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賃上げ失速 “曲がり角”の春闘 個人消費上方修正 下流化ニッポン 貧困直結「住宅危機 人口減社会 中間層の憤り社会を分断
http://www.asyura2.com/17/senkyo222/msg/778.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 23 日 20:38:52: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 


賃上げ失速 “曲がり角”の春闘

3月23日 15時01分
3月15日、大手企業の経営側が労働組合の要求に一斉に回答する集中回答日を迎えました。結果は、多くの企業で4年連続のベースアップとなったものの、その水準は去年を下回るというものでした。デフレからの脱却には所得の向上が欠かせないとして、政府が経済界に賃上げを求める、いわゆる「官製春闘」もことしで4年目。賃上げの流れはかろうじて継続したものの、その在り方は曲がり角に来ています。
(経済部・山田賢太郎)
賃上げの勢い なぜ失速

賃上げの勢いは、なぜ、失速したのか。

私が担当している自動車業界を中心に、ことしの春闘の労使交渉を振り返ってみます。

どれくらいの水準の賃上げに踏み切るか、経営側が決断する際に、大きな判断材料となるのは、今後も安定的に収益が上げられるかどうか、という点です。経営側からすると、ひとたび、基本給を引き上げるベースアップを実施すると、将来にわたって会社側の負担になるという理由からです。

トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど主な自動車メーカーの労働組合は、去年の要求額と同じ3000円のベースアップを要求しました。これに対して、経営側は、円高で足元の収益が圧迫されているうえ、さらに保護主義的な主張をするトランプ政権の政策が、経営にどのような影響を及ぼすのか読み切れない、などと主張。組合側にとっては逆風が吹く中で交渉が始まりました。

自動車メーカーなどの労働組合で作る自動車総連の相原康伸会長は「働く人の将来への不安を払しょくし、豊かな国内市場を作っていくという意味でも、労働条件の引き上げはその根幹だ」と高い水準でのベースアップにこだわる姿勢を示しました。

ニュース画像
これに対して、ある自動車メーカーの幹部は「政府からの要請もあり、ベースアップはやらないといけないが、足元の業績もよくなく、去年までのようにはいかない」と慎重な物言いで、労使双方の溝は深い状態が続きました。

こうした中で、注目されたのが春闘の相場作りに大きな影響力を持つトヨタ自動車の対応です。トヨタ自動車はことし3月期の業績は、本業のもうけを示す営業利益が前の年度と比べて35%余りも減益となる見通しです。大きく利益が落ち込む中で、トヨタの幹部は「会社の実力以上のものは出せない」と述べるなど、経営側は去年の妥結額の1500円には遠く及ばないというスタンスを崩しませんでした。

ただ一方で、政府から賃上げへの期待が強く示されていることや、将来を担う人材を育て、会社の競争力を高めるという観点から、負担感が強い子育て世代にターゲットを絞って、子どもがいる従業員への手当を拡充することで、最終的には労使が歩み寄る結果となりました。

15日に妥結した主な大手企業の経営側の回答状況です。

<ベースアップの金額>(月額・ベースアップ相当分含む)

ことし 去年
トヨタ自動車 1300円 ↓ 1500円
日産自動車 1500円 ↓ 3000円
ホンダ 1600円 ↑ 1100円
三菱自動車 1000円 ↓ 1100円
日立製作所 1000円 ↓ 1500円
パナソニック 1000円 ↓ 1500円
富士通 1000円 ↓ 1500円
三菱重工 1000円 ↓ 1500円
IHI 1000円 ↓ 1500円
4年連続でベースアップは実施するものの、多くの企業で去年の妥結額を下回り、賃上げの勢いは失速気味という結果となりました。

ことしの労使交渉を振り返って、自動車総連の相原康伸会長は「掲げた要求額に届かなかったことは現実だし、昨年の実績を下回る状況も残念だと言わざるをえない」と総括。一方、経営側は、トヨタの上田達郎常務が「収益が大幅減益の見通しになる中で、昨年並みのベアは難しい状況だった。組合員の活力や日本経済の好循環に対する貢献を考え合わせたのが今回の回答だ」と話し、難しい判断だったと振り返りました。

働き方改革、大きなテーマに

一方で、ことしの春闘では新たな動きが見られました。

それは「働き方改革」が労使交渉で大きなテーマとなったことです。

自動車部品メーカーの「曙ブレーキ工業」はベースアップのほかに、仕事が終わってから次の勤務までに一定の間隔を設けるインターバル制度や、在宅勤務制度など新しい制度を導入することで妥結しました。また、大手タイヤメーカーの「住友ゴム工業」は、所定労働時間を15分短縮するものの、基本給は変えず実質的な賃上げを行うほか、1時間単位で有給休暇が取得できる新たな制度を導入することになりました。

