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「新・所得倍増論」の著者が説く 日本経済再生の“処方箋” 注目の人 直撃インタビュー
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/197822
2017年1月23日 日刊ゲンダイ
著者のデービッド・アトキンソン氏(C)日刊ゲンダイ
技術力と勤勉な国民性で戦後の高度成長を成し遂げた――。日本人が好んでやまないこの手の“神話”から目を覚ませば、経済成長できる余地があると説いた「新・所得倍増論」(東洋経済新報社)が話題だ。ただし評価は賛否両論。アナリスト出身の著者・デービッド・アトキンソン氏が“神話”を真っ向否定し、戦後の成長は労働人口が激増する「人口ボーナス」によるものだと結論づけているからだ。ならば、成長の処方箋とは?
■日本の経済成長は人口増の副産物だった
――新著の反響がすごいそうですね。
東洋経済オンラインで2016年12月から本のテーマに沿った連載もやっているんですけれど、PV(ページビュー)は1本当たり150万件を超えています。とんでもない数です。一番反応があるのが、「日本は潜在能力が高いにもかかわらず、生産性が著しく低い」と指摘したことについてですね。
――賛否両論を呼んでいます。
日本のGDPは世界3位だけれども、1人当たりのGDPは世界27位、1人当たり輸出額は世界44位などのデータに基づいているんですが、反発の声はかなり多い。「それは絶対にありえない」とか、「海外とそういう比較はできない」とか。感情的に否定する人が結構います。「GDP=人口×生産性」ですから、世界10位の人口を持つ日本のGDP総額が大きいのは当然なのです。だからといって、生産性が高いという数値は導き出せません。
――日本の1人当たりGDPの世界ランキングがそこまで低いのは衝撃です。
生産性の低さについての反応で面白いのが、文化とか風潮などの独自性をあげつらう点です。会議が長い、決裁印が多い、窓際族がいる……。ですが、日本の1人当たりGDPは一貫して世界27位だったわけじゃないんです。90年は世界10位だった。ほかの先進国が生産性を改善したという外部要因も重なって順位を下げてしまったのです。会議の長さなどでは説明できません。
――日本の経済成長は国民性によるものではなく、「人口ボーナス」が要因だと分析しています。
この本をまとめるにあたっての調査で、日本型資本主義は77年以降、基本的に人口激増の恩恵を受けながら伸びてきた経済モデルだということが分かりました。経済成長は人口増の副産物だったのです。戦後、日本の人口は1.8倍に増加。一方、ドイツは1.2倍、イギリスは1.3倍。積極的に移民を受け入れてきたフランスが1.6倍です。日本は人口がどんどん増え、消費が盛んになり、経済がうまく回る好循環にあったのです。それをいいことに、労働者も企業も好き勝手やってきた。買う買わないは消費者任せ。労働者は自分の技術を磨きたい。メーカーは作りたい商品を売り出したい。ガラパゴス化もそうした風潮が招いたものといえます。90年代に人口減に転じると、逆回転が始まり、経済停滞から脱出できなくなってしまった。
■26年間タブー視されてきた
――中国やインドばかりでなく、米国についても経済成長に人口増が寄与していることは半ば常識のように解説されています。それなのに、日本の経済成長は“神話”がまかり通ってきたのはなぜだと?
タブーだからじゃないですか。“神話”の毒が抜けるまで(人口増が止まった90年から)26年かかったということでしょう。26年前の段階でこの本を書き上げることはできた。でも、絶対に誰も読まなかったと思います。日本では、現象についての解説がなされるときは礼賛する目的が多い。客観的なデータに基づく分析は少ない印象です。実際、日本の経済力についての分析は今まで必要なかったんです。ほったらかしでも数字は上向きだったんだから。データ分析だの、検証だのといっても、誰も耳を傾けなかったでしょう。いい時は理由なんかいらない。経済成長が止まったから「なぜだ」「どうしたらいいんだ」となってきたんです。
アベノミクスには「具体策が欠けている」と指摘する(C)日刊ゲンダイ
経済再生の選択肢は3つしかない
――どうすれば生産性を引き上げ、GDPを増やせるんでしょうか?
