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米中首脳会談、トランプが「ビッグ・ディール」をものにする!?
すべてはこの日のための布石だった…
近藤 大介『週刊現代』編集次長
プロフィール
「ディール外交」第1幕
紆余曲折を経て、ついに4月6日と7日、トランプ大統領のフロリダ州の別荘で、トランプ大統領と習近平主席との初の米中首脳会談が開かれる。安倍晋三首相に遅れること2ヵ月、習近平主席も、あの豪華絢爛な「マー・ア・ラゴ」を訪問することになったのだ。
今回の米中首脳会談のキーワードは、「ディール」(取引)だろう。世界の2大国が「ディール外交」を展開し、ビッグ・ディールを成立させる(もしくはディールが決裂する)第1幕になるというわけだ。
「ディール外交」とは、自国の国益と他国の国益とを取引する、まるでビジネスのような外交という意味だ。
「ディール外交」においては、安全保障問題と経済貿易問題といった、本来は異なる分野でも、一緒にテーブルの上に置かれて、「ディール」の対象となる可能性がある。ごく大雑把に言えば、「安全保障分野ではこちらが妥協するから、経済貿易問題ではこちらの主張を呑め」といったことだ。
ビジネス業界で半世紀近くを過ごしてきたトランプ大統領は、まさにそんな「ディール外交」を展開しようとしている。対する習近平主席も、独特の外交をする中国の代表だから、条件次第ではディールに乗ってくるだろう。
このトランプ流の「ディール外交」は、オバマ時代までのアメリカ外交とは、根本から異なるものだ。
第二次世界大戦後の伝統的なアメリカ外交は、「三元外交」で進めてきた。表の交渉は国務省が担当し、その裏でCIA(中央情報局)が諜報活動や工作活動を行ってサポートする。さらに国防総省が世界最強のアメリカ軍を駆使して睨みを利かせ、場合によっては威嚇や攻撃に出る。このように外交官・諜報員・軍人が三位一体となった外交によって、アメリカは第二次世界大戦後の世界の覇権を維持してきたのである。
「三元外交」では、自由・民主・人権といった建国以来の「アメリカの理念」を、錦の御旗として掲げてきた。そうした「人間の普遍的価値観」を前面に押し立てることによって、アメリカの国益を世界全体に拡大させた。
ところがトランプ大統領は、こうした「アメリカの理念」には、さほど価値を置いていない。
実は、アメリカの建国以来の伝統にはもう一つあって、それは「実利主義」である。特にヨーロッパからの移民が流れ着いたニューヨークには、マーチン・スコセッシ監督が映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』で描いたような、己の腕力と才覚だけに頼って富を勝ち取る「実利主義」の精神が、脈々と根づいている。トランプ大統領はまさに、『ギャング・オブ・ニューヨーク』でレオナルド・デカプリオが演じたアムステルダムの末裔のような男と言えるだろう。
そのようなトランプ大統領にとって、「アメリカの理念」など、単なるきれいごとに過ぎない。同時に、アメリカが戦後70年にわたって推し進めてきた「アメリカの理念」を掲げる「三元外交」は、いまや無駄が多く、現在のアメリカ人の国益には直接結びつかないと考えている。
だからこそ、トランプ大統領は3月28日、オバマ大統領が進めてきた地球温暖化対策を目的とする規制を見直す大統領令に署名したのだ。これによって、2015年12月に採択された「パリ協定」は、大きく後退することになった。
そのような「実利主義」に徹したトランプ大統領の方が、ある意味、オバマ大統領までの戦後の歴代大統領たちよりも、「アメリカ人の原型」に近いと言えるかもしれない。未開の地で己の腕力と才覚だけに頼って貪欲に最大限の富を求めていく――こうした「アメリカ人の原型」こそが、トランプ大統領を誕生させた最大の要因だろう。
アメリカの原点に立ち返り
その「実利主義」政治の延長線上に、トランプ外交がある。腕力を見せつけるには、軍隊を増強する必要がある。だから軍事予算を9%もアップする2018年度予算案(2017年10月〜2018年9月)を作った。アメリカを防衛するための国土安全保障予算も7%増だ。
逆に、「アメリカの理念」と結びつくような「ヤワな部署」に対しては容赦ない。環境保護庁予算は31%減、国務省29%減、農務省21%減、労働省21%減、保健福祉省18%減、商務省16%減、教育省14%減、運輸省13%減、住宅都市開発省13%減、内務省12%減……。
この「トランプ予算案」が、そのまま議会を通過するとは思えないが、それにしてもトランプ大統領の考えは、極めて明瞭である。
NEXT ?? 商談の前にまず相手を牽制
このようなトランプ大統領が目指すのが、「ディール外交」と言える。「ディール外交」の目標は、アメリカの富と雇用を増やすことである。しかも短期的に。そのためには手段を選ばないというわけだ。
そんな視点からアジアを俯瞰した時、真っ先に目に入るのが、アジア最大の経済大国で、最大の人口と市場を有する中国だろう。
そもそも、250年にも満たないアメリカ合衆国の歴史は、中国との交易史と言っても過言ではない。トランプ大統領の祖先のニューヨーカーであるサミュエル・ショー(1754年〜1794年)は、アメリカ独立戦争が終結した翌1784年2月に、ニューヨーク港から大型商船『エンプレス・オブ・チャイナ号』を、中国に向けて出港させている。
