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「共謀罪」の怖さは「未必の故意による黙示的共謀」認定にありー(植草一秀氏)
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22nd Mar 2017 市村 悦延 · @hellotomhanks
明日3月23日(木)午前10時半から斎藤まさし氏の公職選挙法違反事案の
控訴審第2回公判が東京高等裁判所で開かれる。
森友学園の籠池泰典理事長に対する証人喚問も、同時刻に実施される。
参議院では午前10時から証人喚問が実施される。
衆議院では午後2時50分から実施の予定である。
当然、NHKが中継放送を行うはずである。
3月23日(木)の午前10時からは、
ワールドベースボールクラッシックの決勝戦の放送が予定されており、
安倍政権は証人喚問日程をこの時間帯に被せてきた。
日本が決勝に進出する場合には、国民の関心が野球に向かう。
これを計算して証人喚問日程を設定したのだと考えられる。
しかし、日本が準決勝で米国に敗れたため、安倍政権の思惑は外れてしまった。
極めて重要な証人喚問であるが、
これと同時並行で開かれる高裁公判も極めて重要である。
斉藤まさし氏が公職選挙法違反に問われている今回の事案は、
典型的な国策冤罪事案である。
今後の国政選挙に同氏を関与させないための「人物破壊工作」であると判断できる。
事案の焦点は、斎藤氏が関与した政治活動が、公職選挙法に抵触する
「事前運動」
「利害誘導」
に該当するものであるのかどうか、
という点と
斎藤氏が公職選挙法違反に該当するとされている事実に関して、
「共謀」
を行ったのかどうかの認定
の二つである。
弁護側は、アルバイトを雇い、声掛けと共に行ったビラの配布は、
公職選挙法違反に該当しないとの主張を示すとともに、
斎藤氏が「共謀」した事実はない
と主張している。
折しも、安倍政権は昨日、3月21日に、
共謀罪を創設する組織犯罪防止法改定案を閣議決定した。
国会における「数の力」によって、
最悪の法律をゴリ押しする姿勢を一段と鮮明にしている。
「共謀罪」とは、
犯罪行為の「予備」や「未遂」よりもはるかに以前の段階の行為を処罰するもので、
日本の国内法の原則に反するものである。
「共謀罪」
の認定が安易に行われれば、すべての国民が犯罪者に仕立て上げられるリスクを
背負うことになる。
この法律は
「テロを防ぐため」
ではなく、
「政治権力にとって目障りな人物を犯罪者に仕立て上げるため」
に創設されるものであると推察される。
その場合、とりわけ重要になるのが、
「共謀」の認定
である。
3月23日の高裁公判で焦点になるのは、斎藤まさし氏に対する
「共謀」の認定
である。
静岡地方裁判所の佐藤正信裁判長は
「未必の故意による黙示的な共謀」
があったと認定した。
この言葉は昨年の裏の流行語大賞とも言われている
「未必の故意による黙示的共謀」
とは何か。
「未必の故意」
とは、
明確な犯意がなかったことを意味する。
「黙示的共謀」
とは、
明確な共謀の事実がなかったことを意味する。
したがって、「共謀」の事実はなかったとしなければならない行為を、
裁判所は
「未必の故意による黙示的共謀」
と言い換えて、「犯罪」であると認定したのである。
「共謀罪」が創設されると、日本中のすべての国民が、この方式で
「犯罪者に仕立て上げられる」
可能性を持つことになる。
この意味で、安倍政権が成立を目指す「共謀罪」の内実を示す事案として、
斎藤氏の訴訟事案は極めて重大な意味を有することになる。
証人喚問も重要だが、高裁第2回公判も重要であり、多くの市民の集結が求められる。
「未必の故意による黙示的共謀」
などという言葉を耳にすることはないが、
「共謀罪」
が創設されると、
この言葉が魔法の力を発揮することになる。
はっきりと
「○○をやろうか」
と言わなくても、
その場に居合わせただけ、
目と目が合っただけ、
で
「黙示的な共謀があった」
と認定される。
「犯意がなくても関係ない」
ということになる。
