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2017年3月13日 週刊ダイヤモンド
アメリカ帝国は終焉へ向かう、日本は「連欧連亜」を目指せ
進藤榮一・筑波大学名誉教授
米国でトランプ政権が誕生してから、新大統領の一挙手一投足に各国政府も市場もメディアも振り回されている。それは新政権が保護主義に走るのか、反イスラム主義なのかといった目先の課題に目を奪われ過ぎているからでもある、トランプ政権の誕生を歴史的な視点で捉えたのが、アメリカ外交・国際政治経済が専門の進藤榮一筑波大学名誉教授が著わした『アメリカ帝国の終焉』(講談社現代新書)である。そこではなぜパクスアメリカーナ(アメリカの平和)が終焉を迎えたのか、なぜ世界の軸がアジアに移行しつつあるのか、そしてこれから日本はどのように対応すべきかが論じられている。著者の進藤教授に聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集委員 原 英次郎)
──この本の主題、つまり最も訴えたかったことは何ですか。
21世紀情報革命下で、アメリカの世紀が終わり、アジアが勃興する地殻変動が進行している現実です。その現実をトランプの登場は示唆しています。
では、なぜアメリカは、帝国としてのヘゲモニー(覇権)を失ったのか。
第一に、デモクラシーというソフトパワーの喪失です。アメリカの民主主義が、デモス(民衆)のクラチア(権力)として機能しなくなっているのです。議員やロビイストが群がる金権政治化が進み、民衆を軽視した超格差社会を生み出しました。
しかもその超格差社会化が、情報革命下で進む金融カジノ資本主義化と重なり合っています。0.001秒の時間差で巨万の富を稼ぎ出すアルゴリズム金融商法が跋扈し「ものづくり大国」から「カネづくり大国」へと変容し、経済力を衰微させてきたのです。リーマンショックがその表れです。
しかもアメリカは、地球を何十回も皆殺しできる核を持ち、情報革命下で、最先端電子兵器群を開発し展開しているにもかかわらず、中東戦争を収束できません。反米感情を高めるだけで、テロを生み続けます。世界秩序の担い手としての実質的な力を失なってしまったのです。情報革命の逆説です。
それに代わって台頭しているのが、中国やインドなど新興国、特にアジアです。「アジア力の世紀」の登場です。日本は、明治開国以来の脱亜入欧論や日米基軸論から転換すべき時に来ている、その転換のかたちが今求められているのです。
19世紀末の米国と似た
ポピュリズムの台頭
進藤榮一・筑波大学名誉教授(略歴は本文末)
──トランプ政権の誕生は、歴史的な視点で見るとどのような意味を持ちますか。パクスアメリカーナ(アメリカの平和)の終焉と見ておられますが、その根拠は?
ポピュリズムの台頭をアメリカ史の文脈で見ると、19世紀末の状況との類似性を指摘できます。新移民が急増し、巨大資本が誕生し格差が拡大し、大資本と癒着した既存政党が金権政治化を進め、日刊紙などニューメディアが登場します。
その構造変化の中で、アングロサクソン中心の伝統的な19世紀アメリカ社会が分断、解体され、新しい国のかたちを求め始めます。その運動の先端を、人民(ポピュリスト)党が民主党と担い、独占資本優遇や海外領土拡張に反対します。富を国外に求めるのではなく、国内産業や、農民や人民の雇用や福祉に寄与すべきだという国内優先主義を掲げます。
国内優先政策が産業基盤を強化し、ニューメディアが市民力を強め、新移民が産業力の担い手となって工業超大国化への成長を助け、アメリカ帝国の道が敷かれます。
100年後の今、ポピュリスト右派のトランプは、ポピュリスト左派のサンダースとともに、首都に群がる既得権益層を批判し、ウォール街と政治の癒着と金権政治化を批判し、ヒラリーを敗退させました。アメリカファーストを掲げ、中東やウクライナでの米国の軍事介入を批判し、対ロ制裁を解除し、自国の人的、経済資源を国内雇用拡大に向けるべきことを説きます。