この商船はケープタウンからインド洋に出て、2万900qも経て、8月に広州に到着。積み荷の毛皮、綿花、人参、鉛などを、中国製の陶器、シルク、茶葉などと交換し、翌1785年5月にニューヨークに到着した。この航海で大成功を収めたショー船長が、ジョン・ジェイ外務大臣(ニューヨーク州知事)に、中国ビジネスの無限の将来性について報告したため、ニューヨークで中国ビジネス・ブームが巻き起こる。
サミュエル・ショー船長は、その後、初代の広州領事(アメリカ大使)に任命される。以後、1840年にアヘン戦争が起こるまで、計6代の駐広州アメリカ領事はすべて、商人である。
アメリカは、アヘン戦争後の1844年に清国と望厦条約を結んでからは、まさに中国ビジネスに猪突猛進した。便利な太平洋航路が確立すると、中国ビジネスを安全に行う経由地として日本に目を付けた。アメリカの蒸気商船に水・食料・石炭などを提供してもらうため、ペリー提督率いる黒船を日本に送り込んだというわけだ。
トランプ大統領は、そのようなニューヨーク商人の末裔なのである。そして4月6日と7日に習近平主席を招き入れ、アメリカの原点とも言える視点に立って、「ディール外交」を展開しようとしているのである。
台湾も日本もディールの道具
トランプ大統領は、昨年11月に大統領選挙で勝利してから、先祖代々、展開してきた中国ビジネスを成功に導く方策を、模索してきたに違いない。『トランプ自伝』(ちくま文庫)に描かれたトランプ式のビジネス手法によれば、ビッグ・ディールを行う場合、商談の前にまず相手の嫌なところを衝いて牽制し、本気にさせるという。
そのためトランプ氏が、中国との「ディール外交」のダシに使ったのが、中国に敵対する台湾と日本だったのではなかったか。昨年12月2日、1979年に米中国交正常化を果たして以降の歴代大統領及び大統領当選者として初めて、台湾総統と直接、電話で話した。この「トランプ・蔡英文12分電話会談」は、中国に衝撃を与えた。
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トランプ氏は続いて12月11日、FOXテレビのインタビューで、「一つの中国を認めるかどうかは中国次第だ」と嘯いた。この時の中国の衝撃たるや、その9日前をはるかに超えるものだった。
中国からすれば、「台湾は中国の一部分である」という「一つの中国」の原則の上に、1979年以来のあらゆる米中関係が存在しているという認識である。だがそれさえも、トランプ氏はディールの道具にしてしまったのだ。
年が明けて、1月20日、大統領に就任すると、トランプ大統領は2月10日から12日まで、アジアで中国と最大のライバル関係にある日本の安倍首相を、この上ない敬意をもってもてなした。このパフォーマンスを最大限に演出するため、わざわざ安倍首相と会う前日に習近平主席と長電話してみせるという用意周到ぶりである。
私はトランプ大統領があの時、安倍首相に想定外の厚遇を示した最大の理由は、中国に見せつけるためだったと見ている。すべては、来る中国とのビッグ・ディールを有利に進めるための布石というわけだ。
その頃、中国はどうだったか。実は、習近平政権が最も懸念していたのは、日米蜜月ではなくて、米ロ蜜月だった。
中国には、1972年に社会主義の兄貴分であるソ連を裏切ったという「前科」がある。それまで米ソ中の3大国は、「資本主義陣営のアメリカ」vs.「社会主義陣営のソ連+中国」という構図だったが、この年にニクソン大統領が訪中したことで、米中vs.ソ連という構図に変わった。1991年にソ連が崩壊した遠因には、この時のニクソン・ショックがあったと分析している中国の研究者もいるほどだ。
トランプ大統領は、選挙期間中から「オバマ大統領よりプーチン大統領を尊敬している」などと発言し、ロシアとの関係改善を明言していた。そのため中国は、トランプ大統領の就任後、もしも習近平主席よりも先に、プーチン大統領が訪米したら、1972年の「報復」とも言えるトランプ・ショックが起こるのではと、警戒を強めていたのである。
それが2月13日に、親ロ派筆頭だったマイケル・フリン大統領安保担当補佐官の辞任が発表されたことが契機となって、早期のプーチン大統領の訪米は立ち消えとなった。7月初旬には、ハンブルクG20が開催されるので、そこでトランプ・プーチン会談が開かれる。ならばそれまでに、習近平主席が訪米し、トランプ新政権とのパイプを太くしておくことで、米ロ接近を牽制しようと考えたのだ。
だが、3月19日に北京で、習近平主席とティラーソン国務長官が会談した時にも、習近平主席の訪米は発表されなかった。ホワイトハウスと中国外交部が発表したのは3月30日と、何と会談の1週間前だった。
中国首脳の外交日程は通常、遅くとも2週間前までには確定させている。特に習近平主席の日程ともなれば、かなり以前から確定させる。それが1週間前の発表というのは、米中が水面下で、「習近平主席が訪米する、しない」も含めた激しいディールを行っていたためだろう。
NEXT ?? 韓国へのTHAAD配備に中国激怒
中国の「悪夢」
米中は、いったい何をそんなに揉めていたのか?
