逸脱になる。
もともと制服組と背広組(防衛官僚)の間には対立関係がある。
安倍首相の下で河野克俊統幕議長の判断が優先されていたなら大問題だ。
そして、もし岡部統幕議長と河野統幕議長との間で意思疎通がうまく行っていなかったとすれば危険だ。
もともと陸自と海自の間には、帝国憲法下の陸軍と海軍以来の対立関係にあると言われている。
統幕議長のポストは陸海空自のもちまわりだ。
河野統幕議長は安倍首相に重用されて任期を再延長されている。
河野統幕議長と岡部陸上幕僚長の間に責任のなすりつけ合いがあってもおかしくない。
こう考えて行くと、今度の日報隠し疑惑は、単なる稲田防衛大臣への批判に終わるだけでなく、そのプロセスこそ解明される必要があるのだ。
そして、防衛省内の混乱のなせる業であることが明らかになれば、稲田大臣は防衛省の内局制服組の幹部ともども、引責辞任すべきだ。
そして、そのような事態を引き起こした最終責任者である安倍首相は内閣・総辞職ものなのである。
はたしてきょうの国会はそこまで議論が及ぶのだろうか(了)
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