ただ今日の新移民は全人口の4割に達します。そして文化や宗教の著しい違いのためにアメリカ社会に包摂されず、排外主義的なポピュリズムの源泉となります。ものづくり部門が縮小したために、新移民は白人労働者の職を奪う存在へ化します。それが、メキシコとの国境の壁をつくり、イスラム諸国の入国禁止の動きにつながります。
しかしボーダレス化が進む今日、モノやヒトの自由な移動を制限する排外的ポピュリズムは、産業力を逆に弱め、多様な人種がつくる活力を削ぎます。ニューメディアのツイッターなどで大統領令を連発するトランプの政治手法は、民主制度の基盤を切り崩します。富豪や将軍たちが政権中枢にいるトランプ・右派ポピュリスト政権は、民力を削ぎ続けて、パクスアメリカーナの終焉を自ら早めていくのです。
世界経済の中心は
米欧世界からアジア世界へ
──グローバル化が、本当に貧富の格差拡大とテロの横行もたらした元凶なのでしょうか。とくにテロについては、「文明の衝突」が、主要因ではないとお書きになっていますね。
今日のグローバル化だけを見ていると、格差拡大とテロとの相関関係が見えてきません。もし私たち、19世紀後半に始まる100年前のグローバル化に目を向けると、あの時もまた、貧富の差が拡大してポピュリズムが台頭し、テロが横行しているのです。グローバル化がつくる格差拡大の現実は、映画「レ・ミゼラブル」や、マルクスの『共産党宣言』に表れます。世界各地でテロと反乱が頻発しました。
100年後の今日のグローバル化は、一方で米国の国内外に貧富の格差を拡大させています。他方で米・NATO連合軍が中東で空爆を続け、事実上の軍事占領を進めています。数十万人の難民が祖国を追われ、その民衆の怨嗟が、反米欧へのテロを生み出します。そのテロの真因を、シカゴ大学テロ研究班が80年以来の2500件以上の膨大なデータを基に明らかにしました。
21世紀グローバル化の進展下、ソ連崩壊後にアメリカは、軍の民営化を進めて戦争請負会社をつくり、デモクラシーを湾岸やバルカン、中東アフリカに広める戦争を繰り出します。その結果がテロのグローバルな拡延なのです。その意味で「文明の衝突」論は、テロの表層部しか見ていない西側中心主義史観です。
──世界の政治経済の中心は、アジアに移りつつあり、実質的な統合に向かっていると述べておられます。それはEU(欧州連合)のような法的な枠組みではなく、デファクトとしての統合だと分析しておられますが。どういうことでしょうか。
ここでもキーワードは、情報革命です。情報革命下で、距離が急速に短縮され、モノとカネ、ヒトと情報と技術が国境を超えて移動します。一国中心の生産体制から、ネットワーク分業型の多国間生産体制が広がります。アジアの場合、日本の開発援助や直接投資、技術支援が、韓国や台湾、中国やASEAN諸国の社会経済的な発展基盤をつくり上げます。その基盤の上に部品など中間財貿易を軸にサプライチェーンがつくられ、アジア経済一体化が進行するのです。
国家主権を法制度的に削減し続けた、デユーレ(法的)の統合EUと違って、アジアの場合、国家主権を残したまま国境の壁を低くするデファクト(事実上)の統合が、アジア型生産ネットを軸に、ASEAN共同体という小国連合に牽引され進展しているのです。
加えて三十数億の人口を擁するアジアは「世界の工場」になります。分厚い中間層が形成され、「世界の市場」が生まれ「世界の銀行」へと変容し始めます。人口オーナスが人口ボーナスに化し、世界経済の中心へと躍り出るのです。