考えられることは2点ある。第一に、台湾の扱いである。
『読売新聞』(4月2日付)は、《米「台湾」で中国けん制 通商・為替の「交渉カード」》という見出しのスクープ記事を掲載した。
〈 米国は、最新鋭ステルス戦闘機F35のほか、最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」なども売却の検討対象としている。台湾は潜水艦の自力建造を目指しているが、技術力が不十分とされるため、トランプ政権は技術譲渡も視野に入れているという 〉
このコラムの正月の号で詳述したが、今年後半に第19回中国共産党大会を終えた後、習近平政権の後期5年の最大目標が台湾統一だと、私は見ている(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50673)。
そんな中で、台湾統一の最大の障害は、言うまでもなくアメリカ軍の存在である。トランプ政権が台湾に、F35戦闘機、THAAD、潜水艦などを次々に売却していけば、習近平主席が抱く「中国の夢」は遠のくことになる。中国にとっては、まさに「悪夢」だ。
『読売新聞』が書いたようなことは、現実に起こりうるのか。アメリカと台湾に精通したある日本の防衛関係者に聞くと、次のような見解を述べた。
「遠い将来はともかく、近未来には起こりえないだろう。第一にそんなことをすれば、中国が猛反発して、アジアが大混乱になる。第二にアメリカ軍は台湾軍を信用していない。台湾軍の幹部はほとんどが国民党員だが、彼らの一部は中国共産党と通じている。そのため台湾軍に最新鋭の兵器を売却すれば、すぐにそれらの軍事機密が中国大陸へ渡ってしまうと、アメリカ軍は警戒しているのだ」
こうした話を勘案すると、この『読売新聞』の記事の内容は、トランプ政権が習近平政権に対するディールの一環として、故意に流布させた可能性がある。そうでなくて、本気で台湾への最新兵器の売却を考えているのなら、アメリカの軍需産業を活性化させ、雇用を増やす目的だろう。
「5年前」の再来か?
米中が水面下で揉めているもう一つの懸案事項は、アメリカが韓国に配備しようとしているTHAADである。
アメリカ軍が「韓国へのTHAAD配備を協議する」と正式に発表したのは、昨年2月7日、北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射実験を強行した当日のことだった。それまで朴槿恵政権は、「THAADについてアメリカから要請はなく、協議もなく、決定もない」という「三無発言」を繰り返していた。その後、昨年7月8日に韓国への配備を決定し、9月30日に配備場所を慶尚北道星州のロッテのゴルフ場にすると発表した。
この頃までは、アメリカは「THAADは朴槿恵政権のうちに配備する」として、2017年の年末頃を念頭においていた。だが、昨年10月に朴槿恵大統領のスキャンダルが勃発したことや、トランプ候補の大統領選勝利などで、今年に入って急転回した。
2月28日にロッテとの土地提供契約が締結し、3月7日には発射装置2基が搬送された。5月9日に行われる韓国大統領選挙で、「親北反米」で知られる強硬左派の文在寅「共に民主党」前代表が勝利することが見込まれるため、文在寅新大統領の就任までに配備を終えてしまう可能性もある。
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こうしたTHAADの韓国配備に怒り心頭なのが、中国である。ある中国政府関係者は、習近平政権の立場をこう代弁する。
「THAADのミサイルは北朝鮮のミサイルに対する防衛用かもしれないが、付属のレーダーの監視能力は半径2000qに及び、人民解放軍を監視する目的が明白だ。それによって人民解放軍の北部戦区、中部戦区、北海艦隊、東海艦隊などの軍事行動が丸裸にされてしまう。
人民解放軍は昨年来、過去半世紀で最大の機構改革を断行中だが、それにも大きな影響が出てくる。THAADのレーダーを首都・北京の近くに構えられては、7月1日の建軍90周年を盛大に祝うこともおぼつかなくなる。
3月にティラーソン国務長官が訪中した際にも、THAAD配備を思いとどまるよう強く抗議したが、暖簾に腕押しだった。だが引き続き、強く抗議を続けていくし、対抗策も取っていく。とにかく、アメリカがどうしてもTHAADを韓国に配備するというのなら、北朝鮮の核ミサイル問題に関して、中国がアメリカに協力できることは、限定的なものになるだろう」
数ヵ月後にTHAADが星州に配備された時、中国で起こりうるのは、「5年前の再来」だろう。
2012年9月11日、日本政府が尖閣諸島の国有化を強行した。すると、中国の100ヵ所以上の都市で激しい抗議デモが勃発し、日系企業が狼藉に遭い、日本車が燃やされた。いまだ記憶に新しいあの時の光景が、今度は韓国を対象として甦るのではなかろうか。そうなると、韓国に文在寅政権が誕生したとしても、新政権の初仕事は、中国での「反韓暴動」への対処ということになる。
先週会った韓国政府関係者は、こうぼやいた。
「韓国は単に場所を貸しているだけで、アメリカ軍がアメリカ製の兵器を配備するのだから、中国は文句があるなら、アメリカに言えばいいのだ。そして中国国内で暴動を起こすのだったら、『反米暴動』を起こせばよいではないか。それが世界最強国のアメリカは恐いから、代わりに弱い韓国をイジメる。中国がいま韓国に対してやっていることは、まさに大国の驕りだ」
私は、「その通りかもしれない」と思ったが、口に出しては言えなかった。大国間に挟まれた小国が犠牲になるケースは、古今東西、枚挙にいとまがない。
このTHAADの韓国への配備問題を巡っては、「早期に配備するのだったら習近平主席は訪米しない」「北朝鮮問題でアメリカとの協調路線は取らない」などと言って、中国側がアメリカ側にゴネたことが推定される。もしくは逆に、「早期に配備しないのであれば、貿易問題や北朝鮮問題でアメリカに妥協してもよい」と、ディールを持ちかけたとも考えられる。
中国でこうした水面下の交渉を担っている責任者は、崔天凱駐米大使(前駐日大使)である。来年3月に、王毅外相に代わる次期外相ポストを狙っている崔大使としては、最大の正念場と言えるだろう。
NEXT ?? 北朝鮮への先制攻撃も辞さない!?
