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日経ビジネスオンライン
「トランプにせもの」説の勝利が確定?
上野泰也のエコノミック・ソナー
場当たり的政策運営で、行き詰まる公算が大
2017年4月11日(火)
上野 泰也
オバマケア改廃法案の撤回に追い込まれ、トランプ米大統領の手腕に疑問を感じる米国民が増加、支持率が下落している。(写真:ロイター/アフロ)
期待感は薄れ失望へと変わりつつある
1月20日に行われた就任式から、マスコミなどとのハネムーン期間とされる100日が経たないうちに、トランプ米大統領への期待感が薄れて失望へと変わりつつあるという報道が内外で相次いでいる。筆者が提示してきたシナリオに沿った動きである。
この常識破りの大富豪が選挙公約をそのまま実現して米国経済の成長率を一段高く持ち上げることが本当に可能なのかどうかで2つに分かれていた市場の見方、やや大胆な表現をすると「トランプ大統領は『ほんもの』か、それとも『にせもの』か」という論争には、最優先課題に設定してきた「オバマケア」の改廃(撤廃および代替策の実行)に明確に失敗したことにより、「にせもの」説の勝利ということで、ほぼ決着がついたのではないか。
「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱などトランプ氏の署名で済む大統領令ではなく、法案可決が必要だったオバマケア見直しは、政権運営の行方を占う試金石でもあった」ものの、下院で過半数の票を確保するのに失敗し「入国禁止の移民政策に続く目玉政策の頓挫」となったため「政権には大きな打撃」で「求心力低下が進む可能性もある」(3月26日 毎日新聞)といった報道が、いくつも出ている。
共和党内の保守強硬派が反対姿勢を崩さず
野党民主党に加えて共和党内の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」が反対姿勢を崩さず可決の見通しが立たないため、ライアン下院議長が法案を取り下げて採決を回避し、「オバマケア」は存続することになった。
下院共和党内には一部で「オバマケア」改廃法案の復活を模索する動きがある。だが、ライアン議長が4月4日にそうした取り組みは現時点では「概念的な段階」に過ぎないと形容するなど、これが具体的に前に進んでいく兆候はない。
「オバマケア」の改廃をあきらめた共和党は、税制改革の論議に前倒しで着手するようである。だが、「国境調整」の問題を含め、ホワイトハウスと議会共和党による税制改革法案作りは大きな難題である。財政赤字を増やさずに減税を行おうとするわけであり、財源問題が大きな障害となる(当コラム3月13日配信記事「トランプ政権、大型減税の早期実現ほぼ不可能」ご参照)。
税制改革に至る道は遠く
「フリーダム・コーカス」は、財政赤字を増やしかねない案には強硬に反対するだろう。税制改革の議論を主導してきたライアン議長の求心力も大きく低下し、3月24日の記者会見では「税制改革は困難になったが、不可能ではない」という微妙な物言いをせざるを得なくなり(3月25日 日本経済新聞夕刊)、4月5日には税制改革には時間がかかると率直に認めた。
ロイター通信は4月3日に、「トランプ米大統領は、税制改革を実現にこぎ着けるための十分な人材を欠き、ホワイトハウスとしての明確な方針も持ち合わせていない」「トランプ政権は税制改革の早期実現を表明しているが、複雑な税制を点検して法案を策定し、深刻な対立に陥っている議会を説得するという困難な作業をこなせる能力のある人々を、まだ適所に起用できていないのが実情だ」という、実に厳しい指摘を行っている。
ロシア政府との関係に関する疑惑
この間、大統領選挙戦中のトランプ陣営とロシア政府の関係に関する疑惑が、トランプ政権にとって大きな「火種」であり続けている。オバマ前政権により盗聴されたとトランプ大統領は3月4日にツイッターで発信したが、これが根拠のない話であることはすぐ明確になった。ロシア問題から人々の関心をそらすために放った「目くらまし」ではないかと推測される。
3月23日に米誌タイムが電子版で報じたインタビューの中で大統領は、オバマ前政権により盗聴されたなどの発言が客観的事実に基づかないと批判されていることについて、「盗聴とは監視活動の意味だった」「(私の)直観は正しい」などと反論した。
“フェイク・プレジデント”との批判
だが、トランプ大統領のこうした主張は明らかに説得力を欠いている。米経済紙ウォールストリートジャーナルは3月22日の社説で、トランプ大統領は「からになったジンの瓶を手放そうとしない酔っ払い」のように自分の主張に固執しており、意地を張って間違いを認めようとしない「フェイク・プレジデント(にせ大統領)」だと、厳しく批判した。
選挙戦中のトランプ陣営とロシア政府の関係を巡る調査の一環で、大統領の娘婿であるクシュナー大統領上級顧問が上院情報委員会で証言することになった。
フリン氏から重大な証言が飛び出す?