さらにアジアの山河や海洋、砂漠で分断された広大な空間がつくる経済的潜在性です。情報革命下で開発技術や建設機器が進化し、巨大市場と経済一体化を背景に、インフラ整備強化の需要をつくります。空間オーナスが空間ボーナスへ変換します。中国が提唱し、EUを含む58ヵ国からなるアジアインフラ投資銀行は、その担い手になります。
世界経済の中心が、アジアの事実上の統合を基盤に、米欧世界からアジア世界へと移り始めているのです。
日本が目指すべきは
脱亜入欧から連欧連亜への道
──今やアジアの中心は中国です。ただ、南シナ海で見られるように、中国は既存の国際秩序への挑戦者であり、とくに安全保養の面では膨張主義を採る「脅威」だと、日本では喧伝されています、この点をどうお考えですか。
確かに中国の南シナ海での行動や国防費の急伸から、中国“膨張主義”論を引き出すのは容易です。しかしそれを、既存国際秩序への挑戦と捉えるのは短絡的です。中国の国防費は、対GDP比で2%以下で、4割近くは人件費で、兵器は貧弱です。南シナ海での領有権争いについては、それぞれの国に応分の言い分があります。日本が中、韓、露と抱えている領有権争いと同じです。
しかし中国の急激な経済発展と、米主導の軍備増強と緊張激化が、中国権力層内部で軍部の発言力を強めています。しかも軍と資源エネルギ?産業とが中国流の軍産複合体を形成しつつあり、軍拡の動きを引き出しています。
ただ、それに対処するためとして日本が、米韓とともに軍拡予算を増やし米国製高額兵器を購入し、武器輸出に乗り出すべきではありません。周辺諸国との軍拡競争は一触即発の危機を生み、民生ものづくり生産力を衰微させていきます。
日本が進めるべきは、むしろ南シナ海や東シナ海で漁業資源や海底ガス田の共同開発体制をつくり上げることです。それは、中国の軍拡への抑止力になります。軍拡競争のマイナスサム・ゲームを共同開発のプラスサム・ゲームに切り替え、ウインウインの関係をつくり上げていくべきです。
『アメリカ帝国の終焉』
進藤榮一
講談社現代新書
821円(税込み)
──安倍政権は政治経済両面で、「トランプファースト=アメリカ最優先」のように見えます。歴史の転換期にある今、日本はどのように対応すべきか。基本的なビジョンと具体的なアプローチについて、お考えを聞かせてください。
トランプのアメリカ利益第一主義に付き従って、米軍軍事費肩代わりの要請に応えてはいけません。米軍撤退による「力の空白」を日本の軍拡で埋めるのではなく、周辺諸国との平和共生体制の構築を進めることです。
トランプの「取引」外交戦略下で、アメリカに擦り寄り、TPPに代えて日米FTA交渉を進めることは、日本経済が米国流自由貿易の罠に落ちて衰退を進めることになります。むしろ「ASEAN+6」を軸に持続可能な自由貿易体制をつくり、地域力と民力とを強めていくことです。RCEP(東アジア包括的経済連携協定)の推進です。デファクトの地域統合を、低炭素環境共同体や、ロシアやモンゴルを含めたアジアスーパーグリッド構想など資源食料エネルギー共同体の構築へつなげていくことです。日米軍事安保による同盟絶対主義ではなく、同盟の相対化です。脱亜入欧論から連欧連亜への道です。EUやアジアと連携を強めながら、AIIBに参画し、ユーラシア不戦開発共同体への道をつくることです。
しんどう・えいいち/1939年北海道生まれ。京大法卒。同大学院を経てプリンストン大学、ハーバード大学研究員など歴任。筑波大学教授、早稲田大学客員教授などをへて筑波大名誉教授、国際アジア共同体学会会長、一般社団法人アジア連合大学院機構理事長。著書に「アメリカ 黄昏の帝国」、「アジア力の世紀」、「分割された領土」(ともに岩波書店)、「東アジア共同体をどうつくるか」(筑摩書房)、「現代アメリカ外交序説」(創文社、吉田茂賞受賞)など。
http://diamond.jp/articles/-/120906
2017年3月13日 武藤正敏 [元・在韓国特命全権大使]