「中国が北朝鮮問題を解決しないなら…」
そんな中、4月6日の米中首脳会談に合わせて、北朝鮮が6度目の核実験を強行する気配を見せている。少し前のことになるが、あるアメリカ政府関係者は、次のように述べていた。
「もし次に北朝鮮が核実験を強行したなら、トランプ政権が考えているのは、とびきりの金融制裁だ。過去のあらゆる北朝鮮への制裁を検証したところ、最も効果があったのが、2005年9月に、マカオにあるバンコ・デルタ・アジアに制裁をかけた時だった。金正日総書記の52口座計2,500万ドルを凍結したことで、北朝鮮はパニックに陥ったのだ。今度はもっと広範囲に同様のことを行い、金正恩政権を締め上げる」
実際、3月31日にアメリカ財務省は、機先を制すように、新たに北朝鮮の銀行や貿易会社の代表など11人を、金融制裁の対象に加えた。
4月2日付のFTは、トランプ大統領のインタビューを掲載したが、トランプ大統領はこう述べている。
「中国は北朝鮮に大きな影響力を持っている。中国が北朝鮮問題を解決しないなら、われわれが解決する」
中国との貿易問題に関しても、トランプ大統領は3月30日、「来週行われる中国とのミーティングは、非常に厳しいものになるだろう。これ以上の貿易赤字は認められない」とツイッターで記した。昨年の対中貿易赤字が、約3,470億ドル(約38兆5,000億円)に上り、赤字全体の47%を占めたことを指している。
このように、すでに水面下での米中のディールは、激しさを増している。果たして、米中首脳会談でビッグ・ディールは成立するのか。全アジアが固唾を呑んで見守っている。
<付記>
トランプ新政権は、今週行われる米中首脳会談を通じて、中国を最大限に「活用」しようとしています。日本もいまこそ、「中国活用術」を考えるべきだと説いた新著です。どうぞご高覧ください!
日本を代表する現代中国ウォッチャーが、綿密な現地取材・分析をもとに、これからの日本の対中戦略を展望する
【今週の東アジア推薦図書】
『中国対外経済戦略のリアリティー』
著者=梶田幸雄、江原規由、露口洋介、江利紅
(麗澤大学出版会、税込2,916円)
5月14日と15日、今年の中国外交最大のイベント「一帯一路国際フォーラム」が北京で開かれる。習近平政権の近隣外交戦略である「一帯一路」についての研究書を求めていて見つけたのが本書である。4人の著者はそれぞれ、中国経済戦略分析のエキスパート。中国の経済戦略を丸裸にした格好の解説書だ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51367
国際・外交日本中国アメリカ韓国
米・ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかもしれない
日韓中歴訪で露呈した信じ難い能力不足
近藤 大介『週刊現代』編集次長
プロフィール
「超内向き」なトランプ政権
まだ前任のオバマ大統領の時代のことだ。アメリカとアジアの国際関係論を教えるアメリカ人の旧知の大学教授が来日したので、オバマ政権と安倍政権との関係などを聞いた。するとその教授は、日本酒をしこたま飲んで赤ら顔になって、たまりかねたようにこう述べた。
「正直言うとね、オバマ大統領というのは、戦後の歴代政権の中で最も内向きな大統領で、海外のことなんか全体の10%くらいしか考えていない。かつ海外のことと言えば、ロシアが一番で、次がEU。その後に中東が来て、中国が来て……日本の占める割合なんか、おそらく5%くらいだろう。
つまり、10%の中の5%だから、全体の0.5%。だから、0.5%のことを捉えて、『オバマ大統領は安倍政権をどう見ているか?』なんて質問すること自体が愚問だよ。ほとんど何も考えていないに決まっているではないか」
なぜこんな話をほじくり返したかと言えば、3月15日から19日まで、日本、韓国、中国とアジア3ヵ国を歴訪したレックス・ティラーソン国務長官の姿を見ていて、「内向き」と言われたオバマ政権に輪をかけて、トランプ政権が「超内向き」な政権になりそうな気配が多分に感じられたからだ。
思えば、いまから8年前の2009年2月16日の夕刻、就任したばかりのヒラリー・クリントン国務長官が羽田空港に降り立った時は、ビッグニュースだった。
「私はアメリカにとってアジア太平洋地域との外交が不可欠との信念から、初の外遊先にアジアを選び、アジア歴訪の最初の訪問地に日本を選んだ」
クリントン長官は、記者団に囲まれて勇ましく発言した。
翌17日には麻生太郎首相主催の大々的な歓迎晩餐会を開いたし、東大で講演したり、拉致被害者の家族と面談したりして、2泊3日の滞在中、常にニュースの的だった。その間、麻生首相の訪米を決め、海兵隊のグアム移転を発表した。
日本を発った後、インドネシア、韓国、中国と回り、オバマ政権の「アジアへの回帰」を鮮明に打ち出したのだった。
それに較べて、今回のティラーソン国務長官の来日たるや、寂しいものだった。私が一番驚いたのは、ティラーソン国務長官のアメリカメディアの同行記者が、たった一人しかいなかったことだった。
北朝鮮はミサイルを飛ばし、韓国は大統領を罷免し、中国は空母を旋回させ、アメリカ軍は、史上最大規模の米韓合同軍事演習を実施している真っ最中だ。そんなホット・スポットをアメリカの新国務長官が歴訪するというのに、ティラーソン国務長官と共に降り立った同行記者は、たったの一人だけ。しかも『インディペンデント・ジャーナル・レビュー』というあまり聞き覚えのない保守系インターネット・メディアのエリン・マクパイクという若い女性記者である。
3月15日、羽田空港に降り立ったティラーソン氏〔PHOTO〕gettyimages
ティラーソン氏が記者に語ったこと
さて、そのマクパイク記者は、アメリカ帰国後の3月22日、「いかにしてレックス・ティラーソンは『アメリカ・ファースト』を外交政策に転換していくか」と題した長文の記事を掲載した。そこで、ティラーソン国務長官に最も近いアメリカ人ジャーナリストは、次のようなことを記している。
NEXT ?? 日本に残したのは、不安と不満
・今回のティラーソン国務長官の日本・韓国・中国歴訪は、トランプ大統領が唱える「アメリカ・ファースト」を、いかに外交政策に転換させていくかという旅だった。ティラーソン国務長官自身は、「アメリカ・ファースト」はアメリカの外交政策と矛盾しないと考えている。
