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津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
津田大介「トランプの移民政策に反発するIT業界」〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170913-00000078-sasahi-sci
週刊朝日 2017年9月22日号
ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。アップルやグーグルなど米国のIT業界が、トランプ大統領の進める移民政策に反対する理由を解説する。
* * *
米バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者と反対派の衝突事件の衝撃も覚めやらぬなか、トランプ米大統領が追い打ちをかけるような行動に出て、IT業界からひんしゅくを買っている。
問題となったのは、トランプ大統領が9月5日に発表した、不法移民の強制送還猶予措置「DACA」(ダカ)の撤廃だ。
これは元々オバマ前大統領が2012年に大統領令で立ち上げた移民の救済制度。子どものころ親に連れられて米国に不法入国した15〜36歳の若者が、一定の条件を満たすことで、2年間は米国で働き続けられるようにした。条件を満たす限り、2年ごとの更新も可能だという。この措置を受けている若者は全米で約80万人いて、「ドリーマー」と呼ばれる。
ダカ撤廃は元々トランプ大統領の選挙公約だった。移民に職を奪われていると不満を持つ層からの突き上げもあり、9月5日までに何らかの判断を下すことが求められていたが、これに反発したのが多くのドリーマーを従業員として抱えるIT業界。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が立ち上げた非営利の人権団体「FWD.us」は、IT企業の経営トップらを中心に500人以上の署名を集めた。8月31日にトランプ大統領に宛てた公開書簡で制度の存続を求めていたが、訴えは一顧だにされず、撤廃が発表されてしまったという構図だ。
発表を受け、IT企業の経営者たちは一様にツイッターやフェイスブックなどで非難の声を上げている。アップルのティム・クックCEOは従業員たちに宛てたメールで、アップルの従業員中に250人以上のドリーマーが含まれることを明かした。
「これまで祖国と呼んできた唯一の国からいつの間にか追放されてしまう可能性があることに、私は深く失望している」
と述べ、今後アップルがドリーマーたちを保護する法案を提出するよう議会に圧力をかけるとともに、従業員に対する法的なサポートを約束した。
グーグルやマイクロソフト、フェイスブックなど、ほかのIT企業もアップルと同様の対応を行う見込みだ。
米調査機関のセンター・フォー・アメリカン・プログレスが試算したところによると、ダカが撤廃された場合、米国のGDPのうち4603億ドル(約50兆円)が失われるという。それだけ移民への経済依存度は高いのだ。このまま現政権の反移民政策が進めばIT業界は今抱えている従業員を失うだけでなく、世界中から有能な人材を引き抜くことが困難になる。有能な移民の積極的な受け入れを成長のテコとしてきたIT業界にとって、トランプ政権の移民政策は死活問題なのだ。
撤廃決定の翌日の9月6日、ニューヨーク州など全米15州と首都ワシントンの司法長官は、取り消しを求める訴訟を起こした。訴訟の行方を誰よりも注目しているのはIT業界のトップたちであるに違いない。
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