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オマル・エル=アッカド◆1982年、エジプト生まれ。カタールで育ち、現在はアメリカ在住。カナダの新聞社に在籍し、アフガン戦争、アラブの春、グアンタナモ収容所などの取材を手掛ける。本作がデビュー作(撮影/写真部・岸本絢)
2075年のアメリカの姿をカナダの元大手新聞記者が描く〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171101-00000057-sasahi-ent
AERA 2017年11月6日号
近未来にあり得るかもしれないアメリカの姿を描いた小説『アメリカン・ウォー』でデビューした、オマル・エル=アッカドさんは1982年、エジプトの生まれ。かつてはカナダの新聞社に在籍し、アフガン戦争、アラブの春、グアンタナモ収容所などの取材を手掛けた同氏が、AERAインタビューに答えた。
* * *
2075年、気候変動による海面上昇でフロリダ半島が水没したアメリカ。南部の州が独立し、本国「北部」と内戦を繰り広げている。「第2次」南北戦争に揺れるアメリカと、そこに介入する中東の大国──。
『アメリカン・ウォー』は、こうした60年後にあり得るかもしれないアメリカの姿を描く近未来「戦争」小説だ。著者はアメリカ在住の元新聞記者で、この作品が小説家デビュー作。なぜこのテーマを選んだのか。
「自分は今、西側の世界に生きています。アメリカにいると、ほかの世界で起きていることを無視して生きていくことは簡単です。ただ、私は世界の紛争を見てきましたが、こうしたことは、どこでも起きうることなのです」
エジプトで生まれ、5歳のときに家族でカタールへ、16歳でカナダへ渡った。カナダの大手新聞社で記者として、アフガニスタン戦争や、「アラブの春」など紛争地帯の取材を手掛けた。
「ジャーナリストとしての経験はこの作品にも大きく影響しています。ストーリー全体もですし、難民キャンプの描写といった細部にもです」
大学ではコンピューターサイエンスを学び、テクノロジーにも明るい。だが、この作品は未来を描きながら、SFのように発達した科学技術は出てこない。描かれるのは、内戦難民キャンプでの暮らし、ゲリラ戦、地雷、猥雑な繁華街……。現代のアメリカと比べても、文明は退行しているように見える。
「未来なのに先端技術が出てこないことに落胆するかもしれませんが、戦争は文明を荒廃させて、過去に戻してしまうものなんです」
もうひとつ、戦争のリアリティーを感じるのが、「大義」に従って真っすぐに行動する主人公のサラットら若者と、彼女をそそのかす老獪な男らの対比だ。
「若者と年配者の明確な分断は、意識して描きました。年配者は若者を扇動し状況をコントロールし、若者がテロ行為などで直接手を下す。これは戦争で常に起こっていることです」
まだ35歳。ジャンルを問わずフィクションが好きで、記者時代から仕事のかたわら、ジャーナリスティックな作品のほかコメディーなどの習作を書いてきたという。次の作品は?と聞くと、
「自分でも何が出てくるのかわからない」
と笑った。(編集部・長倉克枝)
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