・トランプ大統領はせっかちで衝動的、多弁だが、ティラーソン国務長官はゆったりしていて慎重派、寡黙だ。「まだ就任して6週間だから勉強中だ」と述べている。
・「トランプ予算」によって、国防総省は予算が10%増えるのに、国務省は28%も減らされる。この史上最悪の予算のため、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と国務省の摩擦の矢面に立つ。意気上がる国防総省と意気消沈する国務省は対照的だ。
・ティラーソン国務長官の初仕事は、マティス国防長官と組んでISISを打ち負かすことである。それは、軍によるISISの打倒、政権の移行、地域の安定化という3段階のプロセスを踏む。
・かつてブッシュJr.大統領は、クリントン大統領がオサマ・ビンラディンとアルカイダに甘かったから彼らが挑発的になったとして、イラク戦争に踏み切った。同様にトランプ政権は、オバマ政権がISISに甘かったから増殖したと見て、ISISを叩いて成功を収めようとしている。
・トランプ政権では、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、ポンペオCIA長官、マクマスター安保担当大統領補佐官が積極的な関係を築いている。特にティラーソンとマティスの関係は、ジンとベルモットのようだ。
・ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と毎日話をしていて、ホワイトハウスのトランプ大統領の執務室にアポなし訪問してよい許可を得ている。だが、まだ国務省改造計画について、トランプ大統領と詰めていない。
・ティラーソン国務長官は、かつてエクソンモービルで10万人の社員を7.5万人までリストラして、フォーチュン500強のトップ企業に導いた経験があり、国務省を効果的で効率的な組織に変えるよい機会だと思っている。ロス・ペロー、スティーブ・フォーブス、ミット・ロムニーなど、ビジネスマンが政府に貢献した例はある。
・トランプ政権は、NATO(北大西洋条約機構)の加盟国に、GDPの2%を国防予算にするよう要求した。アメリカは引き続き、NATOと共にある。
・ティラーソン国務長官は、イエメン問題にも多くの時間を割いている。20年以上も前、数年間イエメンに暮らしたことがあり、イエメン問題については明るいが、事は深刻だと考えている。
・核とミサイル開発に邁進する北朝鮮も大きな脅威だ。さらに韓国ではリベラルな文在寅が次期大統領になろうとしていて、中国政府は北朝鮮への関与政策を取っている。ティラーソン国務長官は、アメリカは20年の時間と13.5億ドルの予算を北朝鮮に空費したと考えている。
・今回のアジア歴訪では、メディアによるリスクを軽減するため、ティラーソン国務長官のスタッフは、私一人しか国務省専用機への同行取材を認めなかった。ティラーソン国務長官はそもそも目立つことが嫌いで、外交とは、アップル社がiPhoneの新商品の中身や発売日を教えないようなものだと思っている。
・ティラーソン国務長官は3月15日の夜、東京に降り立った時、大勢のマスコミが待ち構えて出迎えたことに、不愉快になった。その後、3ヵ国で何度もアジアの要人たちとカメラの放列の前で握手することにも、戸惑いを覚えた。
・3月23日木曜日に65歳になるティラーソン国務長官は、私にこう言った。
「3月にはエクソンモービルを引退して、孫たちと過ごすつもりだった。私はこの仕事を望んでいなかった。また求めてもいなかった。妻が『あなたならできるんじゃないの』と言うから承諾したのだ。
私はトランプ候補が大統領選に勝利するまで、面識もなかった。トランプ氏から『世界について語り合いたい』と申し出があり、会いに行って話をしたら、最後に『国務長官を引き受けてくれないか』と言われたのだ。そこで帰宅して、妻のレンダ・セント・クレアに話したら、『神はあなたのそばを通り過ぎたりしないわ』と言われた」
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韓国でもやらかした…
3月16日、岸田文雄外相とティラーソン国務長官の日米外相会談が1時間20分にわたって開かれたが、8年前のクリントン国務長官の訪日時に較べれば、何ともお寒い内容だった。
「2+2を早期に開催する」「辺野古移転が普天間飛行場移転の唯一の解決策である」「北朝鮮の核とミサイル開発は容認できない」「東シナ海の平和と安定のために協力する」……。どれも以前から決まっていることで、トランプ政権は「オバマ政権との違い」をアピールしているというのに、何一つ真新しい内容はなかった。
応対にあたったある日本政府の関係者は、こんな感想を述べた。
「ティラーソンという男は、何を考えているのかサッパリ分からなかった。日本側が北朝鮮の拉致問題について説明した時には、『何だそれは?』という顔をして聞いていた。もしかしたら、日本では中国の悪口を言って、中国では日本の悪口を言うような男なのではないか。
総じて、トランプ新政権がアジアで一体どんな外交を展開していこうとしているのかが、見えてこなかった。ティラーソン国務長官が日本に残したのは、不安と不満だった」
NEXT ?? 韓国で起こった「謎の事件」
ティラーソン国務長官は、続く韓国で、3月17日に尹炳世外相との米韓外相会談を行った後、共同記者会見を開き、次のように述べた。
「いまや北朝鮮の脅威は、近隣諸国ばかりかアメリカや他の国の脅威にもなりつつある。北朝鮮を平和的に安定させようというこの20年の努力は、失敗に終わった。アメリカは1995年以降、北朝鮮への助力に13億ドルを費やした。だが北朝鮮は、核兵器を開発し、弾道ミサイルを増強させ、アメリカと同盟国を恫喝した。
北朝鮮の脅威が増加した現在、次のことをはっきりさせる。(オバマ政権の)戦略的忍耐は、もう終わりにし、新たな外交安保と経済のステージに入る。すべてのオプションが机上にある。核とミサイルを放棄することだけが繁栄の道だと、北朝鮮は思い知るべきだ。