北朝鮮が韓国国民と共に大統領弾劾を喜ぶ不気味
韓国の朴槿恵大統領の弾劾を巡っては国民を挙げての運動が繰り広げられた Photo:AP/Aflo
韓国の憲政史上初となる
大統領の罷免が及ぼす影響
3月10日、韓国の憲法裁判所は8人の裁判官全員一致で、「朴槿恵(パク・クネ)大統領に重大な憲法・法律違反があった」として罷免を宣告した。韓国の憲政史上大統領の罷免は初めてのことである。朴大統領は直ちに失職し、今後60日以内、5月9日までに大統領選挙が行われる。
韓国の憲法裁は、証拠と法理を積み上げるのではなく、政治的判断で結論を出すと韓国の国内でも言われている。元在韓大使として、憲法裁の結論にコメントするのは差し控えたいが、今の激昂する国民感情の下で、朴大統領の弾劾を棄却するのは非常に勇気のいることであっただろうし、この結論は想定されていたことでもある。
韓国の大統領は伝統的に、任期末あるいは任期後に不幸な結末を招いているとも言われているが、弾劾というのは憲政史上初である。とはいえ、これまでの大統領と比べ、朴大統領の行動が重大な憲法・法律違反であったかは何とも言えない。ただ、朴大統領の行動がベールに包まれ、国民に理解しがたいものであったことは事実であろうし、朴大統領の捜査に対する非協力姿勢も心証を悪くしたと言えるであろう。
それにしても、朴大統領の弾劾は韓国国内の政治的対立を深め、北朝鮮情勢が混沌としている中で、韓国の安全保障にとって深刻な事態をもたらしていることは否定しがたい。しかも、韓国国民が北朝鮮の脅威よりも朴弾劾を優先したことは次の政権選択に暗い影を落としている。また、せっかく朴政権の下で立ち直りかけていた日韓関係を再び悪化させかねない危険をはらんでいる。
韓国の主要紙も、韓国の政治家は日韓の対立を煽ることばかりで、対立関係を調整し韓国の進路を正しい方向に持っていくことをしないと嘆いている。
韓国の政治的混乱が、どのような影響を及ぼすのか考えてみたい。
北朝鮮のことは眼中にない?
次期大統領候補と韓国民
朴大統領の弾劾によって、次の大統領選挙が5月9日ごろ行われる見通しである。現在名前の挙がる候補者の支持率を見ると、世論調査によって違いがあるが、野党系の候補の合計支持率は7割を超えるものが多い。聯合通信も野党内の予備選挙が事実上の決戦になると予測しており、トップを走る野党「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)候補の支持率は3分の1を超え、突出している。
今回の選挙で特徴的なことは、北朝鮮が、急速に性能が向上したミサイルを発射し、金正男(キム・ジョンナム)氏を暗殺するなどの挑発行為を繰り返しているにもかかわらず、文在寅氏に対する支持率がむしろ上昇していることである。これまでの選挙では、北朝鮮の挑発行為があると保守系に支持が集まっていた。1987年に起こった北朝鮮の工作員による大韓航空機爆破事件直後の大統領選で、軍人出身の盧泰愚(ノ・テウ)候補が、野党政治家の金泳三(キム・ヨンサム)候補を下したのはその典型である。
しかし、今回こうした傾向はみられず、朴大統領を政権の座から引きずり下ろしたいとの感情が優先し、北朝鮮の挑発行為は国民の眼中にはないようである。
次の大統領選挙では朴大統領の行ってきた政策を否定する候補に票が集まるであろう。朴大統領は北朝鮮に対し強硬姿勢で臨んできたため、北朝鮮に対する宥和的な政策で北朝鮮を支援してきた政権の失策を忘れさせ、文在寅氏の親北政策の危険性から目をそらすことになっている。
日韓関係では慰安婦問題に関する合意を否定すること、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直しを行うこともその弊害を見えなくしている。韓国の安全にとって米軍との協力は最優先すべきであるが、地上配備型ミサイル防衛システム(THAAD)の在韓米軍への配備の再検討さえ指摘されている。これらはいずれも韓国の防衛・外交にとって深刻な事態をもたらすことを韓国国民は全く理解していない。
