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ただ米国にむしり取られるだけの「日米経済対話」ー(植草一秀氏)
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14th Apr 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
4月6日にトランプ大統領がシリアへの空爆を決定し、
実行に移されたことを契機に「地政学リスク」への警戒が強まっている。
とりわけ日本の株式市場では不安心理が強まりつつある。
ドイツの株価などはほとんど影響を受けていない。
日本株価に下方圧力がかかっているのは、地政学リスクへの警戒とともに、
為替市場で円高=ドル安の流れが強まっているためである。
「有事のドル買い」
と言われることが多いが、現在の金融市場で観察されているのは
円高・ドル高の進行である。
各種要因で米国長期金利が低下し、
米ドルが下落。
リスクオフの資産選択として
株式から債券へのシフト
が生じ、
さらに、米国のトランプ大統領が
「ドルが高すぎる」
の発言を繰り返した。
これらの事情を背景に円高=日本株安の反応が生まれている。
詳しくは、
『金利・為替・株価特報』2017年4月17日号
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
をご高覧賜りたい。
米国の為替政策がドル安とドル高のどちらを指向しているのか。
判断がつきかねる要因がある。
財務長官に就任したムシューニン氏は
「強いドルは中長期的に米国の国益」
と発言している。
他方で、トランプ大統領は
「ドルが高すぎる」
の発言を何度か繰り返している。
4月12日にも、経済紙のインタビューで「ドルが強すぎる」と発言し、
これが為替市場でのドル安反応を生んでいる。
トランプ大統領は大統領選のさなかから、米国の貿易収支赤字を問題にしてきた。
マクロベースで言えば、貿易収支赤字、経常収支赤字が大きいということは、
国民の所得以上に国内支出が行われていることを意味する。
日本などは対外収支が黒字であるから、
国民の稼ぎと比較して国内での支出が小さいということになる。
国内で余ったお金は最終的に海外に融通される。
日本の場合、余ったお金を米国国債などに流出させているが、
こうした対外金融資産は円高が進行すると目減りする。
つまり、米国は少ない所得で贅沢な支出活動を行い、
日本は多い所得でもつつましやかな支出に留めていることになる。
そして、余剰の資金を米国に融通しても、結局円高でその価値がなくなってしまう。
どちらが賢い生き方なのか。
考える必要がある。
これらの分析はさておき、4月17,18日に日米経済対話が始動する。
米国からはペンス副大統領をヘッドに、ウィルバー・ロス商務長官などが来日する。
マクロ経済政策、経済協力、貿易枠組みの3つの部会が構築されると伝えられている。
フロリダでの日本の首相と中国の主席への対応ぶりを見ると、
米国は日本を完全に下に見ている。
「対等の対話」とはかけ離れた位置付けにある。
トランプ大統領は、日本にさらに大きな経済協力を貢がせ、
他方、米国の要求だけを呑ませる日米貿易協定の締結を迫ってくる可能性が高い。
これを呑ませるために「円高圧力」をブラフとして活用しているように見える。
日本はTPPのような国益喪失の交渉をするべきでない。
TPPよりもさらに国益を上納する日米2国間協定の締結を断固拒否するべきである。
しかし、安倍首相の対米隷属姿勢を見る限り、極めて危うい情勢が存立している。
TPP阻止に向けて活動を展開してきた
「TPPを発効させない!全国共同行動」
https://nothankstpp.jimdo.com/
は日米経済交渉日程に合わせて、首相官邸前で官邸前アクションを実行する。
1人でも多くの主権者が参集して、
安倍政権による国益喪失の対米朝貢外交を阻止するために声を
上げなければならないと考える。
「日米経済協議に異議あり!官邸前アクション」
時:4月18日(火)18時〜19時30分
所:首相官邸向かい(国会記者会角)
「マクロ経済連携」で米国が問題にするのは米国の対外貿易収支赤字である。