今後の春闘について、曙ブレーキの荻野好正副社長は「賃金の引き上げも大事だが、経営を取り巻く環境は不透明で一律のベースアップは難しくなっている。働き方改革でも労使間が連携してさまざまな制度の導入につなげたい」と話していました。

春闘の歴史で、働き方にこれだけ焦点が当たるのは初めてのことで、長時間労働の削減など時代に即した新しい働き方を模索する動きは来年以降さらに広がる見通しです。

ただ、働き方改革は、単に残業を減らすとか、休みを取りやすくするだけではありません。短い時間で成果を上げるということも求められます。労使が、賃上げだけでなく、働き方についても真剣に議論をする、そのスタートラインに立ったとも言えます。

ニュース画像
曲がり角にきた“春闘”

このように新しい動きも見え始めたことしの春闘ですが、取材を通じて感じたのは、春闘の在り方そのものが、今、曲がり角にきているのではないかということです。

「賃金は上がっているけど消費に結びつかないのも事実。なぜそうなのか、分析して対応する時期が来たのではないか」

こう指摘したのは、日本商工会議所の三村明夫会頭です。デフレからの脱却を目指す政府の呼びかけに応じて、企業は賃上げを継続してきてはいるが、政府の狙いとは裏腹に、それが消費の拡大に結びついていないのではないか。そんな疑問が経営者の間から出始めています。

その理由については、さまざまな見方がありますが、厚生年金や健康保険といった社会保険料の負担額も増えているため、賃金が上がっても実際の手取りはそれほど増えていないのではないかという分析もあります。

労使がともに知恵を出し合いながら、効率的な働き方と生産性の向上を両立させる新たな仕組みをどう作り上げてゆくのか。また、政府の側も、経済界に賃上げを呼びかけるだけではなく、根強い将来不安の払しょくに結びつく社会保障制度の抜本的な改革にどう取り組むのか。経済の好循環を実現するためにも、経営側と組合側、そして、政府の側も、一度立ち止まって考えることが必要な時期にさしかかっています。

ニュース画像
山田賢太郎
経済部
山田賢太郎 記者
平成14年入局
熊本局、松山局をへて経済部
現在 自動車・重工業界を担当
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http://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2017_0323.html

 

個人消費、3カ月ぶり上方修正 3月の月例経済報告
2017/3/23 17:45
保存 印刷その他
 政府は23日まとめた3月の月例経済報告で、国内景気の基調判断を「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」として据え置いた。据え置きは3カ月連続。新車販売などが好調だったことなどから個人消費の判断を3カ月ぶりに上方修正した。

 個別項目では個人消費と企業収益を上方修正した。個人消費は2月、生鮮野菜の高騰で消費者の節約志向が強まったとして下方修正していた。だが新車販売や外食が復調したため3月は上方修正した。企業収益は1日に財務省が発表した2016年10〜12月期の法人企業統計で経常増益だったことを受け、2カ月連続で上方修正した。

 内閣府は全体の判断を据え置いた理由として「雇用や所得環境の改善に比べ、消費の回復がまだ鈍いため」としている。

 海外景気は「一部に弱さがみられるものの、全体としては緩やかに回復している」として4カ月連続で据え置いた。

賃上げ減速、中小・非正規が消費回復の鍵 (2017/3/15 23:43)

消費は力強さ欠く 2月の街角景気1.2ポイント低下 (2017/3/9 2:30) [有料会員限定]

特集「点検 日本経済」

主要ジャンル速報
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS23H18_T20C17A3EE8000/

月例経済報告 消費は持ち直しも景気判断は据え置き
3月23日 18時07分
政府は、今月の月例経済報告で、所得の伸びを背景に「個人消費」は持ち直しているものの、景気全体としては大きな変化は見られないとして、「一部に改善の遅れも見られるが、緩やかな回復基調が続いている」というこれまでの判断を維持しました。
今月の月例経済報告で、政府は、『個人消費』について、所得が緩やかに伸び、自動車販売や外食などが上向いているとして「総じて見れば持ち直しの動きが続いている」と判断を引き上げました。
また、輸出企業を中心に業績が上向いてきていることから、『企業収益』も「改善している」と2か月連続で判断を引き上げました。
『輸出』や『企業の生産』は「持ち直している」という判断を据え置き、『住宅建設』も「このところ弱含んでいる」という判断を変えませんでした。
この結果、景気全体としては大きな変化とは言えないとして、「一部に改善の遅れも見られるが緩やかな回復基調が続いている」というこれまでの判断を維持しました。
また、景気の先行きについては緩やかに回復していくとしていますが、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会の今後の利上げの動きや、トランプ政権の経済政策などに留意する必要があると指摘しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170323/k10010921901000.html