昨年の臨時国会で刑事訴訟法改正案が可決、成立した。
刑事訴訟法改正の本当の目的は、
検察の犯罪を防ぐこと
だった。
大阪地検特捜部、そして、東京地検特捜部は極めて重大な犯罪に手を染めた。
証拠を改ざんして無実の人間を罪に陥れようとしたのである。
検察が無実の人間を罪に陥れることは珍しいことではない。
多くの無辜(むこ=無実)の市民が、これまでも犯罪者に仕立て上げられてきた。
これらの
冤罪創作
のなかには、
政治的な目的で、特定の人物をターゲットにして、
犯罪者に仕立て上げるという謀略も含まれている。
「人物破壊工作」
と呼ばれるものである。
日本ではあまり馴染みがなかったが、オランダの政治学者
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏が
『誰が小沢一郎を殺すのか』(角川文庫)
を表したことによって、日本でも認識が広がった。
同書の英文タイトルは
“Character Assassination”
人物破壊工作
である。
2009年から2012年にかけて猖獗を極めた二つの謀略事件がある。
西松事件と陸山会事件
である。
犯罪性が皆無である事案を検察が犯罪に仕立て上げて、
メディアがこれを巨大犯罪として報道した。
このために、日本政治が道を踏み外した。
米国映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」
で、ある時、歴史の歯車がずれて、
暗黒の世界が出現するというストーリーが登場する。
まさにこれと同じ。
西松事件、陸山会事件の創作=謀略により、
日本政治の本当の歴史が暗黒の歴史に転落してしまった。
西松事件とは政治団体から受領した寄付を事実通りに報告したことについて、
小沢一郎氏の政治資金管理団体の分に限って「虚偽記載」とされた
「トンデモ事案」
であった。
政治団体には事務所もあり、管理責任者も存在した。
政治団体名を記載して寄付を受けたことについて、
その事実通りの記載は完全に正当な対応だったが、
これが巨大犯罪であるかのように仕立て上げられた。
陸山会事件は、2004年10月に代金が決済され、
2005年1月に移転登記が完了した不動産取得について、
これを2005年の収支報告書に記載して提出したことが「虚偽記載」とされた事案
である。
商法学者が法廷で、2005年の記載にすることが適正と証言した事案でもある。
これも犯罪ではなく、完全な冤罪事案である。
この陸山会案に関して、検察が石川知裕衆議院議員に事情聴取した際、
石川氏は事情聴取を秘密録音していた。
その結果、検察当局が石川氏の事情聴取内容について、
完全に虚偽の捜査報告書を作成していた事実が判明した。
このねつ造された捜査報告書によって小沢一郎氏が強制起訴され、
2010年9月の民主党代表選に決定的な影響を与えた。
歴史が歪められていなければ、2010年9月に小沢一郎政権が誕生していた。
検察の史上最悪、最も卑劣な巨大犯罪が厳正に立件されなければならなかったが、
最高検はこの巨大犯罪をもみ消した。
大阪地検の犯罪は立件され、検事が実刑に処せられたが、
東京地検特捜部の巨大犯罪はもみ消されたのである。
こうした不祥事を受けて、取り調べの完全、全面可視化が急務となり、
刑事訴訟法改正が検討されたが、結局、取り調べの完全、全面可視化は実現せず、
検察の捜査権限の拡大だけが決定された。
これが、昨年の刑事訴訟法改悪である。
捜査権限の拡大には、通信傍受の拡大も含まれる。
この改定刑事訴訟法と共謀罪創設が合わさると
新・治安維持法
になる。
安倍政権の真・三本の矢
の
戦争・弾圧・搾取
の弾圧が
一気に攻撃力を増すことになる。
そして、重要なことは、
「共謀の認定」
である。
ここに
「未必の故意による黙示的共謀」
が是認されると、すべての政治的敵対者は犯罪者に仕立て上げられる可能性を
帯びることになる。
この意味で、斎藤まさし氏の高裁審理から目を離すことができない。
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