また、この問題で辞任を余儀なくされたフリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がFBIや議会に対する証言における自らの刑事免責を求めていることが、筆者はどうも気になっている。トランプ大統領も巻き込むような重大な証言が飛び出す可能性があるように思えるからである。
いらだちや焦りを強めているトランプ大統領は3月26日、身内である共和党内にも批判の矛先を向け、「オバマケア」改廃失敗の責任は「フリーダム・コーカス」にもあるとした。
議会で公約に沿った法案を通すため、民主党内の穏健派との連携をも大統領は模索し始めたようである。だが、トランプ政権との対決姿勢を強めている民主党指導部はつれない。シューマー上院院内総務は「われわれが彼と一緒に働くのは実質的に不可能だ」「不動産のディール(取引)を行うように大統領職を務めることはできない」と突き放した。
ウォーターゲート事件を超える可能性も
ニューヨークのトレーディングルームではそういったことを考える雰囲気は今のところ全くないと聞くが、日本の運用担当者や政府関係者の一部からは私見として、トランプ大統領が4年の任期を務め上げずに退任する可能性もあるという声が聞こえてくる。筆者自身もそうした確率が現状2割程度はあるのではないかと考えている。
フィナンシャルタイムズに3月20日に掲載されたコラムには、トランプ陣営が大統領選挙でロシア政府と共謀したのではないかという疑惑が仮に事実ならウォーターゲート事件よりも大きな醜聞となって、大統領の弾劾につながる可能性があるという文章がある。
ツイート数の推移に注目
また、ツイッターでトランプ大統領が毎日発信する数に以前から筆者は注目している。これが少ないまま長期間推移するなら、気力が萎えてきたということなのかもしれない。
ムニューシン財務長官は3月24日のイベントで、トランプ大統領は「完璧な遺伝子を持っている。驚異的なエネルギーがあり、信じられないくらい健康だ」と述べた。だが、閣僚がこんな話をわざわざしなければならないところに、政権の脆さが透けて見える。
仮に、トランプ大統領が任期の途中で急きょ辞任する場合には、米国株はさすがに急落し、「トランプラリー」で持ち上がった分をいったん帳消しにするだろう。
米株式市場では期待がなお根強いが
米国の株式市場ではトランプ期待がなお根強く、税制改革の早期実現を待望する空気が今後も漂い続けるとみられる。しかしそれでも、ニューヨークダウ工業株30種平均は3月27日まで8営業日続落となった。連邦政府の債務上限引き上げ問題が大きな悪材料だった11年7月下旬から8月上旬に記録して以来の長さで、さすがに政権への期待レベルが一段下がったことが示されている。
トランプ政権には「ストラテジー」や「ロードマップ」がない上に、経済政策の主柱となるブレーンが不在で、政策をしっかり実行していくスタッフも十分に集まらず、その政策運営は場当たり的である。個別テーマでの取引(ディール)の成功をアピールして支持層の人気をつなぎとめているものの、いずれ行き詰まる公算が大きい。そして、大きな波乱材料になり得るのが、繰り返しになるが、ロシア政府との関係を巡る疑惑である。
シリア爆撃で、ロシアから重大な情報流出はあるか
米国は日本時間4月7日、シリア・アサド政権の軍事施設に対して巡航ミサイルによる攻撃を突然加えた。反政府勢力に対し同政権が化学兵器を使用して多数の死傷者が出たという強い疑惑が浮上する中、トランプ大統領は米国の対シリア政策を見直して、「懲罰行動」「力の誇示」に動いた形である。核開発・ミサイル実戦配備を勧める北朝鮮・金正恩政権への強力なメッセージという側面もあるだろう。
だが、今回の軍事行動について筆者は、内政の行き詰まりから国民の目をそらす狙いの大胆な対外行動ではないかという疑念をぬぐえない。歴史上で古今東西、そうした事例には枚挙にいとまがない。
そうした行動の代償として、アサド政権を支援しているロシアと米国の関係悪化は、どうやら避けられない情勢である。米国との抜本的な関係改善をロシアのプーチン大統領が完全にあきらめた時に、ロシア側からトランプ大統領に関する何らかの重大な情報が出てくることはないのか。日本のマスコミはそうした点には一切触れていないようだが、筆者は大いに関心を抱いている。
日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。
このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
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日経ビジネスオンライン
トランプ氏が吠えても工場は動かない?
