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誰もがパチンコ・ギャンブル依存症の予備軍に 防げなかった自殺も まずは予算を増やすこと
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/349.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 1 月 18 日 19:28:04: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

誰もがパチンコ・ギャンブル依存症の予備軍に

キーパーソンに聞く

「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表理事に聞く
2017年1月18日(水)
熊野 信一郎
 2016年12月に「統合型リゾート施設(IR)整備推進法」が成立し、カジノの合法化・導入に向けた議論が本格化する。年内をめどに具体的な導入、運営のルールなどを盛り込んだ実施法案が準備される見込みだ。

 一方で各種の世論調査ではカジノの解禁について反対する声が多数を占めるなど、課題も多く残る。そのうちの一つがギャンブル依存症の問題だ。どのような支援や対策、またはそれを可能にする仕組みが必要なのか。自らもギャンブル依存症だった過去を持ち、支援・啓蒙活動を続ける一般社団法人、「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表に聞いた。

田中紀子(たなか・のりこ)社団法人・ギャンブル依存症問題を考える会代表
1964年東京都生まれ。祖父、父、夫がギャンブル依存症者という三代目ギャンブラーの妻。夫と共に、ギャンブル依存症の問題から立ち直った経験を伝えようとカウンセラーとなり、2014年2月に「ギャンブル依存症問題を考える会」を立ち上げ、代表就任。依存症問題の啓発運動と「学校教育、企業に向けた依存症予防教育の導入」を掲げ、活動している。各政党の勉強会や経団連、地方自治体の研修会等でも講師を務める。著書に『祖父・父・夫がギャンブル依存症!「三代目ギャン妻の物語」』(高文研)、『ギャンブル依存症』(角川新書)。


通常国会にギャンブル依存症対策に関する法案が提出される見込みがあるなど、改めてギャンブル依存症の問題に注目が集まっています。長年、活動を続けられてきた立場から、現状の動きをどう見ていますか。

田中:評価したいのは、カジノだけでなく公営ギャンブルやパチンコなど、既存ギャンブルについても依存症対策の対象として議論されるようになったことです。

 カジノ法案が出てきて議論が始まった当初は、「依存症=カジノ依存症」という文脈で語られることが多かったんです。それが、法案に批判が殺到したこともあって、附帯決議に「カジノだけではなく他のギャンブルに起因する依存症対策に取り組むべき」との内容が盛り込まれました。

 競馬や競輪、競艇などの公営ギャンブルは、省庁ごとに所管がバラバラで、それぞれ「ギャンブル依存症は存在しない」という前提のままここまできました。また「遊技」とされるパチンコは、依存症問題は認めていましたが、対策にはほとんど着手していません。今回、カジノ法案の議論に合わせて各省庁が慌てて依存症対策にどう取り組んでいるかを説明しましたが、実際には日本ではギャンブル依存症対策はほとんど何もやってこなかったんですね。

ギャンブル依存症で苦しむ人が多くいるという前提で議論が始まったと。

田中:そうですね。ギャンブル依存症について活動する関係者や組織の中には、カジノを含むギャンブルそのものに反対するスタンスの方々もおられます。私どもはカジノ、ギャンブルそのものに反対というわけではありません。

 パチンコ店が至る所にあるように、日本にはギャンブルが既に存在しています。ギャンブル依存症に苦しむ人が536万人もいるとういう調査もあるわけです。それを前提に、いかに依存症者を支援し、救えるかを重視して活動きました。ですからカジノの合法化の議論を大きなきっかけとして、国全体でギャンブル依存症という問題に取り組む機運が高まればいいと考えています。

1月20日からの通常国会では、ギャンブル依存症対策に関する法案が提出される方向で調整が進んでいます。国が基本的な方向性を示し、公営ギャンブルなどの運営主体となる自治体が具体的な計画を策定するという大枠が有力なようです。

田中:新たな法律が「ギャンブル依存症対策にしっかり取り組みました」という言い訳にならないよう、または内容が骨抜きにならないよう、注視しています。国が枠組みを作り、自治体が対策に責任を持つという構図は悪くはないと思います。

 懸念しているのは、それが単なる努力義務になってしまうことです。依存症対策を自治体の義務としてきっちり決めて一定の条件を定め、それよりも著しく劣るものはペナルティを課すといった仕組みがなければ意味がありません。口だけで「やっています」と言い逃れができるような内容なら、これまでとほとんど変わらないからです。

(ここで田中代表に電話が入る。自殺を示唆するメッセージを家族に残し、行方不明になっていた30代のギャンブル依存症の男性が茨城県で保護されたとのこと)

