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国連安保理、北朝鮮制裁決議を全会一致で採択(ロイター/アフロ)
北朝鮮が、米国と中国を追い詰め始めた…国連制裁決議でも全面的妥協
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20599.html
2017.09.14 文=相馬勝/ジャーナリスト Business Journal
国連安全保障理事会は11日、北朝鮮に対する追加制裁決議案を採択したが、その制裁内容は当初の米国案から大きく後退した格好となった。特に米国案の大きな目玉だった「石油の全面禁輸」がなくなり、「石油輸出の3割削減を目指す」と大幅に後退したほか、金正恩朝鮮労働党委員長の個人資産の凍結も削除されるなど、米政府の全面的な妥協だけが目立つかたちとなった。
これは「北朝鮮への即時攻撃」などのトランプ米大統領の発言がブラフ(脅し)であり、「ビッグマウス(大言壮語)」にすぎないことが証明されたかたちだ。また、武力による解決ができなければ、北朝鮮に対して経済的に大きな影響力をもつ中国の存在なくして北朝鮮問題を解決できないという従来の図式も崩すことができず、今回の安保理では、国際社会が無力感に打ちひしがれているさまを露呈してしまったといえる。
筆者は先日、北朝鮮との国境を接する中国遼寧省丹東市を訪れた。その際に驚いたのは、中国と北朝鮮の「血で固めた友誼」の原点となった朝鮮戦争における中国の活躍や北朝鮮との密接な関係を示した「中国抗米援朝記念館」が、実は2014年12月からほぼ3年間も閉鎖されていたことだ。
閉館の理由として、表門には「展示拡大のための建設工事」との小さい案内板が掲げられていただけだった。さらに、駐車場などの表門の付近はまったく掃除がなされておらず、雑草が人の背丈ほども生い茂っており、荒れるに任せていた。もちろん、工事が行われている気配はなく、記念館自体が全体的にブルーシートに覆われており、記念館の展示再開はめどが立っていないようだ。
ただ、記念館には朝鮮戦争時代の資料1万9500点が所蔵され、当時の北朝鮮の金日成主席が中国の毛沢東主席に支援を乞い願う親書などが展示されている。これらの貴重な「中朝の国家一級文化財」が展示されていれば、両国の「血で固めた友誼」がまだ生きているはずだったが、今回の閉館継続は中国の習近平指導部が北朝鮮と仲良くやろうという気がまったくないことを明らかに示しているようだ。
■金正恩への祝電
それが改めて明らかになったのが、9月9日の北朝鮮建国69周年記念日だった。この日、ロシアのプーチン大統領とキューバのカストロ議長が金氏に祝電を送ったと朝鮮中央通信が報じているが、習氏ら中国指導部の要人が祝電を送ったかどうかは言及していない。
中国共産党機関紙「人民日報」など中国メディアも、習氏の祝電についてはまったく報道していない。北京の外交筋は「中国メディアは習氏が外国指導者に祝電を送ると必ず報道しており、今回の場合、北朝鮮に祝電を送らなかったということだろう」と語っている。習氏は15年まで、北朝鮮の建国記念日や労働党創立記念日(10月10日)、さらに金氏の誕生日にも祝電を送ってきたのだが、昨年から2年連続で建国記念日の祝電を送っていないとみられる。それだけ、両者の関係は冷え切っているのだ。
それにもかかわらず、なぜ中国は国連安保理の制裁内容を大幅に緩和するような真似をするのか。それは、中国側の勝手な都合による。米国が武力行使すれば、多くの難民が鴨緑江を越えて、中国領に殺到する。また朝鮮半島で有事が発生すれば、中国経済に及ぼす影響も大きい。
それに、中国共産党は10月18日に5年に1回の第19回全国代表大会を開催すると発表しており、習氏は党大会で自身の腹心を多数、最高指導部に送りこみ、権力基盤の強化を目指している。だが、朝鮮半島で有事が発生すれば、国内情勢どころではない。党大会を延期してでも、朝鮮半島情勢の鎮静化に力を注がなければならない。これまでの政治改革や権力掌握は風前の灯火であり、大きな影響が出ることが予想される。
それだけに、習氏としては、なんとしても金氏の暴走を止めなけれればならないが、中朝関係は冷却化しているだけに、北朝鮮情勢が流動化すればするほど、習氏は政治的に追い込まれることになる。
だから、習氏は絶対に北朝鮮を経済的に追い詰めたくないのだ。仮に追い詰めれば「窮鼠猫を噛む」で、若くて血気盛んであり、世間知らずの金氏が韓国に武力侵攻したり、在日米軍基地やグアム島の米軍基地をミサイル攻撃するなど自暴自棄な行動に出かねないからだ。
つまり、習氏の行動はすべて“自分かわいさ”ゆえであり、基本的には金氏の思考方法とまったく変わらないのである。それは習氏、金氏のほかにも、もうひとり、ドナルド・トランプも同様といえるのかもしれない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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