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フェイスブックは、あなたが隠してるはずのことまで知っている
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52327
2017.07.29 土方 奈美翻訳家 元日本経済新聞記者 現代ビジネス
ジェフ・ベゾスとともに私たちの「買い物の常識」を変えた科学者が、巨大データ企業の秘密を暴いた本が話題になっている。その日本語版『アマゾノミクス』の刊行に合わせ、翻訳を手がけた土方奈美さんに、今この瞬間も私たちのデータを集め続けている巨大データ企業の実像を聞いた。
■ベゾスの右腕
昨今「ゲス不倫」が大はやりだ。週刊誌では昔ながらの密会写真に加えて、芸能人のソーシャルネットワーク上の私信までもが証拠として世間にさらされる。
とはいえ他人の不品行に眉をひそめていられるのも今のうちかもしれない。公開されていないだけで、私たち一人ひとりの日常生活も驚くほど詳細に記録されている。
インターネット上での検索や位置情報サービスの利用、フェイスブックでの「いいね!」やインスタグラムへの写真の投稿など、意識的、無意識的に残すデジタル痕跡を通じて、あなたがいつ、どこに行ったのか、どんな人とどれくらい親密につきあい、何に関心を持っているかがデータ会社に把握されている。
ただ、一人ひとりについて蓄積される膨大なデータは、われわれの日々の意思決定の質を高め、人生を豊かにする可能性も秘めている。
ソーシャルデータの恩恵を、それを生み出す個人が享受するためには何が必要なのか。個人の、個人によるデータを、どうすれば個人のためのデータにできるのか。それを明らかにするのがこのたび刊行された『アマゾノミクス』である(原題は『Data For The People』)。
著者のアンドレアス・ワイガンドはアマゾンの元チーフ・サイエンティストで、創業者のジェフ・ベゾスの右腕としてデータ戦略を担った人物だ。顧客本位のデータ活用はアマゾンの飛躍的成長の土台となり、eコマースの新たなスタンダードとなった。
アンドレアス・ワイガンド〔PHOTO〕Social Data Lab
アマゾン退社後もスタンフォード大学などで教鞭をとるかたわら、アリババ、ゴールドマンサックス、BMWなどのビッグビジネスから婚活サイトや旅行サイトまで、幅広い企業のデータ戦略を指南してきた。まさにデータ会社の表も裏も知り尽くした、ソーシャルデータ分野の世界的権威である。
本書は2017年1月にアメリカで刊行されて以降、ニューヨーク・タイムズ紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙で高く評価され、ノーベル賞経済学者のダニエル・カーネマンも「秘密なき世界にどのような機会が潜んでいるかを説得力をもって描いている」と賛辞を寄せている。
■厄介なソーシャルデータ
本書の内容は二部構成になっている。
まず前半では、今日われわれについてどのようなデータが収集・分析されているのか、つまり「ソーシャルデータ」とは何か、データ会社はそれをどのように精製し、活用しているかを解説する。それを理解することが、ビッグデータの時代を生きる者の必須能力である「情報リテラシー」を身に着ける第一歩だと著者は説く。
データ会社が収集するソーシャルデータは、「クリック」「つながり」「コンテクスト(背景)」の三種類に大別され、それぞれがわれわれの人格を赤裸々に伝えている。
たとえばフェイスブックは、カップルが交際中であることを公表する100日前から、二人のネット上のやりとりは着実に増加すること、そしてステータスを「交際中」に変更したとたんにフェイスブック上のやりとりは一気に減少することを把握している。当事者が「交際中」であると認めていなくても、フェイスブックにはわかっている。
オンライン映画レンタルのネットフリックスも同じで、ユーザーがインテリぶって小難しい映画に星五つの評価を与えても、映画が始まって数分後に視聴を中断していれば、そちらのほうをより正直な評価だとアルゴリズムは認識する。
ソーシャルデータはわれわれが自覚していない本音まで明らかにしてしまう。
一番厄介なソーシャルデータは、われわれが知らないうちに身の回りのセンサーが捕捉してしまうコンテクスト・データかもしれない。
たとえばアメリカでは車のナンバープレートのデータを集める会社のもとに、毎月1億件のデータが集まってくる。それによって個人がどのように移動したかがかなり正確に把握できる。
また世界にはすでに10億台のスマートフォンがある。あなたがどこかのイベントに参加して、ほかの人が撮影した写真にたまたま写りこんでしまったとする。その写真がフェイスブックにアップロードされれば、いつのまにかそのイベントに参加したことは公開情報となる。
地球上に存在する数兆個のセンサーが集めてくるデータは、われわれにはコントロールできないものであり、それはプライバシーに関する従来の認識や法制度に根本的変革を迫る。
■われわれが恩恵を享受するためには?
