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防衛省で握手を交わす、ジェームズ・マティス米国防長官(左)と稲田朋美防衛相(2017年2月4日撮影)。(c)AFP/FRANCK ROBICHON〔AFPBB News〕
米国では酷評「マティス・稲田会談は成果なし」 日米同盟強化の具体的ビジョンを期待するトランプ政権
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49126
2017.2.9 北村 淳 JBpress
アメリカの新国防長官ジェームズ・マティス氏が来日し、安倍晋三首相や稲田朋美防衛大臣と会談を行った。日本のメディアはマティス氏が「尖閣は日米安全保障条約の適用範囲内」と語ったことに胸をなで下ろして、おきまりの楽観的報道を垂れ流している。
しかし、アメリカ側の東アジア戦略関係者などの間では、「マティス・稲田会談はさしたる成果がなかった」と失望の声が上がっている。
■具体的ビジョンがゼロの日本
日本側は口を開けば「日米同盟の強化」とのお題目を唱えるが、「どのようにして強化するのか」に関しての具体的な決意や提言がなされることはない。
今回、なぜマティス長官は国防長官就任後初の海外訪問先の1つに、NATO同盟諸国ではなく日本を選んだのか。米国では、もしも今回の訪問を軍事作戦と位置づけるならば、「同盟国を安心させる作戦(Operation Allied Reassuarance)」とでも名付けられるだろうと言われている。つまりマティス長官の日本訪問は、トランプ政権にとっての「同盟強化」の決意の表明であった。
それゆえアメリカ側戦略家たちの多くは、ほんのわずかでも良いから「日米同盟強化」についてのなんらかの具体的なビジョンが稲田大臣の口から出てくることを期待していた。しかし、“恒例”の通り、日本側からは何ら具体的な話は出ることがなかった。そのため、失望の声が上がっているのだ。
■日本は国防能力強化の決意を示すべきだった
アメリカでも単純な人々は、「沖縄の海兵隊駐留費に関して、もちろん全額とまではいかなくても、なにがしかの増額を示唆するのではないか」という期待を持っていたようだ。だが、それらの人々は実情に疎い連中であり、日本側としてもそのような期待を無視すべきなのは当然である。
ただし本コラムでも触れてきたように、日米同盟を「さらに強化する」には、日本自身も国防能力を強化することが求められる。そのためには国防費の増額が不可欠である。国際水準から見て異常に低い国防費GDP比(1.0%)を、国際水準(2.3%)近くまで押し上げる必要があるのは、軍事的常識と言えよう。
そこで、日本側としては「日米同盟強化のために日本自身の国防能力を強化し、そのために国防費を倍増する努力を開始する」といった趣旨の決意表明をすべきであった。
日本を取り囲む軍事的状況がいかに厳しいものであるかは、論を待たない。それにもかかわらず、日本政府が国防費の本格的増額に向けての努力すら行おうとせずに、ただただ「日米同盟強化」を強調するということは、トランプ政権側には日本がさらにアメリカに頼ろうとしているとしか写らないことになる。その結果、「アメリカにベッタリ頼って日本の国防を強化しようというのなら、金を出せ」といったトランプ的論理が飛び出してきかねない。
それだけではなく、アメリカをはじめ「まともな国防意識を持った国家」ならば、自国を防衛する意思を持ち合わせていないような国と同盟を結んでも、有事の際にははなはだ心許ない、と考えるのは当然である。これでは「同盟関係の強化」どころか「実質的弱体化」につながりかねない。
■より具体的なアイデアの一例
同盟関係の見直しと強化を押し進めると公言しているトランプ政権が誕生した今こそ、日本も自主防衛力を強化することによって日米同盟を強化するという思考回路に切り替える必要があるし、そのチャンスとも言える。
もっとも、「国防費を倍増する努力を開始する」そして「国防能力を強化する」と表明しても、来年度予算からいきなり国防費がGDP比2%になることはもちろん、GDP比1.2%になることすら不可能に近い。日本政府によるこのような表明は、あくまでも“国防の決意”であり“努力目標”であることは、トランプ政権にとっても自明の理だ。
そこで、より具体的な短期的目標を掲げることもまた必要であろう。たとえば、日本自身の海洋戦力を強化することで、アメリカ海軍の極東方面海洋戦力ならびにオーストラリアをはじめとする他の同盟諸国との海洋戦力を集結させて、急速に強化が進む中国の海洋戦力に対抗する方針を示すのだ。
トランプ政権は、オバマ政権下で大きく落ち込んだアメリカ海洋戦力を再建するために「350隻海軍建設」を選挙期間中に公約として打ち出した。これは、現在250隻レベルにまで低下してしまったアメリカ海軍主力戦闘艦艇(空母、原潜、巡洋艦、駆逐艦など)の数量を350隻レベルまで引き上げると共に、既存の艦艇にも近代化改修を行い、強力な艦隊を復活させるというものである。このような大規模な軍艦建造計画には、やはり選挙公約として打ち出した「フィラデルフィア海軍工廠の復活」や「アメリカの鉄で、アメリカの労働者により、軍艦を建造する」という経済政策も連動しているため、トランプ政権は公約通り推進するものとみられている。
(参考・関連記事)「土壇場のトランプが打ち出した『350隻海軍』計画」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48274
しかしながら、海軍関係戦略家の間からは「『350隻海軍』では、中国に対抗するには厳しい」という声も上がっている。
というのは、アメリカ海軍の軍艦建造能力の4倍の規模を誇る中国海軍は、猛烈なスピードで新型戦闘艦(原潜、駆逐艦、フリゲート、コルベットなど)を生み出しており、2017年に入ってからだけでも3隻の軍艦が誕生している。このペースで行けば、遠からず「500隻海軍」がアメリカ海軍の前に立ちはだかることになる。
さらにアメリカ側にとって都合が悪いことに、アメリカ海軍は太平洋側と大西洋側に戦力を2分しなければならないという地理的制約がある。そのため、いくらトランプ政権が大海軍再建計画を開始しても、中国海軍を押さえ込むには相当の苦戦が予想されるというわけだ。
そこで、日本も日本自身の防衛に不可欠な「より大規模な海洋戦力」を構築することにより、対中国戦略で苦闘が強いられるアメリカ海軍の極東戦力にとって、名実ともに心強い同盟軍としての役割を分担することが可能になる。
もちろんそのためには大規模な国防費増額が必要になることは論を待たない。このように目に見える形での日米同盟の具体的強化に関するビジョンを、日本側から提示することが何にもまして必要である。
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