親北政権の誕生は
北朝鮮の核・ミサイル開発を支援する
韓国に亡命した元在英北朝鮮大使館公使太永浩(テ・ヨンホ)氏は、報道によれば「北朝鮮の核ミサイル開発を止めることができるのは、政権交代だけである」と述べたという。北朝鮮の核ミサイル開発は待ったなしである。
1990年代後半の金大中、盧武鉉政権は北朝鮮に対し宥和的な政策をとり、北朝鮮の攻撃的政策を改めさせようとしたが、その結果約30億ドルが北朝鮮に流れ、その大半が核ミサイル開発に使われたと言われている。
それと同じことが次の政権で行われたらどうなるのか。北朝鮮は、安んじて核・ミサイル開発に邁進するであろう。そして、北朝鮮が核・ミサイルを実戦配備すれば韓国は北朝鮮の脅威から身を守れなくなるであろう。日米韓の結束は乱れ、中国に北朝鮮への影響力行使を期待することもより一層難しくなろう。
韓国国民は、北朝鮮に対する危機意識が日本よりも薄い。それは北朝鮮に対する客観的な情報分析よりも、北朝鮮は同胞であり、あまり追い詰めなければ、韓国を攻めたりはしないであろう、といった希望的観測で見ているからである。また、万が一北朝鮮が瓦解すれば韓国が背負う負担は甚大であり、韓国の発展が阻害されて、それでなくても苦しい自分たちの生活がより一層苦しくなる、北朝鮮に万が一のことが起きるのを望まないという気持ちが北朝鮮の状況を直視できなくしている。
しかし、北朝鮮が核・ミサイルを開発すれば、韓国はいいように北朝鮮の餌食になるのである。韓国の主要紙は、そうした懸念を持ち始めているが、それが国民には浸透していない。日本以上にネット社会である韓国では、朴槿恵弾劾に動いた若者は新聞を買って購読せず、自分たちが欲しい情報だけをネットで選別して見ている。これは米国とも共通する傾向である。
米国は次の大統領選挙を見据えて対策を取りつつある。
3月7日、韓国国防省は高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の一部が韓国に到着し、配備を開始したと発表しており、運用開始まで1?2ヵ月、早ければ4月にも稼働する模様である。このように在韓米軍へのTHAADの配備時期を大幅に早めたのは、韓国の大統領選挙とも関係があろう。大統領選挙でトップを行く文氏はTHAAD配備の決定は次期政権で行うべきとして配備の再検討を匂わせている。米韓両国政府ともに、親北の政権ができる前にできることはしておこうとの姿勢である。
米国のティラーソン国務長官が3月15日から日本、17日に中国、そして18日に韓国をそれぞれ訪問する。マティス国防長官に続き、ティラーソン国務長官が東アジアを訪問するのは、トランプ政権が北朝鮮の脅威を深刻に受け止めていることの表れである。特に、中国とは楊潔チ(チの字は竹かんむりに褫のつくり)国務委員が米国を訪問した時、トランプ大統領が面会しており、習国家主席の訪米も検討されていることから、ティラーソン国務長官の習主席との面談の可能性がある。
こうした一連の動きは、韓国の次の政権が誕生する前に、既成事実を積み上げようとする動きにも見える。
日韓関係は悪化へ
少女像の撤去はさらに遠のく
最後に、今回の弾劾を経て、日韓間の慰安婦合意は守られるのか、である。
慰安婦を象徴する少女像が在釜山総領事館前に設置されたことに対し、長嶺安政駐韓大使を一時帰国させたのは、日本の強い抗議の意思を示す意味で適切であったと思う。また、その少女像の撤去の見通しが立たない状況で帰任することには反対する声が日本国内では強い。
しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発は待ったなしの状況である。安倍総理とトランプ米大統領の電話会談でも「北朝鮮の核ミサイルの脅威は新たな段階に入った」と合意している。今、日本にとって最も重要なのは北朝鮮の脅威にいかに備えるかである。
韓国の次期大統領が就任すれば、日米韓の緊密な協力が揺らぐ危険が高く、その前に北朝鮮への対応は動いていく可能性が高い。新しい状況に迅速に対応していくためにも日本として最善の体制をとっておくべきと考える。
韓国の野党系大統領候補はいずれも日韓の慰安婦合意は無効である、再交渉すると言っている。国家首脳の間で合意したことを勝手に反故にするなど外交の常識ではあり得ないことであり、韓国政治家は日本のことになるとこうした常識を忘れるようだ。
慰安婦問題の解決に向けて日本への圧力を高めようと、慰安婦団体が働きかけてきた米国でも、有識者は呆れている。
また、この合意を受けて韓国政府は、これまでの協議の相手であった「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」や元慰安婦が共同生活をする「ナヌムの家」に加え、いずれにも属さない元慰安婦とも接触を続け、合意当時46人存命(現在は39人)であった元慰安婦の内34人に合意を受け入れてもらっている。このうち6人はナヌムの家にいる人々であると聞く。要するにハードコアの元慰安婦以外は合意を受け入れようとしているのであり、本来この問題は解決済みなのである。
これを蒸し返したのが挺対協である。したがって、既に日本は合意を忠実に履行している、これ以上の交渉に応じる考えはないと突っぱねていればいい。
政治と歴史、領土の問題を除けば韓国の一般国民の対日感情は悪くない。他方、政治と歴史それに領土の問題は韓国の政権が反日的性向の時は何をやっても改善しない。日本はこれまで日韓関係修復のため譲歩をすることが多かったが、その結果、韓国は日本に対しては客観性がなく、自分の理屈で要求する習性が治っていない。
先般の慰安婦に関する合意は日韓双方が譲歩するという新しいモデルであり、今後の日韓関係のモデルケースとなるものである。これを変えることは決してないことを韓国に悟らせることは重要である。
ただ、朴大統領の弾劾という状況になったために少女像の撤去はさらに遠のくであろう。日韓関係は悪くなる時は速いが、良くなる時も速い。日韓関係が好転する時に一気呵成に改善させていくのが効果的である。少女像の撤去はその時に進めるのが現実的である。
朴大統領弾劾を
いち早く報道した北朝鮮
朴大統領の弾劾については、北朝鮮がいち早く報道した。これは大変珍しいことである。朴大統領は「北朝鮮の核開発は北朝鮮の体制崩壊を早める」と述べたが、先に朴政権が倒れてしまったわけだ。北朝鮮が喜んで報道しているということは、それだけ韓国にとって危険なことであるということである。
韓国の若者もまた、朴大統領の失職を喜んでいるが、朴大統領が退陣した今、韓国の置かれた地政学的状況や、友好国日米との関係をしっかり見つめ直し、大統領選挙に臨んでほしい。
大統領選は韓国の内政問題であり、日本は誰が大統領になろうと協力していかなければならない。それが外交の宿命である。しかし、本音を言えば大変心配である。
http://diamond.jp/articles/-/120907
【第16回】 2017年3月13日 茂木誠 [駿台予備学校 世界史科講師]
米ドルは、いかにして世界を制したのか?基軸通貨の世界史(2)
歴史から学ぶ経済のしくみ! 仕事に効く「教養としての世界史」
増税、TPP、円高、デフレ、バブル、国債、恐慌etc
歴史の流れを知ることで、
「なぜ」「どうして」がスッキリわかる!
『経済は世界史から学べ!』の著者、茂木誠氏に語ってもらいます。
世界の覇権はイギリスからアメリカへ。なぜ?
