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東芝破綻危機でも懲りないのか 悪魔の国策“原発ビジネス”
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/198138
2017年1月24日 日刊ゲンダイ 文字お越し
終わりの始まり…(C)日刊ゲンダイ
〈国家に有用なる機械を製造して奉公の誠を尽くし、世の公益を広めん〉――。「東洋のエジソン」と称された江戸〜明治時代の天才発明家で、「東芝」を創業した田中久重氏の目には、崖っぷちに立たされた今の現状はどう映るのだろうか。
米国の原発事業で、17年3月期に最大7000億円規模の損失を計上する可能性が浮上している東芝。巨額損失で減少する資本の増強と財務改善に向け、上場グループ企業7社の株式売却や、非上場企業の株式・保有不動産の処分などで計3000億円程度の資金を捻出。併せて主力の半導体事業の一部も売却して数千億円の資金を調達する計画だ。
ただ、期末までに残された時間は「2カ月強」。東芝幹部は共同通信の取材に対し、「ありとあらゆる対策を取る」と説明しているが、計画通り進まなければ債務超過に陥るのは避けられない。東芝は16年3月期も、資本が3289億円に落ち込み、稼ぎ頭だった医療機器の子会社「東芝メディカルシステムズ」をキヤノンに6655億円で売却して債務超過を辛うじて免れている。2年連続で巨額の損失計上となれば「経営破綻」が現実味を帯びるのは間違いない。
■「原発ビジネス」傾倒が転落の始まり
日本経済を牽引してきた国内有数のトップ企業がなぜ、これほどボロボロになったのかといえば答えは簡単だ。「原発ビジネス」にどっぷりとハマったからだ。
地球温暖化対策が叫ばれていた06年、東芝は米国で原子力事業を手掛ける「ウェスチングハウス」(WH)に約6000億円を投じて子会社化に踏み切った。買収後、東芝は15年までに世界で約30基の原発を新規受注すると宣言し、〈原子力事業の売上高1兆円〉の事業計画をブチ上げた。
ところが、11年の福島原発事故で「安全神話」が崩壊すると、あっという間に目算が狂う。
新規受注の低迷に加え、米国内で建設中だった原発4基も、米原子力規制委員会(NRC)による安全基準の厳格化に伴って設計変更を余儀なくされ、建設コストが増大。赤字に転落したWHは15年12月、〈機器から工事までの一貫体制確立〉を理由に、米国の原発建設会社「ストーン・アンド・ウェブスター」(S&W)を「0ドル」で“買収”したのだが、これがフタを開けてみれば7000億円もの負債を抱えていたガラクタ会社だったのだから、東芝にしてみればいいツラの皮だろう。大失敗の「原発ビジネス」を支えるため、看板だった白物家電や医療機器を次々と手放し、“虎の子”の半導体事業も「解体」が迫る。それが今の東芝の実相なのだ。
原子炉格納容器の設計に携わっていた元東芝技術者の後藤政志氏はこう言う。
「原子力は(いまだに解決できない)使用済み燃料など多くの問題を抱えている。長期的に考えるとリスクが高いビジネスです。そこに『すがった』ことが苦境に陥った原因でしょう。一刻も早く原子力事業を解体、縮小し、経営資源を半導体など他の事業に振り分けるべきなのに、いまだに原子力にしがみついている理由が分かりません」
前出の東芝創業者、田中氏は〈人を喜ばせることに何よりも生きがいを感じていた〉(東芝未来科学館から)という。〈人を喜ばせる〉ことよりも、いったん事故を起こせば限りなく〈人を不幸〉にする「原子力ビジネス」を優先した時点で、東芝の“終わり”は始まったと言っていい。
安倍首相は核軍拡を手助け(C)日刊ゲンダイ
安倍政権の「原発輸出」は「悪魔の成長戦略」だ
〈グローバルトップを目指す 原子力世界bPシェア27%〉〈原子力へ最注力 18年度売上高(暫定目標)原子力1兆200億円〉〈(原発)全世界で45基(インド、イギリス他)の受注を目標〉――。「原発ビジネス」はとっくに破綻したにもかかわらず、東芝の16年度事業計画を見ると、相変わらず仰天目標がワンサカ並ぶ。まったく理解不能だが、東芝が「原発ビジネス」に固執し続けているのは、安倍政権が「国策」として位置付けているからだ。