人口減で高齢社会の日本では社会保障費の増大が重しになっています。大転換期を迎えた日本経済の選択肢は3つです。福祉政策をやめる。移民を受け入れる。女性の生産性を上げる。しかし、福祉政策の縮小は現実的ではありません。高齢者に手厚すぎると批判する声がありますが、自分の身内のことを考えてみてください。社会保障がなくなったら、生活レベルが下がっている中でどうやって親の面倒を見るんですか? 時間もお金もなく、介護制度も利用できない状況に置かれて、病身の身内を孤独死させられますか?できませんよね。
――移民政策はどうですか?
それも厳しいでしょう。100万人とか200万人を受け入れたところで、人口減をカバーできるボリュームではありません。計算すると、3000万人の受け入れが必要です。というのは、日本の人口は現在の1億3000万人が2060年には8000万人に減る。そのギャップは5000万人です。ドイツの人口が8000万人、イギリス6600万人、フランス6650万人。国家が1つ消えるほどのインパクトなんです。16年の訪日外国人が過去最高の2400万人を記録しました。人口減少分の一部をインバウンドで補うことはできますが、観光だけでは社会保障を維持できません。日本が生産性を大きく上げるには、女性の働き方を変えて収入を引き上げ、男性との同一賃金を実現し、国民全体の生産性向上を目指すのが最適でしょう。
――女性活躍社会はアベノミクスの目玉のひとつです。
アベノミクスの方向性は正しいのですが、どうやって実行するのかが抜け落ちています。「GDPを増やす」「賃金を上げる」という目標は間違っていない。国策を実現する具体策が欠けているんです。方法論と目的を逆にしている。働き方改革は生産性向上の手段のひとつ。本来は生産性向上が国策の最優先で、それを実現するのが働き方改革なんです。この3年間であまり成果が上がっていないのは、企業の経営者が当事者意識を持っていないからです。生産性を上げるのは労働者ではなく、経営者の責任。日本と海外の決定的な違いは株価、時価総額です。
■GDP770兆円の潜在能力を生かさない経団連
――安倍首相はアベノミクスで株価が上がったと喧伝しています。
90年以降の日本企業の時価総額の増加率は先進国最下位です。米国の7・3倍は極端だとしても、経済破綻の懸念が消えないスペインやイタリアよりも上げ幅が小さい。時価総額が上がらないのは経営戦略が評価されていないということ。そんな企業の経営者は無能と言われてしかるべきです。評価されないことに何のメリットがあるんですか? 経団連はまったく危機感を持っていないと言わざるを得ません。彼らにとって国の借金も貧困率も他人事。年金も医療費も定年後の労働者の問題だという認識なのでしょう。
――日本の企業は内部留保を抱え込んでいるという指摘があります。
正直言って、日本経済の破綻に備えて内部留保をため込んでいるとしか思えないですよ。海外の分析では時価総額が上がれば、GDPが増えることが証明されています。経営者に「時価総額を上げろ」とプレッシャーをかけることで、経営者に生産性を高める改革と投資を促し、各社の努力でGDPが押し上げられるのです。国連の分析では、日本は高スキル労働者比率が48%を占め、世界一のレベルです。潜在能力を発揮し、生産性を高めれば、GDPは770兆円に拡大すると私は試算しています。GDPが増えれば、税収も増えるでしょう。所得の伸びも期待できます。91年に銀行の不良債権や業界再編を予測したリポートを出した時もそうですし、観光戦略をまとめた時もそうですが、ズルいですけれど、私は絶対に自信のあるテーマ以外は取り上げません。経営者に圧力をかけて生産性を高めれば、日本経済は成長します。
(聞き手=本紙・坂本千晶)
▽1965年、英国生まれ。オックスフォード大卒、日本学科専攻。米アンダーセン・コンサルティングを経て来日し、金融アナリストとして活躍。ソロモン・ブラザーズ証券やゴールドマン・サックス証券に在籍、90年代の不良債権問題や銀行再編を予測して注目を集めた。09年に国宝や文化財を補修する小西美術工藝社に入社、10年に代表取締役会長に就任。11年から社長を兼務。裏千家に入門し、茶名「宗真」を拝受。「新・観光立国論」がベストセラーに。
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