 

下流化ニッポンの処方箋 貧困に直結する「住宅クライシス」をどう防ぐか 貧困クライシス・インタビュー(3)

2017年3月15日 藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事
貧困クライシス・インタビュー(3)
 「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(毎日新聞出版、972円)を執筆した藤田孝典さんへのインタビュー最終回は、藤田さんが提唱する「社会住宅構想」について聞きました。ハウジングリスクを減らす住宅政策への転換を訴えます。出版記念トークライブ「藤田孝典さんと考えるニッポンの未来」は3月30日(木)です。【経済プレミア編集部・戸嶋誠司】

欧州で定着する「社会住宅」
 −−藤田さんはかねてベーシックニーズ、つまり生活に必要な素材の脱商品化を提唱してきました。中でも住宅分野は必要性が高いと訴えています。その考え方と方法を教えてください。
 藤田 住宅分野への投入資金を増やして住宅費(家賃)全体を下げ、不安定居住による貧困を回避したり、貧困ビジネス介入を防いだりする考え方です。不安定居住の問題は貧困に直結し、また困窮からの脱出を難しくします。日本では賃貸も分譲も含め、住宅は経済商品という考え方が根強いですが、その意識を変え、住宅を社会ストックとして整備しよう、という提案です。
 具体的には、住宅費の安い特区を作り、家賃負担を軽くしたい人に集まってもらう、あるいは、空き家を政策的に活用する、家賃への公的補助を増やすなどの方法が考えられます。
 −−公営住宅を増やすということですか?
 ◆欧州で長く定着している「社会住宅」(建設や管理に公的助成がある住宅)の考え方です。国や自治体建設による公営住宅があり、また民間企業や団体が公的助成を得て運営する住宅もあります。欧州では社会賃貸住宅が住宅全体の2割程度を占め、家賃補助受給世帯は2割、というデータもあります。
藤田孝典さん=高橋勝視撮影
 全体的に所得が減り、デフレトレンドが終わらず、人口減少が避けられないのに、日本の住宅政策はいまだ「持ち家重視」です。住宅ローン減税のような持ち家促進施策はあっても、公的住宅整備率は6%足らずです。そこで、住宅を社会資本として整備することで、ハウジングリスク(住まいを失うリスク)と困窮に陥る可能性を減らすのが狙いです。
 雇用の不安定化と所得低下は、住宅確保の大きな障害です。同時に住居が不安定だと就業や健康に影響します。中間層や低所得層向けの住宅政策充実は、経済成長や人口問題などさまざまな分野によい影響を与えるでしょう。
住宅「脱商品化」の政策転換を
 −−確かに、高い家賃負担にあえいだり、高齢者が賃貸住宅を借りにくい状況があり、不安は増すばかり。一方で、全国で空き家空き室が増えています。全体的になんだかちぐはぐです。
 ◆現在の住宅政策は、ほぼ市場任せです。ここに国、行政が介入するべきだと思っています。住宅の価格、家賃が高いまま、社会経済情勢の大変動で中間層以下の人たちに住宅不安が生まれています。不安は消費を抑え、家族形成に影響します。家賃やローン負担を減らすための住宅政策転換は時代の要請ではないでしょうか。
 ただし、国や自治体が直接住宅を建てて、ではなく、民間の力を活用しながら、市場を通じて住宅政策に手を入れる方法が望ましいと思います。民間マンションを借り上げ、一部家賃補助の仕組みを取り入れて貸している東京都住宅公社のような例もあります。
 −−昔は公団住宅や公営住宅がたくさんありました。
 ◆1951年施行の公営住宅法に基づいて、戦後の住宅整備が進みました。しかし今、自治体は公営住宅の管理・募集戸数を減らしています。認定NPO法人ビッグイシュー基金が2013年に調査・発表した「住宅政策提案書」は、近年の状況を次のように指摘しました。
 「自治体が管理戸数、募集戸数を減らした結果、応募倍率は上昇し、供給対象は狭まり、高齢者、障害者、母子家庭など、福祉カテゴリーに合致する世帯をおもな対象とする傾向を強めた。たとえ低所得であっても稼働能力があると見なされると、公営住宅入居機会はほとんど与えられない」