まずは予算を増やすこと

ギャンブル依存症に苦しむ人を生まない、または既に苦しんでいる人を救うために、具体的にはどのような対策・支援策が必要だと考えますか。

田中:やらなくてはならないことは多岐にわたるのですが、まずはある程度の予算を確保しなくては何も始まりません。国の予算だけではなく、既存のギャンブル運営母体が売上高の数パーセントを拠出することも必要になると思います。

 現状、ギャンブル依存症対策の予算は、厚生労働省を中心に1億円程度です。韓国での予算は22億円と日本を大きく上回りますが、それでもカジノを自国民にも開放したことも影響して、対策は必ずしもうまくいっているとは言えません。ですから単純に人口比で考えても、日本の場合は最低でも50億円は必要ではないでしょうか。

その上でどのようなことから始めるべきだと考えていますか。

田中:例えば支援現場の課題として、圧倒的に人材が不足していることがあります。ギャンブル依存症については、こちらがベストと思うアドバイスをしても、結果として自殺してしまうなどのリスクもとても高いんですね。そうなると援助職も自責の念で苦しむことも多いですし、ショックも受ける。それだけ覚悟が必要です。

 単に基礎知識や資格があればいいというわけでなくて、いろいろな事例を見てきた経験や勘のようなケースごとの判断力もとても大事なんです。最近では自治体に非常勤のスタッフを置く動きも出てきていますが、お金と時間をかけて、人材を育てていくことがまず必要です。

 ほかにも医療機関との連携などやらなければならないことは多岐にわたるので、横断的にギャンブル依存症対策を管轄する組織を作り、民間も巻き込んでいくべきだと考えています。いずれにしても、カジノが出来てから考えるのではなく、既に数多くのギャンブルが存在する今から始めなくてはいけないのです。

既存の公営ギャンブルやパチンコ産業などには、どのような対策をしてもらいたいですか。

田中:先程も申し上げたように、まずは依存症についての対策や啓発活動にもっと予算を割いてほしいんですね。例えば、年末の有馬記念でも、いろいろなところに大きな広告が出ていましたよね。それら広告のうち3本に1本でも5本に1本でもいいので、依存症について正しい知識や相談窓口などを知らしめる広告を入れなくてはいけないなどの規制を作り、依存症啓発バージョンのCMを流すなどです。

 あとは、本人や家族の自己申告に基づいてギャンブル場にアクセスできないようにする制度は海外でも効果の高い対策として定着しており、是非日本でも導入してほしいですね。

パチンコ店などではIDチェックもなく、誰でも自由に出入りできるので、難しそうですが…

田中:例えばタバコでは成人を識別するための「タスポ」カードが導入されました。少なくとも、まずああいった制度や設備を導入して、青少年を排除するなどの年齢制限には厳格に取り組むべきです。その分、新たな投資も必要になりますが、それもまた経済の循環を生むことになるのでは?と思います。

 入場制限についても、いろいろな技術を使えば決して不可能ではないはずです。業界としてやる気があるかどうか、または国としてやらせる気があるかどうかの問題です。

カジノの議論を通じ、世論の変化を感じておられますか?

田中:依存症対策が重要であるという意識が広がってきているとは感じています。ただ、相変わらず「自己責任論」が強いんですね。アルコールもそうですが、依存症にならない人が多いために、依存症を「意思が弱いから」、「自分を律することができないから」といったふうな自己責任論で終わらせてしまいがちなんですね。

 ギャンブル依存症は、長い間「存在しないもの」とされてきただけに、そうした誤解が強いかもしれません。現在のような風潮のままだと、当事者はどうしても依存症かもしれないということを隠して、または自分で認めようとせずに、やり続けてしまうのです。

 依存症を自己責任論で終わらせて放置したままだと、社会的なコストは増える一方です。離婚率が上がって母子家庭が増えれば、母子手当などがかさみますし、依存症によって仕事につけなくなれば、生活保護などの社会保障費の負担は膨らみます。医療費も増えるし、犯罪につながれば刑務所や裁判のコストもかかります。国民が依存症を自己責任論と信じ、国が対策を放置していたのでは、本来であれば受益者負担を強いられるはずのギャンブル産業の代わりに社会のコストを負担し続けなければならず、結果的にギャンブル産業の片棒を担いでいるということに気付くべきです。