THAADを韓国に配備するのは、まさにこのためだ。中国の韓国に対する経済的な報復は認識しているが、それは正しい行いではないし、トラブルのもとになる行為だ。中国には、そのような行為を慎むことを求める。その代わり、中国には、エスカレートする北朝鮮の脅威に向き合うことを促していく」
このように、3月から4月に史上最大規模の合同軍事演習を行っていることもあって、ティラーソン国務長官は米韓一体をアピール。合わせて、THAADの正当性を述べ、中国に対しては韓国イジメを止めるよう呼びかけた。
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「深い溝」が浮き彫りに
だが、この米韓外相会談&共同記者会見の後、物議を醸す「事件」が起こった。ティラーソン国務長官はあろうことか、尹炳世外相主催の夕食会をキャンセルしたのだ。
この真相はいまだに謎だが、3月18日に、ソウルから北京へ向かう国務省専用機の機内で前述のマクパイク記者が行った独占インタビューによれば、次のように答えている。
マクパイク:「韓国紙は、あなたが疲労困憊でディナーをキャンセルしたと書いている。しかもあなたは韓国よりも日本で長く過ごしたとも書いている。一体何が起こったのか?」
ティラーソン:「韓国側はわれわれをディナーに招待していはいなかった。だがギリギリになって、それでは対面が立たないことに気づき、私の疲労のせいにして発表したのだ」
マクパイク:「それでは、彼らは嘘つきってこと?」
ティラーソン:「それが彼らの説明だということだ」
マクパイク:「分かったわ」
ティラーソン:「でもちゃんと夕食は食べたから」
マクパイク:「誰と? あなたのスタッフと? 分かったわ」
ティラーソン:「そういったことはホスト国が決めるものなのだ。訪問者は決めない」
つまり、米韓が互いに責任を押し付け合っているというわけだ。一方では、史上最大規模の合同軍事演習を実施中というのに、実際にはトランプ新政権と韓国との間に、深い溝があるということだ。
それはもしかしたら、「大統領になったらアメリカよりも先に北朝鮮を訪問する」と公言している親北反米の文在寅「共に民主党」前代表が、5月9日の大統領選挙に勝利する瞬間が近づいていることとも関係があるのかもしれない。
NEXT ?? べらべらしゃべりすぎ
ヒマで仕方ないのか?
ところで、ティラーソン国務長官は、ソウルから北京へ向かう国務省専用機で、他にやることがないのかと訝いたくなるほど、マクパイク記者のロング・インタビューに応じている。その要旨は以下の通りだ。
・日本は経済規模から言って、この地域における最重要の同盟国だ。それは安全保障、経済、平和と安定などの立場から見て、過去においても現在でも同様だ。
・韓国は日本と似ているが、北東アジアの平和と安定において、比較的安定した、重要なパートナーだ。
・アメリカの目的は、朝鮮半島の非核化だ。核開発が必要だと結論づけている北朝鮮の体制に、その誤った理解を変えさせることだ。
・われわれはあらゆるオプションを排除しない。その一つは、北朝鮮に「制裁」という強力なメッセージを送ることだ。プレッシャーを強めて、いま彼らが考えている道は閉ざされていくと分からせることだ。
・第一ステップは、国連安保理による制裁で、もっと広範にやっていく。それは北朝鮮の恫喝外交を助長するためではなくて、彼らの道を変えさせるためだ。
・もしそれでも彼らが核とミサイル開発を続けるなら、われわれは誰も望まない方向に向いていくだろう。そうしたアクションによって彼らの考えを変えさせていくしかない。それはいまよりもかなり危険な状態になる。
・中国にも、このことで北朝鮮に影響を与えてもらう。米中両大国は共に、朝鮮半島の平和と安定を望んでいるのだから。二つのグレートパワーとして、朝鮮半島を非核化しようということだ。
・中国とは広範な問題について話すつもりだが、北朝鮮の脅威は差し迫ったイシューだ。彼らは兵器を開発し、それを運搬するシステムを身に着けようとしているからだ。
・中国に関しては、トランプ大統領と習近平主席との間で、ハイレベルの話をしてもらわないといけない。とにかく両首脳が顔を合わせて話すことが大事だ。
・中国自身の人権問題も、改善するよう言及したい。
・われわれは米中関係の歴史的な瞬間に立ち会っている。ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官が訪中し、道を開いてから40年。中国は経済発展し、世界に存在を見せつけてきた。米中は過去に、朝鮮半島以外で直接戦ったことはない。特にこの40年間の関係は素晴らしかった。いまは互いにフレッシュな気持ちで、次の50年の両国関係について話す時だ。それは米中で紛争が起こらない時代を作るということだ。
他にも、ティラーソン国務長官はなぜメディアを同行させないのかとか、公用の携帯電話と孫と話す私用の携帯電話を使い分けているとか、ダラダラと語っているが、それはアジア情勢とは無関係なので、省略した。
〔PHOTO〕gettyimages
米中外相会談を終えて
3月18日、北京で王毅外相と米中外相会談を行った後、両外相が共同記者会見を行った。その時にティラーソン国務長官が語ったのは、以下のようなことだった。
・過去40年以上にわたって、米中に紛争や軍事衝突が起こっておらず、互恵とダブルウインの関係を築いてきた。いまこそ両国のリーダーが、次の半世紀の関係を話し合うべき時に来ている。両国は世界の2大経済大国であり、安定と成長を促進していかねばならない立場にある。両国はフェアで配当を払うポジティブな貿易関係に向かって進んで行くべきだ。
・王毅外相と、北東アジア及びアジア太平洋の安定と安全保障の重要性について話した。過去20年の北朝鮮の違法な兵器開発を止める努力は成功してこなかった。中国も朝鮮半島の非核化を目指しているので、米中は決意を新たにして北朝鮮問題に望みたい。
・海上の紛争と、航行・航空の自由については、ルールに基づいた秩序作りが重要だということを議論した。アメリカは、人権や宗教の自由など普遍的価値の提唱は続けていくと明らかにした。
・北朝鮮に関しては、王毅外相と、現在かなり危険なレベルになっているとの認識で一致した。そして重要なのは、北朝鮮に核開発の方針を変えてもらうことだということでも一致した。
NEXT ?? 素人国務長官
ヒマで仕方ないのか?