 住宅確保は生活の基本です。憲法第25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とうたっています。住宅問題をただ市場に任せるだけではなく、国が積極的に関与することで、新しい価値を創造すべきでしょう。
高負担と手厚い還元が必要
 −−財源が必要ですね。
 ◆そのためには思い切った増税と、税金の手厚い還元が必要です。この20年、税金や税率はじわじわと上がりましたが、上がった分が返ってくる実感を私たちは持てませんでした。負担感ばかり強まるので、増税への忌避感も強い。年金や医療をめぐって高齢者や障害者への風当たりも強まりました。今のままでは分断が広がるばかりです。
 私は増税と同時に、医療、介護、教育、保育、住宅のベーシックニーズ5分野への現物給付サービスを強化するべきだと提言しています。そうやって安心感が生まれると、例えば消費を伸ばしたり、結婚につながったりするでしょう。
 中間層がどんどん下に落ちている今の現状は、本のタイトル通り、まさに「貧困クライシス」です。クライシスを乗り越え、未来を作るための新しい発想を、どんどん打ち出していきたいですね。

藤田孝典さんの新著「貧困クライシス」好評発売中
 藤田孝典さんの連載「下流化ニッポンの処方箋」をまとめた「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(藤田孝典著、毎日新聞出版、972円)が3月1日に発売されました。相対的貧困率が16%に達したニッポンの現状を、細かな事例とデータで検証しています。全国の書店、アマゾンでお買い求めいただけます。
貧困クライシス トークライブ!藤田孝典さんと考える「ニッポンの未来」
 3月30日(木)午後6時半〜8時、東京都千代田区一ツ橋1のパレスサイドビルB1毎日ホール(地下鉄東西線竹橋駅直結)で開催します。よき未来を作るためにどのような新しい仕組みが必要なのか、来場者のみなさんと一緒に考えます。入場無料、予約制です。予約は毎日メディアカフェのサイトからどうぞ。
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170314/biz/00m/010/001000c 

若者と女性は活躍できるか“人口減社会”のサバイバル
2017年3月12日 藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事

貧困クライシス・インタビュー(2)
 3月1日発売「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(毎日新聞出版、972円)では、若者と女性を追い詰めるブラック企業の実態も多く紹介しています。「失われた20年」を経て、さらに苦しい時代を生きる若者や女性をどう支えればいいのか。著者・藤田孝典さんへのインタビュー2回目です。【経済プレミア編集部・戸嶋誠司】

藤田孝典さん=高橋勝視撮影
20年後の2037年はどんな世界になっているか
 −−バブル経済が崩壊し、グローバル化が進んで若者の貧困は誰もが知る社会問題になりました。非正規雇用率は40%超えなのに、少子化で人口減少は確定している。次の20年でいったい何が起きるのでしょうか。いま30歳の人は50歳になります。
 藤田 現在までの少子化で、日本の人口が今後減り続けることはほぼ確定しています。そもそも、人口減少とは社会システムの維持が困難になること。生産年齢人口が減り、消費が減り、税収も減るわけですから。
 このままデフレが続き、再分配のシステムが変わらず、非正規労働者が増え続けると、人口減少トレンドは加速します。社会はさらに縮み、格差が広がり、分断されて、今以上に子供を育てることが難しくなる。難しいから子供を育てようと思う人はさらに減る。あるいは、育てることを諦める人が増えます。
 現状を放置したら間違いなく日本経済は衰退するでしょう。単なる貧困問題にとどまらない、未来に対する最大の危機感を持つべき時期が来たと思います。
経団連本部前で長時間労働反対をアピールする若者=2017年3月8日
 −−将来親になる人の数が減っているのだから、今後生まれる子供の数を劇的に増やさない限り、人口も増加に転じない。しかし、子供を増やす仕組みになっていない、ということですね。どこで間違ったのでしょうか。
 ◆団塊世代(1947〜49年生まれ)に次いで人口ボリュームが大きい団塊ジュニア(広義の意味で1970年代生まれ)のところで、手を打たなければいけなかったのですが、何もできませんでした。
 団塊ジュニアは年間200万人ほどのボリュームがあります。彼らが学業を終え、就職や結婚、出産に臨もうとした時期は、バブル崩壊後の「失われた20年」と重なります。就職できなかった人、社会的経済的不安から結婚できなかった人、子供を作らなかった人が大量に発生し、2000年代前半に起こるはずだった「第3次ベビーブーム」は、結局起きませんでした。
 バブル崩壊後、政府は労働者派遣業の規制を緩和し、企業は非正規雇用を増やしました。その結果何が起きたか。低賃金労働者が増え、所得格差が広がりました。子供を増やすのではなく、減らす政策。企業を生かそうとして将来の人口を減らしてしまったのですから、失政と呼んでいいでしょう。
今の社会で女性は本当に活躍できるのか
 −−労働力確保のために、女性活躍推進が宣伝され、移民受け入れも検討されています。
 ◆昨年の「保育園落ちた日本死ね!」ブログの通り、待機児童は減らず、子育て環境は良くなっていません。しかし、仕事に就いて家事育児介護もやれ、という今の仕組みで、女性が活躍したがるとは思えません。
 他の先進諸国のように移民を受け入れ、語学と職業訓練を提供して、労働市場に押し出していくことも現実的な政策の一つとは思いますが、日本が彼らに提供する労働環境や賃金が、彼らにとって魅力的なものかどうか分かりません。
 日本でも外国人への偏見や排外主義が高まっています。実習生制度が不十分で、賃金差別もあります。それを改善しないまま、簡単に定着してくれるとは思えません。予想以上に日本は働きにくい、住みにくいと思われるでしょう。