GEのデジタル工場 カイゼン4.0の実力
DMG森精機・森雅彦社長に聞く「デジタル工場の未来」
2017年4月11日(火)
池松 由香
デジタル工場と聞くとIoT(モノのインターネット)が思い浮かぶが、「IoTではなく『IT』と『OT』の両方が大切だ」とDMG森精機の森雅彦社長は指摘する。OTとは、工場の工作機械や人の作業をどう進めれば効率的かを人が考える「オペレーション技術」のこと。これがなければいくら機械のIT化が図れていても工場は動かない。特集で取り上げたGEの米国工場もこの点には気づいていた。工作機械のデジタル化は今、どこまで進んでいるのか。またそれが製造現場の未来をどう変えるのか。日独の現場に詳しい森社長に聞いた。
DMG森精機の森雅彦社長(写真:陶山 勉、以下同)
グローバル市場では工作機械のデジタル化が進んでいますが、日本の工場では思うように進んでいないように見えます。世界の製造現場をよくご存じの森社長の目から見て、日本の工場はどういう段階にあるのでしょうか。
森:世界の工作機械はデジタル化によって「1個流し」、すなわち「1個ずつの計測」がカギを握る世界になってきています。
1個ずつの計測とはどういうことでしょうか。
森:日本の現場では、月産1000〜2000個、自動車業界では9000〜2万個という単位で部品を作っています。部品メーカーは、自社で作った部品の全てにおいて寸法や表面の粗さなどを細かく計測することで顧客への品質を保証しています。大量に作る場合、1個ずつ計測するのでは時間がかかりすぎるので、あらかじめセットしたゲージ(測定機)の上に部品を載せるなどして、たくさんの量を流しても時間が合うようなやり方で計測しています。
ところが、航空部品や人体に埋め込むような人工関節、ロケット部品などの中には、月に1個も作らない時もあるけれど年に5〜6個は作るようなモノもある。ドイツでは、日本のように大量に作るものが次第に無くなっているので、繊維機械とか印刷機械、化学機械とか航空機の部品など、いろいろなものを月に10個くらいずつ作っているような現場があります。複数の種類を流さなければならないので、1個ずつ測るにしてもマニュアルでは時間がかかりすぎる。1個の部品に付き200〜300カ所くらいを計測する必要があるからです。
そこで活躍するのが、デジタルの三次元測定機で測る方法です。複数の部品が1個ずつ流れてきたとしても、瞬時に測ってデータとして記録できます。
製造業の基本は「良く測る」
森:三次元測定機で測る最大のメリットは、測定機で測ったデータをリアルタイムで加工機にフィードバックできること。「設計通りに削ったはずだけど熱変位が起きて変形したので、さらにここを削る必要がある」とか、「工具磨耗が進んでいるから工具を交換しよう」とかいう判断をより繊細にできるようになります。その結果、部品の精度が高まるわけです。
ところが日本では、まだ部品のロットが多いので必要ないということもありますが、このやり方があまり取り入れられていません。三次元測定機を搭載した機械は、10件の鉄工所が導入している機械のうち日本では10〜15台、一方のドイツでは20台くらいでしょう。
どちらが良いか悪いかというより、モノ作りの文化が違うのです。
工作機械というと切削の方に目が行きがちですが、実は計測が重要なのですね。
森:はい。計測というのは面白くて、さまざまな種類があります。取り付ける場所で言うと、機内、機側、オフラインなどがあり、計測手法で言えば、直接触って測るものから超音波やカメラで測定するものもあります。寸法だけでなく表面の粗さを見たり、表層のマイクロクラック(微細なひび割れ)を見たりもします。
当社にとってはそこが付加価値になる上、お客様にとっても部品の寿命が延びるのでメリットがある。ウインウインの関係になるのです。