2015年の米国の貿易収支では、
対中国 3672億ドル
対ドイツ 748億ドル
対日本 689億ドル
メキシコ 607億ドル
の赤字が計上されている。
日本の2016年の貿易収支計数を通関統計で見ると、
対米貿易黒字は 6兆8342億円
そのうち、
自動車が 4兆3214億円
自動車および自動車部品が 5兆1335億円
となっている。
日本の自動車メーカーは、米国やメキシコでも自動車を生産して、
これを米国に供給している。
日本の自動車メーカーが、日本やメキシコではなく、
米国で生産して米国の消費者に自動車を供給するなら、
米国の貿易赤字は、この部分では解消し、その分、米国の生産が増える。
米国での生産が増えるということは、米国の雇用が拡大するということで、
トランプ大統領は日本の自動車メーカーの米国での生産拡大を求めている。
また、日本の米国製自動車の輸入拡大も求めている。
しかし、これらは「静学的」分析である。
日本のメーカーが生産拠点を日本やメキシコなどから米国に移動させたときに、
上記の足し算、引き算通りに米国の貿易赤字が縮小するとは限らない。
価格の上昇した日本車を米国の消費者がいままでどおり買うとは限らない。
別の国からの輸入が増えて米国産車が売れ残るかも知れない。
部分均衡ではなく、一般均衡で考察しないと、経済変動の結果は断定できないのだ。
当然のことながら、この種の論議は発生し得る。
しかし、トランプ大統領は、一般国民に分かりやすいロジックで、
こうした主張を展開しており、米国の労働者は、現実問題として、
輸入の増大によって仕事を失ってきたとの経緯を経験しているため、
こうした「素朴な」主張が一定の説得力を持つのである。
米国は日本と対等な対話ではなく、
日本の譲歩をあからさまに求めてくることになる。
安倍政権はTPPがあたかも日本国民の利益になるかのような説明をしてきたが、
現実はまったく違う。
一番分かりやすい例を挙げておこう。
TPPは関税率を引き下げて自由貿易を推進するものだと安倍政権は主張する。
日本は輸出立国、貿易立国だから、関税率引き下げは日本の輸出を伸長させ、
日本経済にプラスなのだと説く。
日本が関税率の引き下げでメリットがあるとすれば、
それは日本の製造業の輸出の増加、
とりわけ自動車分野の関税率引き下げということになる。
ところがTPPでは日本の自動車の対米輸出について、次のように決定されたのだ。
日本の対米自動車輸出についての関税率は、
現在、乗用車が2.5%、トラック(SUVを含む)が25%だ。
TPPでの決定は、
乗用車の関税率2.5%が14年間、
トラックの関税率25%が29年間
「一切引き下げない」
というものである。
他方、安倍政権は農産品のなかの重要5品目(コメ、麦、砂糖、肉、乳製品)に
ついては、「聖域」として「守る」としてきた。
ところが、米国からの肉の輸入について決定されたのは次のものだ。
牛肉については現在、38.5%の関税率が、
TPP発効時点で27.5%に引き下げられ、16年目からは9%に引き下げられる。
豚肉は現在、キロ当たり482円の関税が、
発効時で、いきなり125円に引き下げられ、10年目からは50円になる。
「聖域」として守るとしてきた「肉」の関税がこのように急激に引き下げられる一方、
日本が唯一メリットだと考えてきた自動車輸出の関税率は、
14年も29年も引下げがゼロと決められたのである。
ほとんどの国民が、このような「TPPの真実」をまったく知らない。
御用メディアが、
「自由貿易を守り、推進するTPPを日本政府は推進する」
という
「大ウソ」、「大本営発表」
を撒き散らし、日本国民の利益が次から次に喪われているのである。
安倍政権は米国に命令されると逆らえない。
「世界にアピールできるゴルフ同伴」を振る舞ってやったのだから、
「あとはすべての命令に服従せよ」
という姿勢なのだ。
そして、安倍政権は米国の命令にただひたすらひれ伏すだけなのである。
このような状況で日米経済「対話」が実行されることを、
日本の主権者は許すべきでない。
だから、国民の直接行動が重要なのである。
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