 −−常に政策が後手後手ですね。
 ◆専門家ですら予想が立てられないほど人口減少と高齢化の速度は速く、高齢者の寿命の延びが著しい。急速に成熟しながら、人口が減り、衰退していく可能性が高く、あらゆる社会システムの専門家は強い危機感を持っています。だから今こそ、社会システム維持のために思い切った意識改革と政策転換が必要なのです。
 今後、企業が非正規雇用を減らすとは思えません。むしろ、正規雇用の賃金を下げ、平準化を目指すのではないでしょうか。もしそうであるなら、社会保障をさらに充実させなければいけません。
 どんな雇用形態であっても子供をちゃんと育てられるようにする、教育を受けさせられるようにする、介護と医療をちゃんと受けさせられるようにする仕組みに転換して、今と将来への安心感を提供する必要があります。
バブルに踊り、「失われた20年」を作った団塊世代の罪
 −−こんな社会にした大人たちに腹は立ちませんか?
 ◆立ちますよ。結局のところ、90年代中盤以降、若者の雇用を不安定にしたことが格差拡大や少子化を招いたのですから。振り返って、大人社会のその時々の選択に恨み節を言いたくなります。「あそこで踏ん張ってくれてたらなあ」と。
 企業防衛で福利厚生を削り、人件費を削り、社会保障にも手を入れず、若者を犠牲にしながら社会を温存してきたツケを、高齢者自身が今払わされようとしています。老後不安を生んだのは彼ら自身と言ってもいい。社会保障費を負担する若者が減って、自分に跳ね返るとは、なんの因果応報かと思います。
 「失われた20年」については、特にバブルに踊った団塊世代の人たちには、きっちり責任を取ってほしいと思います。

 −−若者には「貧困は自己責任だ」という意識が強いですね。
 ◆そう思わされてきたからです。そして、彼らは社会に対して「おかしい」と声を上げる回路を持っていません。内省して、「自分が悪いからだ、努力しなかったからだ、誰かのせいだ」とひたすら悩む。連帯したり、政治に向き合ったりした経験に乏しいし、かつてその役割を担った労働組合の力も弱い。
 その回路を作り、若者に希望を持たせ、将来への安心感を抱かせる政策が必要とされているのです。
藤田孝典さんの新著「貧困クライシス」好評発売中
 藤田孝典さんの連載「下流化ニッポンの処方箋」をまとめた「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(藤田孝典著、毎日新聞出版、972円)が3月1日に発売されました。相対的貧困率が16%に達したニッポンの現状を、細かな事例とデータで検証しています。全国の書店、アマゾンでお買い求めいただけます。
貧困クライシス トークライブ!藤田孝典さんと考える「ニッポンの未来」

 3月30日(木)午後6時半〜8時、東京都千代田区一ツ橋1のパレスサイドビルB1毎日ホール(地下鉄東西線竹橋駅直結)で開催します。良き未来を作るためのどのような新しい仕組みが必要なのか、来場者のみんさんと一緒に考えます。入場無料、予約制です。予約は毎日メディアカフェのサイトからどうぞ。
 <次回の「下流化ニッポンの処方箋」は、3月15日に掲載します>
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藤田孝典
NPO法人ほっとプラス代表理事

1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で生活困窮者支援をしながら、生活保護や貧困問題への対策を積極的に提言している。著書に「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」「ひとりも殺させない」「貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち」など。
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下流化ニッポンの処方箋
「中間層の憤り」が社会を分断“貧困ニッポン”の危機
2017年3月10日 藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事

貧困クライシス・インタビュー(1)
 連載「下流化ニッポンの処方箋」が本になりました。3月1日発売「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(毎日新聞出版、972円)です。3月30日(木)午後6時半からの出版記念トークライブ「藤田孝典さんと考えるニッポンの未来」を前に、藤田さんにニッポン社会の危機と、未来への希望について聞きました。【経済プレミア編集部・戸嶋誠司】