ところで、ティラーソン国務長官は、ソウルから北京へ向かう国務省専用機で、他にやることがないのかと訝いたくなるほど、マクパイク記者のロング・インタビューに応じている。その要旨は以下の通りだ。
・日本は経済規模から言って、この地域における最重要の同盟国だ。それは安全保障、経済、平和と安定などの立場から見て、過去においても現在でも同様だ。
・韓国は日本と似ているが、北東アジアの平和と安定において、比較的安定した、重要なパートナーだ。
・アメリカの目的は、朝鮮半島の非核化だ。核開発が必要だと結論づけている北朝鮮の体制に、その誤った理解を変えさせることだ。
・われわれはあらゆるオプションを排除しない。その一つは、北朝鮮に「制裁」という強力なメッセージを送ることだ。プレッシャーを強めて、いま彼らが考えている道は閉ざされていくと分からせることだ。
・第一ステップは、国連安保理による制裁で、もっと広範にやっていく。それは北朝鮮の恫喝外交を助長するためではなくて、彼らの道を変えさせるためだ。
・もしそれでも彼らが核とミサイル開発を続けるなら、われわれは誰も望まない方向に向いていくだろう。そうしたアクションによって彼らの考えを変えさせていくしかない。それはいまよりもかなり危険な状態になる。
・中国にも、このことで北朝鮮に影響を与えてもらう。米中両大国は共に、朝鮮半島の平和と安定を望んでいるのだから。二つのグレートパワーとして、朝鮮半島を非核化しようということだ。
・中国とは広範な問題について話すつもりだが、北朝鮮の脅威は差し迫ったイシューだ。彼らは兵器を開発し、それを運搬するシステムを身に着けようとしているからだ。
・中国に関しては、トランプ大統領と習近平主席との間で、ハイレベルの話をしてもらわないといけない。とにかく両首脳が顔を合わせて話すことが大事だ。
・中国自身の人権問題も、改善するよう言及したい。
・われわれは米中関係の歴史的な瞬間に立ち会っている。ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官が訪中し、道を開いてから40年。中国は経済発展し、世界に存在を見せつけてきた。米中は過去に、朝鮮半島以外で直接戦ったことはない。特にこの40年間の関係は素晴らしかった。いまは互いにフレッシュな気持ちで、次の50年の両国関係について話す時だ。それは米中で紛争が起こらない時代を作るということだ。
他にも、ティラーソン国務長官はなぜメディアを同行させないのかとか、公用の携帯電話と孫と話す私用の携帯電話を使い分けているとか、ダラダラと語っているが、それはアジア情勢とは無関係なので、省略した。
〔PHOTO〕gettyimages
米中外相会談を終えて
3月18日、北京で王毅外相と米中外相会談を行った後、両外相が共同記者会見を行った。その時にティラーソン国務長官が語ったのは、以下のようなことだった。
・過去40年以上にわたって、米中に紛争や軍事衝突が起こっておらず、互恵とダブルウインの関係を築いてきた。いまこそ両国のリーダーが、次の半世紀の関係を話し合うべき時に来ている。両国は世界の2大経済大国であり、安定と成長を促進していかねばならない立場にある。両国はフェアで配当を払うポジティブな貿易関係に向かって進んで行くべきだ。
・王毅外相と、北東アジア及びアジア太平洋の安定と安全保障の重要性について話した。過去20年の北朝鮮の違法な兵器開発を止める努力は成功してこなかった。中国も朝鮮半島の非核化を目指しているので、米中は決意を新たにして北朝鮮問題に望みたい。
・海上の紛争と、航行・航空の自由については、ルールに基づいた秩序作りが重要だということを議論した。アメリカは、人権や宗教の自由など普遍的価値の提唱は続けていくと明らかにした。
・北朝鮮に関しては、王毅外相と、現在かなり危険なレベルになっているとの認識で一致した。そして重要なのは、北朝鮮に核開発の方針を変えてもらうことだということでも一致した。
NEXT ?? 素人国務長官
以上である。ちなみにこの時の王毅外相の発言要旨は、以下の通りだ。
・中国は、朝鮮半島の非核化、対話と交渉による問題解決、朝鮮半島及び地域の平和と安定ということで、朝鮮半島にコミットしてきた。
・朝鮮半島の核問題は基本的に、アメリカと北朝鮮の問題だ。
・中国はこれまでも、できる限りの尽力をしてきた。3者協議、6者協議なども行った。それらは主に、米朝協議をサポートするためのものだった。国連安保理で制裁決議も行ってきた。2005年9月には、6者協議で共同声明も出した。
・最も重要なのは、どんな時でも平和的に外交的手段によって解決していかねばならないということだ。
・いまや再び新たな岐路に立っていて、このまま状況がエスカレートしていけば、最後は軍事衝突に至るだろう。だから交渉をリスタートさせるべきだ。
・まずは関係各国が頭を冷やすことだ。われわれも新たな交渉に、アメリカ側に立って協力していく。
・朝鮮半島の核問題をめぐる今日のティラーソン国務長官との議論で、双方は完全には一致しなかったが、基本的なコンセンサスや方向性は共有している。ティラーソン国務長官が述べたように、中米双方が目指すゴールは、朝鮮半島の非核化だ。中米はこれからも、しっかりと協力し合っていく。
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存在の耐えられない軽さ