良く測る――。製造業の一番重要なところは「計測工学」だと思っています。弊社が2010年にソニーマニュファクチュアリングシステムズから計測機器事業を買収し、マグネスケールを子会社として設立した狙いもそこにあります。
「機械を止めないための方法が見えてきた」
機械に60個のセンサーを付けて検証
御社では約2年前から「マシンツール4.0」という実証プロジェクトを自動車・工作機械部品メーカーの独シェフラーと進めています。これはどのようなプロジェクトで、現時点ではどのような成果が出ているのでしょうか。
森:マシンツール4.0では、弊社の工作機械に60個のセンサーを取り付けて実際にシェフラーの現場で使ってもらい、どのデータがどう役立つかを検証しています。シェフラーは弊社の工作機械向けにベアリング(軸受け、機械の軸を支える部品)を製造している取引先でもあります。
成果は主に2つ。一つは、機械のどの辺りでベアリングの磨耗が進んでいくかということが分かってきたので、シェフラーはベアリングの素材の面で、我々は機械の機構の面での改良に役立てています。この活動を進めていくと、今までは例えば3年で壊れていたスピンドル(主軸、旋盤では部品を把持して回転する部品)が10年ぐらい持つようになってきます。
もう一つは、機械を止めないためにはどのセンサーを見れば工具の磨耗などを予測できるかが分かってきたこと。工具の磨耗はそれを支えるベアリングをモニターすることで分かりますから、工具を替えるタイミングを適切に設定できます。他にも、切り子(切削した後に出るクズ)がたまりすぎていないか、油が切れていないかなど、機械を止める要因になるものを事前に知ることができるようになります。
IoT機械の発想は1950年代からあった
そうしたモニタリングが発展して、工作機械にAI(人工知能)を搭載できれば、機械が互いに会話をしながら作業を分担したり助け合ったりすることができるようになるのでしょうか。
森:僕は、そこはあまり期待していません。ただ、弊社の場合、AIの活用としてまず考えられるのはサービスエンジニアの部分です。
サービスエンジニアというのは、お客様から問い合わせがあった時に、その問題を解決する方法をお教えしたり、実際にお客様の元へ出向いて機械を修理したりします。現在は現場経験20年のサービスエンジニアがお客様の抱える問題を聞きながら解決していっているのですが、AIを活用することで、5年目のエンジニアでもある程度は解を提示できるくらいになるのではないかと思っています。
それから、機械が互いに融通、というところまでは行きませんが、工作機械が自分で「これは削りすぎだ」とか「このままだと工具が破損する」といったことを判断できるようにはすでになっています。
発想としてはとても古く、1950年代後半に米マサチューセッツ工科大学などがコンピューター数値制御(CNC)工作機械を開発した頃から考えられてきました。私は京都大学で機械工学を専攻しましたが、「AE(超音波)による工具磨耗のインプロセス検出」というタイトルの論文を提出しました。こういった分野は当時の流行だったのです。
CPU(中央処理装置)やメモリー、センサーといったデバイスが高性能かつ低コストになってきたことで、当時はできなかったことができるようになりました。当時、こういった領域を研究していた我々は今、ワクワクしているところです。
同じ技術でも20年前と今ではレベルが違う
処理能力が速くなったからこそ大量のデータが集められるというわけですね。
森:そうです。もう一つ、加えて言うなら、各種デバイスの処理スピードが速くなると、工作機械の制御の精度をものすごく高められます。工作機械は実は、1000分の1ミリ単位で工具を動かして、精度の高い部品を切削しているのです。
できた部品を組み立てた時のロス(摩擦損失)を減らせるということですか。