「貧困自己責任論」をたたき潰したい
 −−昨年6月の連載開始以来、あらゆる世代の貧困状況をこれでもかこれでもかというほど取り上げ、紹介してきました。「暗い話を広めるな」という批判も強かったようですね。状況は少しは変わったと思いますか?
 ◆藤田 「下流老人」を出版した2015年以降、貧困に対する社会の認知は少しずつ進んだと思います。所得が落ち込み、みんなが生活に困りやすくなっている状況が、肌感覚で理解され始めたのでしょう。誰もが「いつ自分がそうなるか分からない」という不安を感じ、当事者として考えられるようになってきたのだと思います。逆に言えば、「貧困が身近に」なったのかもしれません。
 その結果、全国での講演回数も増え続けています。不安なので話を聞きたい、もう少し貧困の実情とその対策を知りたい、と考える人が多くなりました。そこでは「一生懸命働いて、努力しているのに、困窮から抜け出せないのはなぜか」とよく質問されます。
 今回の本「貧困クライシス」でも、困窮は社会構造の問題であることを重ねて指摘しています。「自分が悪いわけではない」ということの意味を、もっと多くの人に考えてほしいと思い、本にまとめました。自己責任論をたたき潰したいのです。
 −−「貧困自己責任論」は私たちの心に刷り込まれています。
 ◆貧困バッシングや生活保護受給者批判を見ても、「貧困は本人のせい」「努力しないで怠けていたからだ」という批判が相変わらず強い。貧困への差別と偏見は、自己責任という感覚の裏返しです。
藤田孝典さん
 だからこそ、連載では、貧困に至った登場人物の生活ディテールをしつこく細かく紹介しました。自己責任なんてとんでもない、誰もがいつこうなってもおかしくないんだ、という実態を広く訴えたかったのです。
 2年前、「下流老人」の講演に行くと、「貯金をしていなかった本人が悪い」「若いころから計画性を持って生きてこなかったためだ」という発言が多かった。「貧困は個人の努力で防ぐもの」という意識ですね。
 しかし、アベノミクスの限界が見え、グローバル化や少子高齢化によって社会経済構造が激変しようとしている今、「個人の努力にも限界があるよね」というふうに、認識は変わってきました。ただし、「じゃあどうすればいいのよ」という不安は消えず、回答も用意されていません。
家族だけでは解決できない問題
 −−自己責任でなんとかするしかないと思っていたが、「どうもそうではないらしいぞ」と気づき始めた2年間、ということでしょうか。
 ◆まだ揺れていますよ。下流老人にならないために、どんな保険に入ればいいか、どんな商品を買えば貧困にならないのかと悩んでいます。それは個人の努力でしかありません。
 これまで日本の社会福祉・社会保障は、家族に頼っていました。個人や家族で乗り切るという精神論で立ち向かわざるを得なかった。家族原理主義以外の規範がないのです。では、家族の力が弱まったらどうするのか。その時の選択肢がそもそも少ない。家族主義からの脱却は、日本の社会福祉の主要目標の一つだと思っています。
 −−でも、政治は伝統的な家族観を持ち出して、家族内で解決しろと強要してきます。
 ◆社会の最小単位である家族が最初に支えるのは自明ですが、家族間の関係は思ったほど強固でもなく、しかも揺らいでいます。世帯所得が下がっているので、助け合いはすぐに負担に変わります。
 家族が大事、家族はお互いに温情と慈愛に満ちているものだという言説は、DV(ドメスティックバイオレンス)や児童虐待の増加を説明できません。だから、どのような家族であっても、社会の側に最低限の保障、困らないシステムを用意しておくことが必要なのです。誰もがそれを頼っていいという、意識の転換を強く促したいですね。