ヨーロッパでも17世紀にようやく紙幣が発行されるようになりました。イギリス政府は「政府の銀行」としてイングランド銀行を認可し、通貨ポンドの独占的な発行権を与えます。
戦争などで政府が財政難に陥ったときには、国債を発行して中央銀行に引き受けさせ、低い利息で資金を融通してもらうのです。こうすれば、財政難のたびに増税を考えなくても済むのです。
大航海時代から続いてきた銀を基軸通貨とするシステムを銀本位制といいますが、銀山を掘り過ぎて銀の価値が下がってしまったので、より価値の高い金(Gold)を基軸通貨とするシステム、金本位制に移行するのが19世紀です。先頭を切ったのはイギリスで、貿易代金の支払いを金(Gold)で要求したのです。大英帝国の繁栄を支えたのが、世界中から流れ込む金(Gold)でした。
大英帝国に陰りが生じたのが19世紀の末。新興の工業国アメリカの台頭です。綿織物など軽工業中心だったイギリスは、重化学工業を発展させたアメリカ、そしてドイツに工業生産で追い抜かれました。その後も海外投資のリターンで金が流入し続け、ポンドの地位は揺るがないように見えましたが、決定的だったのは第一次世界大戦でした。
戦場にならなかったアメリカは、軍需物資を大量生産してヨーロッパの交戦国に輸出して莫大な利益を上げ、財政難に陥った各国政府が発効する戦時国債を引き受けて、債権国になりました。戦争はもちろん悲惨ですが、自国が戦場にならなければ儲かるものなのです。
戦後、イギリスを始めとする欧州諸国は、戦時国債の償還、すなわち返済を迫られました。支払いはもちろん金(Gold)です。ロンドンの金融街シティの金庫から引き出された金塊が、大西洋を超えてニューヨークのウォール街へと流れ込んだのです。
アメリカの金融危機。そして第二次世界大戦へ
過剰な資金は国内の設備投資や海外投資に使われました。敗戦国ドイツの経済復興にも莫大な資金が投資されます。ところが、欧州の経済復興とともに輸出が止まって在庫がだぶつき始め、企業収益は悪化していきました。余剰資金は株式や債券に流れ、実体経済とかけ離れた株高――バブル経済をもたらします。
このバブルが弾けたのが、1929年10月の株価大暴落。世界経済のけん引役となっていたアメリカの金融危機は、世界恐慌の引き金になりました。
物価は下落を続け、市場規模は縮小し、輸出は伸び悩みます。金本位制では、貿易代金は金(Gold)で支払うのが原則ですから、貿易赤字は金の流出と直結します。中央銀行の手持ちの金と同額の紙幣を発行するのですから、金が底を突けば、通貨発行もできなくなります。通貨発行ができなければ景気対策も打てません。
最後の手段が、金本位制の停止です。金(Gold)と等価交換できる引換券であるはずの通貨ドルを、金と切り離してしまうのです。
各国が金本位制を停止した結果、基軸通貨を失った世界貿易は縮小しましたが、イギリスは広大な植民地――ポンド圏内で貿易を維持し、外国製品には高関税をかけるブロック経済で国内産業を守りました。
植民地が少ない日本、まったくないドイツの産業を守るには、それぞれ円ブロック、マルク・ブロックを建設して市場を確保する必要がありました。こうして日独の軍事行動から始まったのが第二次世界大戦です。
超大国アメリカと、最強通貨ドルの誕生
今度も戦場はヨーロッパと東アジア・太平洋海域で、破壊を免れたアメリカの工業はフル稼働し、爆弾から石油に至るまで軍需物資を大量生産して交戦国に売り込みました。
アメリカがなぜ超大国になれたのか?
ヨーロッパともアジアとも隔絶した場所にあるという、地政学的優位を生かせたからです。
戦争が終わったとき、世界の金(Gold)の70%をアメリカ一国が保有していました。有りあまる資金は、ヨーロッパとアジアの戦後復興に投資され、また緊急援助として戦災孤児の空腹を満たしました。また膨大な軍事費を支え、米軍が「世界の警察」として展開を続けるのを可能にしました。もはやアメリカのドルなしには生きられない国々は、軍事的にも経済的にもアメリカの軍門に下ったのです。
(続く)
http://diamond.jp/articles/-/120821
【第15回】 2017年3月10日 茂木誠 [駿台予備学校 世界史科講師]
銀行はもともと、「銀の預かり所」だった。
基軸通貨の世界史(1)
歴史から学ぶ経済のしくみ! 仕事に効く「教養としての世界史」
増税、TPP、円高、デフレ、バブル、国債、恐慌etc
歴史の流れを知ることで、
「なぜ」「どうして」がスッキリわかる!
