2017年3月15日(水) 長時間労働にお墨付き 安倍首相「裁定」に批判 残業時間上限「100時間未満」 残業時間の上限規制をめぐって、安倍晋三首相は13日、「月100時間未満」とする考えを示しました。連合、経団連のトップ会談で100時間「以下」か、「未満」とするかで平行線となったのを受けて、安倍首相が「未満」とする「裁定」を下したと報じられています。「100時間未満」とすれば、過労死も長時間労働もなくなるのか、検証してみると―。 限度基準ないがしろ http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-15/2017031501_04_1.jpg 「月100時間未満」の残業とは、99時間59分でもよいことになり、過労死ラインの残業にお墨付きを与えるものです。 脳・心臓疾患にかかわる労災認定基準は、「1カ月におおむね100時間」です。100時間「以下」でも「未満」でも、あるいは「例外」としても、過労死ラインである100時間近くまでの長時間残業を容認することに変わりありません。 残業時間は現在、法的拘束力はないものの、大臣告示による限度基準で「月45時間、年360時間」と定めています。月45時間を超えて長く働くほど、過労死の危険が高まるとの医学的知見に基づき、政府が定めたものです。政府案は、この限度告示の2倍以上の水準です。 名古屋高裁は、2月にトヨタ系列の労働者について月約85時間でも過労死と認定する判決を出し、国も上告しませんでした。国自ら月85時間でも過労死と認めたにもかかわらず、「月100時間未満」を上限とすることは極めて無責任な姿勢です。 8日に行われた衆院厚生労働委員会の参考人質疑で、全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表世話人は、「過労死ラインの残業時間の上限が法制化されたら一歩前進なんて、私は全く思っていません」と指摘しました。 現在の限度基準を法定化し、これを超える残業を認めない法改正が求められています。 短縮の流れに逆行 残業を「100時間未満」まで認めることについて、財界は「繁忙期だからやむをえない」「競争力を確保するために必要だ」と主張しています。 しかし、繁忙期だからといって、なぜ過労死ラインの残業を認めなければならないのか説明はありません。人命より会社の繁栄を優先させることは許されません。 もし100時間も残業をしないと会社がつぶれるというのであれば、それは人員不足であり、長時間残業ではなく人員を増やすことこそ求められます。 現在は残業時間に法的規制がないため「青天井よりはまし」という意見もあります。 過労自殺した電通社員、高橋まつりさん側の代理人、川人博弁護士は「労働時間短縮の流れを逆流させる」と8日の衆院厚生労働委員会で批判しました。 「電通は遺族との合意文書で月の法定外労働時間は75時間以内にすると約束しています。それが、100時間でもいいのかということになって、今の時間短縮の流れが元に戻ってしまう」 1カ月ぐらいなら100時間働いても大丈夫ではないか、という意見もあります。 しかし、脳・心臓疾患やうつ病は、短期間でも発生するものです。過労死と認定された前出のトヨタ系列社員の場合、直近1カ月の残業時間は85時間でした。短期間でも過労死ラインは絶対に認めてはいけないものです。 休息時間規制なし 政府が示している「働き方改革」案には、1日の労働時間にかかわる規制はありません。終業から翌日の始業までに一定の休息時間を設ける「インターバル規制」も実効性のない努力義務にとどまっています。現在、インターバル規制を導入した企業には助成金が出る制度があります。しかし、9時間でも助成されるもので、名ばかりです。 月の残業上限を「100時間未満」とすれば、1日の残業は5時間前後です。これは夜10時近くまで残業して帰宅は深夜、翌日には朝9時には出勤するという生活が連日続く水準です。 人間の生体リズムは1日単位であり、1日のなかでしっかりとした休息をとることが必要です。そのためには、欧州なみに11時間のインターバル規制を導入することが不可欠です。 しかも政府は、「残業代ゼロ」となる「高度プロフェッショナル制度」の創設、裁量労働制を企画営業の労働者にも適用する対象拡大など、長時間労働をさらに野放しにする労働基準法改悪案を国会に提出し、撤回していません。 政府の提案は、何をとっても長時間労働をいっそう野放しにするものです。 共産党「緊急提案」がリーフに インターネットでダウンロード可能 日本共産党が3日に発表した緊急提案「長時間労働を解消し過労死を根絶するために」のリーフレットが完成しました。サイズはB5判4ページです。共産党のホームページからダウンロードできます。 ホームページのアドレスは、http://www.jcp.or.jp/web_download/2017-rodo-kinkyuteian.pdf http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-15/2017031501_04_1.html
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