何気なく使っているネットサービスや身の回りのセンサーからどれほどの個人情報が明らかになっているかがわかったところで、後半はそうしたデータによってデータ会社だけではなく、われわれ自身が恩恵を享受するための条件を考察する。
著者はそこでカギとなるのが「透明性」と「主体性」という二つの原則だと主張し、データ会社の透明性を高めるための権利、ユーザーの主体性を高めるための権利の実現を訴える。
たとえば金融機関には、フェイスブックなどから明らかになる交友関係を通じて、個人の信用度を推し量ろうとする動きがある。それはクレジットカードや銀行口座を持っておらず、金融機関との取引実績がない若者にとって、自らが信頼に値する人間であることを証明する新たな手段となるかもしれない。
しかし友達のなかに過去に保険の虚偽請求や債務返済の滞った者が含まれていれば、「同類性」の原則に基づいてあなた自身の信用度も低いと判断されるリスクがある。
金融機関などデータ会社が、あなたについてどのようなデータを作成し、判断材料としているのか、そうしたデータの管理方法が適切であるかを確認できるようにするには、透明性を高める権利が必要だ。
そうした知識に基づいて、特定の相手を友達リストから削除するなど、自らの意思に基づいてデータを管理するには、主体性を高めるための権利が必要だ。
■20世紀は石油、21世紀はデータ!
20世紀のもっとも重要な資源が石油だとすれば、21世紀にそれに代わるのはデータであるという認識は広がっている。
英『エコノミスト』誌も2017年5月初旬、『世界で最も価値のある資源』と題した特集記事で、経済活動におけるデータの重要性の高まりと、グーグル、フェイスブック、アマゾンなど大手データ企業による寡占化の懸念を指摘した。
データの世界においては先行者に大きな優位性があり、すでに膨大なソーシャルデータを蓄積している大手企業の影響力は今後ますます高まる。したがって、この情報の蓄積による優位性についても独占禁止法が適用されるべき、という議論が起こると予測している。
いまはデータを作成する個人と、データから製品やサービスを生み出す組織との関係がまさに決まろうとしている重大な時期にあたる、と著者は指摘する。そしてソーシャルデータにかかわりのない個人は一人もいないとして、透明性と主体性の高いデータ企業を積極的に選ぶなど「ソーシャルデータ革命」への参画を促す。
本書を翻訳する過程は目から鱗の連続で、これまで自分がどれほど無自覚にソーシャルデータを放出してきたかを痛感し、空恐ろしさを感じた。
それと同時にこれから登場するであろう、データを使って一人ひとりの生活を豊かにするようなサービスへの期待も膨らんだ。
本書が読者のみなさまにも新たな発見をもたらし、ソーシャルデータ革命と自らとのかかわりを意識するきっかけとなれば幸いである。
アンドレアス・ワイガンド Andreas Weigend
ビッグデータの世界的な専門家。米アマゾンの元チーフ・サイエンティストとして、創業者ジェフ・ベゾスとともに顧客にとって使いやすいプラットフォーム構築に尽力。今日のアマゾンの基礎を作り上げた。ソーシャルテクノロジー、モバイルテクノロジー、消費者行動、さらにそれらが生み出すソーシャルデータ革命に関する世界的権威。ドイツ・ボン大学で物理学を学んだのち、1991年にスタンフォード大学で物理学博士に。現在はソーシャルデータラボの創設者兼ディレクターを務める。コンサルタントとして、アリババ、ゴールドマンサックス、ルフトハンザなどのビッグビジネスから婚活サイトや旅行サイトまで、幅広い企業のデータ戦略を指南してきた。スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、中国上海の復旦大学で教鞭を執る。
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