国境を超えて広がる分断と格差
 −−経済情勢が好転したかどうかはともかく、貧困状況を表す指標はどんどん上昇しています。しかしながら、他者の境遇を想像できない人たちもいて、社会に分断が起きているように思えます。
 ◆2012年の相対的貧困率は16%あまり。6人に1人が相対的な貧困状態にありますが、そもそも、急に貧困が増えたわけではありません。ここ20年間で、中間層の人たちが塊として、ゆっくり下に落ちています。
 中間層の中や下にいる人たちは、さらに下に落ちないように必死に踏ん張っている。努力して、がんばっている人たちからは、貧困状態にある人たちがなぜがんばれないのか、分からない。「私のように努力すれば大丈夫なのに」という視線は、すぐに「努力をしないから貧しくなったのだ」という偏見に転じます。また、このような努力至上主義は、生活保護受給者などの弱者批判に結びつきやすいという特徴があります。
 −−生活保護や外国人へのバッシングのことですか?
 ◆友人の井手英策・慶応大教授(財政社会学)は、中間層による弱者批判や移民バッシングを「反乱」と呼んでいます。彼は自分のブログ(http://ameblo.jp/eisku-ide/)でこう書いています。
 「中間層、とくにその中でも『中の下』の層の憤りが歴史を動かしているということ。転落の恐怖におびえる『中の下』が分厚く、かつ彼らが強い生活不安に襲われている国ほど、低所得層や移民層のバッシングが政治的に効果をもつ。『あなたたちの生活不安を生み出しているのは、あなたたちの仕事を奪い、福祉を乱費し、財政を危機に陥らせているあいつらだ』という具合に。英米の物語は対岸の火事ではない」
 英国のEU(欧州連合)離脱決定や米国のトランプ大統領誕生の背景が、貧困や所得格差をめぐる日本の状況と似ているという指摘です。一生懸命がんばっても報われないのは敵ががいるからじゃないか、というバッシングの連鎖は、国境を超えて広がっている。その結果、日本でもあらゆる場所で分断が起きています。
 本のタイトル「貧困クライシス」には、貧困だけではなく、貧困を巡る社会の分断こそが危機である、という思いも込めています。誰かをたたいても、自分の暮らし向きが良くなるわけではないし、誰かを幸せにするわけでもない。闘うべき相手を間違えてはいけないと、強く思います。
 <次回「若者と女性は活躍できるか“人口減社会”のサバイバル」>
藤田孝典さんの新著「貧困クライシス」好評発売中
 藤田孝典さんの連載「下流化ニッポンの処方箋」をまとめた「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(藤田孝典著、毎日新聞出版、972円)が3月1日に発売されました。相対的貧困率が16%に達したニッポンの現状を細かな事例とデータで検証し、その解決法を読者のみなさんと一緒に考えます。全国の書店、アマゾンでお買い求めいただけます。
貧困クライシス トークライブ!藤田孝典さんと考える「ニッポンの未来」

 3月30日(木)午後6時半〜8時、東京都千代田区一ツ橋1のパレスサイドビルB1毎日ホール(地下鉄東西線竹橋駅直結)で開催します。いま、どのような新しい仕組みが必要なのか、良き未来を作るための発想の転換を来場者のみなさんと一緒に考えます。入場無料、予約制です。予約は毎日メディアカフェのサイトからどうぞ。
 <次回の「下流化ニッポンの処方箋」は、3月12日に掲載します>
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藤田孝典
NPO法人ほっとプラス代表理事

1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で生活困窮者支援をしながら、生活保護や貧困問題への対策を積極的に提言している。著書に「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」「ひとりも殺させない」「貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち」など。
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下流化ニッポンの処方箋
生活困窮者の保護費を搾り取る貧困ビジネスの暗闇
2017年2月1日 藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事

