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新年の富士山に学ぶ巨視史観 政権には意外と厳しい一年だ
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2017/01/29/post-1377.html
サンデー毎日 2017年1月29日号
倉重篤郎のサンデー時評 104
一富士二鷹(たか)三茄子(なすび)という。初夢をめでたい順に並べたものだが、何といっても富士山がありがたい。
それも初夢ならず。初出勤の途上、多摩川を渡る電車の中から見えた、丹沢山地の上にひときわ高くそびえたつ見事な白富士であった。正月明けで空気が澄んでいるせいか、いつもは遠く霞(かす)んでいるのが、手に取るようにくっきりと見えた。思わず「日本一」と叫びたくなるようなお姿に、私の中で、ある野望が再燃した。富士山を田子の浦の海抜0メートル地点から3776メートルの頂上まで2日がかりで登りつめてみよう、との計画だった。
5合目までの登山道の未整備を口実に何度か先送りしてきた挑戦だが、今年こそはと思った次第。
自らを鼓舞するために理由もまたこじつけた。富士山のような高い地点から日本の政治経済社会を巨視的に俯瞰(ふかん)してみよう、と。
今年は東京近郊の雲取山が人気だという。標高2017メートルがちょうど今年の西暦年と同じだからである。であるならば、私はもうちょっと気張って日本一の3776メートルを0から頂上まで一歩一歩登ろうではないか。1メートル1年とするならば、身をもって4000年に近い視座に近づけるかもしれない。
そんな思いになるのも、2017年を展望するにあたり、巨視の構えが不可欠と感じるからだ。
日本は今「二つの国体の変更」に直面している、と言ってきた。
一つは、天皇制の問題だ。象徴天皇制が始まって70年。その在り方をめぐり天皇陛下から大きな問題提起があった。国民統合の象徴を議会制民主主義を通じてどう再定義、制度運用するか。そういう国民的議論が始まりつつある。
もう一つは、日米同盟だ。戦後「安保国体」ともいわれてきたこの聖域に対し、根源的な疑問が提起されている。それによって得たものと、失ったもののバランスシートをいま一度確認し、非戦という戦後日本の国是に合わせ、公正で持続可能なものに改編すべきではないか、というのが私の問題意識だ(本誌で柳澤協二、寺島実郎、石破茂3氏の見解を掲載済み)。
いずれも日本国家の背骨を構成する制度をどう変えていくか、という難しい問題だ。ロングレンジで、それぞれの制度の起源、発展、変容という過去をよく検証し、つまり制度を所与のものとして捉えるのではなく、過去の変遷を踏まえたうえで可変のものとし、じっくりと未来絵図を構想する年にすべきではないか、と思うのだ。
◇外交・安保・アベノミクス...従来の制度が機能しなくなる
そういった視点は、世界の動向を追う上でも必要になってきている。EUでは英国が離脱、米国ではトランプ大統領が誕生、世界の潮流は反グローバリズム、親ポピュリズム、親ナショナリズム、自国ファースト、移民排除に動いている。オランダや仏、独で行われる欧州の選挙ではその傾向に一層拍車がかかると予測されている。
これら変化の底流に何があるのか、と考えると、やはり資本主義の富を生み出す力が衰えつつあること(地球の人口、環境、資源的制約+イノベーション力減退)、民主主義の平等・博愛・協調を促進するパワーが弱体化していること(格差・貧困是正能力の低減+次世代への負担の押し付け+他国・他民族への不寛容)と無関係とは思えない。つまり、世界で起きていることを理解するためには、資本主義、民主主義という所与のシステムについても、歴史的に相対化していく大きな視点が必要になっていると感じる。
さて、ずいぶんと大それたことを申し上げてきた。正月の初夢としてお許しを願う。政治記者に立ち戻って、今年の安倍晋三政権についても3点ばかり予測したい。
政局については一貫して衆院の年明け解散説を唱えてきたが、ここで軌道修正する。年明け解散が自公政権にとってベストだった、という認識に変化はない。要は、安倍首相が衆院自民の30議席(+10議席)減を恐れるあまり、昨夏同様、解散に踏み切れなかった、というのが真相だろう。昨年の参院選での野党共闘の成果(32の1人区の11で自公敗退)が首相を追い詰め解散権を縛っている。
野党共闘は、時期、レベルは別にして必ずできる。民進党も共産党もその選択肢しかないからだ。その線でいえば、安倍政権は支持率も高く一見盤石だが、実は伝家の宝刀を抜けない政権ともいえる。それが与野党に広まると、政局運営の力が弱まる可能性がある。
外交・安保も厳しい年になる。トランプ占いではないが、米新政権から何が飛び出すかがわからない。トヨタのメキシコ工場新設への圧力ではないが、通商問題で両国関係に摩擦が再燃することが予想される。領土問題では、ロシアからは足元を見られ、中国からは対話のパイプがないまま力でぐりぐり押し込まれている感じだ。米新政権から尖閣が(日本防衛義務をうたった)日米安保第5条の適用対象になるとの言質を改めて取らなければならない。従米一本槍(やり)外交の脆(もろ)さが露呈する年だ。
最もリスキーなのはアベノミクスだ。本誌で藤巻健史氏が予測したように消費者物価2%を達成し真の危機(量的緩和の出口問題)の到来日が近づきつつある。
ことほどさように、2017年は安倍政権にとって決して安泰な年ではない。というより、日本国にとってとても難しい年になる可能性がある。これまで当たり前だった制度や仕組みが従来通り機能しないこともままあるだろう。
そんな時には富士山を遠望し、その巨視的史観に立ち戻りたい。悲観も楽観もせず、先達たちの長い歩みの中から解を探りたい。そして、雪が解け夏になったら、田子の浦から頂上に向け歩みを進めたい。これが我が年頭の抱負です。今年もよろしくお願いします。
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