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https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20190624-00131119/
田中淳夫 | 森林ジャーナリスト
6/24(月) 11:52
盗伐された山の一つ。尾根部分を数ヘクタール皆伐された。(筆者撮影)
日本の林業は、今や絶望的状況ではないか。
そう思わざるを得なくなる事態が広がっている。宮崎県の盗伐事情について取材してそう感じたのである。
すでに
'''盗伐しても不起訴。その背景に透けて見える林業の闇を探る'''
でも紹介したが、全国各地で他人の山を無断で伐採する事件が頻発している。なかでも宮崎県は異常な有り様だ。その実態を探った記事をWedge7月号に執筆したが、書き切れなかった点を紹介しよう。
盗伐された山は、荒れ果てている。
ここでは被害者の証言に焦点を当てる。
■宮崎市在住の88歳の女性
平成28年7月末、亡くなった夫名義の山林が知らぬ間に伐採されていることに気づいた。近隣に住む長男が、山でチェンソーのエンジン音が聞こえるので山に行ってみると、伐採が始まっていた。すぐに警察に届けたところ、3人の警官が来たものの、その場で示談を勧められた。無断で伐採されたのは4反の土地に生えていた約400本の杉だった。これは将来、家を建て直す際に使おうと若いころ夫婦で植えた木である。
翌日、娘とともに警察署を訪れたら、話を聞くどころか署内にも入れてもらえず追い返された。そこで個人情報開示請求をしたところ、伐採届が「不存在」、つまり出されていないことがわかった。つまり無許可で伐採した森林法違反である。ところが検察は、平成31年4月に不起訴処分としている。
伐採していたのは二つの林業会社(一方は宮崎商工会議所会員)。林業会社の片方は「現場を片づけ、及び植林を責任を持って行います」と誓約書に記したが、いまだに放置のままである。また切株に土砂をかけて伐採跡を隠蔽しようとした痕跡もある。なお主犯格は、以前に神社の神木を34本を無断で伐ったことが発覚している。その跡地に植林すると約束したが、こちらも放置されたままだ。
なお長男には知的障害があり、人工透析も必要な身体である。そのため長男には連絡しないよう何度も伝えているが、警察は電話するだけでなく、母親に内密で長男を呼び出して「調書」をとったという。しかし母親には何の聞き取りもしていない。当然、被害者である母親の印鑑は押されていない。また警察は、伐採行為をしていた会社の捜査も行っていない。それなのに宮崎地方検察庁は、今年4月に不起訴とした。
地籍調査の標識杭があっても「誤伐」を主張する。
■延岡市60代の女性
平成28年2月、自宅に訪れた男が「間違って、そちらの山の木を1〜2本伐ってしまった」と言って来た。そこで山を見に行くと、約1300本ものスギとヒノキが伐られて丸裸になっていた。しばらくして森林組合が間に入って話し合いの場が持たれたが、無断伐採を行った業者は伐採を続けさせてほしいと言い出した(森林組合とともに断った)。
この伐採のために市に出されていた伐採届は隣の0,03ha(30〜40坪)の土地で、それは雑木の生えているところだった。対して伐られた土地は約0,8ha。約27倍である。しかも伐り方は乱暴で、払った枝葉を谷に落とし込んで土砂の流出が起きかけていた。そのため市は、この山を土砂災害特別警戒区域に指定する。
しばらくすると、現場に残されていた丸太は消えていた。こっそり持ち出したらしい。これだけのことが行われているにもかかわらず、警察は被害届を受理しない。これは盗伐(有印私文書偽造および詐欺)ではなく、誤伐(森林法違反)だと言い示談を勧める。
そのうえ所有地の境界線が確定していない、伐られた土地はあなたの山ではないのではないか、と言い出した。さらに所有者は認知症である(から信用できない)という証言も出た模様。業者も「警察は俺たちを逮捕しない」と豪語していた。なんらかの確信があるようだ。
突っ返させられるたびに新たな証拠書類をつくって申請を続けた。結局、被害届を受け取らせるまでに警察署に足を運ぶこと約70回、2年半かかった。
ところが被害届を受理して立件したものの、検察はすぐに不起訴にしてしまった。そこで検察審査会に申し立てたところ、審査会事務局は1度目2度目を不受理。時効の3カ月前までに申し立てしろという理由である。しかしそうした規則はない。そして3度目にようやく受理させた。
結果として、7人の加害者のうち1人だけが起訴相当という結果が出た。裁判はこれから始まる。
延岡市と地元の森林組合は応援してくださっているが、この件で多くの弁護士に相談したのだが、県内の弁護士の多くは動かず、警察の言い分に追随している。弁護士に話した情報が警察側に漏れている恐れもあった。
なお業者の集まりに呼ばれて告訴を取り下げるよう言われたこともあったが、その際に意図的な盗伐だったことを認めた発言も出ている。(録音あり)
……以上は、いずれも被害者側の声である。こうした経緯が実際にあったかどうかは確認できていない。しかし、同様のケースは数多い。宮崎県盗伐被害者の会には現在88家族が加入しているが、その大半が同じような警察の被害届不受理、検察の不起訴などを経験したという。無断伐採現場に警官が来ることも少ないが、来ても「被害届は受け取りません」と最初から言われる有り様である。上司から言われているという証言もあった。
一体、宮崎県の行政や司法はどうなっているのか。
なお「Wedge7月号」には、宮崎県で盗伐が頻発している事情を業界関係者に聞くとともに、宮崎県および県警の対応・回答について記した。こちらも合わせて目を通していただけると幸いである。
※文中写真はすべて筆者の撮影。
田中淳夫
森林ジャーナリスト
日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴としての「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで執筆活動を展開。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、そして自然界と科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然だけではなく、人だけでもない、両者の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』あり。
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