そもそも、ギャンブル依存症がどのようなものなのか、イメージが湧きにくいのが自己責任論の原因の一つかもしれません。

田中:世の中の多くの人は、ギャンブル依存症と言うと一発逆転を狙った、堕落した人間をイメージするかもしれませんが、実は反対なんですね。実際には30〜40代の真面目な中堅のサラリーマンが結構多いんですね。仕事などでストレスを抱えていても、悩みを話せる環境がなく抱え込んでしまって、それがギャンブルに向かうと。

 昨年スポーツ選手のギャンブル依存症問題が度々話題になりましたが、社会的に成功している人でもギャンブル依存症には陥ります。むしろ社会で成功しているので、自分で自分をコントロールできなくなっていることを認めることができないので、重症化するケースをたくさんみて参りました。

 ですから誰もが予備軍なんですね。かくいう私も、自分と夫がギャンブル依存症と判断された時に、「え、大学出てもなるんですか」と言ったほどですから。今思えば傲慢な話ですが、それまで比較的お給料も高く、仕事で成功していたので、自分は人生の勝ち組と思っていて、信じられない気持ちでした。

最近はソーシャルゲームのアイテム課金など、子供の時からギャンブル的なものに接する機会はむしろ増えているようにも思えます。

田中:確かに最近は、小学生でも数万円の課金をして問題になったりすることもあります。若年層でネット・ゲーム依存からオンラインギャンブルなどのギャンブル依存に発展するケースも出てきています。ですから依存症について正しい知識を持ってもらうための学校教育も欠かせないと思います。

(ここで再び失踪者について連絡が入る。身柄を確保した場所に田中代表も向かうことに)

防げなかった自殺も

…自殺をほのめかしたり、失踪したりするケースも多いのですか。

田中:残念ながら2016年、私たちが相談を受けていた仲間で、3人の自殺者が出ました。大体毎年、3人ぐらいでてしまうんです。

 福島県で起きたケースでは、あるギャンブル依存の男性が2回ほど自殺未遂を起こし、その時は一命はとりとめたんです。でも、2度目の自殺未遂のあと、精神科への入院を強く要望したのに、救急病院でそれが受け入れられず家に返されてしまって、その1週間後に自殺してしまいました。助けられたのにと思うと非常に悔しい思いです。医療・救急との連携体制の強化も含め、まだまだ啓発が必要で、社会が依存症について知っておかないと同じことが繰り返されてしまいます。

確かに、ギャンブル依存症がどういう状態で、最悪の場合は自殺にまで至るということまでは知られていません。

田中:最終的には鬱になることが多いんですね。まず直面するのはお金の問題ですが、それが家庭に広がり、さらに会社での横領など仕事にも影響します。そうしていろいろな要素が絡み合うことで、一体何が根本的な原因なのかが見えにくくなり、解決がどんどん難しくなっていく。

 本来であれば、重篤な場合はすぐにギャンブル依存症の回復施設に入れて回復プログラムを受けてもらう必要があるのですが、家族も周りもそんな知識がないので、誰も的確に判断できないわけです。周りにもアドバイスができる人がいませんし。

田中さんもかつては当事者の一人だったわけですが、どのような状況になるのでしょうか。

田中:一言でいえば強迫観念です。やりたくてしょうがない。そしてギャンブルをやりだすと今度は、止まらなくなる。うまく表現するのが難しいのですが、よく例えに使うのは「水疱瘡」ですね。子供が水疱瘡になると、親は「かきむしってはだめ」と注意しますよね。でも、かきたくてしょうがなくて、我慢できない。ちょっとかくとホッとしますが、一度かきだすとかきむしってしまって傷になったりする。あの感じがすごく強くなったのが依存症です。

 私の場合は競艇でしたが、ギャンブルも水疱瘡と同じで、やり始めるとホッとして、イライラが消えるんです

勝つことではなく、ギャンブルという行為そのものが目的になると。

田中:そうですね。アレルギーと同じで、人によって状況が違うんですね。自分の場合、お酒もタバコもスパッとやめられたんですが、ギャンブルだけは自分一人ではやめられませんでした。あと買い物。この2つは行動依存なので似ているのかもしれません。ギャンブルはやめられても、買い物にシフトするケースもよく聞きます。ゲーム依存になることもあります。ただギャンブルをやめさせるだけでなく、ほかの依存症に向かわないようにも気をつけなくてはならないんですね。

 これまでギャンブル依存症の対策が進んでこなかったのは、私たちのような当事者があまり声を大きくして主張してこなかったことも原因の一つという反省もあります。これからはもっとアピールしていきたいと思っています。

(インタビューが終わるやいなや、失踪した支援者を確保した現場に向けて飛び出した田中代表。その後、無事に回復施設につなげることができたとのこと)


このコラムについて

キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/011600224  

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