 生活保護受給者向けの宿泊施設を埼玉県内の複数箇所で運営していた宗教法人に対し、さいたま市が1月26日、新規入居者受け入れと施設の新規開設を禁じる行政処分を出しました。いわゆる「貧困ビジネス」に対する、条例に基づいた規制です。私たちのNPO法人「ほっとプラス」もこれまで入居者の相談に応じ、また県やさいたま市に対応を求めていました。その経緯を紹介します。
東京の路上生活者を勧誘して埼玉の施設に収容
 行政処分を出されたのは、さいたま市岩槻区や川口市などで、路上生活者を収容する宿泊施設を運営している宗教法人「善弘寺分院宗永寺」(東京都足立区)です。
 宗永寺は2006年ごろから埼玉県内に低額宿泊所を開設し始め、主に東京都内で勧誘した路上生活者を入居させています。届け出されているさいたま市内の施設は次の通りです。
 (1)宗教法人善弘寺分院宗永寺岩槻寮=岩槻区大字浮谷1489の1(2)美園寮 =岩槻区大字釣上新田1478の1(3)掛寮=岩槻区大字掛460の3(4)豊春寮 =岩槻区大字表慈恩寺959の1(5)鹿室寮=岩槻区大字鹿室1152の1
 ある日、宗永寺の施設で暮らすある男性が「ほっとプラス」に相談に来ました。
 「施設も食事もひどくて退去したいが、手元にお金が残らないので出るに出られない。どうしたらいいでしょうか」というものでした。
 仕組みはこうです。路上生活者を入居させた後、宗永寺職員が役所に同行して生活保護を申請させます。同時に、宗永寺と入居者の間で金銭管理契約を結びます。宗永寺は毎月の保護費支給日に、マイクロバスなどで入居者を役所に連れて行き、受給した生活保護費をその場で袋ごと回収します。この保護費で施設を運営し、利益を上げていると見られます。
反貧困ネットワーク埼玉が開いた「無料・低額宿泊所」の相談会。多くの人が相談に訪れた=埼玉県川口市で2016年4月9日、鴇沢哲雄撮影
劣悪な施設で受給者を囲い込み
 男性の話を聞いて、実際に施設の部屋を見に行きました。施設はさいたま市郊外の岩槻区の民家や畑、工場が混在する地域にひっそりと建っていて、一見すると工事現場の宿舎のような雰囲気です。2階建ての建物の中に2〜3畳程度の小部屋がいくつもあり、入居者が生活しています。
 風呂トイレ共同の建物1階に食堂があり、1日朝夜2回食事が提供されていましたが、揚げ物1品にご飯、みそ汁といった貧しい内容の食事で、栄養が行き届くようなものではありません。タオルなどの生活用品はすべて有料です。
 入居者に平日500円、休日1000円のお金を渡し、あとは宗永寺側が管理します。「金銭管理ができない人に代わってお金を管理し、食事も部屋も提供している」という名目です。実際、入居者から印鑑や生活保護受給者証を預かっています。月平均12万円程度の生活保護費のうち、本人に渡るのは2万〜3万円。住居費や食費、光熱費などの名目で残りを宗永寺側が手に入れる仕組みです。
 狭い部屋と貧しい食事をあてがわれ、生活保護費の大半を入居費用として徴収されるため、まとまったお金が手元に残らない入居者は出ていくこともままなりません。生活困窮者を劣悪な環境に囲い込み、生活保護費を手に入れる「貧困ビジネス」の典型です。
 「食事はひどいし部屋には虫がたくさん出る。人が住む所じゃないが、行くあてもない」という男性に付き添い、市内のアパートを探しました。一方、「ここを追い出されたら路上に戻るしかない。行くところがないのであまり騒がないでほしい」という入居者も多くいました。貧困と路上生活者がなくならない限り、貧困ビジネスもなくなりません。
さいたま市では2013年、無届け施設事業者が入居者の生活保護費を1億円以上横領する事件も発覚した=さいたま市見沼区の宿泊施設で2013年2月、西田真季子撮影
規制強化が入居者を路上に追い帰すジレンマも
 生活保護費支給日に入居者を集団で役所に連れて行き、役所の面前でおおっぴらに保護費を回収する光景は、異様でした。しかし、入居者が自発的に金銭管理契約を結んでいる限り、自治体の介入は困難でした。
 本来、生活保護費は本人が受け取り、管理し、自立に役立てるべきお金です。その制度をビジネス化した事業者が全国ではびこっています。
 福祉関係者やソーシャルワーカーから対策を求める声が上がったことを受け、さいたま市は13年10月、貧困ビジネス事業者を規制する条例を施行しました。市への届け出と、入居者に渡す金額や契約解除条項を定めた金銭管理契約書の写しを、入居者に渡すことなどを事業者に義務づけています。

 さいたま市は今回、指導に対して改善が見られなかったとして、宗永寺に対し新たな利用者入居と、新たな施設開設を禁じる処分を出しました。
 しかし、宗永寺は川口市でも同様の施設を運営しています。16年4月には、川口市の福祉事務所敷地内で生活保護費を回収する様子を取材していた報道機関の記者に、宗永寺の複数の職員が「写真を撮ったな、カメラを出せ」などと大声を出しながら暴行する事件があり、職員が現行犯逮捕されました。しかし、川口市に規制の動きはありません。
 さいたま市生活福祉課によると、16年11月時点で、さいたま市内の届け出施設は74施設。また、宗永寺の5施設には17年1月1日時点で224人が入居しています。
 その多くは稼働年齢層で、入居以前は路上で生活しており、生活保護を受給すらできていませんでした。貧困ビジネスの事業者が彼らに住む場所を提供し、生活保護を受給させているのは確か。施設を閉鎖させても、入居者は路上に戻るだけで問題は解決しません。
 生活困窮者への社会の正しいアプローチと、その後の丁寧なケースワークで、貧困をビジネス化させないことが必要です。
生活保護を受給しながらNPO法人「ほっとプラス」のシェアハウスで暮らす男性=さいたま市内で戸嶋誠司撮影
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170131/biz/00m/010/009000c 
 

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コメント
 
1. 2017年3月24日 19:34:55 : hUkJW5PNLO : vS5oQ06@H3c[518]
厚化粧 しても防げぬ 悪循環

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