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戦闘か、武力衝突か?「稲田防衛相、現地をちゃんと見てください」と南スーダン支援NGOスタッフが訴える
https://nikkan-spa.jp/1287014
2017.02.11 日刊SPA!
稲田朋美防衛相の、南スーダン国連平和活動(PKO)に関する衆院予算委員会での一連の答弁がさかんに報道されている。
国会で答弁する稲田朋美防衛相
防衛省は2月7日、当初は「廃棄した」と説明していた陸上自衛隊の日報を一部黒塗り開示。この日報に、陸自が活動する首都ジュバ市内で昨年7月に「戦闘が生起した」と記載されていた問題で、稲田防衛相は「法的な意味の『戦闘』ではなく、『武力衝突』だ」と説明していた。
◆多くの家が燃やされ、破壊され、死体がゴロゴロ転がっていた
「これが『戦闘』でないなら、何と呼べばいいんでしょうか。稲田防衛相に、『現地をちゃんと見てください』と言いたいです」
こう語るのは、南スーダン支援を行う日本国際ボランティアセンター(JVC)の今井高樹さん。現地の様子を知る、数少ない日本人だ。
今井さんは現在、隣国スーダンに駐在中。国境を超えて南スーダンの首都ジュバへ入り、避難民への医療・食糧支援などを行っている。
「昨年7月の大規模戦闘では、ジュバ市内に1万人ほど駐留していたといわれる政府軍(大統領派)が、市内に数か所ある反政府軍(元副大統領派)の拠点をロケット砲などで攻撃。特に、市内西部の拠点に対しては戦車や軍用ヘリも動員されました。これに反政府軍も対空砲で応戦。自動小銃で撃ち合いなんていうレベルのものじゃないですよ。戦闘が激しかった地域では、たくさんの家が燃やされ、破壊されました。
私はその時はジュバにいなかったのですが、私の友人たちがみな戦闘の様子を目撃しています。友人の一人は、『戦闘の間は家の中に隠れ、鎮まったので外に出たら死体がゴロゴロ転がっていた』と言っていました。
民間人もたくさん巻き込まれています。正確な数字は誰にもわかりませんが、当時ジュバにいた外国人の援助関係者の中では『1000人以上は亡くなったのではないか』と言われています」(今井さん)
◆「戦闘」か「武力衝突」かなど、現地から見れば“言葉遊び”
多くの住民の避難先となっているジュバのナイル川対岸地区で、混み合う診療所で順番を待つ人々と今井さん。ここで医薬品の支援を行った(2016年11月、ジュバ市内グンボ地区)
これほどの大規模な「戦闘」について、稲田防衛大臣は国会答弁で何度もこう繰り返した。
「法的な意味の戦闘行為ではない」
「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」
「武力衝突や一般市民の殺傷行為がたびたび生じていることは事実」
自衛隊はPKO5原則のもと、紛争当事者の間で停戦合意が行われているということが派遣の条件となっている。もし「戦闘」が行われているということになれば、撤収しなければならない。そのため、どんなに街が壊され、人が殺されていても「戦闘」とは表現できないのだろう。
「『武力衝突か戦闘か』なんて、現地にいる者から見たら“言葉遊び”ですよ。7月の大規模戦闘の時は、外国人が多く泊まっているホテルが襲撃され、南スーダン人のNGO関係者が殺害されました。外国人は長時間拘束されたうえ、何人かの女性はレイプされました。その時、宿泊客はPKO部隊に助けを求めましたが、あまりに戦闘が激しかったためPKOは出動を拒否したんです。『他国の部隊も出動できないようなこの危険な状態で、自衛隊は本当に活動できるんですか?』と聞きたい」(今井さん)
◆自衛隊がいつ戦闘に巻き込まれてもおかしくない
安倍晋三首相は国会で、南スーダンについて「永田町と比べればはるかに危険な場所だが、安定している」と説明していた。また稲田防衛相も昨年10月、ジュバにわずか7時間滞在して「現地は落ち着いていた」と確認したという。実際の状況はどうなのだろうか。
「今も各地で毎日のように戦闘行為が行われている状態です。ジュバでも民族間の敵対感情が強まっていて、いつ暴動や虐殺、大規模な戦闘が起きてもおかしくない緊張感があります。
PKO司令部は、昨年7月の戦闘時に破壊された反政府軍の拠点の近くにあります。しかも司令部に隣接する避難民保護施設には『反政府派の一部が紛れ込んでいる』として政府軍が警戒しています。そのため、この周辺はジュバ郊外でも最も治安が不安定。銃撃や兵士による住民・避難民への暴行などが今も起きていると現地の人から聞いています。
自衛隊はそのような場所で活動をしているんです。いつ戦闘が発生し、それに巻き込まれてもおかしくないでしょう」(同)
現在自衛隊は、インフラ環境が劣悪な南スーダンのために、道路や施設の整備などを行っているという。彼らが安心して活動できるよう、現地情勢を正確に把握することが必要ではないだろうか。
取材・文/北村土龍 写真/日本国際ボランティアセンター(JVC)
※今井さんは3月に再びジュバへの渡航を予定している。JVCの南スーダン緊急支援の詳細については http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/sudan/2016emergency.html を参照。
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