米中両外相の共同記者会見を見ていると、明らかに王毅外相の方がリード役だった。王毅外相は4年も外相をやっていること、中国のホームグラウンドであることなどもあるが、王毅外相にとっては、一世一代の晴れ舞台だったことも大きい。
王毅外相の任期はあと一年で、今年後半に開かれる第19回中国共産党大会で、次の処遇が決まる。王毅外相としては外交担当国務委員(副首相級)に昇進して、中国外交の最高責任者になりたい。
ところが、いまそのポストにいる楊潔篪国務委員(前外相)は、「王毅外相は日本畑の外交官なので、最重要の対米外交ができない」と理由をつけて、もう一期5年務めたい。つまり、中国国内で楊潔篪vs.王毅の激しい「内交戦」が再燃しているのである。すべては習近平主席の胸先三寸だ。
そのことを差し置いても、日本、韓国、中国と3ヵ国歴訪したアメリカの新国務長官の「存在の耐えられない軽さ」には驚いた。
まず第一に、マクパイプ記者との長いインタビューの発言を確認すると、外交官や政治家としての経験がないとはいえ、ある意味、トランプ大統領以上に、小学生のような言い回しばかりが目につく。世界最強国の外務大臣にしては、信じられないほどの役不足、能力不足なのである。おそらく本人もそのことをよく自覚していて、自信がないから、大のマスコミ嫌いなのだろう。
第二に、ティラーソン国務長官は、キッシンジャー元国務長官のような戦略型でもなければ、ヒラリー・クリントン国務長官のような理念型でもない。あえて言うなら、国務省という組織を、予算削減に合わせてダウンサイジングしていく総務型、庶務型の国務長官に思える。そのため、アジア各地で凄んでは見せたが、北朝鮮に先制攻撃するとかいう大それた外交を展開できるような器ではない。
第三に、3月8日に、アジア太平洋担当国務次官補だったダニエル・ラッセル氏が、突然、国務省を去っていったことだ。
ラッセル次官補は、アメリカの対北朝鮮外交最大のキーパーソンで、トランプ候補の大統領選勝利の後も、「北朝鮮外交があるから」と言って残った数少ない国務省幹部だった。それがティラーソン国務長官のアジア歴訪の1週間前になって突然、辞任したのは、ティラーソン国務長官とアジア外交を巡る齟齬があったとしか思えない。そして、キーパーソンを失ったアメリカのアジア外交は、漂流とまではいかないかもしれないが、一時的後退は免れないのである。
第四に、北京でも、マクパイプ記者に対しても、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と習近平主席の早期の米中首脳会談の重要性を力説していながら、その日程を発表できなかった。すでに4月6日、7日に習近平主席が訪米と書き立てたメディアもあるが、3月27日時点で発表がないのは不自然だ。中国は首脳の外交日程を、通常は2週間前に発表するからだ。特に、中国がティラーソン国務長官を尊重しているなら、その訪中時に発表してもよかったはずだ。
思うに、THAAD配備問題を巡って、米中で調整がつかなかったのではないか。加えて中国としては、このような「素人国務長官」を任命するようなトランプ政権との本格交渉は、急ぐ必要がないと判断したことも考えられる。
ともあれ半年か一年後には、ティラーソン氏は「前国務長官」として、自宅で悠々と孫と遊んでいるような気がしてならない。
<付記>
アメリカが当てにならなくなってきた日本が取るべき対中外交とは? 新著をどうぞご高覧ください。
日本を代表する現代中国ウォッチャーが、綿密な現地取材・分析をもとに、これからの日本の対中戦略を展望する
【今週の推薦図書】
『暗黒の巨人軍論』
著者=野村克也
(角川新書、税込み864円)
プロ野球とはあまり縁のない私だが、野村克也氏の本だけはたくさん読んでいる。野村氏が巨人のことを論じる時、「巨人」を「日本」に置き換えると、そのまま日本論の教科書のように思えてくるのだ。すなわち、「暗黒の日本論」である。
実際、野球と国際関係は、類似点に溢れている。巨人「軍」と呼ぶように、野球は疑似戦争だからだ。日本の将来を考える上でも、実に示唆に富んだ一冊だった。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51324
パナソニック、中高年向けLED照明 黄色を抑制
2017/4/4 19:08
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パナソニックは4日、中高年向けに色を鮮やかに映す住宅用の発光ダイオード(LED)照明を6月1日に発売すると発表した。黄色の光を抑え青色の光が引き立つよう光の波長を調整した。年を取るにつれて目でレンズの役割を果たす水晶体が黄色く変色し、色を識別しにくくなる。青色を補うことで明るく感じるようになり、文字も読みやすくなるという。
市場想定価格は8畳用で4万5千円前後(税別)。光源を覆うカバーを台形にしたことで発光面が大きくなった。天井を照らす光量も増し、部屋全体を明るくできる。点灯時にカバー表面に波状の模様が映るデザインを採用した。
重さを従来製品より約10キログラム軽くし、小回りをききやすくした電動アシスト自転車も6月に発売する。価格は税別11万円。両製品とも日本製の高級家庭用品のブランド「Jコンセプト」シリーズに加える。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ04HN9_U7A400C1TI5000/
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