『経済は世界史から学べ!』の著者、茂木誠氏に語ってもらいます。
金や銀が、貨幣として流通していた時代
古代以来、「貨幣」は金属でした。
金(Gold)の産出が多いのはアフリカ大陸で、北アフリカを領土にしていたローマ帝国は金貨を大量に発行していました。これを「ソリドゥス(solidus)金貨」といいます。
やがて北方から遊牧民に追われたゲルマン人が流入してきます。今でいう大量難民です。これを止めるのには兵隊が必要で、ソリドゥスをばらまいて傭兵隊を組織しました。ゲルマン人を傭兵にして、ゲルマン人の侵入を止めたりしています。ソリドゥスで雇われた兵隊だからソルジャー(Soldier)というのです。もともとの意味は「傭兵」です。
財政難から帝国が衰退すると、アフリカからの金の流入も途絶え、ソリドゥス金貨はどんどん質が落ちていきます。混ぜ物をして、重さをごまかすわけです。商人はすぐに見破りますから、貨幣価値がどんどん下がり、物価が上昇します。財政難とインフレで、ローマ帝国は崩壊したのです。
一方、中東地域はあまり金が採れないので、古代ペルシア帝国は銀(Silver)を貨幣に使っていました。
中世になって、イスラム帝国が中東からアフリカ北岸までを統一すると、ローマ帝国以来のディナール金貨と、ペルシア帝国以来のディルハム銀貨の二本立てとなりました。ローマ金貨やペルシア銀貨には皇帝や王の肖像が刻んでありましたが、イスラムは偶像を禁ずるので、貨幣に刻まれるのはコーランの一句です。
「アッラー以外に神なし、ムハンマドはアッラーの使徒なり」
イスラム教徒に敗北して地中海の北に押し込まれたヨーロッパ世界では、アルプス以北で取れる銀が貨幣として流通します。
16世紀にチェコのザンクト・ヨアヒムスタール(聖ヨアヒムの谷)で大規模な銀山が発見され、大量に作られたターラー銀貨(谷の銀貨)がヨーロッパ諸国で流通し、銀貨の代名詞となりました。 このターラー[thaler]が、英語のダラー[dollar](日本語のドル)となったのです。
なぜ、紙幣が生まれたのか?
銀の持ち歩きは重くて不便なので、銀を預かってその預かり証を発行する両替商がイタリアに出現しました。両替机をイタリア語でバンコ(banko)といい、ここから銀行(bank)の名が生まれたのです。漢字の「銀行」は、「銀を扱う商人組合」と言う意味です。宋代の中国で同じ業種の商人たちが通りに店を並べたので、商人組合を「行(こう)」と呼んだのです。
両替商(銀行)が発行する銀の引換券が、やがて貨幣価値をもつようになりました。政府がこれを発行したのが紙幣の始まりです。中国では、12世紀の宋代から紙幣は流通していて、元朝を訪れたマルコ=ポーロがびっくりしています。しかし、王朝末期には財政難のため乱発してインフレを起こす、の繰り返しでした。
大航海時代にアメリカ大陸を征服したスペインが、メキシコと南米で次々に銀山を発見し、先住民に掘らせて大量の銀貨を発行し、ヨーロッパに持ち込みました。この銀貨が「太陽の沈まぬ国」といわれたスペインの栄光をもたらしますが、栄光の時代はわずか1世紀ほどでした。
銀山が枯渇したのです。かつてスペインという国は、軍事力で領土を広げ、新しい銀山を手に入れて富を吸い上げていました。そのシステムが崩壊したのです。産油国は、石油が出なくなったらおしまいです。それと同じことです。
このスペインの無敵艦隊を破ったのが新興国のイギリスです。
イギリス人が賢かったのは、銀山を直接経営しなくても、貿易代金で銀を受け取ればよいことに気づいたことです。はじめは毛織物、ついで綿織物の工業を盛んにして、製品を世界中に輸出したのです。これを後押ししたのが産業革命で、世界の銀が血流のようにロンドンへ流れ込みました。
(次回に続く)
http://diamond.jp/articles/-/120428
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