森:ロスは減るし、精度は高まることではめ合い(部品同士のはまり具合)がよくなる。
今後は自社の工場の機械をデジタル化できる所とそうできない所に分かれていくと思いますが、今後、勝ち残っていくポイントはどこにあるのでしょうか。
森:デジタル化もありますが、コンピューターやソフトウェアの技術、バイオの技術、表面処理に関連したケミカルの技術など、さまざまな技術が20年前に比べるとはるかに進歩しています。20年前にはダメだったからといって諦めるのではなく、同じ技術でも適宜レビューしておくことが大切でしょう。
さらにこれからは、全世界の70億人のほとんどが、同じ生活水準になっていくと考えられます。となると、モノを作る場所は日本やドイツでいいと思うのですが、そこで作った製品が世界中に出て行った時に、どこでも同じくらいの品質で提供できるような組織体を整えておく必要があります。
小さい会社もデジタルをうまく使えば世界で戦える
今から10〜20年後の工作機械の世界はどうなっているのでしょうか。
森:これからはもっと設計データや製造の計測データ、出荷後の各種データなどが共有されてつながっていくでしょう。今は別々に存在しているために、設計のデータを分解して公差(部品の設計に対して許容される差)を振って、工作機械の作業に変換するという具合にかなり難しいことをしています。だからこそプロフェッショナルなのですが、弊社では、世界の拠点がデータでつながるグローバルライブラリーのようなものを作っていけたらと考えています。
デジタルやインターネットの活用は、製造現場だけではなくそれ以外の部門でも積極的に進めるべきです。弊社のような規模の会社が全国に40数カ所の事務所を出せているのも、インターネットやテレビ会議の活用がなければ非効率ですし、全世界の営業スタッフが同じ部品表を共有して見積もりを作れるというのもクラウドがあるからです。
強い会社はますます強くなれる。一方でデジタルを上手に活用すれば100人や200人の会社でも世界でやっていける。そんな絶好の機会が来ています。
それから忘れてはならないのは、IT化が進めば進むほどOT(オペレーション技術)が重要になってくるということです。OTというのは、機械やITを使いこなす人の能力を指します。IoTではありません。ITとOT。それらの融合ができるかどうかにかかっています。
日本はOTに偏っている部分があってITの導入が米国などに比べて遅れがちになっていますが、逆に米国はITで全てを解決しようとしている部分が大きいと言えます。でもOTがなければ工場は動きません。(米大統領のドナルド・)トランプ氏がいくら国内で工場を造ると言ったところで、単にワーカーだけ集めても彼らは工場で何をすればいいか分かりません。作業手順書もなければどのくらいの公差で部品を削ればいいかも分からない。OTを持つ生産技術者が不可欠なのです。
OTの人材を育てられれば、今は十分に活用されていない機械の能力も100%引き出すことができます。ここは弊社でも取り組んでいかなければならないところです。
このコラムについて
GEのデジタル工場 カイゼン4.0の実力
世界の工場が今、変革の時を迎えている。機械や部品、ヒトの動きに関するあらゆる情報をデジタルデータとして記録し、解析した結果を工場内のカイゼン活動や製品設計に生かしてサプライチェーン全体を効率化する。2017年4月10日号の特集「潜入 GEのデジタル工場」では、最前線を走る米ゼネラル・エレクトリック(GE)の工場を徹底取材すると共に、ニッポンの製造業の生きる道を探った。ここでは、モノ作りの現場を歩き続けてきた本誌記者が、本誌では取り上げきれなかった話を少しだけマニアックな視点でお届けする。
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