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毎日新聞2017年5月22日 東京朝刊
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2017/05/22 05:57
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安倍晋三首相が3日、憲法の9条1項と2項を維持した上で自衛隊の存在を明記する改正案に言及したことについて、報道各社の世論調査結果が出そろいつつある。ところが、比較すると傾向は一様ではない。質問や回答の選択肢が違うためだ。9条改正賛成派も反対派も、今の段階で結果に一喜一憂するのは早いと言えそうだ。【大隈慎吾】
(以上「毎日新聞」より引用)
各全国紙に掲載された「世論調査」の支持率には各紙の立場が明確に表れていた。政権の幇間そのものの読売、産経、共同の各紙は異常な高支持率を示した。
毎日新聞は質問の仕方が異なるから一律に「憲法改正」に対する評価は出来ない、としている。国民は「憲法改正」の何が問題なのか解りかねている。
そもそも安倍氏が突如として党の憲法審議会とも異なる私見をテレビを通して表明したのは党総裁として余りに見識を欠いている。しかし、そのことを指摘したマスメディアは皆無に近い。
民主主義を党名に織り込んでいる自民党が総裁の「自由」意志により暴走したのは明白だが、そうした党内論議を経ない私見を新聞紙上にも発表する、という愚挙を繰り返す安倍氏を全く批判しないのはなぜだろうか。
「安倍一強」といわれる現在の政治状況はマスメディアにより作られたものだ。自民党内の異論をあえて取り上げず、民進党や野党の見解を紙面で積極的に取り上げようともしない。
報道機関が報道しなければ、国民の多くは安倍氏だけが憲法論議に積極的だ、と勘違いしてしまう。国会議員諸氏はそれぞれ立場が異なるとはいえ、多かれ少なかれ議論のグループに属して憲法論議と改憲に対する理解を深めている。
自衛隊を憲法に明記すべき、とは一見尤もらしいが、必要なのは自衛隊の行動範囲と行動形態だ。自衛隊は既に存在し、米国の強い影響下とはいえ、存在に国民は馴染んできた。
しかし馴染みさえすればそれで良いのか、という議論もある。憲法が明確に「戦争放棄」を記しているにも拘らず、自衛のための戦争なら良い、というのであればその定義を明確にしておく必要があった。
米国の求めがあれば良い、というのでは法律ではない。それは「条約」だ。憲法に定めるのにそうした特異な状況は馴染まない。
自衛隊が日本国民のための自衛戦争だけは武力行使できる、と明確に定め、その作戦行動範囲も明確にすべきだ。安倍氏は先制攻撃も「了」として北朝鮮のミサイル基地も事前に攻撃できる、かのような見解を述べているが。
そうした未確定な作戦範囲と、武力行使の段階を明確に定義しないで「観念」で自衛戦争を語るのは危険すぎる。安倍氏はあえてそうした明確化を避けて、統帥権を縛られないようにして、自衛隊の存在と武力行使を手に入れようとしているだけではないかと思われる。
その結果は米国の下請けとして朝鮮半島紛争時には自衛隊が米軍とともに作戦を行うことを可能にするに過ぎない。改めて指摘するまでもないが、米国が北朝鮮と正面から向き合おうとしているのはICBMを開発している北朝鮮が米国本土攻撃が可能な段階に達しようとしているからだ。日本はとうの昔から北朝鮮のミサイルの射程下にある。
北朝鮮の脅威を梃子に、安倍氏は軍事強国を築こうとしている。それは「いつか来た道」だ。
北朝鮮のミサイル発射に「強硬に抗議する」だけで、安倍氏はなぜ訪朝して金正恩氏と対談しようとしないのだろうか。これまで彼は世界各国を漫遊してきたが、北朝鮮だけを避けてきたのはなぜだろうか。
それでも国民の多くは安倍氏を支持し、「共謀罪」の強行を支持する、というのだろうか。そうしたマスメディアの「世論調査」の結果は到底信じられない。
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