〈わが国の優れたインフラ関連産業の国際展開を強力に支援し、政府のトップセールス等を駆使して受注競争を勝ち抜きます〉
昨夏の参院選の公約に「インフラ輸出」を掲げた自民党。柱のひとつが原発輸出だ。原発輸出には相手国と原子力協定を結ぶ必要があり、すでに安倍は13年4〜5月、トルコ、アラブ首長国連邦とそれぞれ交わした協定書に署名している。同12月にはサウジアラビアとも協定を結ぶ交渉を始めることで合意。福島原発事故は大津波だけでなく、地震も引き金になった――との指摘も出ている中で、世界有数の地震大国であるトルコに対し、首相自らトップセールで原発を売り込む姿は狂気の沙汰としか言いようがない。とりわけ大問題なのは、昨年12月の日印首脳会談で協定締結に「原則合意」し、通常国会で承認の行方が注目されているインドへの原発輸出だろう。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、インドは98年から核実験を実施し、現在、90〜110発の核兵器を持つレッキとした核保有国である。しかも、核拡散防止条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)のいずれも批准していない。つまり、日本が提供する原発技術によって排出されたプルトニウムが核実験の原料になる可能性が大いにあるワケで、インドの「核軍拡」にも手を貸すことにつながりかねない。
安倍は昨年5月のオバマ前大統領の広島訪問の際、「核のない世界の実現に向けて、大きな力になる」なんて言っていたが、やっていることは正反対だ。世界唯一の「被爆国」であり、「核なき世界」を主導していくべき立場の日本が、あろうことか「成長戦略」などとデタラメを言って「核軍拡」に手を貸しているのだから、これ以上、罪深いことはない。安倍は核実験を強行する北朝鮮を「断じて許容できない」と強く批判しているが、インドだって変わらない。これじゃあ、日本がどんなに北朝鮮に抗議の意思を示しても、国際社会で説得力を持たないのは言うまでもない。
■原発輸出は政財界の癒着
そもそも「原発輸出」を「成長戦略」などと言っていること自体がメチャクチャだ。元経産官僚の古賀茂明氏は安倍政権の原発輸出を〈悪魔の成長戦略〉とバッサリ斬り捨てているが、しょせんは政財界の利権のもたれ合いに過ぎない。電力会社などでつくる「日本原子力産業協会」(原産協会)が15年に自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金した額は7.6億円。福島原発事故後、「原発回帰」を鮮明にした自民党が政権復帰した際に献金した12年の3億円から、実に2倍以上に増えている。
「原発ビジネス」を国策に掲げる安倍政権を、東芝などの原発関連企業が支える――。「東芝 粉飾の原点」(日経BP)の著者、小笠原啓氏は本の中で、〈国策たる原子力ビジネスに寄り添うと東芝は決めたのだろう。仮に東芝が原子力から撤退したいと願ったとしても、国策であるがゆえに許されないということなのだろうか〉と指摘していたが、実にバカげた話だ。そんな「悪魔の商人」と化している安倍政権の支持率が今も6割を超えているのだから、これぞ倒錯の極みと言うべきだろう。政治評論家の森田実氏がこう言う。
「福島原発の事故原因も解明されないまま、世界中に原発を売り込むなんて正気とは思えません。昨年11月にベトナムが原発建設計画を白紙撤回したように、世界の趨勢は『脱原発』なのに日本の安倍政権だけは『原発、原発』と叫んでいる。メディアがまるで批判しないからでしょうが、どうかしています」
「原発ビジネス」に突き進む安倍政権に今、「待った」をかけないと、どん底に引きずり込まれるのは国民だ。
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