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完全密着1週間「籠池泰典」が語った「安倍を討った理由」
http://smart-flash.jp/sociopolitics/18142
2017.04.05 SmartFLASH 週刊FLASH 2017年4月11日号
「東京までの『移送』を手伝ってほしい」
籠池泰典理事長(64)からの頼みに正直、驚いた。
森友学園をめぐる問題の取材を続けるなか、2月17日には自宅前で直撃取材、3月に入ってからは囲み取材に参加するなど、外側から見つめ続けてきた籠池理事長。
だが、ひょんなキッカケからいろいろな相談事を受けるようになっていた矢先だった。一週間後に証人喚問を控えているため、早めに上京して準備に専念したいのだという。
まず、理事長のお嬢さんたちが、自宅から夫妻を連れ出し複雑なルートを経て、私の待つ関西某所までやってきた。大きなマスク越しではあるが、夫妻の不安な様子は隠せない。そこから、タクシー、近鉄電車を使って、まずは名古屋まで向かった。
移動中も夫妻の携帯電話にはメールや電話の着信が止まらない。かつての仲間からのものも多かった。そのひとつを見せてもらうと、こうあった。
〈日本会議の活動と安倍首相に迷惑を掛け、悲願である憲法改正が出来なくなるようなことをされるなら、ただでは済ましませんぞ〉
安倍昭恵総理夫人から100万円の寄付金をもらったと明かした3月16日以降、ともに保守の活動をおこなっていた人たちからの恫喝がやまないという。
名古屋で新幹線に乗り換える。ホームの売店に置かれた新聞、同じ車両の乗客が開く雑誌、新幹線のテロップなど至るところから「森友学園」「籠池」の文字が飛び込んでくる。追われるとはこういうことなのか。
新横浜駅でタクシーに乗り換えた。ホテル玄関に到着すると、数多くのホテルマンの誘導により地下の搬入口へ。荷物用エレベーターに乗り換え扉をくぐると、そこはVIPフロアだった。
「スパイ映画みたいだね」
籠池理事長に笑みが戻った。
数日後、理事長夫人が証人喚問用の資料収集のため大阪に戻った。以降、日中のほとんどの時間を籠池理事長とともに過ごすこととなった。
報道陣の前では胸を張り仰々しく語っていた理事長だが、ふだんはとても穏やかなことに驚いた。あまり強い大阪弁は使わない。むしろ上品なのだ。育ちがいいのではと思い尋ねてみた。
「香川県のご実家はどんなお仕事をなさっていたんですか?」
「籠池海運っていう会社をやってて昔はけっこう羽振りがよかったんだ。道を歩いていると、籠池の坊ちゃんと呼ばれたよ。でも僕が小学校5年生のときに潰れてしまってね」
その後、夜逃げ同然で兵庫県尼崎市に移住。金銭的にかなり苦しい生活が続いたという。
物静かな人なのだが、こと政治の話になると熱を帯びる。中国中央テレビが「日本食品の放射能汚染」について報道したというニュースに出くわすと、「いいんですか? こんなことを放置して。抗議しなきゃダメでしょう」と真顔で詰め寄ってくる。
ある日は、夜も同じ部屋で過ごすことになった。就寝前、おもむろに冷蔵庫から梅酒のソーダ割りの缶を取り出す。確か、酒は飲まないはずだが……。
「小学校開校までは酒を断つつもりだったんだ。もう断酒して3年。でもダメになっちゃったから。僕にとっては命がけだった。うん、小学校の認可取り下げは残念だね」
笑いながらそう言うが、さすがに哀愁が漂う。日本中から追われるようになって約2カ月。疲れ切った様子で時折、昼間にうたた寝する姿も見られたのだった。
一方、嘘の証言をすると偽証罪で逮捕の可能性がある「証人喚問」だが、理事長に臆するさまは感じられない。
「テレビ中継はあるのかな? 中継しないとダメだよ。国民的な関心事なんだから。僕は参考人招致のつもりだったんだけどね。いつの間にか証人喚問になってたんだ。ハッハッハ」
もしかして、この人、証人喚問を楽しみにしてるんじゃないのか。ふと、そんな気さえしてきた。とにかく食欲が旺盛だ。ルームサービスのカツ丼やお寿司などをペロリと平らげる。
だが、周囲は違う。証人喚問前日には、弁護団や家族の緊張はピークに。なにしろ理事長の「クビ」がかかっているのだ。さすがの理事長もリハーサルに余念がない。ふだんは食事に頓着しない理事長から、「おにぎりを買ってきてほしい」と頼まれた。「日本男児たるもの、戦の前は握り飯でなくてはならない」という。
そして、ついに運命の日がやってきた。出発前にいま一度、証人喚問での冒頭陳述を読み上げる。9時になるとホテルのスタッフが迎えに来た。外出時はVIP用出入口から誰にも見つからずに出発することになっている。
――今のお気持ちは?
「うん、清新溌剌(せいしんはつらつ)」
満面に笑みを浮かべ、そう答える。ホテルの部屋を出る際に、手をものすごく強い力で握り締められた。
証人喚問では、「怒りを覚えた政治家は?」という問いかけに、「大阪府知事です」と籠池理事長は即答した。「大阪府知事以外でハシゴを外されたと強く感じる方は?」と再度、聞かれるも「大阪府知事です」と返した。松井一郎府知事への怒りは収まらないようだが、その理由を常々、こう語っていた。
「我々は2015年1月、大阪府の私立学校審議会から認可相当という答申をもらったから、校舎の建設工事を始めたの。ところが、いざ開校の間際の段になって、認可を出せない、出さない雰囲気になってきた。府知事の対応はおかしくないでしょうか。松井さんに手のひら返しをされたんですよ」
午前の参議院、午後の衆議院の喚問終了後、外国特派員協会に移動して記者会見。都合6時間半しゃべり続けた後、ホテルに帰還した。その表情に疲れは見えず、むしろ充実しきっているようだった。
「緊張なんかしなかったな。むしろ、わくわくしたよ。国会ってこんなとこだったんだなーって。初めて見るものばっかりだからね」
目を輝かせながら力強く答える。たいしたタマとしかいいようがない――。
「私一人だけが、悪者なのでしょうか」
この問題発覚当初、安倍晋三総理は籠池理事長について、国会でこう答えていた。
「妻からですね……教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いております。私の考え方に非常に共鳴している方で……」。それが一転、ことが大きくなったとみると、理事長を「非常にしつこい」と切って捨てたのだ。
そして籠池理事長は、100万円寄付を暴露し、昭恵夫人付きの職員が財務省に国有地売却について問い合わせをしたファクスを公開する。結果的に安倍夫妻を討つ形となったのだ。その真意はなんだったのか。
「僕はもともと安倍さんの大ファンというか崇拝者でしてね。だからこそ小学校の名前も安倍さんの名前をつけようとしたんです。そんな安倍さんに弓を引く形になったのは残念だし辛いね。
でもね、僕は保守主義者だけど、清濁併せ呑んでの保守主義者というわけではない。いいものはいい。悪いものは悪い。このまま幕引きとなっては、国民に申し訳ないという気持ちから、結果的にこういう形になってしまったのです。私の至らなさを認めて謝りますが、私一人だけが悪者なのでしょうか」
安倍総理に、清と濁を感じたということか。
外国特派員協会では、終盤にこんな質問が理事長に投げかけられた。
「あなたの発言が事実だとすれば、安倍夫妻は嘘をついているはずだ。辞任したほうがいいと思うか?」
理事長はこう答えた。
「その質問は悩ましい。ご自身が判断することだと思います」
それは、心の底から絞り出すような声であった。
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